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ログイン2003年10月20日
<金融・貿易>
増値税の輸出還付税率引き下げの内容と影響
2003年10月13日に、財政部・国家税務総局より「輸出貨物の還付税率の調整に関する通知(財税[2003]222号)が出され、増値税の還付税率が2004年1月1日より変更されることとなりました。
増値税の還付税率の引き下げは、以前より噂されていましたが、具体的な還付税率の引き下げは、当初予想されていた方法(標準還付税率の単純な引き下げ)とは少々異なり、財貨の種類に応じて還付税率を細かく変更する方式が採用されています。
現在の徴税・還付の方法と、通知の概略を纏めると、以下のようになります。
(1) 増値税の税率
増値税の税率は、(輸出のゼロ税率を除けば)17%と13%の二種類ですが、具体的には以下の通りとなっています。
税率13% 食糧、食用植物油、水道水、スチーム、冷気、熱水、ガス、石油液化ガス、天然ガス、メタンガス、消費者用石炭製品、図書、新聞、雑誌、飼料、化学肥料、農薬、農業機器、農業用合成樹脂フィルム、国務院が定めるその他の財貨
税率17% 標準税率(上記以外)
(2) 現行の還付率
還付率は、税率に応じて以下の通り設定されています。
●17%の税率が適用される財貨の標準還付税率は13%。
ただし、一部貨物に関しては17%(全額還付)・15%という還付率を採用。
●13%の税率が適用される財貨の標準還付税率は13%(全額還付)
ただし、農産物については、5%の還付税率を適用。
(3) 今回の還付税率変更の概要
今回の通知による還付方式の変更は、大雑把に言えば以下の通りです。
●17%の徴税率が適用される財貨の標準還付率は13%に据え置かれたが、現在、還付税率として、17%・15%が適用されているものについては、(一部を除き)還付率を13%に引き下げる。さらに、現在、13%の標準還付率が適用されている財貨のうち、一部については、還付率を11%・8%・5%に引き下げ。若しくは還付を打ち切る。
●13%の徴税率が適用されている財貨の標準還付率を、13%(全額還付)から11%に引き下げる。また、5%の還付率が適用されている財貨(農産物)については、現行の還付率を維持するが、一部については還付を打ち切る。ただし、食用粉類(小麦粉など)とブロック肉類(あひる・がちょう・うさぎ)については、例外的に還付率を5%から13%に引き上げる。
以上が、現行の増値税の徴税、及び輸出還付の概要ですが、今回の通知の内容とその影響を、以下、さらに詳細に点検することとします。
(1) 現行の還付率
●17%還付(全額還付)
一般機械及び設備、電器及び電子製品、車両運搬具、機器計器、綿花、綿類紡織品(糸、布)、服飾製品。
●15%還付
鉄鋼及び鉄鋼製品、有機化学工業原材料、無機化学工業原材料(一部は13%)、染料及び顔料(一部は13%)、ゴム製品、おもちゃ及びスポーツ製品、靴、プラスティック製品、紡績原材料及び紡績製品、時計、陶器、セメント、照明具、ハンドバック、旅行用品
●13%還付
標準還付率。
17%の税率が適用される財貨の内、特段の規定がないものについては、13%の還付税率が適用される。
(2) 2004年1月1日以降の還付率
●17%還付(全額還付)
船舶、自動車及びその主要な部品、デジタル制御式工作機械、加工マシニングセンター、ユニット工作機械、クレーン、工事用機械・設備、建築用機械、採掘用機械、デジタル制御式電話、電報交換機、光通信設備、医療機器、列車、10KG以下の携帯用デジタル式自動データ処理機、航空機、宇宙飛行機、金属冶金設備、プリント基板
●13%還付(標準還付率)
17%の税率が適用される財貨の内、特段の規定が無いものについては、13%の還付率が適用される。
また、従来の還付率が17%・15%であった財貨については、特段の定めがあるものを除き、当該還付率が適用される。
●11%還付
ガソリン、亜鉛の塊。
●8%還付
モリブデン鉱及びその精鉱、黄燐及びその他の燐、ニッケルの塊、フェロマンガン、フェロシリコン、フェロシリコンマンガン、フェロクロム、アルミニウムの塊
●5%還付
コークス、半成コークス、コークス用炭、精錬銅及び合金銅の塊、燃結・苛性マグネシア、その他の鉱物(関税番号25309090)、ステアタイト、タルク、ほたる石、長石、白榴石、天然の硫酸バリウムと炭酸バリウム、ヒドラジン・ヒドロキシルアミン及びこれらの無機塩及びその他の金属酸化物、オキソ金属酸塩、ペルオキソ過金属酸塩、炭化物、希土金属・イットリウム・スカンジウム及びこれらの混合物の無機又は有機の化合物、パーティクルボード及びその他これに類するボード
