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ログイン2022年11月22日
上海の感染症発生状況が徐々に改善され、操業及び生産再開に関するガイドラインが発表されたことに伴い、様々な業界が操業、生産の再開にすでに直面し、又はこれから直面することになる。操業や生産を再開する過程においては、企業が感染症発生状況による新たな労働雇用問題に直面することが避けられないため、筆者は、その生じ得る疑問点を以下の通り整理し、Q&A形式で回答することにより、上海企業が操業や生産を再開する際の参考に供する。
Q1.感染症蔓延による静態管理期間中に、企業が操業及び生産の再開を決定する場合、政府部門の承認を得る必要があるのか?
6月1日までは、政府部門の承認を得る必要がある。
6月1日以降は、「上海市の経済回復及び復興を加速する行動案」により、企業の操業、生産再開に係る審査承認制度は廃止される(感染症蔓延期間内の政策は適宜更新されるため、その時点での有効な政策・法規に従って実施し、対処していくことになる。以下同じ)。
Q2.操業・生産の再開後、企業は従業員に対しPCR検査の陰性証明書を所持して出勤するように要求することができるか?
要求することができる。
関連政策の要求に従い、感染蔓延防止の必要性に基づき、企業は出勤の前提条件として、従業員に対しPCR検査の陰性証明証を提供するように要求しなければならない。
Q3.企業の操業及び生産再開期間中に、条件を満たしている従業員を職場に復帰させる場合、従業員はこれを拒否することができるか?
従業員はこれを拒否することはできない。
企業は、操業及び生産を再開した後、条件を満たしている従業員に職場復帰を求めることができ、従業員はこれに協力しなければならない。従業員が正当な理由なく協力しない場合、企業は実情に応じて対処することができ、これには規程に従った処分、復職拒否期間中の給与を支給しない等を含むが、これらに限らない。
Q4.感染症蔓延による静態管理期間中に、企業は一部の従業員だけを職場に復帰させることができるか。
企業は一部の従業員だけを職場に復帰させることができる。
感染症蔓延による静態管理期間にある企業は、操業及び生産の再開が認められたとしても、特別予防管理期間中であることから、基本的には操業再開が中途半端な状態となり、全員での操業再開とはならず、その可能性も低い。まずは、政策の要請に基づき、毎週操業再開できる人数に制限があること、次に、職場復帰者は居住する建物から7日間以内に陽性患者が出ていないという条件も満たさなければならず、仮にこの条件を満たしたとしても、企業が従業員の操業再開証明証を申請した際に、政府の承認を取得できるという絶対的な保証もない。
このことから、静態管理期間中は、企業は具体的な状況に応じて、自ら条件を満たしている一部の必要な従業員の操業再開を手配することができると考えられる。
今後、静態管理が完全に解除され自由化された場合は、企業が特別に一部の従業員だけに対して操業及び生産の停止、自宅待機を要求してはならないが、生産能力の回復状況に応じて、生産ラインや部門全体の操業・生産の継続停止を宣言することは依然として可能であると考えられる。
Q5.感染症蔓延による静態管理期間中、企業が操業や及び生産を再開した場合、職場復帰を手配されていないが条件を満たしている他の従業員が職場復帰を求めたとき、企業はそれを拒否することができるか。
企業は拒否することができる。
先に述べたように、感染症蔓延下での静態管理期間中の企業の操業及び生産の再開は、実質的に依然として特殊な状況下での部分的な操業・生産の再開であり、どのような業務及び従業員に操業・生産を再開させるかは、企業が具体的な状況に応じて自ら決定すべきである。
