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2007年第1四半期の経済動向

中国ビジネスレポート マクロ経済
田中 修

田中 修

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2007年5月9日

記事概要

 各機関から第1四半期(1-3月)の統計が公表された。数値からみると、経済の過熱傾向が強まっており、政府は今後経済の引締めを強化することになろう。以下、主な統計数値と人民銀行・国務院常務会議の動向を紹介する。

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はじめに

 各機関から第1四半期(1-3月)の統計が公表された。数値からみると、経済の過熱傾向が強まっており、政府は今後経済の引締めを強化することになろう。以下、主な統計数値と人民銀行・国務院常務会議の動向を紹介する。

 

1.主要統計(2007年4月19日国家統計局発表)

(1)GDP

実質GDP成長率は11.1%であり、2003年以降2桁成長が続いている。

(2)投資

全社会固定資産投資は前年同期比23.7%増であるが、都市部は同25.3%増(3月は同26.8%増)とまだかなり高い水準である。

(3)消費

社会商品小売総額は前年同期比14.9%増であり、特に自動車販売は同38.5%増と好調である。

(4)都市可処分所得と農民現金収入

金額で3倍以上の格差、伸び率でも都市が前年同期比実質16.6%増、農村が同12.1%増と、都市住民の方が4.5ポイント高い。

(5)貿易黒字

貿易黒字は464億ドル(前年同期比で99%増)であり、人民元レートの緩やかな引上げにもかかわらず、依然急速に増加している。輸出が同27.8%増、輸入が同18.2%増と、輸出の伸びが輸入を大きく上回っている。また、直接投資実行額は、159億ドル(同11.6%増)であり、この結果外貨準備が1兆2020億ドル(年末から1357億ドル増)と大幅に増加している。

(6)消費者物価

消費者物価上昇率は2.7%だが、3月は3.3%(政府の抑制目標は3%以内)と警戒水準にある[1]

(7)先行き

 スポークスマンの李暁超は、「もし経済成長速度が11.1%の基礎の上に更に加速を続ければ、経済構造の更なる不合理を引き起こす可能性があり、特に重工業の伸びが更に速くなれば、貿易黒字の継続的拡大が経済成長を牽引する可能性がある。こうなれば、我々は経済のかなり速い(成長)から過熱に転換するのを防止しなければならない。経済がやや速い成長から過熱に転換する可能性があるプロセスにおいて、関連マクロ・コントロール部門は現在将来の経済運営の変化に密接に注意を払っており、この担当部門は情勢の変化に基づき適切なマクロ・コントロール政策を打ち出すだろう。しかし、指摘しておきたいことは、どんな変化があろうとも、我々はなお引き続きマクロ・コントロールの安定性・継続性を保持して、国民経済の平穏で速い発展を確保しなければならない」としている。

 

2.不動産・住宅価格(国家発展・改革委員会発表)

(1)不動産

①1-3月の不動産開発投資の伸びは加速した。

不動産開発投資完成額は3543.78億元、前年同期比26.9%の伸びであり、伸び率は前年同期より6.7ポイント高くなった。

②不動産開発資金は充足しており、国内の貸出と外資の利用の伸びが大きい。

 不動産開発資金は7125.49億元に達し、前年同期比26.3%増、投資完成額の2倍にもなる。不動産関係の銀行貸出は1634.22億元(同18.4%増)、銀行の個人住宅ローンは745.45億元(同73.2%増)、ノンバンクの貸出は126.37億元(同66.9%増)であった。

 不動産業の外資利用は131.27億元(同154.4%増)であり、うち外資による直接投資は102.63億元(同192.5%増)であった。

(2)住宅価格

①2007年3月の全国70大中都市の家屋販売価格は5.9%の上昇であり、1-3月期の新築分譲住宅価格の伸びは6.0%を上下している。

②一部の中心都市の住宅価格の上昇率がかなり速い。

 深圳が前年同期比10.7%、長沙が同10.1%、北京が同9.9%、広州が同8.6%、成都が同8.4%、福州が同8.0%、アモイが同7.7%の上昇であった。

③上海の住宅価格が再び上昇

 ここ1年近く下降傾向にあった上海の住宅価格が上昇に転じ、2月に0.1%、3月に0.4%上昇している。新築住宅の契約は2月の2倍となり、中古市場も大部分で契約が2月より50%超増えており、復調が明らかになっている。

