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税制改定の展望とその影響について~企業所得税~

中国ビジネスレポート 税務・会計
水野 真澄

水野 真澄

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2002年8月31日

1.外資企業と内資企業の所得税法の違い

 1994年に大掛かりな税制改正が行なわれ、流通税(増値税・営業税・消費税・土地増値税が新設)・個人所得税法に関しては、外資企業と内資企業の税法が統一されました。但し、企業所得税に関して言えば、内資企業に対しては以前適用されていた税法(国営企業所得税・集団企業所得税・私営企業所得税等)が廃止され、企業所得税法が新たに適用されることとなったものの、外資企業に対する所得税については、1991年に制定された「外国投資企業及び外国企業所得税法」が継続して適用されることとなり、内資企業との税制の統合は見送られました。

 この改正の結果、税率は外資企業と内資企業で33%に統一されたものの、税法自体は異なったままとなっています。

 外国投資企業及び外国企業所得税法(以下、外資企業所得税法)の特徴は、その豊富な優遇規定にあり、例えば以下の様な内容が規定されています。

第7条:経済特区、その他の地域の企業所得税(30%)を15〜24%に軽減する規定
第8条:タックスホリディ(二免三減等)に関する規定
第9条:地方税(3%)の減免に関する規定
第10条:利益の再投資に関する税額還付規定
 この様な優遇規定の結果、外資企業の場合は、標準税率は33%(企業所得税30%・地方税3%)であっても、実際に適用される税率は15%〜27%となっています。このため、内資企業からは「外資企業に対して超内国民待遇」として、不満の声があがっており、税制の統合が望まれています。

2.企業所得是統合の見通し

 内資企業と外資企業の企業所得税法の統一は、最近、特に中国のWTO加盟後、常に話題に上る内容となっています。企業所得税の統一自体はWTO加盟と直接的な関係はありませんが、WTO加盟によって生じる内資企業と外資企業の競争の激化を踏まえ、内資企業の競争力を確保するための措置として捉えればわかりやすいと思います。つまり、WTO加盟によって、外資に対する規制は全体的に緩和されていきますが、それと同時に、外資企業が(内資企業に比して)過度の優遇を受けている内容も整理され、内資企業と外資企業のハードルの調整が行なわれるという事です。企業所得税の統合は、来年(2003年)中に行なわれるとの観測が、現時点では有力視されています。企業所得税の統合により予想される変化は、「標準税率の引き下げ」と「外資企業に対する優遇措置の整理」と言われています。

 税率については、24〜28%の間で決定されると言われています。この税率は、外資企業に対する優遇税率が、15%(経済特区、経済技術開発区の生産型企業、その他)、若しくは、24〜27%(沿海開放区、経済特区及び経済技術開発区のある旧市街地に設立された生産型企業、その他)の2段階となっているため、後者の税率を意識した水準と言えます。

 外資に対する優遇措置の整理については、輸出型企業に対する優遇は早々に打ち切られる、といった観測が流れていますが、これはWTOの規約の関係より、それなりに妥当な観測と思われます。但し、それ以外の事項については全く明らかになっておらず、状況が不透明なままとなっています。

 私見になりますが、経済特区・保税区・輸出加工区等、15%の税率が適用される地域の税率自体は、そのまま維持される可能性が高いと考えています。標準税率が24〜28%に統一された段階で、これら15%の税率が適用される特定の地域以外の税率は、標準税率に統合されると推測されますので、この意味で、中国内で適用される税率はかなり整理されることになります。但し、タックスホリデー(二免三減措置など)、外資企業が利益を再投資に回した際に認められる納税済税額の還付制度、外資企業が配当を行なう際の源泉徴収税の免税措置、その他の優遇制度は、外資企業のみを対象にした優遇制度であり、これが整理されていく可能性は高いと考えられます。その一方で、外資企業が大型の増資を行なった場合、つまり、「60百万米ドル以上の増資」、若しくは、「15百万米ドル以上であり、かつ増資前の資本金の50%以上となる増資」を行なった場合は、タックスホリデーを再度享受することを認める通達が、2002年6月に国家税務総局より出されており、今一つ方向性が見極め難い状況であるのは確かです。

3.税率引き下げの影響(本邦のタックスヘブン対策税制との関係)

