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党5中全会コミュニケ等

中国ビジネスレポート マクロ経済
田中 修

田中 修

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2010年10月23日

記事概要

中国共産党第17期5中全会は、10月15-18日の4日間開催され、最終日にコミュニケを発表した。ここで議論された第12次5ヵ年計画の党中央建議の全文はまだ公表されていないが、このヒントとなる部分の概要を紹介しておきたい。あわせて、1-9月期の主要経済指標、人民銀行の利上げについても解説する。【11,621字】

はじめに
 中国共産党第17期5中全会は、10月15-18日の4日間開催され、最終日にコミュニケを発表した。ここで議論された第12次5ヵ年計画の党中央建議の全文はまだ公表されていないが、このヒントとなる部分の概要を紹介しておきたい。あわせて、1-9月期の主要経済指標、人民銀行の利上げについても解説する。

1.党5中全会コミュニケ

(1)今後の内外環境
 今後一時期のわが国経済社会の発展の内外環境を深く分析し、内外情勢を総合判断すると、わが国発展はなお大いに力を発揮できる戦略的チャンスの時期にあり、得がたい歴史的チャンスに直面しいているだけでなく、予見可能な、あるいは予見し難いリスクの試練に直面している。
我々は、チャンスの意識と憂患意識を強め、発展ルールを科学的に把握し、環境の変化に主動的に適応し、各種矛盾を有効に除去し、更に奮発してわが国の改革開放及び社会主義現代化建設を立派に推進しなければならない。

(2)第12次5ヵ年計画制定の留意事項
 第12次5ヵ年計画制定に際しては、中国の特色ある社会主義の偉大な旗印を高く掲げ、鄧小平理論及び「3つの代表」重要思想を導きとし、科学的発展観を深く貫徹実施し、内外情勢の新たな変化に適応し、更に良い生活を送ろうという各民族人民の新たな期待に順応しなければならない。
科学的発展を主題とし、経済発展方式の転換加速を主線とし、改革開放を深化させ、民生を保障・改善し、国際金融危機の衝撃に対応した成果を強固に拡大し、経済の長期にわたる平穏で比較的速い発展と社会の調和のとれた安定を促進し、小康社会の全面的建設のために決定的意義を有する基礎を打ち立てなければならない。

(3)発展方式の転換加速
 今の中国にとっては、発展の堅持は絶対の道理からくる本質的要求である。即ち、科学的発展を堅持し、人間本位を更に重視し、全面的に協調した持続可能な発展を更に重視し、各方面を併せ配慮し統一的に企画することを更に重視し、民生の保障・改善を更に重視し、社会の公平正義を促進する。
 経済発展方式の転換加速は、わが国経済社会分野の深刻な変革であり、経済社会発展の全プロセス・各分野に貫徹させなければならない。
①経済構造の戦略的調整を、経済発展方式転換加速の主たる攻め口をすることを堅持し、
②科学技術の進歩とイノベーションを、経済発展方式転換加速の重要な支えとすることを堅持し、
③民生の保障・改善を、経済発展方式転換加速の根本的出発点及び足掛かりとすることを堅持し、
④資源節約型・環境にやさしい社会の建設を、経済発展方式転換加速の重要な力点とすることを堅持し、
⑤改革開放を、経済発展方式転換加速の強大な動力とすることを堅持し、
発展の全面性・協調性・持続可能性を高め、経済社会の良好で速い発展を実現する。

(4)今後5年間の経済社会発展の主要目標
 ①経済が平穏で比較的速く発展する、②経済構造の戦略的調整が重大な進展を得る、③都市・農村住民の所得が普遍的にかなり速く増加する、④社会建設が顕著に強化される、⑤改革開放が不断に深化されることにより、わが国の経済発展方式の転換が実質的進展を得、総合国力・国際競争力・リスク防御能力が顕著に向上し、人民の物質的・文化的生活が顕著に改善され、小康社会の全面的建設の基礎が更に牢固になるようにする。

