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第18回党大会の経済的意義 (1)

中国ビジネスレポート マクロ経済
田中 修

田中 修

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2012年11月20日

記事概要

11月8-14日、第18回共産党大会が開催され、胡錦濤総書記は最後の政治活動報告を行った。本稿では、報告のうち経済関連部分を中心に解説したい。(4,926字)

はじめに
11月8-14日、第18回共産党大会が開催され、胡錦濤総書記は最後の政治活動報告を行った。本稿では、報告のうち経済関連部分を中心に解説したい。

Ⅰ.報告概要(経済関連部分)

1.過去5年間の政策と10年間の基本総括
1.1政策の問題点
これまでの成果を強調したうえで、「我々の政策にも多くの不足が存在し、道を進むうえでなお少なからぬ困難・問題がある」とし、次の点を挙げている。
①発展において、アンバランス・不協調・持続不可能の問題が依然際立っており、科学技術イノベーション能力が強くない。産業構造は不合理であり、農業の基礎は依然脆弱で、資源・環境の制約が激化している。科学的発展を制約する体制メカニズムの障害はかなり多く、改革開放の深化と経済発展方式の転換という任務は非常に困難である。
②都市・農村地域の発展格差と、個人所得分配の格差が依然大きい。
③社会の矛盾が顕著に増加しており、教育、就業、社会保障、医療、住宅、生態環境、食品・薬品の安全、安全生産、社会の治安、法執行・司法等の大衆の切実な利益に関わる問題がかなり多く、一部の大衆の生活が比較的困難になっている。
④一部の分野では、モラルの規範が失われ、信義誠実を欠いている。
⑤一部幹部の指導の科学的発展能力が強くなく、一部末端党組織が軟弱でまとまりに欠けており、少数の党員幹部の理想・信念が動揺し、党の趣旨に関する意識が希薄になっており、形式主義・官僚主義の問題が際立っており、奢侈・浪費現象が深刻である。
⑥一部分野で消極・腐敗現象が発生しやすく、多発しており、反腐敗闘争の情勢は依然峻厳である。
これらの困難・問題を我々は高度に重視し、更に真剣に解決しなければならない。

1.2科学的発展観の意義
10年の奮闘の歴史の中で最も重要なことは「実践の基礎の上に理論の刷新推進に挑み、中国の特色ある社会主義の堅持・発展をめぐり、相互に密接につながり相互に相通じている新思想・新観点・新論断を提起し、科学的発展観を形成・貫徹したことである」とする。
そして科学的発展観とは、
①マルクス主義が現代中国の現実及び時代の特徴と結びついた産物であり、発展に関するマルクス主義の世界観・方法論の集中的な体現である。
新情勢下でどのような発展を実現するか、どのように発展するかという重大な問題に新たな科学的回答を行ったものであり、中国の特色ある社会主義のルールの認識について我々を新たな水準に引き上げるものであり、現代中国のマルクス主義発展の新たな境界を切り開くものである。
②中国の特色ある社会主義理論体系の最新の成果であり、中国共産党の集団の知恵の結晶であり、党・国家全体の活動を指導する強大な思想武器である。
③マルクス・レーニン主義、毛沢東思想、鄧小平理論、「3つの代表」重要思想とともに、党が長期に堅持しなければならない指導思想である。
とされた。

1.3科学的発展観の貫徹
「科学的発展観をわが国現代化建設の全プロセスに貫徹し、党の建設の各方面に体現させなければならない」とし、次の4点を強調する。
①全党は更に自覚的に、経済社会の発展を推進することを、科学的発展観を貫徹する第一義とし、経済建設という中心をしっかりとらえて、全ての力を集中して建設に取り組み、一意専心発展を求めなければならない。
②全党は更に自覚的に、人間本位を科学的発展観を貫徹する中核的立場とし、最も広範な人民の根本的利益を党・国家の一切の活動の出発点・立脚点としなければならない。
③全党は更に自覚的に、全面性・協調性・持続可能性を科学的発展観を貫徹する基本要求とし、経済建設・政治建設・文化建設・社会建設・生態文明建設の「五位一体」の全般的な布石を全面実施しなければならない。
④全党は更に自覚的に、統一的に企画し各方面を併せ考慮することを、科学的発展観を貫徹する根本的方法とし、すべて現実から出発し、中国の特色ある社会主義事業における重大関係を正確に認識し、適切に処理しなければならない。
また、「思想の解放、実事求是、時代と共に歩み、真実を求め実際を重んずることは、科学的発展観の最も鮮明な真髄である」とも述べている。

