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ログイン2008年9月4日
ここのところ、指導者の沿海部視察が相次いでいる。その内容を紹介するとともに、視察の意図について考察したい。
はじめに
ここのところ、指導者の沿海部視察が相次いでいる。その内容を紹介するとともに、視察の意図について考察したい。
1.温家宝総理
7月4-6日、江蘇省・上海市を視察した。4-5日は無錫・蘇州のハイテク・紡績企業、農村を調査し、5日午後には上海に入り埠頭・大橋の建設状況を視察した後、聯合利華・旅行サービスセンター・上海光源実験室を見学した(新華網北京電2008年7月6日)[1]。
視察の中で、温家宝総理は次のように言及している。
(1)経済の状況
今年以来、我々は国際経済情勢の不利な要因と、深刻な自然災害がもたらした困難を克服してきた。国民経済は、引き続きマクロ・コントロールの予期した方向に発展しており、総体としての情勢は良好である。我々は、現在の経済社会発展に有利な条件・積極的要因を十分に見て取り、各種活動への信念を確固たるものにしなければならない。また、直面する困難を十分に推し量り重視して、各種の複雑な局面の試練に積極的に対応し、経済の良好で速い発展を推進しなければならない。
(2)当面の重点
①経済発展方式を適切に転換し、構造調整を加速し、マクロ・コントロールの重点・テンポ・程度をしっかり把握して、経済の長期にわたる平穏でかなり速い発展を維持し、大きな起伏の出現を回避しなければならない。
②インフレ抑制をマクロ・コントロールにおいて際立って位置づけ、多方面から施策を行い、末端の問題と根本問題を共に解決し、物価の上昇幅を経済社会の発展の受容可能な範囲内に抑制するよう努めなければならない。
③「三農」施策を適切に強化し、農業生産と農民の増収を促進しなければならない。
主食の穀物供給に対する省長の責任制を真剣に実施し、最も厳格な耕地保護制度を堅持し、食糧安全を確保する。
④あらゆる手段を尽くして就業を増加させ、経済社会の協調的な発展を促進しなければならない。
困難な大衆の就業、高等教育機関の卒業生の就業活動を重点的にしっかり行い、就業ゼロ家庭の就職難の解決を助ける。
⑤対外貿易の発展方式を速やかに転換し、輸出入の構造の改善に力を入れ、輸出製品の市場競争力を高め、対外開放水準を引き上げなければならない。
(2)江蘇省について
江蘇省は経済大省であり、全国において重要な地位を占めている。新たな情勢下で発展を実現するには、江蘇省は次の2点をしっかり統一的に企画しなければならない。
①地域の調和ある発展を統一的に企画する
蘇北地域の後発の優位性を十分に発揮し、特に蘇北沿海地域の総合開発を推進して、新たなタイプの工業化と都市化が相互に影響し合いながら前進することを実現しなければならない。
蘇南地域は集約的発展の推進に力を入れ、自主的にイノベーションを行い、国際競争力を更に高めなければならない。同時に産業のグレードを引き上げ、更に高層次において南北の共同発展を実現する。
②都市・農村の発展を統一的に企画する
現代農業・新農村建設と都市化との協調的な発展を推進しなければならない。都市と農村の産業立地・インフラ建設・社会事業の発展を統一的に企画し、引き続き農村労働力の移転を促進する。県域経済を大いに発展させ、都市の農村に対する照射・牽引作用を増強し、新しいタイプの工農関係、都市・農村関係を早急に構築する。
江蘇省が、構造調整と発展方式の転換を通じて、高い出発点からイノベーションの優位性を争い、新たな飛躍を実現し、経済社会の発展水準を全面的に引き上げることを希望する。
(3)上海市について
上海の発展は、長江デルタさらには全国におけるリーダー・模範の役割を有する。上海は、更に科学的発展観を貫徹し、総合的な優位性を十分に発揮し、国際金融センター・国際運航センターの建設を重点とし、サービス業を大いに発展させなければならない。