当然ながら、職場復帰する従業員にとっては、正常な出勤時の給与のほかに、一部企業は一定の手当を支給することも考えられるが、職場に復帰していない従業員の場合、最低給与、ひいてはそれよりも低い金額しか支給されない場合もある。これらの職場に復帰していない従業員の中には、一部の者は復帰の条件を満たしており、本人にも出勤する意欲があるにもかかわらず、様々な要因で企業が復帰を手配できなければ、多少落胆することになるであろう。何よりも、生活のプレシャーに直面する中で正常に出勤し給与を手にすることは、かなり重要なことである。従って、このような状況においては、企業は情に訴えながらも、道理をもって説得し、政策及び経営の次元から巧みに対処し、意思疎通を行うようにし、また、労働組合があれば、ある程度協力してもらうようにするのもよい。
Q6.感染症蔓延による静態管理期間中に企業が操業及び生産を再開した場合、職場復帰ができていない従業員に対し、その給与報酬はどのように計算し支払うか。
状況を見ながら検討しなければならない。
復帰しての業務再開ができないことが従業員自身の過失によるものでない場合、例えば建物の予防管理政策のために外出し職場復帰することができない、企業が職場復帰を手配しない等の場合、原則として、企業が操業及び産を再開する前の給与報酬の計算支給方法を継続して適用することになり、具体的には次の通りである。
もしも従業員自身の過失により復帰しての業務再開ができない場合(例えば、正当な理由なく職場復帰を拒否する等)、企業は実際の状況に応じて対処することができ、これには会社規程に従った処分、復職拒否期間中の給与を支払わない等を含むが、これらに限らない。
Q7.企業が操業及び生産を再開し、クローズドループ(バブル式)管理を実施したにもかかわらず、原材料の供給等の理由から従業員が業務に従事することができない場合、企業は従業員への給与をどのようにして支払えばよいか。
原則として、操業再開とみなされ、正常時の給与を支払わなければならない。
但し、企業が従業員代表大会、労働組合、従業員代表との民主的な合意により、当該期間中の従業員の給与報酬計算方法等の事項について合理的な調整を行うことことができる。
Q8.企業が操業及び生産を再開させ、クローズドループ(バブル式)管理を実施し、従業員が1日24時間体制で、勤務時間中も、それ以外の生活時間も全て職場にいた場合、これは全て労働時間に該当するか。従業員は残業代や当直手当を主張することはできるか。
全てが労働時間に該当するのではない。
企業がクローズドループ管理期間中も従来の労働時間制度を実施しており、通常の勤務時間外に残業を手配していないならば、休憩状態にあり、労働時間には該当しない。
このような紛争を避けるためにも、操業を再開した企業は、クローズドループ管理期間中の労働と休憩時間の手配、残業制度等について従業員に明確に伝え、労働時間、残業時間及び休憩時間を区別しておくとよい。
操業及び生産の再開期間中に、企業がどうしても従業員に通常の労働時間以外に残業をさせるような場合、企業は追加で残業代を支払う必要がある(総合労働時間制の従業員の場合、決済周期の法定標準労働時間を超えた場合のみ残業代が支払われる)。不定時勤務制の従業員については、上海地区では、法定休日の残業に対し残業代を支払う場合を除き、それ以外の時間では残業の問題は存在しない。
また、企業が蔓延防止、企業セキュリティ、消防等の特別な理由から、従業員に正常な勤務時間外に非生産性の事務の実施を手配している場合、筆者の理解では、残業と認定することはできない。
Q9.操業及び生産の再開期間中に、企業が受注書進捗の完成を理由に、従業員に対し時間外の残業を手配することはできるか。
手配することはできないが、特別な法定事由については、この限りではない。
「労働法」第41条によると、企業が特別な理由で労働時間を延長する必要がある場合、労働者の身体の健康を保障するという条件の下、延長する労働時間は1日あたり3時間を超えてはならず、かつひと月あたり36時間を超えてはならないとされている。従って、原則としては、感染症蔓延後に操業及び生産を再開したとしても、企業は速やかに受注を完了させる目的で、従業員に時間外の残業を手配することはできない。
