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景気テコ入れ策(7)

中国ビジネスレポート マクロ経済
田中 修

田中 修

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2015年9月25日

記事概要

李克強総理は8月26日、9月1日、9月16日に国務院常務会議を開催し、景気テコ入れ策を決定した。本稿はその概要を紹介する。

はじめに
李克強総理は8月26日、9月1日、9月16日に国務院常務会議を開催し、景気テコ入れ策を決定した。本稿はその概要を紹介する。

1.8月26日会議
(1)ファイナンスリースの発展加速
ファイナンスリースの発展加速は、金融改革深化の重要措置であり、資金調達難・資金調達コスト高の緩和に資するものであり、企業の設備投資を牽引し、産業のグレードアップを牽引するものである。

①行政の簡素化・権限の下方委譲を励行する
ファイナンスリース会社が子会社を設立する際、最低資本登録規制を設けない。船舶・農機具・医療器械・飛行機等の設備へのファイナンスリースについて、関連登記・許可あるいは輸出手続きを簡便化する。経営の資質を認定した上で、リース方式で購入した設備と自分で購入した設備を同等に扱う。

②構造調整を際立たせる
ハイエンド・コア装置の輸入、クリーンエネルギー、社会民生等の分野のリース業務の発展を加速し、小型・零細企業、「三農」向けのリース会社の設立を支援する。リースを通じて装置の海外進出と国際生産能力協力の推進を奨励する。

③業務モデルを刷新する
「インターネット+」をうまく用いて、融資とリースを結びつけ、リース物件と中古設備の流通市場を確立し、リースバック業務を発展させる。

④政策支援を増やす
各地方を奨励し、奨励・リスク補償等の方式を通じて、ファイナンスリースが実体経済に更に好くサービスするよう指導する。同時に、関係部門は協調して手配し、リスク管理を強化する。

(2)輸出関連手数料徴収の整理・規範化
費用を整理し負担を減じることは、企業のために負担を取り除き、動力を増すことになり、対外貿易の伸びの促進に資するものである。
①中央が管理する輸出の一部手数料を引き下げ、地方が管理する経営サービスの手数料徴収基準を新たに審査・決定し、原則として引き下げるだけとし引き上げない。
税関・検査検疫の重複、手数料の重複徴収を、併せて取り消す。
②内外港湾の手数料計算規定を統一し、定期的なコスト監督審査と公開の制度を確立し、港湾・埠頭の手数料徴収を規範化する。
③輸出入に係るサービスの強制・指定と手数料徴収行為を禁止し、競争的なサービス参入と手数料徴収の市場化を推進する。独占的地位あるいは権力を借りて、ほしいままに手数料を徴収している項目を調査・処分する。

2.9月1日会議
(1)中小企業発展基金の設立
投融資体制を改革・刷新し、方向を定めたコントロールを強化することにより、積極財政政策の力をより精確に発揮させ、中小企業の資金調達難・資金調達コスト高を緩和することは、雇用を拡大し、大衆による起業・万人によるイノベーションを推進し、発展の新たな動力エネルギーを増強することにとって、重要な意義を有する。

中央財政は、資金の整理・合理化を通じて150億元を出資し、メカニズムを刷新し、レバレッジ作用と乗数効果を発揮させ、民営・国有企業、金融機関、地方政府等を勧誘し共同で参加させて、総規模600億元の国家中小企業発展基金を設立し、親基金・直接投資基金等の設立を通じ、市場化の方法を用いて、シーズ期・イノベーション初期の成長型中小企業の発展を重点的に支援する。

基金は原則として有限パートナーシップ制を採用し、その資金募集・設立・管理・収益分配・満期退出等は、市場化の原則に基づいてオペレーションが行われる。
社会(民間)の出資者に優先的に配当を分け、国家出資の収益を適切に還元する等の措置を通じて、より多く社会(民間)資本を吸収し、中小企業の「起業・イノベーション」の活力を奮い立たせる。

(2)固定資産投資プロジェクトの自己資本比率制度の調整・整備
投資構造の最適化をめぐり、固定資産投資プロジェクトの自己資本比率制度を調整・整備することは、投資のハードルを合理的に引き下げ、投資能力を高め、有効な投資を増やし、公共財・サービス及びその他発展の不足を早急に補うことを可能にし、改革を通じて構造調整・民生改善を促進することになる。