金融の発展を更に際立たせて戦略的に位置づけ、政策支援の体系を整備し、金融業の発展支援を強化し、金融サービスの機能を向上させ、人材を育成・吸収し、金融発展の良好な環境を全力で作り上げ、上海国際金融センターの建設を推進しなければならない。
北東アジアの国際中枢港湾を建設するという目標については、現代的な運航サービスのシステムを大いに発展させ、運航サービス・資源集中センターの建設に力を入れ、上海国際運航センターの建設を加速しなければならない。
上海が大胆に模索し、イノベーションに取り組み、施策を実施し、高峰を目指して登り、現代的な国際大都市の建設を加速することを希望する。
2.習近平政治局常務委員
7月4-5日、広東省を視察した[2]。視察先は、工場・農家・埠頭・コミュニティであり、深圳・東莞において科学的発展観の貫徹実施、広東・香港・マカオの協力の一層の推進、党建設の強化・改善等の問題を深く視察した(広州日報2008年7月7日)。
視察の中で、習近平は次のようなコメントを残している。
(1)広東省の発展について
30年来、広東はわが国改革開放の前線陣地として、中国の特色ある社会主義の偉大な歴史プロセスの中において、窓口・実験・先兵の役割を発揮してきた。広東は科学的発展観を指針とし、全省の政治建設・経済建設・社会建設・文化建設を断固として全面的に前に推し進めなければならない。
改革開放以来、広東の経済社会の発展は世の注目をあびる偉大な成果を勝ち取った。広東において、生産力から生産関係に到るまで、経済の基礎から上部構造に到るまで、都市・農村インフラ建設から人々の精神面に到るまで、意義が深遠で重大な変化が発生したことは、社会主義こそが中国を救うことができ、改革開放こそが中国・社会主義・マルクス主義を発展させることができることを雄弁に証明している。
(2)香港・マカオとの協力
広東は、独特な地理的優位性と香港・マカオの経済貿易と連係が緊密であるといった優位性を十分に発揮し、「1国2制度」の方針と香港・マカオ2つの特別行政区基本法に基づき事務を処理することを堅持し、相互尊重・相互利益・互恵関係を堅持し、香港・マカオとの協力を更に強化し、協力水準を引き上げ、広東・香港・マカオの協力の新たな局面を切り開き、香港・マカオの長期にわたる繁栄・安定に新たなより大きい貢献をしなければならない。
重点を際立たせ、先に容易なところを手がけて次に困難な部分に進み、段階的に実施するという原則に基づき、広東・香港・マカオの協力実務に励まなければならない。当面、広東・香港・マカオの協力推進の力点を、サービス業の方面に置かなければならない。
(3)四川大地震への取組み
広東の行動は速い。全省で支援物資・義捐金は56億元余りにのぼり、特別党費の納付額も大きい。また、2つの対口支援地域の任務を受け入れた唯一の省である。このことは、広東が大団結、大協力、一方で困難があれば八方から支援するという精神を十分に発揚していること、広東の各レベルの党組織が地震対策・被害救助で巨大な貢献を行っていることを物語るものである。
(4)党建設[3]
各レベルの党組織は、胡錦涛同志が地震対策・災害救助先進末端党建設・優秀共産党員代表座談会で行った重要講話を深く学習・貫徹し、党の建設を更に強化し、思想解放において科学的発展・協調的発展・調和のとれた発展の理念を牢固に樹立し、科学的発展に影響を与え制約する固定観念・体制的障害を断固として突破し、経済社会が科学的発展の軌道に沿って不断に新たな歩みを進めることを推進しなければならない。
3.王岐山副総理
7月3-5日、山東省煙台・威海2市の一部の輸出企業・商業銀行を視察し、個別に対外貿易と金融情勢座談会を開催した(新華網山東・威海電2008年7月5日)。
視察の中で王は次のように指摘している。
(1)企業の輸出状況・直面する困難について
王は、いくつかの企業の生産コスト・自主的なイノベーション・製品輸出の状況を聴取した後、関係部門は管理・サービスにおいて、あらゆる手段を講じて企業の困難克服を支援するよう要求した。また、ある企業が外貨決済で困難に直面していることを聞くと、すぐに随行している部門関係者に善処を指示している。