2.中国の特色ある社会主義の新たな勝利を勝ち取る
2.1歴代の各指導部の業績
(1)毛沢東同志を核心とする第1代中央指導集団
現代中国の全ての発展のために、根本的な政治前提・制度的基礎を打ち固めた。深刻な曲折[1]を経験したが、新たな歴史の時期に、中国の特色ある社会主義のために、貴重な経験、理論的準備、物質的基礎を提供した。
(2)鄧小平同志を核心とする第2代中央指導集団
党・国家の活動の中心を経済建設に移し、改革開放という歴史的政策決定を実行した。中国の特色ある社会主義を成功裏に創り出した。
(3)江沢民同志を核心とする第3代中央指導集団
内外情勢が十分複雑で、世界の社会主義に深刻な曲折が出現するという峻厳な試練を前にして、中国の特色ある社会主義を守り抜いた。中国の特色ある社会主義を成功裏に21世紀に推し進めた[2]。
(4)新世紀の段階における党中央[3]
重要な戦略的チャンスの時期をしっかり掴み、小康社会を全面的に推進するプロセスにおいて実践の刷新・理論の刷新・制度の刷新を推進し、人間本位で、全面的に協調した持続可能性のある発展を強調し、社会主義の調和のとれた社会の構築・生態文明建設を提起して、中国の特色ある社会主義の全般的な布石を形成した。民生の保障・改善に力を入れ、社会の公平・正義を促進し、調和のとれた世界の建設を推進し、党の執政能力建設・先進性建設を推進し、新たな歴史的起点において、中国の特色ある社会主義を成功裏に堅持・発展させた

改革開放30年余り、一貫して模索を続けるなかで、我々は中国の特色ある社会主義という偉大な旗印を断固として高く掲げ、閉鎖的で硬直した旧い道を歩むことも[4]、別の旗印に変えるような邪道を歩むこともなかった。

2.2中国の特色ある社会主義の含意
①中国の特色ある社会主義の道
中国共産党の指導の下、基本的な国情に立脚し、経済建設を中心とし、4つの基本原則を堅持し、改革開放を堅持し、社会の生産力を解放・発展させる。社会主義市場経済、社会主義民主政治、社会主義先進文化、社会主義の調和のとれた社会、社会主義生態文明を建設する。人間の全面的発展を促進し、全人民の共同富裕を段階的に実現し、富強・民主的・文明的で調和のとれた社会主義現代化国家を建設する。
②中国の特色ある社会主義の理論体系
鄧小平理論、「3つの代表」重要思想、科学的発展観を含む科学的理論体系であり、マルクス・レーニン主義、毛沢東思想の堅持・発展[5]である。
③中国の特色ある社会主義の制度
人民代表大会という根本の政治制度、中国共産党が指導し多党が協力する政治協商制度、民族地域の自治制度及び末端大衆の自治制度等の基本的な政治制度、中国の特色ある社会主義の法律体系、公有制を主体とし多様な所有制経済が共同で発展する基本的な経済制度、並びにこれらの制度の基礎の上に確立された経済体制・政治体制・文化体制・社会体制等の各種の具体的制度である。

中国の特色ある社会主義の「道」とは実現ルートであり、「理論体系」とは行動指針であり、「制度」とは根本的な保障である。3者は、中国の特色ある社会主義の偉大な実践により統一される。
中国の特色ある社会主義の建設に際しては、①全体として依拠するものは社会主義初級段階であり、②全体としての布石は、経済建設・政治建設・文化建設・社会建設・生態文明建設の「五位一体」であり、③全体としての任務は社会主義現代化と中華民族の偉大な復興である。

中国の特色ある社会主義は、中国のように人口が多く基盤が脆弱な東方の大国が、どのような社会主義を建設し、どのように社会主義を建設するかという根本的な問いに対し、理論・実践を結びつけ系統的に回答したものである。実践が十分証明しているが、中国の特色ある社会主義は現代中国の発展・進歩の根本的な方向であり、中国の特色ある社会主義によってこそ中国は発展できるのである。

