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保税区域外貨管理弁法実施細則に基づくビジネススキーム

中国ビジネスレポート 金融・貿易
水野 真澄

水野 真澄

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2007年12月21日

記事概要

2007年10月8日に、「保税監督区域外貨管理弁法操作規定(匯総発[2007]166号)」が公布されました。これは、10月1日より施行されている、「保税監督管理区域外貨管理弁法」の実施細則として公布されたものですが、保税区域が関係する各種取引に際しての送金手続と、必要書類が具体的に記載されており、実務に有用な内容となっています。ここでは、操作細則に紹介された各種取引を解説すると共に、送金手続に関して必要となる手続を紹介します。

2007年10月8日に、「保税監督区域外貨管理弁法操作規定(匯総発[2007]166号)」が公布されました。これは、10月1日より施行されている、「保税監督管理区域外貨管理弁法」の実施細則として公布されたものですが、保税区域が関係する各種取引に際しての送金手続と、必要書類が具体的に記載されており、実務に有用な内容となっています。
ここでは、操作細則に紹介された各種取引を解説すると共に、送金手続に関して必要となる手続を紹介します。

1.保税区域内企業が、外国企業に対して支払いを行う場合(第13条)

① 外国から中国(保税区域内、保税区域外)に貨物が搬入される場合(第13条-1)

条文(基本形態)
この形態は、弁法には、「外国から貨物を購入し、貨物が直接外国から輸入通関(原文:報関)される場合、若しくは、輸入登録(原文:備案進口)される場合」と記載されています。

解釈と提出書類
ここに記載されている取引は、貨物が外国から中国に到着する取引で、輸入者が保税区域の企業の場合です。この形態に該当するケースとして、「貨物が保税区域外で輸入される場合(但し、保税区域の企業が輸入者になる場合)」と、「貨物が外国から保税区域に到着する場合」の二種類が想定されます。条文にある、「輸入通関(報関)される場合」というのは前者で、「輸入登録される場合」というのは後者が該当します。

この場合の外貨送金に際して必要な書類は、以下の通りと規定されています。

・保税区域の企業の外貨登記証(原文:保税管監区域外匯登記証)
・売買契約書
・コマーシャルインボイス
・その他の証憑書類

条文(応用形態)
これの応用形態として、弁法には、以下の二つの場合が規定されています。

1)保税区域内の企業が提出する輸入通関申告書(原文:進口貨物報関単)の正本上の経営企業が他の企業である場合。
2)保税区域内の企業が提出する、貨物輸入登録リスト(原文:進境貨物備案清単)の正本上の経営単位が他の企業である場合。

解釈と提出書類
上記の1)の場合、つまり、輸入通関申告書上の経営企業が他の企業である場合とは、「保税区域の企業が、区外一般区で貨物を輸入する場合で、貿易会社などに輸入を代行した場合を指します。この場合の必要書類として、上記(基本形態で必要となる書類)以外に、以下の書類の提出を求めています。

・対応する代理輸入協議書(原文:代理進口協議)

上記2)の場合、つまり、貨物輸入登録リスト上の経営企業が他の企業というのは、貨物が外国から保税区域に到着する場合で、保税区域でまず貨物の引き取る企 業が、保税区域の他の会社となる場合です。その後、保税区域の企業が、貨物をまず引き取った保税区域の会社から貨物を購入する事になります。この場合は、保税区域内で所有権の移転が行われた事を証明する為に、以下の書類が、上記(基本形態で提出が必要となる書類)以外に必要となります。

・対応する売買契約
若しくは、
・倉庫保管協議書(原文:??合同・協議)及び、貨物の所有権が区内企業に帰属する事を証明する倉庫会社が発行した証明書

② 保税区域の企業が外国企業から保税区域内で貨物を購入する場合(第13条-2)

条文
この形態は、弁法には「外国から貨物を購入する場合で、貨物の直接の来源が区内である場合」と規定されています。

解釈と提出書類
これは、外国企業が保税区域内で貨物を保管しており、それを、区域内で保税区域の企業に売却する取引を指します。外国企業が保税区域内に貨物を保管する場合は、区内の倉庫企業に保管委託する必要がありますので、外貨送金に当たっては、区域内の倉庫会社が発行した書類が必要となります。