(3)不動産市場の問題

 国家発展・改革委は、次の5点を指摘している。

①一部の中心都市の住宅価格が依然かなり高く、上昇がかなり速い。

②1-3月期において、90㎡以下の普通分譲住宅投資は、商品住宅投資のわずか16.1%である。現在市場で販売されているのは、数年前に開発された大型住宅であり、一部の都市の平均は120㎡以上となっており、住宅供給の構造調整任務は十分困難になっている。

③住宅保障制度がまだ不完全である。現行の低家賃住宅制度のカバー率はかなり低く、保障率はかなり低い。中西部地域の保障は資金不足となっている。

④市場供給システムがまだ不完全である。中低価格帯の中小普通分譲住宅の、市場供給における主体的地位は、まだ確立していない。

⑤不動産市場のコントロール体系はまだ不完全であり、秩序の規範化が必要である。

 

3.税収(国家税務総局発表)

 全国税収は1兆1284億元に達し、前年同期比25.5%、2296億元増と近年最高の伸びを示した。不動産投資の伸びを反映し、これに関連する建築・内装業と不動産業の営業税は同35.3%増であった。また、株式市場の活況を反映し、証券取引印紙税は同51.5%増、自動車販売の好調を反映し、車両購入税は同28%増となった。

 

4.金融(人民銀行発表)

(1)概況

 2007年3月末のM2は、前年同期比17.27%増(季節要因を除くと18.7%、年間抑制目標は16%)、全金融機関の人民元貸出残高は同16.25%増(季節要因を除くと19.2%)、貸出増加額は1.42兆元(同1678億元増、2006年全年では3.18兆元)となり、外貨準備高は1兆2020億元(同37.36%増、年初より1357億元増)となった。

(2)周小川人民銀行行長発言(2007年4月12日)

 湖南省への支店視察で学術講演を行い、次のように述べている(第一財経日報2007年4月13日)。

 「中央銀行の金融政策コントロールにおいて、資産価格に注目している。ただし、『注目』の意味は、資産価格の変化に注意を払っているということに過ぎず、コントロールの根拠にするということではない。資産市場価格を主として金融政策のコントロールを行うことは不可能である。このことは基本的に、国際上主流の中央銀行で比較的一致したトーンである。

 インフレと資産バブルは、時には一致するが時には一致しない。インフレ率が低いときに資産価格が逆に比較的高いことがあり得るし、一緒に上昇することもあり得る。一緒に上昇しているときは、中央銀行の政策は流動性を収縮させ、物価と資産いずれをも下降に向かわせることができる。

 しかし、多くの場合両者の傾向は決して一致せず、総物価水準が低いときに資産市場は上昇している可能性がある。例えば、中国のインフレ水準は2004年から2006年10月までずっと下降したが、これは資本市場の傾向と異なる。両者の傾向が一致しない場合には、金融政策は取捨選択をしなければならず、それは主としてインフレへの対応である。

 世界の多くの中央銀行は、単一目標制を採用しており、即ちインフレの退治である。中国の中央銀行は、多くの目標を採用しており、経済発展を促進し、就業を拡大し、国際収支を均衡させなければならないが、主要な目的はやはり低インフレの維持である。

 金融政策と資産バブルの関係の問題について、グリーンスパンが重視したのは最もクリアだった。グリースパンはFRB議長の職にあったとき、インフレを退治し、その後1987年の株式市場のブラック・マンデー、2000年のナスダックにおけるハイテク株バブルの破裂、9・11事件を経験した。グリーンスパンはこの問題に明確な考え方をもっていた。彼は、金融政策のコントロールにおいて、最も主要なものはやはりインフレへの対応であると考えていた。なぜなら、インフレは経済の更に広い層の面を代表しており、マクロ経済の全体総量を代表するからである。たとえば、ナスダックにおけるハイテク株バブルの破裂前に、グリーンスパンは『FRBは(株バブルを)管理できない。管理するということは、(マネーサプライの)収縮政策が必要になるということである。いかなる人も簡便な手段で株を買うことができるのであり、少々収縮しても彼らに影響は及ばない。とすれば、どれくらい収縮すれば効果があるのか?もし収縮が大きく、全体経済に影響を与えるほどになれば、ようやく株式市場のバブルに影響を与えることができるとすれば、このような話は明らかに中央銀行の主要なコントロールの目標と一致しないことになる。(株式市場を)直接にコントロールすることはできない。なぜなら、それは主要な目標との衝突が発生する可能性があるからである』と語った。そして、FRBが株式市場のバブルに対してできることを問われたとき、彼の回答は、『このバブルがついに破裂すれば、中央銀行は経済調整の痛みをやわらげなければならない』というものであった。