さらに、ある企業が輸出製品の付加価値向上に努力している旨を聞くと非常に喜び、「質は企業の根本である。製品の質と安全をしっかり把握してこそ、国際市場競争において勝利を主動的に得ることができるのだ」とし、別の場面では「企業は有名ブランドを創造し、核心的な競争優位性を打ち立てなければならない」と強調している。
(2)金融の安定的・健全な発展
銀行は、市場とサービスの観念を適切に樹立し、金融商品とサービスのイノベーションを不断に推進し、地方経済の発展、企業、都市・農村住民の需要に更に良いサービスを提供しなければならない。
リスクの防止は、金融業の永遠のテーマである。マクロ経済情勢分析と市場リサーチを強化し、出現する可能性のある各種リスクに密接に注意を払い、金融の安全・安定を維持しなければならない。
(3)山東省対外貿易座談会での発言
過去の粗放型対外貿易発展方式は継続し難く、構造・方式・質の上で眼前の困難を解決し、企業の収益・競争力を向上させなければならない。困難なときほど、政府・企業は認識を統一させ、有利な条件と発展の潜在力を見据え、困難に打ち勝つ信念を確固としたものにしなければならない。
(4)山東省金融情勢座談会での発言
現在の内外の不利な要因が増大しているという新たな状況に対して、憂患意識を増強し、引き続き穏健な財政政策と引き締め気味の金融政策を実行し、「区別して対応し、維持するものと抑制するものを区別する」方針をしっかり実施しなければならない。
銀行は、業務を更に深く詳細に行い、リスク防止と経済発展支援の関係、自身の収益向上と社会に果たす責任の関係を正確に処理し、国民経済の良好で速い発展の促進に努めなければならない。
4.李克強副総理
7月6-8日、浙江省温州・杭州等を訪れ、軽工業・紡績・電機・ハイテク企業の経済運営状況を視察し、経済情勢座談会を開催した。視察の重点は、企業発展改革と内外市場環境問題に置かれている(新華網杭州電2008年7月8日)。
視察の中で、李は次のようにコメントしている。
(1)経済情勢について
現在、わが国経済発展は基本面では良好であり、引き続きマクロ・コントロールが予期する方向に発展している。わが国の物質的基礎は豊富であり、内外の市場は広大であり、挽回の余地が大きく、我々には経済の平穏でかなり速い発展を維持する信念と能力があることを見て取らなければならない。
同時に、内外情勢には少なからぬ新たな複雑要因が出現し、世界経済の鈍化と輸入型インフレがわが国にもたらすマイナス影響が徐々に顕在化していることを見て取らねばならず、各種の試練に積極的に対応し、対外開放と国内発展の主動権をしっかり掌握しなければならない。
(2)改革開放について
わが国の経済発展はカギとなる時期にあり、経済と体制の転換を併せ進めることは、改革開放の深化に新たな要求を提起している。現代化建設の道を引き続き前進するに際しては、発展という方法により問題を解決し、改革という措置により矛盾を取り除き、開放という考え方により試練に対応しなければならない。
社会主義市場経済という改革の方向を堅持し、時機を失せず重点分野とカギとなる部分の改革を推進し、企業メカニズムを整備し、市場システムを健全化し、物価の上昇幅を経済社会の発展が受容可能な範囲内に抑制しなければならない。
対外貿易方式の転換を加速し、輸出入構造の改善に力を入れ、引き続き世界の先進的生産要素を導入し、企業が経営を国際的に展開することを奨励し、開放型経済の水準を全面的に引き上げなければならない。
(3)企業について
企業は発展活力の源泉である。現状において、試練をチャンスに変え、圧力を動力に変えて、技術・管理のイノベーションを推進し、自主ブランドを育成し、核心の競争力を増強し、企業を向上・強大化し、不断に新たな優位性を勝ち取らなければならない。
東部沿海地域は引き続き模範・牽引作用を発揮し、発展方式の転換を加速し、発展モデルを創造・革新し、産業構造の改善・グレードアップを推進し、経済全体の質を高め、新たな道へと進み新たな飛躍を実現するよう努めなければならない。