(5)具体的政策
①内需拡大戦略を堅持し、経済の平穏で比較的速い発展を維持しなければならない。
 マクロ・コントロールを強化・改善し、消費需要を拡大する長期有効なメカニズムを確立し、投資構造を調整・最適化し、消費・投資・輸出が協調して経済成長を牽引する新たな局面の形成を加速する。
②農業の現代化を推進し、社会主義新農村建設を加速しなければならない。
 都市・農村の発展を統一的に企画し、現代農業の発展を加速し、農村インフラ建設・公共サービスを強化し、農民の増収ルートを開拓し、農村発展の体制メカニズムを整備し、農民が幸せに生活するすばらしい故郷を建設する。
③現代産業体系を発展させ、産業のコア競争力を引き上げなければならない。
 製造業を改造・グレードアップし、戦略的新興産業を育成・発展させ、サービス業の発展を加速し、現代エネルギー産業・総合運輸体系の建設を強化し、情報化水準を全面的に引き上げ、海洋経済を発展させる。
④地域の協調的な発展を促進し、積極かつ穏当に都市化を推進しなければならない。
 地域発展の総体戦略を実施し、主体的機能区戦略を実施し、都市化の配置・形態を整備し、都市化管理を強化し、革命旧地区・民族地域・辺境地域・貧困地域への支援を強化する。地域経済が優位性を相互に補完し、主体的機能が明確に定まり、国土空間が効率高く利用され、人と自然が調和し共存する地域発展構造を構築する。
⑤資源節約型・環境にやさしい社会の建設を加速し、生態文明の水準を引き上げなければならない。
 地球気候変動に積極的に対応し、循環経済を大いに発展させ、資源の節約・管理を強化し、環境保護を強化し、生態保護・防災減災システムの建設を強化し、持続可能な発展能力を増強する。
⑥科学技術・教育興国戦略を深く実施し、イノベーション型国家の建設を加速しなければならない。
 科学技術のイノベーション能力を増強し、科学技術イノベーションの体制メカニズムを整備し、教育改革の発展を加速し、人材強国を建設することにより、経済発展方式の転換加速と小康社会の全面的建設という奮闘目標の実現のために、堅実な科学技術と人材資源の基礎を打ち固める。

(6)民生の保障・改善
 民生の保障・改善に力を入れ、国情に符合し、比較的完全な、都市・農村をカバーする、持続可能な基本的公共サービス体系を徐々に整備しなければならない。政府の保障能力を高め、基本的な公共サービスの均等化を推進しなければならない。
 社会建設を強化し、健全な基本的公共サービス体系を確立し、就業を促進し、調和のとれた労働関係を構築しなければならない。所得分配関係を合理的に調整し、国民所得における個人所得の比重を高め、第1次分配における労働報酬の比重を高めるよう努力しなければならない。都市・農村住民をカバーする社会保障体系を健全化し、医療衛生事業改革の進展を加速し、人口政策を全面的にしっかり行い、社会管理を強化・刷新[1]し、人民内部の矛盾を正確に処理し、社会の調和・安定を適切に維持しなければならない。

(7)文化
 文化は、一民族の精神・霊魂であり、国家発展・民族振興の強大なパワーである。文化の大発展・大繁栄を推進し、国家の文化ソフトパワーを引き上げ、社会主義先進文化の前進方向を堅持し、全民族の文明素質を引き上げ、文化のイノベーションを推進し、文化体制改革を深化させなければならない。
 文化発展の活力を増強し、文化事業・文化産業を繁栄・発展させ、不断に増大する人民大衆の文化需要を満足させ、公共文化サービス体系を基本的に完成させなければならない。文化産業を国民経済の支柱的産業として推進し、社会の誘導・人民の教育・発展の推進における文化の機能を十分に発揮させ、中華民族が精神を共有する故郷を建設し、民族の凝集力・創造力を増強しなければならない。

(8)改革開放
 改革は、経済発展方式転換加速の強大な動力であり、更に大きな決意と勇気をもって各分野の改革を全面的に推進しなければならない。経済体制改革を大いに推進し、政治体制改革を積極かつ穏当に推進し、文化体制・社会体制改革[2]の推進を加速することにより、上部建築を経済の基礎の発展・変化に更に適応させ、科学発展のために有力な保障を提供しなければならない。
 基本的な経済制度を堅持・整備し、行政体制改革を推進し、財政・税制体制改革を加速し、金融体制改革を深化させ、資源性産品価格と要素市場の改革を深化させ、社会事業体制改革を加速しなければならない。
 Win-Winの開放戦略を実施し、対外開放水準を更に高め、対外貿易構造を最適化し、外資利用水準を高め、「海外進出」戦略の実施を加速し、世界経済の統治と地域協力に積極的に参加し、開放により発展・改革・イノベーションを促し、国際経済協力と競争に参加するための新たな優位性を積極的に創造しなければならない。