国の経済と民生に関わる港湾・沿海・河川水運・飛行場等の分野の固定資産投資プロジェクトの最低自己資本比率要求を30%から25%に引き下げ、鉄道・道路・都市軌道交通プロジェクトを25%から20%に引き下げる。

農産品の加工・転化を推進するため、トウモロコシ高度加工プロジェクトを30%から20%に引き下げる。

都市地下共同溝と急を要する駐車場プロジェクト、及び国務院の批准を経て情況が特別な国家重大プロジェクトについては、自己資本比率を規定よりさらに適切に引き下げてよい。

同時に、鉄鋼・セメント・電解アルミ・コークス・多結晶シリコン等の生産能力過剰業種に対しては、現行の30%-40%というかなり高い自己資本比率要求を厳格に執行する。

金融機関は、貸出を提供する際に、独立して貸出審査を行い、自主的に政策決定することを堅持し、リスク防止を確実に強化しなければならない。

支援するものと抑制するものとを区別するという政策誘導を通じて、より合
理的な投資構造の形成を促進し、発展の持続力を増強する。

3.9月16日会議

(1)第三者評価
国務院の委託を受けて、全国工商聯、中国国際経済交流センター及び関係大学・研究機関等は、行政の簡素化・権限の下方委譲と開放・管理の結合、小型・零細企業への支援、実体経済への金融サービス、地域の協同発展等の政策の実施情況について、第三者評価を行った。

評価の結果は、これらの改革・発展措置が、経済成長の推進・構造最適化の促進・企業活力の奮い立たせ等について、正に積極的な効果を発揮していることを示しているが、同時に政策実施において存在する問題をも示している。これについては、

①抹消と根本の問題を同時に解決しなければならない
行政の簡素化・権限の下方委譲と開放・管理の結合を深く推進し、権限開放の実質性を高め、監督管理の有効性を増強し、人民に便宜を図るサービスの主動性を際立たせ、違法な仲介と不合理な手数料徴収を排除し、無責任・不作為等に対しては大いに責任を追及し是正させる。

②小型・零細企業への税制優遇と手数料整理政策を実施する
企業への貸出・保証等への財政支援を増やし、中小金融機関を発展させ、資金調達コストを引き下げ、小型・零細企業の資金調達の難題を緩和する。
③統一的な計画を強化する
投融資・貿易の簡便化等の改革によって地域の協同発展と産業の移転・引継ぎを推進し、新たな成長スポットを作り上げる。

(2)イノベーションのプラットホーム
大衆による起業・万人によるイノベーションを推進するには、支えとなるプラットホームを作る必要がある。

「インターネット+」を利用し、大衆によるイノベーション・大衆による請負・大衆による支援・大衆による資金調達等の新たなモデルを積極的に発展させ、生産・需要のリンク、伝統産業と新興産業の融合を促進し、資源を有効に凝集して経済成長を共に享受することを推進し、「中国製造2025」の推進を助け、イノベーション駆動による発展の新たな構造を形成しなければならない。

①衆知によりイノベーションを促す
大衆によるイノベーションの空間・ネットワーク、大衆によるイノベーションのプラットホームを大いに発展させ、オープンで共有できるサービスを提供し、各種のイノベーション資源を凝集し、より多くの人を勧誘してイノベーション・創造に参加させ、雇用の新たな空間を開拓する。

②大衆が請け負うことにより変革を促す
国有企業改革の深化を「起業・イノベーション」の推進と結びつけ、大衆による請負等のモデルを用いることを奨励して生産方式の変革を促進し、従業者の知恵と社会の創意工夫を凝集し、設計・研究開発、生産・製造・運営の保護を展開し、新製品・新技術開発の尽きることのない動力を形成する。

③大衆による支援による起業を促す
政府・公益機関の支援、企業の支援、個人の相互扶助等多様な方式を通じて、小型・零細企業と起業者の成長を共に助ける。

④大衆による資金調達を促す
実物・株式による大衆からの調達・インターネットによる貸借を発展させ、金融システムが起業・イノベーションをサービスする新たなルート・新たな機能を有効に開拓する。

⑤開放の中で起業・イノベーションを促す
企業と外資がイノベーション協力を展開し、グローバル資源・人材・管理経験を利用してイノベーション能力を高め、発展の空間を開拓することを奨励する。
財政・税制・金融等の政策支援を増やし、市場参入を緩和し、信用監督管理を刷新し、創意工夫・研究開発の成果等の知的財産権の保護を強化しなければならない。発展動力の転換を推進する。