わが国の労働力資源の優位性を引き続き発揮し、労働集約型産業と技術集約型産業の発展を組み合わせ、更に多くの就業機会を創造し、一部の企業が中西部地域に移転することを奨励し、新たな発展の余地を切り開かなければならない。
(4)民生について
我々の発展の最終目的は、人民の生活改善である。人間本位・人民へのサービスを堅持し、強い決意で更に力を入れ、教育・衛生・社会保障・住宅・環境等の重点民生問題をしっかり解決しなければならない。
(5)経済情勢座談会での発言
(最近の国際市場の変化がかなり大きく、一部の企業の生産経営面が少なからぬ新たな問題に直面している旨を聴取し)企業は市場の主体であり、ミクロはマクロの基礎である。情勢の動きをよく観察し、入念に指導し、マクロ・コントロールの重点・テンポ・程度を把握し、マクロ・コントロールの予見性・柔軟性を増強しなければならない。
各レベルの政府はサービス意識を更に強化し、実務を遂行し難題を解決して、企業の発展のために良好な環境を創造しなければならない。
5.陳徳銘商務部長
7月の第1週に、浙江省温州・台州において地方政府・業種協会・輸出企業への大規模な視察を行ない、個別に情勢座談会を開催した(北京晨報2008年7月7日)。
同紙によれば、この視察の直前、台州の企業7社が異常な倒産を行い、経営者が出奔するという事件が発生しており、浙江省の輸出企業が生存困難となっている状況が明らかになっていたのである。
今回の視察において陳商務部長は、次のようにコメントしている。
「今年に入って中国のビジネス運営の情勢は、総体としてはかなり良好な態勢を維持していると思う。しかし、現在国際経済環境の不確定要因が明らかに増大しており、世界経済の成長は鈍化し、石油等エネルギー産品と穀物価格が引き続き上昇しており、世界的なインフレを誘発しており、国内のマクロ・コントロールとビジネスの発展は難度を増している。
製造企業は、不断に外貨を稼ぐとともにその運用に努め、海外投資を展開し、浙江企業が再び全国に対し新たな経験を創造するよう奨励すべきである」
なお、この大規模な視察に対し一部の企業は、政府が何らかの救済策を打ち出す先触れではないかと憶測している。ある企業家は、「紡績を例にとると、2005年以降政府は奨励策を少ししか打ち出していない。しかもマクロ政策が打ち出され、省エネ・汚染物質排出削減・新労働契約法が次々と実施されたため、企業のコストが増加している。2008年に入ると、新たに急激な産業転換が始まると同時にコストの優位性が次第に失われ、多くの製造業が死の縁に追いやられている。政府は輸出税等の政策調整を通じて、輸出企業の圧力を減ずる可能性がある」と期待を寄せている。
6.視察の意図
このような指導部の相次ぐ視察につき、新聞晨報2008年7月14日は、関係者の指摘として「この集中視察は、6月13日の中央・省市・関係部門責任者会議の後における、中央・国務院・各部門の最初の集団的大行動である。しかも、中央の政策決定層がこのようなハイレベルで、集中的に経済分野を視察するというのは、建国以来極めて尋常ならざる動きである」とする。
同紙によれば、一連の視察報道で指導者は「困難」という言葉を16回使用しているが、何が困難かは17日に公表される上半期経済統計で明らかになるであろうとする。ただ、これまで公表された統計からも、困難の中身は①高い石油価格に代表される輸入型インフレの圧力が依然大きい、②中小企業の生存が困難になっている、③輸出企業の利潤が低下している、④貿易黒字が減少している、といったことではないかと想像している。
また、指導者が困難を強調し、マクロ・コントロールの柔軟性を述べたことで、経済界では、マクロ・コントロールが十字路に到達し、引締め気味のコントロール政策が下半期に緩和される可能性があるという憶測が飛び交っている。