(9)党の指導
 党の指導は、第12次5ヵ年計画期間の経済社会発展目標を実現する根本的保証である。党の執政能力建設と先進性建設を強化し、経済社会発展への党の指導能力・水準を不断に高めなければならない。
 各レベルの党委員会は、発展の趨勢を正確に把握し、科学的に発展の青写真を描き、発展モデルのイノベーションに努力し、発展に関する統一的企画・協調を強化し、発展の質を適切に高めなければならない。全共産党員は、党の理論・路線・方針・政策を断固として貫徹し、科学的発展の理念を牢固に樹立しなければならない。党の末端組織の建設を適切に強化し、競って優秀な党員となる活動を深く展開し、広範な大衆を率いて経済社会の良好で速い発展を推進する。
 各レベルの指導幹部は、誠心誠意人民のために奉仕することを根本目的とし、党の大衆路線を堅持し、人民大衆との血肉の関係を常に維持し、正確な政治業績観を確立し、実践・人民・歴史の検証に値する実績を出すよう努力しなければならない。反腐敗・廉潔提唱建設を強化し、党の栄光ある伝統・優良な作風を大いに高揚し、優良な党風をもって党員の心・民心を凝集し、中国の特色ある社会主義事業を推進する巨大なパワーを形成しなければならない。

(10)当面の情勢・任務[3]
 全党・全国民の共同努力により、国民経済は引き続きマクロ・コントロールの予期する方向へと発展しており、各種事業は新たな成績を得、社会の大局は安定を維持している。全党は、党の意識、目的意識、執政意識、大局意識、責任意識を強め、チャンスをしっかり掴み逃してはならず、一心不乱に建設を進め、一意専心発展を図り、施策の原則性・系統性・予見性・創造性を強めなければならない。不言実行の精神を大いに発揚し、党と人民から与えられた職責を泰山よりも重いものとし、広範な人民大衆にしっかり依拠し、党と人民が更に強固に団結することによって、道を進むうえでの全ての困難・険阻に打ち勝ち、改革・発展・安定の各種施策をしっかり行い、今年の経済社会発展の予期目標の実現に努力しなければならない。

2.9月及び1-9月期の主要経済指標

 1-9月期のGDPは26兆8660億元であり、実質10.6%の成長となった。1-3月期11.9%、4-6月期10.3%に対し、7-9月期は9.6%の実質成長であった。第1次産業は2兆5600億元、4.0%増、第2次産業は12兆9325億元、12.6%増、第3次産業は11兆3735億元、9.5%増である。
 なお、国家統計局の盛来雲スポークスマンは、経済が引き続き減速していることにつき、
①GDP、工業生産ともに下降幅が4-6月期より小さくなっている。
②7-9月期の経済成長が適度に下降したのは、主として昨年のベースが比較的高かったからである。
③7-9月期は、工業の付加価値が6-9月で基本的に13-14%増の間におさまり、消費が18%前後で波動するなど、経済に安定化の兆しがみられる。
④経済の安定化傾向を背景に、企業家の予想も比較的良好である。
と説明している。

