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ログイン2007年12月30日
これまで外資企業と内資企業とで別々であった中国の法人税法が今年1月1日から統一され、新しい「企業所得税法」として施行される。外資と内資の区別が撤廃されたことに伴い、80年代から続いてきた経済特区などの「外資優遇税制」は同時に廃止される。新しい「企業所得税法」は昨年3月に公布されているが、その詳細を定めた「実施条例」は今月公布されたばかりである。
これまで外資企業と内資企業とで別々であった中国の法人税法が今年1月1日から統一され、新しい「企業所得税法」として施行される。外資と内資の区別が撤廃されたことに伴い、80年代から続いてきた経済特区などの「外資優遇税制」は同時に廃止される。新しい「企業所得税法」は昨年3月に公布されているが、その詳細を定めた「実施条例」は今月公布されたばかりである。
法人税制改革は中国進出企業だけでなく、これから中国に進出しようとする企業にも与える影響は大きい。今回の「企業所得税法実施条例」のポイントを解説する。
1.基準税率の改定
従来、中国の企業所得税は外商投資企業と中国居民企業とで税法が「二本立て」となっていたが、6年前のWTO加盟時の政府公約に沿って本年1月1日から統一され、基準税率25%に一本化された。
今回の改定は従来の優遇税率が適用されてきた製造業の外資企業等にとっては増税となるが、従来から優遇税制の対象外とされてきた非製造業の外資企業にとっては、逆に減税となる。
2.拡大された損金控除範囲
経費の損金控除(非課税扱い)の基準が企業所得税法実施条例第三章(第27~55条)で具体的に定められた。主なものは以下のとおり。
(注)以下、特に法令名を明示しないものは「企業所得税法実施条例」を指す。
◇合理的な範囲での実額支給給与
(第34条、これまで内資には1,600元の損金算入限度があった)
◇福利費支出、労働組合費、職員教育経費(第40~42条、それぞれ給与総額の14%、2%、2.5%が上限).
◇交際費の60%部分(第43条、売上高の0.5%が上限)
◇売上高15%までの広告費(第44条)
◇同一グループ内企業間における管理費の付け替えについては損金算入が認められない(第49条)。
3.減価償却基準の緩和
これまでの標準償却年数(建物20年、機械設備10年、器具工具5年)に、新たに車両.等4年、電子設備3年が加わった(第60条)。また、劣化の激しい資産は60%まで年数短縮可、あるいは通常の2倍の加速償却を選択することもできる(第98条)。
このほか残存価額を、従来の取得価額の10%から、企業の任意で決められるようになり、中国でも1元まで償却することができるようになった。ただし、償却方法の変更は年度開始前に税務局へ届け出る必要がある(第59条)。
4.新しくスタートした優遇税制
従来の外資だけに適用された優遇税制が廃止された一方で、内外差別の無い、すべての中国企業を対象とした新しい優遇税制がスタートすることになった。以下、第四章「税収優遇」(第82~102条)に定められている新しい優遇税制を概観してみよう。
●企業所得税の免税(第86条)
野菜、穀類、薯類、植物油の原料、豆類、綿花、麻類、製糖類、果物、堅果の栽培/農作物の新種の選択育成/漢方薬材種の栽培/林木の育成及び植樹/家畜、家禽の飼育/林産品の採集/灌漑、農業品一次加工サービス、獣医、農業技術の普及、農機作業及び補修等の林業、牧畜業、漁業のサービス事業/遠洋捕獲漁業
●企業所得税の半減(第86条)
花卉、茶及びその他の飲料作物及び香料作物の栽培/海水養殖、内陸養殖
●インフラ投資(第87条)
国務院が今後定める「公共インフラ施設事業企業所得税優遇目録」に該当する埠頭、飛行場、鉄道路線敷設、道路、都市公共交通、電力、水利等の公共インフラ施設項目の投資経営所得は生産経営収入の初年度から起算して、第1~3年目の企業所得税を免除し、第4~6年目の企業所得税を半減する。ただし、請負経営、請負建設及び自家使用する場合は優遇適用されない。
●環境保護・省資源事業(第88条)
公共汚水処理、公共ごみ処理、メタンガス総合開発利用、省エネルギー・排気ガス削減の技術改造、海水淡水化等、中国政府が定める環境保護、省エネルギー、節水事業も同様に第1~3年目の企業所得税を免除、第4~6年目の企業所得税を半減する。
●技術移転(第90条)
一納税年度内における技術譲渡所得の500万元以下の部分は企業所得税を免除し、500万元を超える部分は企業所得税を半減する。
●配当所得課税(第91条)
非内国企業が内国企業から受け取る配当所得は10%の税率により企業所得税を源泉課税計算する。
●中小企業優遇(第92条)
以下の条件を満たせば、「収益力の低い小企業」に認定され、20%の軽減税率が適用される。