(3)固定資産の加速度償却の優遇範囲の拡大
有効な投資を牽引し、産業のグレードアップを促進し、「中国インテリジェント製造」の発展を加速するため、元々のバイオ薬品・測量器具計器製造等6つの業種の基礎の上に、固定資産加速度償却の優遇範囲を拡大し、軽工業・紡績・機械・自動車の4分野重点業種の企業が今年1月1日から新たに購入した固定資産について、償却年限の短縮あるいは加速度償却の方法を認める。

中小・零細企業が新たに購入した単位価値が100万元を超えない研究開発・生産に共用する測量器具・設備について、当期の所得控除に一度に算入することを認める。100万元超のものについては、償却年限の短縮あるいは加速度償却の方法を認める。

上述の政策を実行すれば、今年約50億元の減税が見込まれる。

(9月17日記 9,709字)

[1]直近のピークは2011年7月の6.5%である。
[2]国家統計局によれば、2011年のウエイト付け改定で、居住価格のウエイトは20%前後になったとしている。
[3]コア消費者物価は2013年から公表が開始された。
[4]直近のピークは2011年7月の7.5%である。
[5]1月は0.46%増、2月は0.43%増、3月は0.28%増、4月は0.59%増、5月は0.50%増、6月は0.62%増、7月は0.33%増である。
[6]1月は0.61%増、2月は1.10%増、3月は0.76%増、4月は0.76%増、5月は0.87増、6月は0.99%増、7月は0.79%増である。
[7]1月は0.88%増、2月は0.80%増、3月は0.90%増、4月は0.75%増、5月は0.84%増、6月は0.81%増、7月は0.75%増である。
[8]2011年から計画総投資額のベースは、50万元以上のプロジェクトから500万元以上のプロジェクトに引き上げられた。
[9]この統計は2012年から公表が開始された。
[10]前月比では、輸出1.0%増、輸入-10.0%である。8月の季節調整後前年同期比は、輸出-4.1%、輸入-13.5%、前月比は輸出5.7%増、輸入-2.5%である。
[11]輸出は878.1億ドル、-10.4%、輸入は938.6億ドル、-11.5%である。8月の輸出は110.0億ドル、-5.9%(7月は-13.0%)、輸入は114.6億ドル、-14.2%(7月は-13.6%)である。
[12]一定期間内に実体経済(非金融企業と世帯)が金融システムから得た人民元貸出であり、銀行からノンバンクへの資金移し替えは含まない。
[13]2015年7月1日から、地方教育付加等11の政府基金が一般公共予算に組み入れられた。この影響を控除すると同じ収入ベース比では、3.5%増である。
[14]主な収入の内訳は、国内増値税2157億元、前年同期比-4.7%、消費税887億元、20.1%増、営業税1228億元、21.1%増(うち不動産営業税28.1%増)、企業所得税616億元、-15.4%(うち不動産企業所得税-14.2%)、個人所得税666億元、21.8%増、輸入貨物増値税・消費税958億元、-16%、関税194億元、-15.5%である。輸出に係る増値税・消費税の還付は945億元であり、10.4%増である。証券取引印紙税は265億元、340%増である。地方税では、契約税327億元、前年同期比9.1%増、土地増値税250億元、3.8%増、耕地占用税77億元、-12.1%、都市土地使用税79億元、20.9%増であった。
[15]政府基金の影響を控除すると3.6%増である。中央の税外収入は950億元、同49.4%増であるが、これは関係機関が利潤を集中上納したためである。
[16]政府基金の影響を控除すると5.2%増である。
[17]政府基金の要因を控除すると5.4%増である。
[18]政府基金の要因を控除すると5%増である。
[19]政府基金の要因を控除すると24.2%増である。
[20]政府基金の要因を控除すると30.2%増である。
[21]政府基金の要因を控除すると23.1%増である。
[22]政府基金の要因を控除すると13.5%増である。
[23]支出で伸びが大きいのは、教育1兆4782億元、前年同期比15.8%増、医療衛生・計画出産7335億元、同19.5%増、社会保障・雇用1兆2934億元、21.7%増、都市・農村コミュニティ9492億元、18.6%増、農林水産9033億元、16.7%増、省エネ・環境保護2165億元、22.7%増、交通運輸7604億元、21.8%増である。
[24]政府基金の要因を控除すると17.9%増である。
[25]政府基金の要因を控除すると12.7%増である。
[26]政府基金の要因を控除すると-32.8%である。

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