 我々は、経済の良好で速い発展を維持し、日本のように盲目的に楽観していたために立ち至った(バブル)問題の出現を防止しなければならない[2]。しかし、同時にこのコントロールが多方面の問題に関わっていることを見て取らねばならない。

 時には、資産市場は自己のルールをもっている。中国の不動産市場は上昇しているが、(バブル当時の)日本と比較すれば、我々の方が土地の需給が逼迫している。土地も1つの資産であり、自己の特定性を有している。株式市場には過去の歴史的負担があり、流通・非流通株の分離問題が解決する前と後では異なる。」

 また、共同通信北京2007年4月18日は、このほかにも周行長はこの講演で、次の点を指摘したとしている。

①人々は、中国の急速な経済成長が問題を生じるのではないか、と強く懸念している。中国の成長率は4年連続で10%を超えており、今年1-3月期は更に高い成長率になった公算が大きい。人々の懸念はもっともだ。国際的にみて、これほど長期に健全で急激な成長を維持した国はなかった。

②流動性を管理するうえで、為替スワップが主要な手段となっている。

③貿易黒字の調整で、為替相場の有用性を過大評価すべきでない。

④米企業は約2兆ドルの資金をもち、それによってニューブリッジ・キャピタルやカーライル・グループなどのヘッジファンドやプライベート・エクイティ(PE)ファンドが生まれている。その資金の一部がホットマネーとして中国に流入している。

 

5.国務院常務会議(2007年4月18日)

 温家宝総理は国務院常務会議を開催し、第1四半期経済の運営状況を分析し、当面の経済政策を手配した(新華社北京電2007年4月19日)。

 会議は当面の経済運営の際立った矛盾・問題として、①食糧増産と農民の増収の困難が増していること、②省エネ・汚染物質排出減の任務が多く荷が重い、③貸出の伸びが速すぎる、④固定資産投資に反動増の圧力が存在する、⑤貿易黒字が引き続き増加している、の5点を挙げ、「経済運営中に出現した新状況・新問題に基づき、タイムリーに経済・法律手段を主とした総合的措置を採用し、マクロ・コントロールを強化し、経済構造調整と成長方式の転換を加速し、経済がかなり速い(成長)から過熱に転ずるのを防止し、大きな上下変動の出現を回避し、国民経済の良好で速い発展の実現に努力しなければならない」とし、以下の重点施策を掲げている。

(1)農業生産・農民増収の促進に力を入れる。

 農業・農村の支援・優遇政策を強化し、食糧生産の直接補助、優良品種・農機具購入・農業生産財への総合補助等の財政資金を、できるだけ早く実際に各農家に行き渡らせる。化学肥料価格を安定させる。食糧市場のコントロールを強化し、最低購入価格政策を整備し、今年の価格は去年を下回らないようにする。

(2)省エネ・汚染物質排出減の施策を適切に強化する。

 エネルギー多消費の産品の速すぎる伸びの抑制を、現在から今年一杯のマクロ・コントロールの重点とする。劣後した生産能力の淘汰を加速する。エネルギー多消費産品の輸出を制限する各種政策をできるだけ速やかに実施する。多くのルートにより省エネ・汚染物質排出減への投入を強化する。科学的・包括的・統一された省エネ・汚染物質排出減の指標体系・モニターシステム・審査体系をしっかりと制定・整備し、問責制を厳格に実行する。