ただし、当該生産の受注が「労働法」第42条に定める特別な事情又は緊急の任務に該当する場合、企業が労働時間を延長することは、上記の時間的制限を受けない。例えば、今回の感染症蔓延期間において、政府の感染症蔓延防止管理に係る保障任務又は蔓延防止のための供給保障任務を負い、緊急に残業を必要とする企業については、従業員の身体の健康や労働の安全を保障することを前提に、緊急生産任務に対応するために労働時間を適切に延長することができ、法に依拠し労働時間の制限を受けない。
Q10.操業及び生産の再開期間中に、上海市の係る企業の操業及び生産再開に関する感染症蔓延防止ガイドラインに従い、従業員に対して予防管理を実施する際に、もしも従業員がそれを従わない場合、懲戒処分することができるか。
懲戒処分することができる
上海市の係る企業の操業及び生産再開に関する感染症蔓延防止ガイドラインの要求により、操業及び生産の再開期間中に、企業は従業員に対し、ゾーニング管理、検査管理等の係る蔓延防止管理を実施しなければならない。これらの管理措置は特別期間の労働規律の一部とみなされ、違反した従業員は規律違反として処理し、具体的には違反の情状と各企業の規則の関連規定を踏まえて総合的に判断し実施することができる。
Q11.企業が操業及び生産を再開し、クローズドループ(バブル式)管理を実施するなかで、従業員が日常業務において新型肺炎に感染した場合、労災として認定できるか。
原則として、労災として認定することはできない。
「職務遂行のため新型コロナウイルス肺炎に感染した医療従事者及び関連スタッフの保障事項に関するの通知」(人社部函〔2020〕11号)では、医療従事者及び関連スタッフが職務の遂行のために、新型肺炎に感染し又は死亡した場合は、労災として認定されると定められている。しかし、それ以外の一般の従業員が日常業務において新型肺炎に感染した場合に労災に該当するかどうかについては、まだ明確には定められていない。従って、これらの人員については、やはり一般的な労災の認定基準に従い認定する必要がある。
「労災保険条例」第14条[1]1項の規定によれば、勤務時間中及び勤務場所において、業務上の理由から予期せぬ怪我をした場合、労災として認定しなければならない。しかし、勤務時間中及び勤務場所において新型肺炎に罹患した場合、それが業務上の原因により直接にもたらされたかどうかの判断は難しく、また、新型肺炎それ自体が疾病であり、予期せぬ怪我とは言えないため、本条に基づくならば、労災と認定することはやや難しい。
また、「労災保険条例」第14条4項の規定によれば、職業病に罹患した場合、労災として認定される、とされている。現在、新型肺炎はまだ「職業病の分類・目録」には収録されていないため、本条に基づき労災と認定することはできない。
最後に、従業員が新型肺炎に罹患し、勤務時間中及び職場において、突発的病により死亡し、又は48時間以内に救命の甲斐なく死亡した場合、「労災保険条例」第15条1項の規定に該当するため、筆者の認識では、労災とみなすことができると考える。
(筆者: 里兆法律事務所 申珂、張玉娟 2022年5月30日)
[1] 「労災保険条例」第14条:「従業員が次に掲げるいずれかの状況に該当する場合、労災と認定するものとする。
(一)勤務時間中及び勤務場所において、業務上の原因で事故に遭い怪我した場合。
(二)勤務時間の前後に、勤務場所において、業務と関係のある準備又は片付けの性質を有する業務に従事したことにより、事故に遭い怪我した場合。
(三)勤務時間中及び勤務場所において、職務を履行することにより暴力等の予期せぬ怪我を負った場合。
(四)職業病に罹患した場合。
(五)業務による出張期間中に、業務上の原因のため怪我を負い、又は事故の発生により行方不明になった場合。
(六)通勤途中に、本人に主要な責任のない交通事故又は都市の路線交通、旅客用フェリー、列車で事故に遭い負傷した場合。
(七)法律、行政法規で労災と認定すべき旨を定めているその他の状況。 」
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2022年11月22日