こんにちわ、ゲストさん

ログイン

経済諸会議の動向(1) 第11次5ヵ年計画政府要綱策定に向けて

中国ビジネスレポート 政治・政策
田中 修

田中 修

無料

2006年1月26日

はじめに

 中央経済工作会議以降、各経済官庁が第11次5ヵ年計画政府要綱策定に向け全国会議を開催している。また、経済関係閣僚は精力的に記者会見・インタビューを行い、今後の重点施策を表明している。本稿では、これらのポイントを順次紹介していくこととしたい。

 

.国家発展・改革委員会

1.全国発展・改革会議(2006年12月3日)

 馬凱主任は2006年の問題について、次のように具体的対策を指示している(2005年12月5日付け経済日報)。

1)農業総合生産能力を引き続き向上させ、農村の生産生活条件の改善に力を入れる

A  問題

  a食糧価格の下落圧力が大きい。

2005年4月以来、持続的に下落し、10月は対前年比0.8%下落している。

 b農業資材価格が高止まりしている。

2005年1−10月で9.1%上昇した。

 c耕地面積が連続減少している。

1996年の19.51億ムー(1ムーは15分の1ha)が2004年には18.37億ムーに減少した。

 d気候条件が不確定である。

 e農業・食糧生産を軽視する傾向は警告に値する。

2年連続の食糧増産により、一部の地方では食糧生産を緩和する兆しが現れている。

B  対策

 a食糧生産を安定的に発展させる。

 農業の総合生産力を引き続き向上させ、食糧総生産量の2005年水準の維持に努める。

 b農業構造を積極的に調整する。

  「高生産・高品質・高効率・生態・安全」の要請に基づき、優位な農産品の配置の地域化・生産の 専 業化・経営の産業化を大いに推進する。

 c農村の生産生活条件の改善に力を入れる。

 農村インフラ建設の強化を重点とし、特に水・ガス・道路・電力の4項目をしっかり行う。

 d農村公共事業の発展を加速する。

 基礎教育・医療衛生・文化施設等の3方面に重点を置く。

e多様なルートで農民の収入を増加させる。

 農業経営の産業化を徐々に推進し、リーダーとなる農業企業・専門協同経済組織を積極的に発展させる。

(2)一部業種の生産能力過剰を軽視してはならず、業種別計画を整備し、市場参入許可を厳格化する

A  問題

 一部の業種の潜在的な生産能力過剰は軽視できず、このままでいけば、資源・環境の制約が激化し、構造のアンバランスが際立ち、企業倒産と失業が顕著に増加し、銀行の不良債権が更に拡大することになる。

a鉄鋼業

 生産能力は需要を1.2億トン上回っているが、なお7千万トンの能力を建設中であり、8

千万トンの能力が計画中である。2005年1月から10月までに、鋼材価格の総合指数は20

ポイント下落しており、2003年末の水準になった。相当部分の鋼材産品価格はコスト割れ

を起こしており、一部の鉄合金産品価格は20−30%下落している。2005年1−10月の利

潤は対前年比52.2%減少し、在庫は49%増加している。

b電解アルミ業

 生産能力は1030万トンに達しているが、260万トンが未使用になっている。

c自動車産業

 生産能力の過剰が200万台分となっているが、なおも220万台分を建設中であり、現在

新たに計画中のものが800万台分となっている。2005年1−10月の利潤は36.7%減少し

ており、赤字企業の赤字額は86.2%増加している。

dセメント産業

 2005年1−10月の利潤が対前年比60.6%の減少となっている。

eコークス業

 生産能力過剰が1億トンであり、まだ建設中・計画中のものが3千万トンある。

f鉄合金業

 生産能力は2213万トンだが、企業の作業率は40%前後である。

gカーバイド

 生産能力は1600万トンだが、半分の生産能力が放置されている。

B 対策

a業種別計画・政策を整備し、部門の協調を強化する。

 既に提出した鉄鋼・電解アルミ・石炭・自動車等の業種発展計画・産業政策の実施を強化し、実践のなかで不断に改善するとともに、未提出のものについては緊急に制定・整備し、できるだけ早期に提出する。

b市場参入許可を厳格化し、新規プロジェクト立ち上げを抑制する。

 環境、エネルギー・水の消耗、資源の総合利用、安全・質・技術・規模等の基準を厳格に制定し、参入のハードルを高くする。

c法規に基づき、落伍した生産能力を淘汰する。

 主として市場の優勝劣敗に依拠すると同時に、法に基づき、資源を破壊し、環境を汚染し、安全生産の条件を具備しない小企業を閉鎖する。

d技術の改造を推進し、合併・リストラを加速する。

 鉄鋼・セメント・石炭・化学工業等の合併・リストラを奨励し、優位な企業の強大化を支援し、産業集中度を高める。

(3)貿易不均衡の矛盾が大きくなっており、構造調整を行い対外貿易の成長方式を転換しなければならない

 A  問題

 1994年に対外貿易が赤字から黒字に転じて以来、毎年一定規模の黒字が発生している。2005年の黒字は急拡大しており、過大な貿易黒字が多くのマイナスの影響をもたらしている。

