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個人所得税6年ルールのリセット

中国ビジネスレポート 税務・会計
水野 真澄

水野 真澄

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2024年7月9日

2024年4月15日掲載の「個人所得税の6年ルールへの対応」では、2024年までに30日超の出国をしなかった場合の2025年の扱いについて、間違いがありました。これは、2019年当時の税務関係責任者の発言内容を筆者が誤解したためです。お詫びの上、本原稿を以て修正させていただきます。
 
1.外国人が全世界所得課税に切り替わるポイント
個人所得税法における外国人に対する課税原則は、「課税年度(暦年)に満183日以上中国に滞在すると全世界所得課税。未満であれば国内源泉所得課税(国外源泉所得に対しては非課税)」というものです。
 
ただ、個人所得税法実施条例・第4条に、以下の通り規定されていますので、結果として、満183日以上滞在年度が連続6年未満の場合は、中国内源泉所得課税でよいことになります。
● 個人所得税法実施条例・第4条
中国国内に住所を有せず(筆者注:外国人を意味する)、中国国内において累計満183日居住する年度が連続して6年未満で、主管税務機関に届出をした場合(注:実務上は備案は必ずしも要請されていない)、その中国国外を源泉とし、かつ国外の組織または個人が支払う所得について、個人所得税の納付を免除する。
 
また、個人所得税法改正(2019年1月1日)以前より居住を続けている場合、6年をどの様に計算するかという点ですが、この根拠となるのは、「中国国内に住所を有しない個人の居住期間判定基準についての公告(財政部・税務総局公告2019年第34号)」です。ここには、「6年間の起算年度は、2019年(を含む)以降の年度から開始して計算する」と規定されており、2018年度までの滞在はキャンセル、2019年1月1日よりカウントが開始されることとなります。
 
2.リセット方法
満6年到達による、外国人に対する国外源泉所得課税免除措置対象打ち切りを回避するための方法は、財政部・税務総局公告2019年第34号に、以下の通り規定されています。
● 6年間の何れかの1年において、中国国内の累計居住日数が183日に満たないか、若しくは一回の出国が30日を超えた場合、当該納税年度の中国国外を源泉とする所得で、且つ国外機構、或いは個人より支払われる所得については、個人所得税の納付を免除する。
 
つまり、連続6年を満たす前に、30日超続けて出国をすることで、カウントをリセットすることができます。
 
3.国家税務総局等の発表と実務
財政部・税務総局公告2019年第34号公布にあたり、2019年3月16日に、財政部税政司、税務総局所得税司、税務総局国際税務司の責任者が、以下の通り記者発表において、実例を用いた解説をしています。
 
<税務責任者の発表>
香港人張氏が2013年1月1日に深センでの仕事を開始し、2026年8月30日に香港帰任したとする。その期間は、深センに滞在を続けるが、2025年2月1日~3月15日は、香港に臨時帰省した。この例において、以下の通りとなる。
1)2018年度までの滞在はリセットされるので、2019年度からカウントを開始する。
2)2019~2024年の期間は、毎年満183日以上の滞在をしているが、連続6年以上の条件を満たしていないので、境外源泉所得に対しては課税しない。
但し、2019~2024年で満6年に達した。更に、2025年度には、(連続30日超出境はあるが)満183日以上の滞在をしているので、全世界所得課税である。
3)2025年は全世界所得課税であったが、2025年中に30日超の出境(2025年2月1日~3月15日)をしたので、満183日以上滞在記録はリセットされた。2026年度については、境外源泉所得に対しては課税が免除される。
 
記者発表の前提では、張氏は2013年から中国本土に居住していますが、カウントは2019年からですので、毎年、満183日を中国本土(深セン)で居住する前提において、以下の通りとなります。
 
2019年(1年目) 国内源泉所得課税
2020年(2年目) 国内源泉所得課税
2021年(3年目) 国内源泉所得課税
2022年(4年目) 国内源泉所得課税
2023年(5年目) 国内源泉所得課税
2024年(6年目) 国内源泉所得課税
2025年(全世界所得課税1年目) 全世界所得課税
2026年(再1年目) 国内源泉所得課税

記者発表原文はこちら
https://www.chinatax.gov.cn/n810341/n810760/c4148935/content.html

解説
2024年に連続6年となったため、2025年からは全世界所得課税となります。
ただ、記者発表の前提は、2025年に30日超の出境(2025年2月1日~3月15日)をするというもので、これはリセット要件を満たします。但し、2025年の居住日数は満183日以上となっているため、全世界所得課税は免れません。その上で、2026年はリセット後の1年目となるため、また国内源泉所得課税となります。

● 2024年4月15日掲載の「個人所得税の6年ルールへの対応」の間違いと原因
上記前提で、2024年4月15日掲載の「個人所得税の6年ルールへの対応」では、2025年に30日超の出国をすれば、2025年も国内源泉所得課税と記載しましたが、これは筆者が2019年当時の記者発表の出国(2月1日~3月15日)の前提を、2025年ではなく2026年であると誤読していたためです。
今回、記者発表の内容を正確に記載し、間違いを修正させていただきます。

3.国外源泉所得課税を回避するためには
2019年より満183日以上滞在を継続している外国人の場合は、全世界所得課税を回避するためには、2024年中に連続30日超の出境が必要です。
これをしないと、2025年の滞在日数を183日未満としない限り、2025年は全世界所得課税となります。
 
この様に、一旦全世界所得課税対象者となった場合でも、上記の通り、連続30日超の出境をすればリセットが可能で、翌年度からは再度国内源泉所得課税対象者となります。

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