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ログイン2018年5月25日
2018年4月25日の国務院常務会議において、ベンチャー企業・中小企業支援のための、7種類の減税政策が決定されています。
根拠法規は、今後、公布される予定ですので、詳細は不透明ですが、方針決定されている減税措置の概要は、以下の通りです。
1.研究設備の一次償却
新規で購入した研究器具・設備などの、単年度償却金額の上限が、100万元から500万元に引き上げられます。これは、「固定資産加速度減価償却の改善に関する企業所得税政策の通知(財税[2014]75号)、以下、75号通知」の優遇条件の緩和です。
● 75号通知の優遇
75号通知は、研究開発支援のために、2014年1月1日以降に購入した研究開発専用の設備・機器に付いては、単体価格が100万元以内の場合は、一括償却(初年度損金算入)を認めています。また、100万元を超過する場合は、企業所得税法の減価償却期限の60%を下回らない年限で償却可能と規定されています。
⇒ 但し、特定産業(生物薬品製造、専用設備製造、輸送機製造、電子設備製造、機器計器製、ITサービス)の小規模企業は、研究開発だけでなく、生産経営関連設備も、この優遇措置の対象に含まれます。
今後、この基準が、100万元から500万元に引き上げられるため、初年度に損金として処理できる設備の範囲が拡大します。
2.中小企業の適用税率
企業所得税法では、小規模で利益が少ない企業に対しては、(標準税率25%に対して)20%の税率を適用する事が認められています。
但し、現時点では、「小規模薄利企業所得税優遇政策範囲の拡大の通知(財税[2017]43号)、以下、43号通知」の適用により(2019年度までの時限措置)、課税所得を半減した上で、20%で課税する事が認められているため、適用税率は、10%となります。
<小規模企業の基準(企業所得税法実施条例)>
● 工業企業
従業員数100人以内、且つ、資産総額3,000万元以内
● その他企業
従業員数が80人以内、且つ、資産総額1,000万元以内
<薄利(利益が少ない)の基準>
企業所得税法実施条例には、薄利の基準が年間課税所得30万元以下と規定されていますが、現時点では、43号通知により、年間50万元以下に緩和されています。
これが、今回の国務院常務会議決定により、100万元以下に引き上げられる事になります(2020年度までの時限措置)。
当該優遇措置は、条件に合致すれば(規模、及び利益の双方の条件に合致する事が必要)、10%の税率が適用されるものの、合致しなければ25%の企業所得税率となります。
課税所得の基準が100万元に引き上げられたことで、適用が認められる企業が増加するものと思われます。外資企業も、この優遇を受ける事はできるため、恩恵を享受できる企業が増加する事が期待されます。
3.国外に対する研究委託費用
「研究開発費用の税額調整の改善に関する通知(財税[2015]119号)」により、企業が外部機関・個人に研究開発活動を委託した場合、発生した研究費用の80%を委託者側で損金算入する事が認められます。119号通知では、国外機関に対する委託により発生した必要は、損金算入が認められていませんでしたが(以下、参照)、この制限が廃止されます。
● 119号通知の規定
企業が外部機構・個人に研究開発活動を委託する事により発生した費用は、費用の実際発生額の80%を、委託者の研究開発費として計上し、損金算入する事ができる。この場合、受託者側では、損金算入は禁止される。
委託外部研究開発費用の実際発生額は、独立企業間の原則に基づき確定しなければならない。委託者と受託者に関連関係がある場合は、受託側は、委託側に、研究開発費用支出明細状況を提出しなくてはならない。
企業が、国外企業・個人に研究開発活動を委託する場合、その発生費用は損金算入してはならない(この部分が、規制緩和され、海外企業・個人に委託して発生した研究開発経費も、損金算入が可能となる)。
4.ハイテク企業・科学技術中小企業の欠損繰り越し
企業所得税法第18条では、ある納税年度に発生した税務欠損は、5年間繰り越すことが認められており、その間に発生した課税所得と相殺する事が認められます。
これは、全ての企業に適用される規定ですが、今回の減税措置により、ハイテク企業、及び、科学技術系の中小企業の場合、繰越期間が10年に延長されます。
5.従業員教育費
企業所得税法実施条例第42条には、企業において発生する従業員の教育経費支出の損金算入制限を、当該企業の給与賃金総額の2.5%以内と規定しています(超過部分は繰り越し可能)。一方、ハイテク企業に対しては、「高新技術企業の従業員教育費用の損金算入制作に関する通知(財税[2015]63号)」により、損金算入制限が8%に引き上げられていますが、この基準が、全ての企業に対して適用されます(全ての企業において、教育費の損金算入制限は、給与総額の8%となります)。
6.資本金に対する印紙税(印花税)
2018年5月1日より、資本金帳簿に対する印紙税(払込資本金・資本準備金の払込金額に対して課税)を半額とし、その他の帳簿に対する印紙税課税が免除されます。
● 帳簿に対する印紙税
印花税暫定条例により、営業帳簿に対しては、1冊5元の印紙税の納税が義務付けられています。但し、資本帳簿に付いては、(5元の固定額ではなく)資本金と資本剰余金の合計額に対して、0.05%の納税となります。
今回の減税措置により、資本帳簿に対する納税が、資本金と資本剰余金の合計額の0.025%となり、その他の営業帳簿に対しては、納税不要となります。
7.ベンチャー投資企業
「ベンチャー投資企業とエンジェル投資者に関する税収試行政策の通知(財税[2017]38号)」では、法人型ベンチャー投資企業、及び、エンジェル投資家が、創業準備段階・初期創業期にある科学技術型企業へ出資した場合、満2 年(24 ヶ月)経過時に、投資額の70%を損金算入する事を認めています。この試行措置は、北京・天津・河北、上海、広東、安徽、四川、武漢、西安、瀋陽に設置される8か所の全面創新改革試験区、及び蘇州工業園区と規定されていましたが、この適用が全国に拡大されます。
● 財税[2017]38号に定める条件
財税[2017]38号に基づく優遇を享受するための条件として、以下の通り規定されています。今回の減税措置により、①―4)が、全国に拡大されます。
① 優遇を享受できるベンチャーキャピタル企業の条件
1)中国内(港澳台を含まず)に設立され、実質所得課税を受けている。
且つ、投資先企業の発起人ではない。
2)「ベンチャーキャピタル企業(発展改革委等10部門令第39号)」、若しくは、「私募投資基金監督管理暫定弁法(証監会令第105号)に合致して登録・運営されている。
3)投資後2年以内に、当該ベンチャーキャピタル企業(及び、関連会社・親族など)の創業期の科学技術企業に対する出資持分比率が50%以下である。
4)ベンチャーキャピタル企業が、当該通知に規定する試行地域に設立されている。
② 投資先である創業準備段階・初期創業期にある科学技術型の条件
1)中国内(港澳台を含まず)に設立され、実質所得課税を受けている。
2)投資を受けた際の人員数が200人以下であり、その内、大卒以上の学歴保有者が30%以上である。資産総額と年間売上高が、3千万元以下である。
3)投資を受けた時、設立60ヶ月以内である。
4)投資受け入れ時に未上場であり、出資後2年以内に、中国本土内で上場しない。
5)投資受け入れ時、及び、翌年度の、研究開発費用総額が、原価・費用総額の20%以上である。
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