(1)物価
①消費者物価
 9月の消費者物価は前年同期比3.6%上昇し、8月より伸びが0.1ポイント加速した[4]。都市は3.5%、農村は3.9%の上昇である。食品価格は8.0%上昇し[5]、居住価格は4.3%上昇した。前月比では、8月より0.6%上昇した。
(参考)3月2.4%→4月2.8%→5月3.1%→6月2.9%→7月3.3%→8月3.5%→9月3.6%
 1-9月期では前年同期比2.9%上昇である。都市は2.8%、農村は3.1%の上昇である。食品価格は6.1%、居住価格は4.1%の上昇となっている。
 なお、国家統計局の盛来雲スポークスマンは、上昇要因につき、1)昨年の消費者物価が前低後高だったことによる影響が1.3ポイント、全体の36%、2)新たな上昇要因が全体の64%であり、昨年からの要因がやや低下しているのに対し、新たな上昇要因の影響が拡大しているとする。また、新たな上昇要因は主として食品価格と居住価格の上昇であり、この2要因で90%を占めるとしている。
 今後の動向としては、
1)上昇要因:ドル安による国際主要産品価格の大幅上昇、労働コストの一定程度の上昇、
2)下降要因:穀物の豊作、絶対多数の工業製品の供給過剰、昨年からの上昇要因の低下、
を挙げ、「物価上昇圧力は存在するものの、今後インフレ期待の管理が当を得るならば、年間マクロ・コントロール目標の達成は、依然希望があり、可能だと言える」としている。
②工業品工場出荷価格
 9月の工業品工場出荷価格は前年同期比4.3%上昇し、8月と同水準であった[6]。原材料・燃料・動力購入価格は7.1%上昇した。前月比では8月よりも0.6%上昇している。
(参考)3月5.9%→4月6.8%→5月7.1%→6月6.4%→7月4.8%→8月4.3%→9月4.3%
 1-9月期では前年同期比5.5%上昇であり、原材料・燃料・動力購入価格は9.8%上昇である。
③住宅価格
 9月の全国70大中都市の建物販売価格は前年同期比9.1%の上昇となり、8月より上昇幅は0.2ポイント鈍化した。8月からは0.5%上昇した。
(参考)3月11.7%→4月12.8%→5月12.4%→6月11.4%→7月10.3%→8月9.3%→9月9.1%
 新築住宅販売価格は前年同期比11.3%上昇で、こちらも8月より上昇幅が0.4ポイント鈍化した。8月からは0.5%上昇した。
 1-9月期の全国分譲建物販売面積は6.32億㎡で、前年同期比8.2%増となった。伸び率は1-8月期より1.5ポイント加速した。うち、分譲住宅販売面積は5.8%増である。1-9月期の分譲建物販売額は3.19兆元、前年同期比15.9%増であった。1-8月期より伸び率は3.3ポイント加速した。うち、分譲住宅販売額は11.2%増である。
 1-9月期のディベロッパーの資金源は5兆504億元であり、前年比32.5%増であった。うち、国内貸出が9398億元、27.2%増、外資が452億元、26.0%増、自己資金が1兆9123億元、49.7%増、その他2兆1531億元、22.3%増(うち手付金・前受金が1兆2185億元、18.7%増)である。個人住宅ローンは6391億元、19.6%増であった。

(2)工業
 9月の一定規模以上[7]の工業付加価値は前年同期比13.3%増なった。9月の主要製品別では、発電量8.1%増、粗鋼-5.9%、セメント10.3%増、自動車17.8%(うち乗用車15.9%)増となっている。粗鋼はマイナス幅が拡大しているが、乗用車は伸びが高まった。
(参考)工業付加価値 3月18.1%→4月17.8%→5月16.5%→6月13.7%→7月13.4%→8月13.9%→9月13.3%
 1-9月期では前年同期比16.3%増となった。これを四半期別にみると、1-3月期19.6%、4-6月期15.9%、7-9月期13.5%である。重工業は17.5%増であり、軽工業は13.6%増である。主要製品別では、発電量16.1%、粗鋼12.7%、セメント15.9%、自動車35.3%(うち乗用車32.6%)増となっている。
 地域別では、東部15.6%、中部18.9%、西部15.6%増である。
 なお、国家統計局の盛来雲スポークスマンは、「一定規模以上の工業付加価値において、重工業と軽工業の構造に、我々が希望していた変化が確かに発生した。重工業の生産額・付加価値が全工業に占める比重が低下し、軽工業の比重が増加している。また、1-9月期でみると、重工業の付加価値の伸びの反落の幅も相対的に大きい。ベースの影響もあり、今後数ヶ月重工業の伸びは、引き続き反落する可能性がある」としている。
 1-8月期の全国一定規模以上の工業企業の利潤は、前年同期比55%増であり、39業種のうち、36業種の利潤が伸び、1業種が赤字から黒字に転じ、2業種がマイナスであった。