<小企業優遇の基準>
制限・禁止業種以外の事業に従事し、同時に以下の条件を充たす企業
(1) 工業企業で年度課税所得額が30万元、従業員数が100人、資産総額が3000万元をそれぞれ超えない企業
(2) その他企業で、年度課税所得が30万元、従業員数が80人、資産総額が1000万元をそれぞれ超えない企業
(注)売上高ではなく、課税対象所得金額であることに注意
●ハイテク企業優遇(第93条)
中国で技術特許権を登記し、政府が今後定める「国家の重点支援するハイテク領域」規定の内容に適合する企業には15%の優遇税率が適用される。
●研究開発優遇(第95条)
企業の新技術、新製品、新工芸技術の開発において生じる研究開発費用が無形資産を形成せず、当期の損益に計上される場合、実額を損金控除した上で、研究開発費用の50%を割増損金控除することができる。無形資産を形成する場合、無形資産の原価の150%をもって償却計算する。
●身体障害者雇用優遇(第96条)
企業が身体障害職員を雇用する場合、実際に身体障害者に支払う給与実額を損金控除した上で、身体障害従業員に支払う給与の100%を割増損金控除する。身体障害職員とは、「中華人民共和国身体障害者保障法」が適用される従業員を指す。
●ベンチャー企業優遇(第97条)
ベンチャーキャピタル企業が持分投資形式で未上場の中小ハイテク企業に対し2年以上の期間にわたり投資する場合、当該中小ハイテク企業への投資額の70%を持分保有期間の満二年目に当該ベンチャーキャピタル企業の課税所得額から控除する。当年度に控除しきれない場合、翌年の納税年度に繰越して控除する。
●資源総合利用企業優遇(第99条)
政府が今後制定する「資源総合利用企業所得税優遇目録」の規定に適合した生産収入については90%を売上総額として税額計算する。
●環境保護・省エネ設備優遇(第100条)
政府が今後制定する「環境保護専用設備企業所得税優遇目録」、「省エネルギー、節水専用設備企業所得税優遇目録」及び「安全生産専用設備企業所得税優遇目録」に適合した環境保護、省エネルギー・節水、安全生産等の専用設備を使用する場合、当該専用設備投資額の10%を企業の当年度の所得税額から税額控除する。当年において控除できない部分は、翌年以降の5納税年度にわたり繰越控除が可能。
前項規定の専用設備は自社購入かつ自社使用を条件とし、専用設備を購入後5年以内に他に譲渡、賃借した場合、税優遇は取り消され、既に控除した企業所得税額を追加納付する。
●企業が同時に異なる所得税率の事業に従事する場合、当該優遇事業の所得は単独で計算し、企業の期間費用を合理的に配分するものとされる。単独で算定できない場合は、企業所得税収優遇も享受できない(第102条)。
5.移転価格税制の文書化
第114条では確定申告書に以下の移転価格税制関係の「年度関連取引報告表」添付が義務付けられた。
・関連者取引に関係する価格、費用の設定基準、計算方法及び説明等の文書
・関連間取引に関係する資産、使用権、役務、資金等の再販売価格或いは最終販売価格
・他企業の移転価格調査参考資料として用いる自杜の製品価格、価格設定方式及び利益水準等の資料
なお移転価格更正税額に対する遅延利息は人民元貸付金利を基準に計算されることとなった。上記の報告報告書を提出しなかった場合も、罰金として通常の遅延利息に5%が加算される。
6.「二免三減半」の移行措置
新税法への移行措置として本年度から5年間をかけて、タックスホリデー未適用のすべての外資企業に二免三減半の所得税優遇が強制適用されることになっており、2012年度末をもって外資のタックスホリデーの適用は全面的に終了することとなる。
また、「製品輸出型企業に対する優遇制度」(製品輸出割合が70%以上の企業は所得税率が半減される制度)は昨年末をもって廃止された。これはWTO加盟当時に「隠れた輸出補助金」として批判を浴びていたものだ。
7.香港重複課税の問題
企業所得税法第2条では、香港や日本の外国法人であっても、実質的な管理機構が中国国内にあれば中国の内国法人とみなされると定めている。
たとえば、香港にぺ一パーカンパニーを持ち、実際には中国内にある委託加工工場が実質的な管理機構であると税務当局からみなされれば、今後は香港ペーパーカンパニー法人の利益が中国内の委託加工工場の企業所得税として中国内で合算課税されることとなる。
ところが、華南委託加工工場は日本のタックス・ヘイブン対策税制でも課税対象とされることから、香港法人の利益に中・日・香港の3国税務当局から三重課税されるという事態も発生し得ることになる。これを回避するためには、今後、香港の利益はすべて配当してしまうことが無難といえるだろう。(2007年12月記・3,542字)
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