中国の特色ある社会主義の発展は、長期にわたる非常に困難な歴史的任務であり、多くの新たな歴史的特徴を備えた偉大な闘争を進める準備をしなければならない。我々はいささかも動揺することなく中国の特色ある社会主義を堅持し、時とともに発展させ、中国の特色ある社会主義の実践の特色・理論の特色・民族の特色・時代の特色を不断に豊富にしなければならない。

2.3新たな歴史条件下、中国の特色ある社会主義が新たな勝利を勝ち取るための基本要
(1)人民の主体的地位を堅持しなければならない
中国の特色ある社会主義は、億万人民自身の事業である。
人民の権益を更に好く保障し、人民が主人公となることを更に好く保証しなければならない。
(2)社会の生産力を解放し発展させることを堅持しなければならない
社会の生産力の解放・発展は、中国の特色ある社会主義の根本任務である。
経済建設を中心とし、科学的発展を主題として、経済建設・政治建設・文化建設・社会建設・生態文明建設を全面的に推進し、人間本位の、全面的・協調的で持続可能な発展を実現しなければならない。
(3)改革開放の推進を堅持しなければならない
改革開放は、中国の特色ある社会主義を堅持・発展させるために、必ず通るべき道である。
社会主義市場経済の改革方向を堅持し、対外開放という基本国策を堅持しなければならない。
(4)社会の公平・正義の擁護を堅持しなければならない
公平・正義は、中国の特色ある社会主義の内在的要求である。
権利の公平・機会の公平・ルールの公平を主要な内容とする社会の公平の保障システムを段階的に確立しなければならない。
(5)共同富裕の道を歩むことを堅持しなければならない
共同富裕は、中国の特色ある社会主義の根本原則である。
国民所得の分配構造を調整し、再分配の調整を強化し、所得分配格差がかなり大きい問題の解決に力を入れることにより、発展の成果を更に多く更に公平に全人民に施し、共同富裕の方向に着実に前進しなければならない。
(6)社会の調和促進を堅持しなければならない
社会の調和は、中国の特色ある社会主義の本質的属性である。
民生の保障・改善を更に際立たせて位置づけ、人民が安心して生業に励み、社会が安定して秩序立ち、国家が長期にわたって安寧を保つことを確保しなければならない。
(7)平和的発展を堅持しなければならない
平和的発展は、中国の特色ある社会主義の必然的選択である。
恒久の平和・共に繁栄する調和のとれた世界の建設を推進しなければならない。
(8)党の指導を堅持しなければならない
中国共産党は、中国の特色ある社会主義事業の指導の核心である。
「立党は公のため、執政は民のため」を堅持し、党の科学的執政、民主的執政、法に基づく執政の水準を高めなければならない。
我々は、次の点をはっきりと認識しなければならない。

①わが国はなお長期にわたり社会主義初級段階にあるという基本国情は、変わってはいない。
②人民の日増しに増大する物質・文化の需要と立遅れた社会生産の間の矛盾という、この社会の主要な矛盾は変わってはいない。
③わが国は世界最大の発展途上国であるという国際地位は、変わってはいない。
いかなる情況下でも、社会主義初級段階という最大の国情をしっかり把握し、いかなる方面の改革・発展を推進するにも社会主義初級段階という最大の現実にしっかり立脚しなければならない。必要以上に卑屈になったり、やたらに驕りたかぶったりすることなく、中国の特色ある社会主義の新たな勝利をしっかり勝ち取らなければならない。

我々は理想を胸に抱き、信念を確固とし、動揺せず、怠けず、無茶をせず、頑強に奮闘し、刻苦奮闘し、たゆまず奮闘しさえすれば、中国共産党創立100周年に必ず小康社会を全面的に実現でき、新中国成立100周年に必ず富強・民主的・文明的で調和のとれた社会主義現代化国家を実現できる。

(11月16日記 4,926字)

[1]大躍進・文化大革命の混乱を指すものと思われる。
[2]「3つの代表」への言及はない。
[3]胡錦濤の名は頭出しされていない。
[4]左派・保守派や薄熙来元重慶市書記の毛沢東回帰路線を指すものと思われる。5「発展」という表現は、実質的に中身を変更する場合によく用いられる。
[5]「発展」という表現は、実質的に中身を変更する場合によく用いられる。

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