(3)消費
 9月の社会消費品小売総額は前年同期比で18.8%増となった。都市は同19.1%増、郷村は同17.0%増である。農村の消費の伸びが都市をかなり下回っている。一定額以上の卸・小売では、穀物油・食品・飲料・タバコが31.9%、アパレル・靴・帽子類26.7%、建築・内装は39.0%、家具39.6%、家電・音響機器類28.5%増である。自動車は29.7%増であり、8月より伸びが鈍化した。
(参考)3月18.0%→4月18.5%→5月18.7%→6月18.3%→7月17.9%→8月18.4%→9月18.8%
 1-9月期の社会消費品小売総額は11兆1029億元、前年同期比18.3%の増加である。都市は同18.7%、郷村は同15.8%増であった。一定額以上の卸・小売では、穀物油・食品・飲料・タバコ22.3%、アパレル・靴・帽子類24.0%、建築・内装31.6%、家具類38.4%、自動車34.9%、家電・音響機器類28.1%増となっている。

(4)投資
1-9月期の全社会固定資産投資は19兆2228億元で、前年同期比24.0%増となった。都市固定資産投資は16兆5870億元で、同24.5%増であった。中央プロジェクトは1兆2906億元、10.1%増、地方プロジェクトは15兆2963億元、25.9%増であった。
不動産開発投資は3兆3511億元で同36.4%増である。うち分譲住宅は2兆3512億元、33.8%増であり、不動産開発投資の70.2%を占めている。9月は5156億元であり、35.0%増であった。鉄道運輸は25.9%増であった。
地域別では、東部21.5%、中部27.1%、西部26.5%増である。
なお、国家統計局の盛来雲スポークスマンは、「不動産の投資需要には明確に歯止めがかかった。なぜなら、一部都市の販売量の低下からすると、低下が出現したのは主として投機的需要だからだ」とし、今年は不動産の供給面で2つの新たな変化があったとする。即ち、
①ディベロッパーの土地囲い込み行為に対するコントロール強化により、一部のディベロッパーは不動産開発投資を強化した。
②政府は低所得層の住宅問題を解決するため、今年は社会保障的性格をもつ住宅の建設を強化し、この方面に国家は多額の資金を投入した。
と指摘し、1-9月期の家屋新規着工面積が前年同期比63.1%増となり、不動産投資が36.4%増となったことは、不動産供給が強化されたことを示している、としている。
(参考)都市固定資産投資 1-3月期26.4%→1-4月期26.1%→1-5月期25.9%→1-6月期25.5%→1-7月期24.9%→1-8月期24.8%→1-9月期24.5%
  不動産開発投資 1-3月期35.1%→1-4月期36.2%→1-5月期38.2%→1-6月期38.1%→1-7月期37.2%→1-8月期36.7%→1-9月期36.4%
 1-9月期のプロジェクト新規着工は25万6798件で、前年同期比1万2465件減となった。新規着工総投資計画額は13兆9678億元であり、前年同期比24.5%増となっている。都市プロジェクト資金の調達額は19兆2428億元で、前年同期比26.0%増となった。うち、国家予算内資金が12.3%増、融資が23.0%増、自己資金調達が30.3%増、外資利用が5.2%増となっている。
 なお、国家統計局の盛来雲スポークスマンは、プロジェクト新規着工が減少したことにつき、「今年4-6月期から、国家は構造調整を、とりわけ中央投資計画方面において強化するため、一定程度プロジェクト新規着工の増加を抑制した。しかし、実際のところ新規着工プロジェクトの総投資計画は増加している。このことは、1つのプロジェクトの投資規模が増加していることを示している。私は、これは国家が今年以降、一部のエネルギー多消費産業・プロジェクトが重複している産業等を制限するマクロ・コントロール措置を採用したことと関係があると思う。また他方で、新規プロジェクト新規着工の減少は、昨年のベースとも関連がある。昨年の1-9月期のプロジェクト新規着工の伸びはかなり大きかった」と述べている。

