こんにちわ、ゲストさん
ログイン2003年1月13日
<法務> しばしば、中国人の契約意識は低いといわれる。しかし、中国企業との貿易経済取引や外資系企業内における労働契約などをしっかりと締結することは非常に重要である。この意味で、契約社会に十分に移行してきているのではないかと考える。とりわけ行政部門や司法部門では、当事者の自由意思による契約を重視する立場を示している。合弁会社内部において会社と従業員との間で締結された内部経営請負契約の有効性が争われた事案を紹介する。ここから中国における契約の重みが判断できる。日本企業としても、中国企業との取引上の契約や現地投資企業内における従業員との労働契約などについて、十分に検討することが必要である。
(注1)劉国福・管建国編『民商法典型案例解評』法律出版社、1997年、291−295頁。 1 事案の概要 (1) 事実関係 1993年5月にYは勝手にこの請負ノルマを7,000元に引き上げたところ、Xの反対により、7月に6000元に減じた。 1995年3月31日、YはXに請負わせている車の引き取りを決定した。そして、Xが継続してタクシー業を行いたいのであれば、各人に6万元で使用権を売却するが、個人タクシーとはせずに、Y系列タクシーとして経営するものとし、Xの当該車の使用権は2年間に限るとした。さらに、2年内にXはYに毎月3,000元を支払うことと定めた。Yは、Xがこの請負を拒否するならレイオフするものとするとした。 1995年4月6日、Xは、南京市中級人民法院(以下、「法院」という)にYの違約および経済損失賠償100万元を求める訴えを提起した。しかし、1995年5月15日、法院はXの提訴を却下した(注2)。却下理由は、XY間の紛争は労働紛争であり、関係労働部門の仲裁に付託されるべきであるからである。 そこで、Xは、南京市労働争議仲裁委員会に仲裁申立をした。 (2) 仲裁廷の判断 Yが内部経営請負方式により従業員と車両リース経営請負契約を締結したことは不当ではない。Yの労働契約および経営請負契約の履行過程に法律の規定および約定に反するものはない。よって、原労働契約および経営請負契約は適法であり、有効である。双方当事者は労働契約および経営請負契約による履行をせよ。 (注2)法院の却下裁定において、事案受理費5,050元はXが負担せよとされた。 (注3)Xは労働仲裁判断に不服であるとして、7月1日に南京市中級人民法院に提訴した。本事案が紹介した劉=管(前掲注1、292頁)によれば、本件は法院において審理中であると述べられている。劉=管編著書の出版が1997年1月であるから、このときには南京市中級人民法院の判決がすでに下されているのではないかと考えるが、この点については言及されていない。また、筆者の知る限りでは、当該事案の結果に伝言及されている著書、論文も見られない。 2 判断の結論と法律構成 (1) 判断の結論 (2) 判断の法律構成 以上の仲裁廷の判断について、以下で整理し、争点を明らかにする。 3 判断の分析と検討 仲裁廷は、本件を審理するに際して、どのような争点を取り上げ、これをどのような判断基準に基づいて適用したのかを整理する。この整理により、仲裁廷の判断基準およびその適用過程の適否を検討する。以下、帰納的に整理する。 (1)仲裁廷は、双方当事者は労働契約および経営請負契約による履行をせよという。 以上の仲裁廷の判断過程において、すべての争点が明らかにされていえるかというと否である。XとYとの契約関係について、労働契約と経営請負契約の2つがあるが、労働契約に関しては当事者の主張の中に詳しい言及はない。仲裁廷は、労働契約を有効と認定し、この有効性の認定基準として適法であることを述べている。 そこで、第一に、この点について検討する。労働契約は、労働者と雇用単位とが労働関係を確立し、双方の権利および義務を明確にするために、締結するものである。労働契約は、必ず労働者と雇用単位との間で締結しなければならない(労働法第16条)。「外国投資企業労働管理規定」(1994年8月11日発布、同日施行)においても、第8条1項前段において、「労働契約は、従業員個人と企業とが書面により締結する」と規定されている。そして、労働契約は、締結により直ちに法的拘束力を有する(労働法第17条)。締結の形式は、書面によらなければならず、以下の条項を設けなければならない(労働法第19条)。すなわち、 ユーザー登録がお済みの方ユーザー登録がお済みでない方有料記事閲覧および中国重要規定データベースのご利用は、ユーザー登録後にお手続きいただけます。 最近のレポート
|