しかしこれに対し復旦大学経済学院の孫立堅副院長は、「引き締め気味のマクロ政策は一刀両断に変更することはできない。輸入型インフレ・ホットマネーの流入という状況は未だ緩和されていない。インフレの抑制が第一であり、直ちにコントロールを緩めれば、ベトナムが遭遇した危機に遠からず直面する可能性があることを、政府もはっきり認識している。ただし、政府は財政政策・貸出構造といった構造的調整を行い、一部の企業に税制・融資面で支援を行う可能性はある」と指摘している。
今回の視察につき、筆者は次の点に着目している。
(1)引締め気味の金融政策への言及
6月13日の責任者会議では言及されなかったが、王岐山副総理が視察の際に再度言及している。これは、党中央・政府のコンセンサスの下での発言であり、当面金融政策に基本的な変更がないことを確認したものである。
ただ、区別して対応することを強調しているのは、貸出総量規制を強化した結果、中小企業・私営企業が融資難に陥っていることに配慮し、銀行に善処を促したものと思われる。
(2)輸出企業の困難
今回指導者はハイテク企業以外に、紡績など付加価値の低い輸出企業も視察している。人民元レート切上げの加速と新たな労働契約法の施行等により、経営が深刻化しているのであろう。今後、輸出に対する税還付率の見直しが行われる可能性もある。
(3)対口支援の強調
習近平は、広東省が四川大地震の復興において広東省が2つの対口支援を引き受けたことを高く評価している[4]。広東省党委の汪洋書記は共青団系であり、胡錦涛指導部の方針を率先垂範する立場にあったのだろう。このことから、今回の視察の目的の1つが、四川省等への対口支援を沿海部に徹底させることにあったと想像される。
(4)地域と指導者の組合せ
従来であれば、指導者は自分の政治的影響力の強い地を視察することが多かった。これからすれば、習近平は浙江省・上海市の担当になるはずであるが、彼は勤務経験のない広東省を担当し、浙江省は李克強、上海市は温家宝というように、意図的に地域とのつながりが深くない指導者が割り当てられている。
これは、地域に縁のある指導者を割り当てると、厳しい視察のはずが、中央で栄達した政治家の「お国入り」のようになってしまい、中央の方針の徹底という本来の目的が希薄になってしまうことが懸念されたのではなかろうか。それだけ、今回の視察は、中央の引締め政策に不満をもつ沿海部に対し、中央の政策を徹底させるという強い決意がこめられているように思われる。
(5)党3中全会の準備
視察では、改革開放が強調されている。今年は改革開放30周年であり、オリンピック行事の終了後は、これが次の政治的キャンペーンとなる。しかし、改革開放政策は保守派・新左派の厳しい批判に晒されており、これまでの路線を単純に延長すればよいという状況にはない。おそらく秋の党3中全会において、指導部は改革開放の継続を訴えながらも、何らかの新機軸を打ち出さざるを得ないであろう。それはこれまでの「先富」から「共同富裕」への本格移行ということであろうが、これは先富政策で利益を得た沿海部に何らかの負担を強いることになる[5]。このため、沿海部への根回しが必要となったのであろう。
(6)不安感の除去
まもなく1-6月期の経済統計が公表されるが、指導部は当然この大体の中身を把握したうえで視察をしているはずである。おそらくその内容は、経済の先行きに不安を与えるものなのであろう。このため、指導部としては経済発展地域に蔓延しつつある漠然とした不安感を、できるだけ払拭する必要があったものと思われる。
(7)王岐山の存在感
陳徳銘商務部長の視察は、最高指導部の視察を受けての実務的なものであるが、王岐山副総理の視察報道は、温家宝・習近平・李克強と同格に扱われている。経済が困難に陥るなかで、指導部内における王岐山の重要度が増している証左であろう。
(8)呉邦国の動き
指導者が続々と沿海部に向うなかで、呉邦国全人代常務委員長は全く異質の動きをしている。彼は、7月7-10日、内蒙古自治区を視察しているのである。むしろ、これはオリンピックを控えた少数民族対策の一環なのではないかと思われる。
(2008年8月記・8,357字)
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