 標準税率が24〜28%の間のどの税率で決まるかによっては、日本企業に対して少なからぬ影響を与える結果となります。これは、日本の留保金課税(タックヘブン対策税制)の関係によるものです。タックスヘブン対策税制とは、簡単に説明すると以下の通りです。

 本来、子会社というのは、(本店の一部を構成する)支店・出張所とは異なり、独立した存在として扱われます。よって、子会社の利益が親会社に合算され、課税されることは無く、飽くまでも子会社が親会社に対して利益の配当を行なった際に、この配当に対する課税が行われることとなります。但し、以前より軽課税国に、租税回避目的で実体の無い子会社を作り、租税回避・租税の繰延を行なう企業があったことより、これを規制する税制が世界各国で考案され、適用されています。これが、タックスヘブン対策税制です。

 日本の場合、(1)日本居住者・内国法人が直接・間接で50%超の出資を行なっている、(2)実体の無い外国法人が、(3)25%以下の租税負担割合で課税されている場合に適用されることとなります。但し、ある出資者の出資比率が5%未満の場合、その出資者は適用対象とはなりません。この様な法人(外国関係会社)が留保金を有している場合、本邦側で親会社の所得に留保金を合算し、みなし課税が行われます。つまり、外国関係会社が配当を行なっていないにもかかわらず、配当が行なわれたとみなして課税が行なわれるわけです。

 中国は上述の通り33%の標準税率ですが、経済特区・その他の地域で15%・24%といった軽減税率が採用されており、軽課税国といっても差し支えないような実態となっています。中国の実態(外資企業の設立に関する規制と運用)を鑑みるに、外国企業が租税回避目的で実体の無い会社を中国内に設立することは先ず考えられず、タックスヘブン対策税制とは縁がないように考えられますが、たとえ実態があっても(実際に事務所を構え、管理運営を中国内で行っていたとしても)、特定の業種(卸売・銀行・信託・証券・保険・水運・航空運送)の場合は、関連者間取引が50%以上あれば、実体が無いものとみなされ、この税制の対象になってしまいます。この関係で、中国内でも留保金課税の適用対象となる可能性のある企業は存在することになります。

 一方、現在は日中租税条約によるみなし規定により、以下の内容については、「中国内で優遇措置が適用されていたとしても、この様な軽減が無かったものとして」本邦に於ける外税控除の適用、タックスヘブン対策税制の租税負担割合の判定が受けられます。

●外資企業所得税法第7条
 第1項:経済特区の外資企業、経済技術開発区に設立された生産型企業の税率を15%に減免する規定
 第2項:沿海経済開放区、経済特区・経済技術開発区の所在する都市の旧市街地に設立された生産型企業の税率を24%に減免する規定
 第3項:沿海経済開放区、経済特区・経済技術開発区の所在する都市の旧市街地、又は、国務院が定めるその他の地域に設立された外資企業で、エネルギー、交通、港湾、埠頭、又は、国家が定めるその他の項目の税率を15%に減免する規定

●外資企業所得税法第8条
 第1項、第2項、第3項:タックスホリデーの規定

●外資企業所得税法第9条
 地方税(3%)の減免規定

●第10条
 利益の再投資を行なった場合、この再投資額に相当する納付済み税額の40%を還付する規定

 つまり、外資企業所得税法に該当する減免であれば、そのほとんどが恩恵を受けなかったものとみなしてタックスヘブン対策税制の判定を受けることができます。但し、標準税率自体が修正され(その後、租税条約の扱いがどうなるかによりますが)、25%以下となった場合は、このようなみなし規定の恩恵が効力をなくしますので、タックスヘブン対策税制の適用対象となる日系企業の増加が予想されます。

 勿論、取引の非関連者基準が適用されるのは、卸売・銀行・信託・証券・保険・水運・航空運送という、中国では設立がかなり制限されている業種ですので、現段階で税率が変更されたとしても、それほど甚大な影響は無いかもしれません。但し、WTO加盟に際しての合意内容に基づく規制緩和が行なわれると、これらの業種の外資企業設立が、一般地域(保税区外)でも増加することとなりますので、結果としてタックスヘブン対策税制の影響がかなり深刻なものとなる可能性があります。その意味でも、外資企業企業所得税法改定の内容が気になるところです。

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