(5)対外経済
①輸出入
9月の輸出は1449.9億ドル、前年同期比25.1%増、輸入は1281.1億ドル、同24.1%増となった。9月の貿易黒字は168.8億ドルで8月より15.7%減である。
(参考)3月輸出24.3%、輸入66%→4月輸出30.5%、輸入49.7%→5月輸出48.5%、輸入48.3%→6月輸出43.9%、輸入34.1%→7月輸出38.1%、輸入22.7%→8月輸出34.4%、輸入35.2%→9月輸出25.1%、輸入24.1%
 1-9月期の輸出は1兆1346.4億ドル、前年同期比34%増であり、輸入は1兆140.4億ドル、同42.4%増となった。貿易黒字は1206億ドルであり、同10.5%の減少となった。輸出入総額では、対EU34.4%増、対米31.5%増、対日32.2%増[8]、対アセアン43.7%増である。
 1-9月期の地域別輸出では、広東前年同期比27.8%増、江蘇39.6%増、浙江38.1%増、上海31.7%増、山東32.9%増、福建35.5%増、北京17.2%増となっている。
1-9月期の労働集約型製品の輸出は、アパレル類前年同期比19%増、家具33.9%増、紡績30.7%増、靴26.6%増、玩具29.9%増である。電器・機械は同34.5%増である。また自動車の輸入は2.3倍になった。
②外資利用
9月の外資利用実行額は83.84億ドルであり、前年同期比6.14%増となった。
(参考)3月12.08%→4月24.69%→5月27.48%→6月39.6%→7月29.2%→8月1.38%→9月6.14%
 1-9月期の外資利用実行額は743.4億ドルであり、前年同期比16.6%増となった。サービス業の外資利用実行額は同32.1%増で、全体の45%を占めた。製造業は同1.6%増で、全体の47.6%を占めた。地域別では、西部48.8%増、56.57億ドルであり、全国に占める比重は7.61%である。
③外貨準備
 9月末の外貨準備残高は2兆6483億ドルであり、前年同期比16.5%増である。
④米国債保有
 8月末の米国債保有残高は、中国が前月比217億ドル増の8684億ドルと2ヶ月連続プラスとなった。2位の日本の保有高は156億ドル増の8366億ドルであった。

(6)金融
9月末のM2の伸びは前年同期比19.0%増と、8月末より0.2ポイント減速し、前年末より8.7ポイント減速した。M1は20.9%増で、8月末より1.0ポイント、前年末より11.5ポイント減速した。1-9月期の現金純放出は3610億元で、前年同期比1041億元増であった。
人民元貸出残高は46.28兆元で前年同月比18.5%増であり、伸び率は8月末から0.1ポイント、前年末より13.2ポイント減速した。9月の人民元貸出増は5955億元、1-9月期では6.30兆元であった[9]
人民元預金残高は70.09兆元で、前年同期比20%増であり、9月の人民元預金は1.45兆元増である。1-9月期では10.32兆元の増であり、うち個人預金は3.95兆元増、企業預金は3.62兆元増である。
(参考)M2 : 3月22.50%→4月21.48%→5月21%→6月18.5%→7月17.6%→8月19.2%→9月19.0%

(7)財政
9月の全国財政収入は6287.19億元で、前年同期比677.84億元、12.1%増となった。
1-9月期の全国財政収入は6兆3039.51億元、同1兆1520.64億元、22.4%増に達した[10]。中央レベルの収入は3兆3230.36億元で、同20.7%増、地方レベルの収入は2兆9809.15億元、同24.2%増である。
1-9月期の税収は5兆5957.37億元で、同24.2%増となっている。税外収入は7082.14億元で、同9.6%増である。
(参考)財政収入 3月36.8%→4月34.4%→5月20.5%→6月14.7%→7月16.2%→8月7.3%→9月12.1%
 9月の全国財政支出は8469.04億元で、前年同期比1891.61億元、28.8%増となった。
 1-9月期の全国財政支出は5兆4504.96億元で、前年同期比9302.18億元、20.6%増となっている[11]。中央レベルの支出は1兆1124億元で、同15.5%増、地方レベルの支出は4兆3380.96億元で、同21.9%増である。

