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操業を止めない来料加工廠の独資転換

中国ビジネスレポート 金融・貿易
水野 真澄

水野 真澄

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2008年9月2日

記事概要

ここ数年引き続く加工貿易に対する規制強化の影響で、来料加工制度の先行を不安視する声が強まっています。この結果、来料加工廠から独資企業への組織変更を希望する日系企業は少なくありませんが、その際に問題となるのは、「工場の移転を行なわずに組織変更ができるか」、更には、「操業を停止せずに組織変更ができるか」という点です。

1.来料加工廠の独資転換

 ここ数年引き続く加工貿易に対する規制強化の影響で、来料加工制度の先行を不安視する声が強まっています。

 この結果、来料加工廠から独資企業への組織変更を希望する日系企業は少なくありませんが、その際に問題となるのは、「工場の移転を行なわずに組織変更ができるか」、更には、「操業を停止せずに組織変更ができるか」という点です。

 

 来料加工廠から独資企業に組織変更を実施する場合でも、基本的には加工貿易の継続を前提とする企業が多いため、操業を止めずに形態転換を行なう為には、手続上、幾つかの問題が存在します。例を挙げれば、以下の様なポイントです。

  無償提供設備が、保税・免税状態を継続したまま新設法人に移管できるか。

  来料加工廠の設備・人員を移管する前に、新設法人が生産能力証明・加工貿易認可が取得できるか。

  来料加工廠の保税品(原材料・仕掛品・製品)が、新設法人に保税のまま移管できるか。

 

 ここ数年で実際に操業を止めずに組織変更を実施した例がありますし、(公開はされていませんが)深圳税関に、この様な組織変更を認める内規がありました。

但し、正式な法規が公布されていた訳ではありませんので、実際に、この様な円滑な組織変更が実施できるかについては明確な根拠がなく、組織転換の障害となっていました。

 

 この状況が、200885日に、広東省政府から「来料加工企業が所在地で操業を停止せずに形態転換を行う事に関するガイドライン(粤外経貿加字[2008]7号)」が公布された事により、大きく変化する可能性が出てきています。

このガイドラインでは、来料加工廠の独資企業転換を奨励する一環として、転換手続の簡素化を実施し、工場の操業を止めずに組織変更を行う事が認められています。

 また、この通知は、以下の政府機関(組織変更手続に関連する政府機関)が連盟で出したものであり、円滑な組織変更を、政府機関が正式にサポートする姿勢がうかがえます。

  広東省対外貿易経済合作庁、広東省公安庁、広東省財政庁、広東省労働社会保障庁、

広東省国家税務局、広東省地方税務局、広東省環境保護局、広東省工商行政管理局、

広東省検験検疫局、税関総署広東文署、国家外管理局広東省分極

 

 

2.ガイドラインの概要

今回公布されたガイドラインは、上述の通り、ここ数年増加している、来料加工廠(内資三来一補工場)から独資企業への転換手続を円滑にする事を目的としています。

この様な組織変更は、以前より、地方の運用の中で行われてきましたが、同ガイドラインにより、珠江デルタ型来料加工廠が、同一所在地で、生産活動を停めずに組織変更を行う事が制度的に認められた事になります。

ガイドラインが定める、組織変更手続の概要は以下の通りです。

 

(1)組織変更の定義と手順

同ガイドラインが適用されるのは、法人格を持たない来料加工廠が、所在地を変更せずに外商投資企業に転換し、加工貿易業務を継続する場合であると定義されています。

転換の手順は、概ね、以下の通りとなります。

  来料加工契約の終了協議の締結⇒外経貿主管部門への申請

⇒新法人(外商投資企業)設立の認可取得・登記手続

⇒税関での来料加工廠が輸入した設備の処理と、保税品の核銷手続

⇒外経貿主管部門の審査・許可⇒来料加工の閉鎖手続

 