(3)固定資産投資のコントロールを引き続き強化する。

 プロジェクト新規着工の市場参入許可基準を厳しくし、省エネ・環境保全の面で更に厳格な条件を制定・執行し、基準に符合しないものは一律に着工させない。禁止及び制限が課されたプロジェクト用地の規定を真剣に執行し、用地節約・集約の基準をしっかりと整備し厳格に執行する。法規違反の土地使用行為を更に整理・調査処分する。都市の建設規模を規制し、各種開発区を深く整理・規範化する。社会投資の方向を正確に誘導し、投資構造を改善する。

(4)流動性過剰の矛盾をしっかりと緩和する。

 金融機関への窓口指導・流動性管理を強化し、貸出の速すぎる伸びを抑制する。資本とりわけ短期資本の国境を越えた流動への監督管理を強化する。外貨管理を改善し、対外投資のルートを拡張する。資本市場の健全な発展を促進する。金融のコントロール・監督管理を強化し、各種金融リスクを防止する。

(5)貿易黒字の速すぎる伸びを有効に抑制する。

 不合理な輸出優遇政策を整理する。加工貿易の監督管理を強化する。先進技術設備・重要部品等の産品輸入を積極的に拡大する。

(6)価格総水準の基本的安定の維持に努める。

 価格改革の力の入れ具合・テンポを合理的に把握し、価格上昇と価格調整措置の提起が低所得の大衆の生活に与える影響を十分に考慮する。市場価格のモニターを強化し、市場供給を保証する。引き続き価格秩序を整頓し、教育・医薬価格・料金徴収を規範化する。不動産市場の監督管理を強化し、住宅価格の速すぎる上昇を抑制する。

(7)民生に関わる際立った問題を真剣に解決する。

 就業・社会保障・教育・衛生・住宅等直接民生に関係する問題について、投入を強化し、改革の歩みを加速し、政策の実施を強化する。農産品・食品・薬品の安全施策を強化する。安全生産を強化する。公共安全の監督検査を強化する。社会の調和・安定の擁護に努める。

 

まとめ

 国家統計局も国務院常務会議も現在の経済状態を過熱とは認めていない。しかし、国家発展・改革委員会マクロ経済研究院陳東琪副院長は既に3月28日の時点で、「昨年マクロ・コントロール措置が頻繁に打ち出されたが、今年既に公表された経済運営指標を見ると、今回の経済高成長はなお減速しておらず、経済過熱が既に出現しており、繁栄下のリスクが正に凝集しつつある。今年1-2月では、10の数値のうち固定資産投資以外の9項目が全て前年同期より伸びが高くなっている。1-3月期のGDPが前年同期及び直前4期よりも高ければ、経済は既に過熱していると判断してよい」と主張していた(第一財経日報2007年3月29日)。

 過去の四半期別成長率は、2006年1-3月期10.4%、4-6月期11.5%、7-9月期10.6%、10-12月期10.4%であったから、今回の11.1%は2006年4-6月期に匹敵する。また主要な指標の中で、伸び率が前年同期の伸び率を下回っているのは全社会固定資産投資(-4.0%、ただし不動産開発投資は6.7%増)、輸入(-6.6%)、M2(-1.49%、ただし2006年末からは0.33%増)であるのに対し、社会消費品小売総額は2.1%増、消費者物価指数は1.5%増、輸出は1.2%増、金融機関貸出は1.52%増となっている。2006年1-3月は投資再過熱が発生した時期であり、総合的に見れば中国は既に過熱局面に入ったとみてよいだろう。

 現在市場は人民銀行の動向に注目しているが、周小川行長は4月12日時点では、資産価格によって金融政策を判断することに慎重な態度を示している。この講演で日本のバブル経験が詳細に語られたとされるように、おそらく日本銀行の三重野総裁が当初利上げでバブル退治の英雄ともてはやされながら、いったん景気が悪化するとたちまち退任を求める声が高まったことも十分に学習しているのだろう。とはいえ、2007年に入って人民銀行は毎月引締め策を打ち出しており、今後引締め強化は必至と思われる。(2007年4月記・6,387字)


 


[1]  スポークスマンの李暁超は、2006年10-12月の食糧価格上昇の後の期間への影響を除去すると1-3月は1.2%の上昇に過ぎないとしつつも、物価上昇圧力が継続することも認めている。
[2]  周行長は、講演の中で日本のバブルの故事を詳細に回顧している。

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