(8)所得
 1-9月期の都市住民1人当たり平均可処分所得は1万4334元であり、前年同期比実質7.5%(名目10.5%)増加した。家庭1人平均総収入のうち財産所得は18.5%増である。
 農民1人当たり平均現金収入は4869元であり、同実質9.7%(名目13.1%)増加した。うち、賃金所得は18.7%増、移転所得は17.2%増である。
 1-9月期の都市住民1人当たり消費性支出は実質6.3%増、農民1人当たり生活消費現金支出は実質7.3%増であった。

3.人民銀行の利上げ

 人民銀行は、10月19日、20日から預金・貸出基準金利を引き上げ、1年物預金基準金利は0.25ポイント引き上げて2.50%に、1年物貸出基準金利も0.25ポイント引き上げて5.56%とする旨を発表した。これは2007年12月の利上げ以来、3年ぶりの利上げである。これまで人民銀行は、2009年9月以降、5回貸出基準金利の引下げを行い、4回預金基準金利の引下げを行ってきたのである。
9月の貸出急増を受け、人民銀行はすでに10月11日、4大国有商業銀行と株式制商業銀行2行に対し、預金準備率0.5ポイント引上げを通告していた。このため、市場では利上げのタイミングは遠のいたとの見方が強まっていたのであり、今回の利上げ発表は市場の意表をつくものであった。
 今回人民銀行があえて利上げに踏み切った背景としては、次の点が挙げられよう。
①7-9月期の経済成長率の低下がさほど大きくなく、経済が「2番底」へ向かう懸念が遠のいた。
②他方で、消費者物価は3.6%と高止まりし実質マイナス金利が継続しており、これをこのまま放置すると、預金者が預金を引き出して不動産・株等の購入に向かい、資産バブルを発生させる危険があった。
③また、食品価格を中心とした消費者物価上昇に対する庶民の不満は大きく、インフレ抑制に対する政策当局の断固たる姿勢を示す必要があった。
④さらに9月以降、不動産市場に再び投機的動きが発生しており、貸出の急増がこれを後押しする形になっている。このため政府は9月29日、3軒目以上の住宅購入に関する融資を暫時停止するとともに、頭金比率を1軒目30%以上、2軒目50%以上、住宅購入に関する貸出金利を基準金利の1.1倍以上とする等の政策を厳格に執行するよう通知している[12]。今回の利上げは不動産対策をマクロ政策面からも強化するものである。
 以下は、主要なエコノミストの解説を見てみたい(新華網北京電2010年10月19日)。

(1)人民銀行貨幣政策委員会委員、清華大学李稲葵教授
①利上げの理由
 現在のマクロ経済面の微細な変化が、中央銀行の今回の利上げ措置を決定づけた。一面において、わが国経済は年初の成長率低下から、現在の徐々に安定に向かう段階に入り始めた。他方で、現在の物価水準は一定の高さを維持している。このマクロデータの微細な変化により、政策決定者は心配を経済成長率の低下から物価上昇に移したのである。これが、中央銀行が利上げを行った主要な原因である。
②金融政策は根本的に変化したのか
 現在の内外経済情勢はいずれも比較的複雑であり、1回の利上げによりわが国の金融政策に根本的な変化が発生したと判断することはできない。現在、わが国はなお適度に緩和した金融政策を実施しており、利上げの方向に動き出したのかどうかは、なお観察が必要である。
③利上げは市場に影響を及ぼすか
 今回の利上げは対称的である。即ち、預金金利を引き上げると同時に、貸出金利も同じだけ引き上げている。ゆえにこの措置は銀行の利潤には顕著な影響を与えず、したがって銀行株及び資本市場にそれほど大きな衝撃を与えることはない。ただ、利上げは一定程度現在のわが国の不動産に対するコントロールに資するものであり、最終的に不動産市場の平穏で健全な発展に資するものである。

(2)中国国際経済研究会 張其佐副会長
 中央銀行の今回の利上げは、通貨当局が既にインフレ圧力への対応を当面の更に重要な任務としていることを示すものである。今年以降4回預金準備率を引き上げていることと関連させるならば、ポスト危機時代において、わが国の金融政策は現在さらに常態に回帰しているのである。