この形態の取引において、対外送金上必要となる書類は以下の通りです。

・1-①で必要とされている書類
・貨物輸出申告書のオリジナル(原文:正本出口貨物報関単)、若しくは、その他の税関監督の証憑(原文:其他海関管監憑証)
・外国企業と区内の倉庫企業が締結した倉庫保管契約
・貨物の所有権が外国企業に帰属している事に関する区内倉庫企業が発行した証明書

③ 外国企業から貨物を購入し、貨物が国内区外から保税区域に入る場合(第13条-3)

条文
この形態は、弁法には「国外から貨物を購入し、貨物の来源が国内区外である場合」と規定されています。

解説と提出書類
ここで定義されている取引は、区外の来料加工貨物(所有権は外国企業)を保税区域で引き取り、区内で所有権が外国企業から保税区域の企業に転換される場合等が該当します。

この場合の対外送金に必要となる書類は以下の通りです。

・1-①で必要とされている書類
・貨物輸出申告書のオリジナル(原文:正本出口貨物報関単)、若しくは、税関監督が発行する当該貨物が区外で監督管理されていた事の証憑(原文:海関対該貨物在境内区外管監憑証)
・国内区外企業が発行する貨物の所有権が外国企業に帰属する事に関する証明書

④ 中国の輸入取引に保税区域の会社がオフショアで介入する場合(第13条-4)

条文
この取引は、弁法には、「外国から貨物を購入する場合で、その後、貨物を国内区外企業に販売し、更に、国内区外企業が国内区外で直接輸入通関する場合」と規定されています。
 
解説と提出書類
ここで定義されているのは、保税区域の企業がオフショア(中国外)で取引に関与する取引です。つまり、外国から中国に対して貨物が販売される場合(中国の輸入取引)で、保税区域の企業がオフショアで(輸入通関前に)外国企業から貨物を購入し、中国一般区(保税区域外)の企業に販売する形態です。結果として、中国での輸入者は中国一般区の企業という事になります。
また、外貨の支払いは、「中国一般区企業(輸入者)⇒保税区域の企業⇒外国企業」という形で行われます。この場合において、保税区域の企業の企業が、外国企業に対して外貨の支払いを行う場合に必要となる書類は以下の通りです。

・保税区域の企業の外貨登記証(原文:保税管監区域外匯登記証)
・売買契約書、コマーシャルインボイス
・対応する(輸入者である一般区企業のからの)入金通知(原文:収帳通知)、若しくは、元転計算書(原文:結匯水単)
・輸入者である一般区企業の輸入通関証明のオリジナル(原文:正本進口貨物報関単)

また、輸入通関証明の正本には、銀行が外貨支払企業の名称、支払日、金額を記載しなければならない事、また、輸入者である一般区の企業が支払いを行う場合は、通関証明の正本は外貨支払銀行に保管されていなくてはならない事が規定されています。その上で、銀行は「輸入通関証明正本は保管済と注記」し、外貨の支払い金額・日時・代金受領企業を記載した通関証明のコピー(原文:複印)、若しくは、電子ファイル(原文:電子底帳)に注記し、処理済の証明とする事が要求されます。
 

2.保税区域内企業が、国内区外企業に対して支払いを行う場合(第14条)

①  保税区域の企業が区外から貨物を購入する場合(第14条-1)

条文
この形態は、弁法には、「国内区外から貨物を購入し、その貨物の来源が国内区外である場合」と規定されています。

解説と提出書類
この取引は、国内一般区の企業と保税区域の企業の取引で、貨物も国内一般区から保税区域に搬入されるものです。一般区の企業にとっては輸出取引になり(輸出通関者は一般区の企業)、代金の受け払いは外貨で行われます。

この決済に必要となる書類は以下の通りです。

・保税区域の企業の外貨登記証(原文:保税管監区域外匯登記証)
・売買契約書
・コマーシャルインボイス
・貨物輸入登録リストの正本(原文:正本進境貨物備案清単)、若しくは、一般区企業の輸出通関証明の正本(原文:境内区外企業正本出口貨物報関単)