a国際貿易の摩擦が激化している。

 中国は、10年連続国際アンチ・ダンピング調査の最も多い国家となっている。

b貿易黒字の拡大に伴い外貨準備が大量に増加しており、貨幣調節の難度が増しているばかりか、人民元レート上昇圧力が増加し、投機資金の流入を容易にしている。

c現在、中国の輸出商品の技術含有量は総体としてかなり低く、エネルギー消耗が高く、汚染が高く、資源的な商品の輸出の伸びが急激に伸びており、国内の資源・環境の矛盾を激化させ、持続可能な発展に不利となっている。

B  対策

a輸出に係る税還付を整備し、とりわけハイテク・高付加価値の産品の輸出を奨励する。

b加工貿易の禁止リストを改定し、加工貿易からの転換を促進する。

cエネルギー消耗が高く、汚染が高く、資源的な産品の輸出を引き続き抑制する。

d「外商投資産業指導目録」「中西部地域外商投資優勢産業目録」を全面的に改定し、低水準・エネルギー高消耗・高汚染の外資の侵入を厳格に制限する。

e関係部門と共同で対外投資産業指導政策を制定・実施する。

(4)協調して手配し、区別して対応し、あるものは維持し、あるものは抑制することにより、盲目的投資を抑制する体制メカニズムを整備する

A 問題

 投資反発の圧力は依然として大きい。

a 伸びが依然かなり高い。

 2005年1−10月の都市固定資産投資の伸びは27.6%である。

b 建設規模が依然かなり大きい。

 2005年1−9月の全社会固定資産投資の建設中の規模は22.4兆元であり、2004年の投資額から計算すると3年分の仕事量に匹敵する。

c 新規プロジェクト着工の伸びがかなり大きい。

 2005年1−10月の新規着工は14.7万件であり、対前年同期比2.7万件の増であり、計画中の総投資は5兆元超であり、28.5%の増である。

d 投資率が持続的に上昇している。

 2004年の固定資本形成率は44.2%の高さに達したが、2005年はさらに上回りそうである。

e 盲目的投資の土壌がなおも存在している。

 投資への衝動を生み出す体制メカニズムの問題が依然存在し、一部の地域の投資への衝動はなお強い。M2の伸びが徐々に加速している。原油価格が高水準であり、川下産品の価格上昇をもたらし、経済運営のコストを増大させている。

B 対策

a土地と信用貸出しの2つの水門を引き続きしっかり掌握する。

 最も厳格な土地管理制度を堅持し、2006年の農地の建設用地への転用は2005年の水準に原則として抑制し、開発区の整理整頓を引き続きしっかり行う。中長期貸出しを合理的に抑制し、業種を過度に拡張させるような信用拡大を厳格に抑制する。

(5)雇用を拡大し、社会保障システムを整備し、発展のなかで大衆の関心のある問題を解決する

A 問題

a  特に、就業圧力が大きく、社会保障が不健全で、所得格差が拡大し、教育面で費用の乱徴収があり、医者にかかることが難しく、安全生産の状況が極めて厳しい。

b  環境保護、企業の制度改正、土地の徴用、ダム建設に伴う移民等の方面で、少なからぬ大衆が強烈に反発する問題が存在する。

c  鳥インフルエンザと重大な動植物防疫の情勢がかなり厳しくなっている。

B 対策

a 就業・社会保障・所得分配の施策をしっかりと行う。

 就業の困難な地区・業種・大衆への専門支援制度を検討し、確立する。都市出稼ぎ労働者の社会保障問題を真剣に検討し、所得分配制度改革の総体的な方針と関連政策を組織的に検討し提出する。

b 各クラス・各種の教育の調和のとれた発展を促進する。

 義務教育の均衡ある発展を更に促進する。

c  公共衛生建設を強化する。

 都市の医療資源の配分を調整・高度化し、コミュニティの衛生サービスの発展に力を入れる。

d   文化・旅行・スポーツ等の事業の発展に力を入れる。

e  応急システムを早期に整備する。

 

 また、馬凱主任は、2006年は第11次5ヵ年計画のスタートの年であるとし、次の6点に力を入れるよう指示している(2005年12月4日付け人民日報)。

(1) 経済の平穏で速い成長という良好な傾向を維持しなければならない。

 穏健な財政政策と穏健な金融政策を引き続き実施する。信用貸出し政策と産業政策の協調を強化する。投資の膨張・反発を防止し、消費需要の拡大に努力する。石炭・電力・石油・運輸の需給調節を促進する。