(3)社会科学院金融研究所中国経済評価センター 劉煜輝主任
 現在のマイナス金利状況はすでに7ヶ月続いており、しかもマイナス金利はさらに深刻になっている。すでに利上げの時期に達した。0.25ポイントの利上げはマイナス金利の状況を改めることはできないが、アナウンス効果はあり、市場は中央銀行がマイナス金利とインフレを抑制することを決心していると信じることになる。これは企業・個人が自己の投資・消費行為を合理的に調整することを促し、土地囲い込みや物の買占めの衝動を押し下げ、インフレ期待を弱めることに一定の作用がある。

(4)社会科学院金融研究所 殷剣鋒副所長
 利上げは、短期的には人民元の切上げ期待を更に大きくし、更に多くの資金流入を引き起こすかもしれない。

(5)興業銀行 魯政委チーフエコノミスト
 利上げの兆しは、実のところ9月29日に人民銀行が開催した第3四半期貨幣政策委員会の例会において、すでに現れていた。その前までは「成長の維持、構造の調整、インフレの防止」とずっと強調していたのと異なり、今回の貨幣政策委員会では「インフレ防止」が冒頭にきて、しかも「任務は依然非常に困難である」と認識されていたのである。これは、9月のCPIが更に高くなり、3.5%以上の水準を維持することを意味していた可能性がある。

(6)建設銀行 趙慶明高級研究員
 利上げは預金を増やし、企業・個人の借入需要を引き下げるので、マネー需要を低下させ、インフレ期待の抑制に資するものである。これまで中央銀行が利上げを急がなかったのは、主として物価が3%以内という年度抑制目標を基本的に実現できるとされていたためであるが、最近新たなインフレ要因が野菜価格・穀物価格・主要商品等に集中しており、物価上昇に更に多くの圧力がかかっていた。中央銀行の利上げは、インフレに対する心配に多くを発するものである。

(11,621字)

[1]これについて、国務院の馬凱秘書長は、『求是』に長大な論文を発表している(新華網2010年10月17日)。
[2]国家行政学院社会・文化教育研究部の?維斌主任は、「『社会体制化改革の推進加速』は、新たな表現である」と指摘し、「今後社会建設、社会管理、社会体制改革等の内容に注意しなければならない」としている(人民網北京電2010年10月18日)。
[3]このほか、コミュニケには、国防・軍隊現代化建設の強化、独立自主の平和外交政策、自然災害の総合防御能力の向上等も盛り込まれている。
[4]ピークは2008年9月の8.7%である。
[5]生鮮野菜の上昇は18%である。
[6]ピークは2008年8月の10.1%である。
[7]年間の主たる営業収入が500万元以上の企業
[8]日本への輸出は865.1億ドル、前年同期比24.1%増、日本からの輸入は1279.5億ドル、同38.4%増である。
[9]この額は、金融監督当局の予想を上回るものであった。新規貸出増は7月5328億元、8月5452億元、9月5955億元と徐々に増加しており、1-9月合計の6.3兆元は、年間抑制目標7.5兆元の84%に達しており、流動性過剰圧力の増大が懸念された。
[10]主な収入の内訳は、国内増値税1兆5325.63億元、前年同期比12.1%増、国内消費税4693.8億元、32.2%増、営業税8356.61億元、26.2%増、企業所得税1兆908.1億元、10.5%増、個人所得税3716.49億元、21.5%増、輸入貨物増値税・消費税8036.1億元、44.2%増、関税1565.56億元、47.6%増、車両購入税1264.05億元、54.5%増、証券取引印紙税362.23億元、-4.4%である。輸出に係る増値税・消費税の還付は5312.07億元、前年同期比449.54億元増である。
[11]歳出で伸びが大きいのは、社会保障・就業支出6039.69億元、前年同期比27.1%増、交通・運輸支出3629.89億元、46.7%増、都市農村コミュニティ事務支出3590.38億元、22.8%増、医療衛生支出2635.29億元、29%増、科学技術支出2157.74億元、45.2%増、資源探査電力情報等事務支出1943.79億元、21.8%増、住宅保障支出1314.25億元、24.8%増である。他方、農林水産事務支出は4333.93億元、11.2%増である。
[12]このほか、現地での1年以上の納税証明或いは社会保険料支払証明のない非居住者に対する住宅購入融資の暫時停止、消費性融資の住宅購入への転用禁止も盛り込まれている。

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