② 中国からの輸出取引に保税区域の企業がオフショアで介入する場合(第14条-2)

条文
この取引は、弁法には「外国企業と契約を締結し、貨物は国内区外企業が輸出通関をする場合」と規定されています。

解説と提出書類
ここで定義されている取引は、中国一般区の企業が輸出を行う場合(輸出名義人は中国一般区企業)に、保税区域の企業がオフショアで購入し、それを、外国企業に販売する取引です。この場合の決済は、「外国企業⇒保税区域の企業⇒中国内一般区の企業」という形になります。
保税区域の企業から一般区の企業に対して、外貨決済を行うに際しての必要書類は、以下の通りです。

・②-1で要求される書類
・保税区域の企業の当該取引に関連する入金通知(原文:収?通知)、若しくは、元転計算書(原文:結匯水単)

③  保税区域内で区外(一般区)の企業から貨物を購入する場合(第14条-3)

条文
この取引は、弁法には、「国内区外から貨物を購入し、貨物の来源が区内である場合」と規定されています。

解説と提出書類
一般区の企業(国内区外企業)が、保税区域内で貨物が保有できるかどうか、また、その様な貨物を保税区域内で売買し、決済代金を受け払いできるかに付いては、旧保税区外貨管理弁法(匯発[2002]74号)では明確にされていませんでした。
但し、旧物流園区外貨管理規定(匯発[2005]92号)には、これが可能である事、また、その手続が明記されており、今回の保税区域外貨管理弁法でもこの内容が踏襲されています。
この場合は、取引に関する証憑と共に、一般区の企業が保税区域内で貨物を保管する場合は、区内の倉庫会社に保管委託をする必要がありますので、関連書類(区内倉庫会社の保管証明等)の提出が要求されます。

・保税区域の企業の外貨登記証(原文:保税管監区域外匯登記証)
・売買契約書
・コマーシャルインボイス
・貨物入境登録リストの正本(原文:正本進境貨物備案清単)、若しくは、貨物輸出申告書の正本(原文:正本出口貨物報関単)、若しくは、その他の税関監督の証憑(原文:其他海関管監憑証)
・一般区企業(国内区外企業)と区内の倉庫企業が締結した倉庫保管契約
・貨物の所有権が一般区企業(国内区外企業)に帰属している事に関する区内倉庫企業が発行した証明書

 
3.一般区の企業(国内区外企業)が保税区域内から貨物を購入して支払いを行う場合(第15条)

① 一般区の企業が外国から直接、若しくは、保税区域内から貨物を輸入する場合で、貨物代金の支払い先が保税区域の企業である場合(第15条-1)

条文
この取引は、弁法には、「貨物が区内から直接入る、若しくは、海外を来源とする貨物が区内を経由せずに直接国内区外で輸入通関される場合で、区内企業に対して支払いが行われる場合」と規定されています。

解説と提出書類
ここで規定される取引は、以下の2形態です。

1)保税区域の企業が保税区域で保有している貨物を、一般区(国内区外)企業が輸入により購入し(貨物は、区内⇒区外に搬出される)、貨物代金を保税区域企業に支払う場合。

因みに、貨物が保税区域から一般区に搬入される際に、一般区の企業が輸入通関を行います。

2)一般区の企業が保税区域の企業からオフショアで貨物を購入し、(一般区の企業が)輸入通関をし、輸入貨物代金を一般区企業から保税区域の企業に支払う場合。

以上の双方とも、一般区の企業が決済に当たり要求される書類は同様で、以下の通りの内容になります。

・保税区域企業の外貨登記証のコピー
・売買契約書
・コマーシャルインボイス
・支払方法に基づく有効な証憑書類

②  保税区域内から区外に搬出される貨物を、一般区(国内区外)企業同士が売買をした場合(第15条-2)