(2)社会主義の新農村建設推進について良好なスタートを切らなければならない。

 農村の飲料水・メタンガス・農道・送電等のインフラ建設を強化する。

(3)自主革新能力を強化し、構造調整推進において顕著な進展を獲得しなければならない。

(4)省エネルギー・節約と成長方式の転換において顕著な成果を獲得しなければならない。

(5)重点領域・カギとなる部分の改革において新たな突破を獲得しなければならない。

(6)社会主義の調和のとれた社会の構築において新たな歩みを踏み出さなければならない。

 関係部門の手配により、就業・社会保障・所得分配政策をしっかり行う。義務教育の均衡ある発展を更に促進する。公共衛生建設を強化する。応急システムを早期に整備する。

 

2.馬凱主任「学習時報」インタビュー(2006年1月18日)

 他の記事と重複するものは簡単に紹介する。

(1)マクロ経済政策

a  穏健な財政政策と穏健な金融政策を引き続き実施する。

b  固定資産投資のコントロールを強化する。

 投資の膨張・反発防止は、依然マクロ・コントロールの成果を強固に発展させる重要任務である。カギは、土地と信用貸出しの2つの水門をしっかり掌握することである。新規プロジェクトの着工を厳格に抑制する。

c 消費需要の拡大に努力する。

 関連部門と積極的に手配し、都市住民最低生活保障の基準を引き上げ、企業の最低賃金制度の厳格な執行等個人所得の増加施策にしっかり取り組む。

d  石炭・電力・石油・運輸の需給調節を促進する。

e 経済運営の観測と事前警戒を強化する。

(2)社会主義の新農村建設

A 食糧生産を安定的に発展させる。

 農業の総合生産力を引き続き高め、食糧総生産量を2005年の水準に維持するよう努める。

B 農業構造を積極的に調整する。

 優位な農産品の地域化、生産の専業化、経営の産業化の推進に力を入れる。

C 農村生産生活条件の改善に力を入れる。

 水・ガス・道・電力のインフラ建設に重点を際立たせる。

D 農村公共事業の発展を加速する。

a 農村義務教育を更に普及し強固にする。

b 農村の公共衛生と基本医療サービスを強化する。

c 農村の公共文化事業の発展を推進する。

E多様なルートで農民の収入を増加させる。

 農業経営の産業化を徐々に推進し、農業のリーダー企業と専門協同経済組織を積極的に発展させる。

(3) 自主革新能力の増強

a自主革新を奨励・支援する。

b装置型製造業の振興に力を入れる。

cハイテク産業を積極的に発展させる。

dサービス業の速く健全な発展を促進する。

(4) 一部の業種の生産能力過剰問題

 市場の資源配分の基礎的作用を発揮させ、市場の競争推進力を十分に利用し、優勝劣敗を実現する。

(5) 省エネ・節約と経済成長方式の転換

a 資源の節約と総合利用を強化する。

b 循環経済の発展に力を入れる。

c 生態建設と汚染防止をしっかりと行う。

(6)経済体制改革

A 投資体制改革を引き続き推進する。

      a許認可・届出制を整備する。

     b政府の投資管理を規範化する。

     c全社会投資のコントロールを改善する。

B 資源的産品の価格改革を加速する。

 資源の希少性を反映した価格形成メカニズムを徐々に形成する。

C 非公有制経済発展の体制環境を更に改善する。

  中小企業の成長プロセスを推進する。

D  独占業種の管理体制改革を引き続き推進する。

 電力・民間航空の体制改革を更に深化させ、郵政・煙草の体制改革を組織的に実施し、鉄道体制改革方案を検討提出し、公共水道・公共ガスの市場化プロセスを引き続き推進する。

E  社会事業改革を深化させる。

 義務教育への投入の保障メカニズムを早急に構築し、非公有資本の文化・スポーツ事業への参入を誘導・奨励する。医療体制と薬品生産流通体制改革を推進し、都市医療サービス体制改革と医療救助制度のテストを展開し、医療サービスと薬価監督を引き続き強化する。

(7)社会主義の調和のとれた社会構築

a就業・社会保障・所得分配の施策をしっかり行う。

 所得分配制度改革の全体方針と関連政策を組織的に検討し提出する。

b各クラス・各種教育の調和のとれた発展を促進する。

c公共衛生建設を強化する。

d文化・旅行・スポーツ等の事業の発展に力を入れる。

e応急システムの整備を加速する。

(つづく)

(2005年1月記・5,093字)

ユーザー登録がお済みの方

Username or E-mail:
パスワード:
パスワードを忘れた方はコチラ

ユーザー登録がお済みでない方

有料記事閲覧および中国重要規定データベースのご利用は、ユーザー登録後にお手続きいただけます。
詳細は下の「ユーザー登録のご案内」をクリックして下さい。

ユーザー登録のご案内

最近のレポート

ページトップへ