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外資政策の転換(2)外資M&A新規制と独占禁止法立法等の動向

中国ビジネスレポート 政治・政策
筧 武雄

筧 武雄

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2007年6月22日

記事概要

 中国政府は国有企業の立て直し、海外企業からの新しい経営システム導入を目的として、外資による国内企業M&Aを1990年代から推進している。

今秋開催される党大会で2002~2012年の総書記の任期半ばを迎える胡錦涛政権は、就任当初のSARS騒動や、その後の全国各地反日デモ運動などの課題を乗り越え、任期前半は高度成長率を維持し、貿易高を急激に伸ばし、世界最大の外貨保有国になるなど、すぐれた経済成長の実績をあげた。

それがここへ来て、鄧小平時代から続いたこれまでの外資導入をテコとした高度経済成長路線から、安定成長にもとづく「調和社会」建設へと政策転換に向けた調整を多方面で進め始めている。

中国ビジネスの現場でも、ここ数年における外資優遇政策には一連の新しい傾向が見え始めている。ここ数年の外資に対する「内外格差撤廃」の名の下に廃止されつつある優遇政策、そして「国内市場保護」、「国内産業育成」の名の下に強化されつつある外資規制政策の実際の流れをサーベイしてみよう。

 

(1)外資M&Aに対する新規制

 

 中国政府は国有企業の立て直し、海外企業からの新しい経営システム導入を目的として、外資による国内企業M&Aを1990年代から推進している。古くは瀋陽や大連など東北地方における老朽化した旧国営企業の外資売却と立て直し(いわゆる「接木方式」)、あるいは朱熔基前総理の推進した国営企業改革においても外資への国営企業売却が推進された。最近日本でブームになっている中国株取引も、国営企業株式の外国投資家への放出という面から見れば、同じ国策の一部ともいえるだろう。その外資M&A基本法である「外国投資家の国内企業買収に関する規定」2003年版に代わる新規定が2006年9月に施行された。

 新規定では従来どおり、外資による中国企業買収とは「企業ステイタスを『内資企業』から『外商投資企業』へと法律上、正式に転換させること」と定義され、その業種分野などの条件は中国政府の定める「外商投資産業指導目録」に拘束されることも再確認されている(第4条)。

今回の改正で注目すべき点は、国内企業買収が「政府の指定する重点企業であったり、国の経済安全に影響を及ぼす懸念のある場合は商務部に申告しなければならず、商務部は関連部門とともに取引の中止など有効な措置を講じてその影響を取り除くことができる」(第12条)と規定された点であろう。すなわち、M&Aを通じて外資が中国経済の重点企業あるいは著名な老舗ブランドを買収し、中国市場シェアを牛耳ってしまう危険を未然に阻止せんとする「未然防衛措置」である。

 

(2)審議が進む独占禁止法

 

 中国には韓国のような独占禁止法がまだに存在しない。すでに04年頃から草案作成については何度も繰り返し報道されてきたが、06年6月に北京で開催された国務院常務会議で独占禁止法の草案が正式に可決され、立法機関とされる全人大常務委員会に提出された。今年3月に開催された全人大でもこの草案が継続議論されている。

 独占禁止法の制定は、中国政府が取り組んでいる「社会主義市場経済」システムの導入と直接関係する、極めて重要な新市場ルール作りであるが、それは同時に、外資が中国市場に進出して既存の中国国内企業の市場シェアを覆し、中国市場の利益を独占してしまう危険に備えようとする一面も併せ持っている。その背景には、1990年代以降、外資の中国投資形態の主流が100%独資形態となり、外資企業に中国政府の意図が通じにくくなり、外資による独占経営を生み出しやすい土壌となっている現状も挙げられるだろう。

その流れの中で、06年の会社法(公司法)改正においては、昨年以降中国に新しく設立された外商投資企業のうち、外資系独資企業については、株主と従業員(労働組合)から選任される監事(監査役)による監事会(監査役会)の設置が法的に義務付けられている。

 また、金融分野においても、WTO加盟時公約に沿って06年末に個人業務を含むすべての銀行業務が外資に開放されたものの、業務開放は現地法人形態の金融機関に限定され、中国内支店には認められなかった。その趣旨は、外国銀行本社による中国支店に対する直接経営支配を排除し、銀行現地法人に対する直接課税を可能とすることである。(2007年6月記 1,697字)

 

(次回に続く)

 

 

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