(2)組織変更の制限期間

組織変更は、6ヶ月以内に実施する事が求められています。

具体的には、新会社の設立認可の日から、6ヶ月以内に来料加工廠の閉鎖手続を完了する事が求められています。

また、この形態の組織変更を行う場合には、外経貿部門が発給する新会社の設立認可書類に、組織変更前の来料加工廠の名称が明記される事になります。

組織変更を行う企業は、その認可書類を関係各政府に提示して、関連手続を行います。

 

(3)無償提供設備の扱い

来料加工廠が使用する無償提供設備等に付いては、現物出資が認められています。

また、現物出資による所有権の移転を行った場合には、税関監督期間は、当初の輸入から起算します(来料加工廠での使用期間を含む事になります)。

 

(4)保税品・無償提供設備の移管期限

新会社の税関登記完了後、原則として3ヶ月以内に来料加工企業の核銷、企業閉鎖、保税品・設備の移管手続きを行う必要があります。

 

(5)生産能力証明等の扱い

組織変更前後で、経営範囲・企業規模・工場の構造等に大きな変化が無い限りにおいては、来料加工廠の生産能力証明、環境・消防証明は、来料加工廠で取得したものを継続して使用する事ができます。

 

当ガイドラインでは、広東省の各機関は、加工貿易企業が操業を停止せずに組織変更を行う事を奨励・支持する事が強調されています。

このガイドラインの公布により、広東省での来料加工廠から独資企業への転換の手続の明確化・円滑化が期待されますので、今後、組織変更の動きが本格化する事が予想されます。

 

 

 

 

 

 

来料加工企業が同一場所で生産を停止せずに転換するための操作指南

外経貿加字[2008]7

 

中国共産党第17回全国代表大会の精神の貫徹、更なる思想の解放、科学的発展観の実現、対外開放水準の引き上げ、外資導入の品質向上、加工貿易の転換と高度化の促進、国家の産業政策に合致する来料加工工場がその地で独立法人資格を持つ外商投資企業またはその他の類型の企業に転換することの積極的な支持・奨励、企業経営の規範化、政策的調整の要求への対応のため、ここに以下の操作指南を提示する。

 

一、来料加工工場の同一場所での「転換」とは、来料加工業務のみを行い独立法人資格を持たない企業または工場を、同一の加工場所で独立法人資格を持つ外商投資企業(またはその他の類型の企業)に切り替え、継続して加工貿易業務を行うことを指す。「転換後」とは、企業が新たに成立した外商投資企業(またはその他の類型の企業)の名義で対外的に加工貿易契約を締結し対外経済貿易主管部門の批准を得た後のことを指す。

 

二、同一場所で「転換」手続をするための基本手順:元の来料加工協議を締結した各契約者と終止協議を締結または前倒しして締結する――対外経済貿易主管部門に申請する――新企業を設立するための審査批准・登記等の手続(すなわち対外経済貿易主管部門・税関・工商・外貨管理・税務・財政・検査検疫・環境保護・消防・労働等)を行う――税関等の部門で元の加工企業の輸入設備の処理及び契約核銷等の手続を行う――対外経済貿易主管部門の審査批准を申請する――関連する管理部門(すなわち対外経済貿易主管部門・税関・工商・外貨管理・税務・財政・検査検疫・環境保護・消防・労働等)で元の加工貿易企業の終止・抹消手続を行う。

 

三、産業政策に合致する来料加工工場の独立法人資格を持つ外商投資企業(またはその他の類型の企業)への転換を奨励し支持する。各部門は積極的に措置を取り、企業がスムーズに同一の場所で生産を停止することなく転換できるよう支持し、加工貿易の転換と高度化を促進する必要がある。

 

四、同一の登記住所で転換する予定の企業について、転換の前後で名称と性質が異なる企業は、六ヶ月以内に手続を行うことを許可する。対外経済貿易主管部門は来料加工終止協議に対して審査批准意見を出し、企業は批准文書により転換と外商投資企業新規設立の審査批准手続を申請し、対外経済貿易審査批准部門は回答文書の中に新規設立外商投資企業の転換前の来料加工工場の名称を明記し、企業はこれにより関連部門にて手続を行う。