条文
この取引は、弁法には、「国内企業が保税区域内から輸入通関する場合で、その他の区内企業に対して決済を行う場合」と規定されています。

解説と提出書類
ここで規定されている取引は、一般区(国内区外)企業Aが保税区域内に保管している貨物を、一般区(国内区外企業)Bが購入する取引です。
この売買に伴い貨物が保税区域から一般区に搬入され、(購入した)一般区企業Bが輸入通関を行った上で、一般区企業Aに対して外貨送金を行う場合が想定されています。
この様な取引、つまり、保税区域内の貨物を、一般区の企業同士が売買し、それに伴って外貨送金を国内で行う取引は、やはり、旧保税区外貨管理弁法には明記が無く、旧物流園区外貨管理規定に扱いが明記されていたものです。新しい保税区域外貨管理弁法にも、この、旧物流園区外貨管理規定の規定が踏襲されています。

この国内区外企業同士の外貨決済に必要となる書類は以下の通りです。

・3-①で要求されている書類
・一般区(国内区外)企業Aと区内の倉庫会社の倉庫保管協議書
・区内の倉庫会社が発行した、貨物の所有権が一般区企業Aに帰属している事の証明書

③  貨物が保税区域から一般区に搬入される場合で、一般区企業から外国企業に対して支払いが行われる場合(第15条-3)

条文
こ の取引は、弁法には、「貨物が保税区内から輸入通関される場合(区外に搬出される場合)で、国外に対して支払いが行われる場合」、更には、「貨物の来源が 国内区外であるが、保税区内から輸入通関される場合(区外に搬出される場合)で、国外に対して支払いが行われる場合」と規定されています。

解説と提出書類
ここで定義されている取引は、以下の2種類に分かれます。

1) 保税区域内に外国企業が保管している貨物を、一般区(国内区外)の企業が購入する場合で、貨物が保税区域から一般区に搬入され、一般区の企業によって輸入通関が行われる場合。

2) 来料加工貨物の保税区域遊。
来料加工貨物を保税区域に一旦搬入した上で(保税区域内での貨物の所有権者は外国企業のまま)、一般区(国内区外)に再度搬出する場合。

また、貨物の輸入通関は、(区内⇒一般区への搬入時点で)貨物の購入者である一般区の企業が行う。

上記2種類の取引に関する対外送金の必要書類は、以下の通りと規定されています。
1) の場合
・3-①で要求されている書類
・貨物入境登録リストの正本(原文:正本進境貨物備案清単)
2) の場合
・3-①で要求されている書類
・外国企業と区内の倉庫企業が締結した倉庫保管契約
・貨物の所有権が外国企業に帰属している事に関する区内倉庫企業が発行した証明書
・来料加工企業の輸出通関証明正本(原文:其他境内区外企業的正本出口貨物報関単)

4.保税区域内の企業同士の売買(第17条)

保税区域内で、保税区域の企業同士が貨物売買を行った場合は、外貨でも人民元でも決済が可能です。但し、外貨で決済を行う場合は、保有外貨からの支払いに限定され、銀行で外貨を購入しての支払いはできません。また、決済に際して必要となる書類は以下の通りです。

・保税区域の企業の外貨登記証(原文:保税管監区域外匯登記証)
・売買契約書
・コマーシャルインボイス
・その他の証憑書類
 

5.国内区外企業が保税区内貨物を購入する場合の消し込み照合

一般区の企業(国内区外企業)が、保税区域内の貨物を購入する場合には、輸入消し込み照合手続(原文:進口核銷手続)が必要である事が規定されています。また、保税区域内の貨物の所有権が、その他の国内区外企業に帰属する場合で、国内区外企業が貨物所有権保有者のその他の国内区外企業に支払いを行う場合(つ まり、保税区域内の貨物を、国内区外企業同士で売買して、また、外貨決済も行われる場合)は、輸入支払い照合表(原文:貿易進口付匯核銷単)に記入し、銀 行は、支払い証明上に、「保税監督区域外振り替え(転匯)」と注記する事が求められています。更に、外貨支払いを受けた企業も、外貨受領後、核銷手続を行う必要があります。

(以上)

(2007年12月記・6,319字)

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