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ログイン2003年6月14日
<法務> はじめに 中国における外国製品の模倣品の多さは、日本企業の悩みの種となっていることは周知の通りである。従来の紛争事例としては、日本企業(中国進出日系企業)が模造品を製造・販売している企業を相手取った紛争、訴訟提起がほとんどであった。しかし、最近では中国企業が外国企業を訴えるという事態も生じているという。 模造品にかかわる紛争では、(1)特許権侵害、(2)実用新案権侵害、(3)意匠権侵害がある〔注1〕。このうち、本稿では意匠侵害事件における争点について若干の検討をする。この問題を検討する題材として、2003年6月1日付の『日本経済新聞』に掲載された「ホンダ v. 中国二輪車メーカー間の台湾メーカーのスクーター・デザインをめぐる意匠権確認訴訟」を取り上げる。ただ、筆者はこの判決文を入手してはおらず、新聞で紹介された内容を知るだけである。そこで、この新聞記事から想定される争点を発見し、整理する方法により、検討を行なう。
1 事件の概要 事件の概要は、2003年6月1日付の『日本経済新聞』に掲載された記事のとおりである。 「ホンダのスクーターのデザインが、先に意匠権登録していた台湾メーカーの製品と似ているかどうかをめぐって争われていた裁判で、北京市高級人民法院は2003年5月31日までに、ホンダの意匠権は無効とした一審を取り消す判決を下した。ホンダの主張が認められ、同社のスクーターの意匠権が確定した。 裁判はホンダの模造品を製造していた中国の二輪車メーカーが、ホンダの意匠権は無効と訴えて国家知識産権局(特許庁に相当)に審査を請求したのが発端。知識産権局は、ホンダのスクーターが台湾製品に似ているとして、ホンダの意匠権を2001年9月に取り消した。ホンダはこの無効審判を不服として訴訟していた。 中国では本物のデザインを盗用しながら、ハンドルや方向指示器など部品の形状を少しだけ変えた巧妙な模造品が氾濫している。今回はスクーターの"本家"とも言えるホンダが、ハンドルなど主要部品のデザインの違いを理由に、台湾製品とは"似ていない"と訴える側に回り、裁判所の判断が注目されていた。」 2 争点 上記の新聞記事を時系列に整理すると、以下のとおりである。 事件の概要を時系列にしたところ、この事件には以下の争点があると考えられる。 第一に、(1)意匠権の登録は、どのように行なわれるのか。第二に、(2)意匠権登録の過程で、これに不服のあるものは、どのように対抗することができるのか。第三に、(3)意匠登録機関の決定に不服がある場合の救済措置はあるのか。第四に、(4)意匠権侵害の判断基準はどうであるのか。また、その適用基準はどうであるのか。第五に、(5)法院の裁定の効力はどうであるのか。 上記(1)、(2)は、意匠登録手続に関するものである。これに関しては、意匠登録機関はどこで、具体的にどのような審理が行なわれるのかなどの問題として検討できる。(3)は、例外規定としての不服申し立てであり、この場合の審理機関がどこであり、どのような判断基準審理されるのかということがある。 そこで、以下、各争点について検討する。 3 意匠登録手続・不服申立・司法救済 (1) 意匠登録手続 専利行政管理部門は、出願について拒絶理由が発見されない場合は、意匠権の付与決定をし、専利証を交付し、登録・公告を行ない、公告の日から効力を生じる(専利法第40条)。意匠権は、出願の日から10年間有効に存続する(専利法第42条)。 (2) 不服申立 (3) 司法救済
4 意匠権付与の判断基準 (1) 判断基準 具体的に意匠権を付与するかいなかの判断基準としては、専利法実施細則(2001年6月15日公布、2001年7月1日施行)第2条による。第2条は、以下のとおり規定する。 「意匠とは、製品の形状、図案またはそれらの組合せ、および色彩と形状、図案の組合せにより作り出された美感に富み、かつ工業上の応用に適した新しいデザインをいう。」 従って、専利法実施細則第28条第2項においては、意匠出願には、製品デザインの要点、保護を請求する色彩、略図などの状況が必要であるとされている。 以上から意匠権を付与するか否かの判断基準は明らかになるが、実務上は、(1)「同一」または(2)「類似」とは何か、(3)「新しいデザイン」とは何かということなどが争点になる。新しいデザインの要件は、「美感に富み、かつ工業上の応用に適した」ものであるが、 ユーザー登録がお済みの方ユーザー登録がお済みでない方有料記事閲覧および中国重要規定データベースのご利用は、ユーザー登録後にお手続きいただけます。 最近のレポート
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