 

五、工商管理部門は対外経済貿易主管部門の新規設立外商投資企業(またはその他の類型の企業)に対する批准文書に基づいて工商登記手続を行い、転換の前後の来料加工工場・外商投資企業(またはその他の類型の企業)は六ヶ月以内に手続を行うことを許可する。

 

来料加工企業が外商投資企業に転換した後、国外投資者が外商投資企業に払い込んだ登録資本金の中に来料加工企業の実物(設備等)が含まれる場合、国家の現在の外商現物出資の規定によって処理しなければならない。

 

六、新企業の税関登記後、企業は三ヶ月以内(特殊な場合は主管税関の批准を経て延期できる)に主管税関で元の加工企業の輸入設備処理及び契約核銷・企業終止・抹消等の手続を行わなければならず、その期間税関は新設外商投資企業と元の来料加工工場が同時に輸出入通関等の業務を処理することを許可し、規定に符号する外商が提供した無償提供設備と加工貿易の保税材料を直接振り替えた転換後の外商投資企業(またはその他の類型の企業)については、設備の監管期限を連続して計算することができる。

 

七、元の来料加工企業が企業の転換を行った後、対外経済貿易主管部門は元の企業の新規契約を受理しない。転換後に成立した外商投資企業(またはその他の類型の企業)は、新会社の名義で対外的に契約を締結し、業務を処理することができる。

 

八、転換前に税関が確定した来料加工工場の企業分類管理類別と対外経済貿易主管部門が確定した生産能力証明は、企業転換後も基本状況に重大な変化がない場合は、税関と対外経済貿易主管部門の承認後、継続して認可される。

 

九、元の来料加工工場がすでに取得した環境保護・消防の基準証明及び対外経済貿易主管部門がすでに給付した生産能力証明等、あるいは転換後の企業の経営範囲・生産規模・工場設計等に変更のない関連許可証・資質証書等については、有効期間内であれば関連部門は簡便な処理を提供すべきである。

 

転換後の企業の経営範囲・生産規模・生産技術・工場設計等に変更がなく、すでに合格した《建築工程消防設計審査意見書》と《建築工程験収意見書》を有する場合、《建築工程消防設計審査意見書》と《建築工程験収意見書》の更新を行う必要はない。転換後の企業に改築・増築、または用途の変更があった場合、企業は消防部門に建築工程消防設計審査と建築工程消防験収行政許可手続を申請しなければならない。199891日以前に使用開始された建築で、消防部門の公布した「改築要求に合致する」との意見に署名のある《再調査意見書》または消防部門が明確に合格意見を出した法律文書を取得している場合、消防部門は再度消防監督検査を行い、消防上の問題がないまたはその場で問題を解決した場合、新経営主体に《消防監督検査記録》を発行する。消防上の問題が発見された場合、期限内に改善するよう命じた文書を発行し、期限満了後に消防部門は再調査を行い、合格後新経営主体に《再調査意見書》を発行する。

 

十、転換企業は批准設立の日より六ヶ月以内に来料加工工場の所有抹消手続を行わなければならない。

 

十一、我が省の各級対外経済貿易・税関・工商・外貨管理・税務・財政・検査検疫・環境保護・消防・労働等の部門は相互に連絡と取りかつ協調し、来料加工工場が生産を停止せず転換するために効率のよく便利なサービスを提供する必要がある。同時に、各関連部門は各自の実際の状況と関連する政策の規定に基づき、企業転換の具体的な操作指南を制定し、対外的に公布の上実施し、対外経済貿易主管部門が冊子を編集し、企業転換の運営に役立てなければならない。

 

十二、本操作指南は公布の日より実施する。

 

二〇〇八年八月

 

(2008年9月記・4,552字)

 

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