2021年8月20日に改正された「中華人民共和国人口・計画出産法」にて、1組の夫婦が3人の子供を持つことができる と正式に規定されましたが、同法の施行にあわせて各地の「人口・計画出産条例」も改正版が公布されています。
今回改正された内容のなかでも、特に従業員の産休日数や福利厚生に関する変更は重要であり、改正後の内容と一致していな い就業規則は早急に更新する必要があります。
以下、上海市、広東省の条例や関連情報をもとに、主な改正内容について解説します。

1．上海市人口・計画出産条例の改正
2021年11月25日の上海市人民代表大会常務委員会会議において、「上海市人口・計画出産条例」の改正が決定され、 同日に施行されています。

（1）主な改正内容
●3人目の出産が可能に
3人っ子政策を実施し、夫婦1組につき子供を3人まで産むことができると明確に定められました（第23条）。

●生育休暇の増加、育児休暇の新規追加
女性従業員に対して、国家が規定する98日の出産休暇に加え、さらに追加できる生育休暇が30日から60日に延長されま した。この結果、出産休暇と生育休暇の合計が158日となりました（第31条）。
また法律に従って出産した夫婦は、子供が3歳になるまでの期間、両親共に育児休暇を毎年5日取得することができるように なりました。育児休暇中の給与は、休暇取得本人の通常出勤で得られる給与と同額が支払われます（第31条）。

●一人っ子両親光栄証制度の継続
国が一人っ子を提唱する期間において、規定に従って計画出産を行う家庭の高齢者が奨励補助を享受する場合、引き続き奨励 補助が付与され、高齢者福祉、養老サービスなども必要な配慮が与えられます。
なお二人以上の子供を産んだ場合は、「光栄証」を返却し、関連優遇は終了となります。

●女性従業員の保護措置
・雇用者は幼児看護に有利で柔軟性がある休暇や弾力的なフレックスタイム制を採用し、家庭生育、養育を支持すると規定さ れました（第31条）。
・市と区人民政府は財政・教育・住宅・就業・保険などの支援措置を実施し、家庭生育、養育、教育の負担を軽減すると規定 されました（第34条）。

（2）条例改正における「休暇」に関する上海市政府の質疑応答
●　出産休暇は何日ですか。またどのように取りますか。
回答：
上海市の条例によると、法律にもとづき出産した夫婦においては、女性は国家が規定する出産休暇を享受できるほか、さらに 60日の生育休暇を享受することができます。
なお、生育休暇は出産休暇と同等の待遇を享受することができ、生育休暇は一般的に出産休暇と連続して取得しなければなり ません。休暇期間中に法定休日があった場合は、生育休暇は延長されます。

●　2021年5月31日から、改正「上海市人口・計画出産条例」が施行される2021年11月25日までの期間に出産 した場合、出産休暇はどのように取得できますか。
回答：
この期間に、法律に従って出産した夫婦においては、女性がすでに改正前の条例に従い30日の生育休暇を享受している場 合、さらに30日の生育休暇が追加されます。
また、すでに30日の生育休暇の関連手当、医療サービスを享受している場合も、同様に30日の生育休暇に相当する出産保 険待遇を追加で享受することができ、医療保険金は自動的に従来の銀行口座に振り込まれるので、再度申請する必要はありま せん。

●　育児休暇は何日ですか。またどのように取りますか。
回答：
上海市の条例の第31条に、「法律に従って出産した夫婦は、子供が3歳になるまでの期間、両親共に育児休暇を毎年5日取 得することができる。育児休暇中の給与は、休暇取得本人の通常出勤で得られる給与と同額とする」と規定されています。
育児休暇は出産した子供の数にもとづいて日数を計算します。毎年の育児休暇は原則として当年度中に使用する必要がありま すが、連続または分散して使用することができます。

●　「子供が3歳になるまでの期間、両親共に育児休暇を毎年5日取得することができる」と規定されていますが、ここでの 「毎年」とは暦年（1月1日～年12月31日）ですか、もしくは周年（例12月1日～11月30日）ですか。
回答：
「周年」を指します。例えば、出産日が2021年12月1日の場合、2022年11月30日までとなります。この期間中 に、両親は育児休暇を各5日間取得することができます。

●　改正後の上海市の条例が施行された日（2021年11月25日）に子供が3歳未満の場合、両親は育児休暇を5日取得 することができますか。
回答：
育児休暇を取得することができ、取得できる期間は子供の年齢で計算します。
例えば、子供の年齢が1歳以上、2歳未満の場合、両親は2年の期間、毎年5日の育児休暇を取得することができます。

上海市人口・計画生育条例の原文

http://wsjkw.sh.gov.cn/sh2/20211126/306f5a2aa8454f969aa9b41e96f2e082.html

上海市人口・計画出産条例の改正に関する質疑応答（原文）

https://mp.weixin.qq.com/s/HNU0zQyN10KKg8H547HURw

2．広東省人口・計画出産条例の改正
2021年12月1日の広東省人民代表大会常務委員会会議において、「広東省人口・計画出産条例」の改正が決定され、同 日に施行されています。

（1）主な改正内容
●3人目の出産が可能に
夫婦一組につき3人まで子供を持つことができるようになりました。再婚の場合は、再婚後に3人の子供を持つことができま す（第18条）。

●育児休暇の新規追加
従来の女性従業員に対する178日（98出産休暇＋80生育奨励休暇）の休暇、男性従業員の15日の出産介護休暇（陪産 假）に変更はありませんが、3歳以内の子供を持つ父母は、毎年10日の育児休暇（育児假）を取得できるようになりまし た。なお、休暇中の労働者の雇用コスト分担については、国家と省の関連規定にもとづくと規定されています。

●看護休暇（護理假）の増加
国が一人っ子を提唱する期間において、終生で子供が一人のみの広東省戸籍の夫婦に対して、引き続き優待奨励補助が付与さ れます。一人っ子父母光栄証を取得した日から子供が満14歳になるまで、毎月10元の保健費の給付、および奨励金を支払 うことができます。保健費と奨励金は、夫婦双方の勤務先より50％ずつ負担されます。
また満60歳以上の父母を持つ一人っ子は、看護休暇を毎年5日取得できます。父母が入院して治療を受ける場合は、年間累 計15日を超えない範囲で看護休暇を取得できます。

●女性従業員の保護措置（第32条）
政府が財政・税収・保険・教育・住宅・就業などの支持措置を取り、家庭生育・養育・教育の負担を軽減すること、雇用者と 従業員が法にもとづき協議を行い、幼児の看護に有利で柔軟性がある休暇や弾力的なフレックスタイム制を導入し、シフト制 勤務時間・勤務時間短縮・オンライン勤務等の実施を奨励すること、女性従業員の合法権益を保護するため、有効な措置を 取って、出産によって影響を受ける女性に就業サービスを提供することが規定されています。

広東省人口・計画生育条例（第94号）の原文

http://www.rd.gd.cn/xwdt/202112/t20211201_185342.html

以上