●還付なし
石油・歴青油(原油に限る)、航空機用灯油、照明用灯油、軽ディーゼル油、5〜7号燃料油、その他のディーゼル油及びその他の燃料油、潤滑油、潤滑グリース、潤滑油基油、その他重油(前述の油を基本成分とし、名前の挙がっていないもの)、廃油、原木、たが材、割ったポール、ウッドチップ、木製の棒、縦にひく・割る・平削り・丸はぎした厚さ6ミリを超える木材、表面装飾用薄板など、縦にひく・割る・平削り・丸はぎした厚さ6ミリ以下の木材、ざねはぎ・溝つけなどの加工をいずれかの縁・面に沿って連続的に施した木材、タキソール製品、使い捨て木製箸、コルク及びコルク製品、紙、パルプ、板紙、鉱石、スラグ及び灰、沈殿銅、粗銅、電解精製用陽極銅、銅のくず、プラチナ、ヤギの毛、ヤギの皮、希土類金属鉱、ポタシウムフルオタンタレート、ベンゼン、非合金銑鉄、合金銑鉄、鉄鋼くず、電気鍍金用のニッケル陽極、アルミニウムのくず、タングステンのくず、アンチモンのくず、天然燐酸カルシウム、天然燐酸アルミニウムカルシウム、リン酸塩を含む白亜、天然黒鉛、その他の粘土など(関税番号2508)、人造コランダム、酸化アルミニウム
(1) 現行の還付率
●農産物については5%を還付。
●それ以外については全額(13%)を還付。
(2) 2004年1月1日以降の還付率
●13%還付(全額還付)
食用粉類(小麦、トウモロコシ、うるち米など)、ブロック肉類(アヒル、がちょう、ウサギなど)。
●11%還付(標準還付税率)
13%の税率が適用される財貨の内、特段の規定が無いものについては、11%の還付税率が適用される。
●5%還付
特段の規定の無い農産品。
●還付なし
ヤギの毛、ウナギの稚魚、骨、原木など。
新還付率の適用は、輸出通関書類に税関が記載した輸出日(2004年1月1日以降か否か)を基準として判定されます。
また、2003年10月15日迄に対外的に契約した特定のプラント設備(輸出価値が2百万米ドル以上のものに限る)及び大型機電製品(一台の価値が1百万米ドル以上のものに限る)の輸出で、2004年1月1日以降に輸出するものについては、2003年11月15日迄に輸出契約(正本・副本)を主管税還付部門に持参し、登記登録・一定の批准を受ければ、現行の還付率による還付が認められます。
以上の通り、基本税率(17%)で徴税されている財貨に対する、標準還付率(13%)が変更になる訳ではありませんが、還付率が切り下げられる、若しくは打ち切られる財貨は少なからずあり、輸出企業に対する影響が懸念されます。
輸出加工企業の中には、還付率の引き下げを踏まえて、国内原材料の使用を輸入原材料に切り替える事を検討している企業も見受けられます。
勿論これは、「輸入原材料と国内原材料の価格差」と、「進料加工を行なうにおいて、国内品・輸入品各々の増値税還付率の差」によって採算性が変わってきますので、一概に有利・不利を語る訳には行きません。但し、双方についての課税方式の違いを理解しておく事は、採算性の検討にあたって有意義であると考えられます。
<ケース・スタディ>
●進料加工企業(製品は全量輸出)について、各々の場合の採算(課税体系の違い)を計算。
A.全て輸入原材料を使用した場合
B.一部、国内原材料を使った場合
●増値税の徴税率は17%。還付税率は13%が適用されるものとする。
1)増値税還付の基本計算式
●免税・控除・還付方式を採用する場合の還付不能額の計算式
還付不能額=
輸出財貨FOB価格x(徴収税率−還付税率)
−免税輸入原材料の関税評価額x(徴収税率−還付税率)
●増値税の納税額の算定式
当期納税税額=
当期国内販売税額−(当期全仕入税額−当期控除・還付不能額)
−前期相殺・控除未了仕入税額
2)具体的な計算
A.製品輸出200、輸入保税原材料150(よって、付加価値50)とする。
●還付不能額の算定
200x(17%−13%)−150x(17%−13%)=8−6=2
●納税式
国内販売税額(0)−{仕入税額(0)−還付不能額(2)}
↑ ↑ ↑
国内販売なし 国内調達なし 上記算式
=0−(0-2)=2
●結果
2が納税額となる。
B.製品輸出200、輸入保税原材料100、国内調達原材料50(付加価値は50)とする。
●国内調達税額 50の原料を仕入れる際に支払った増値税=50x17%=8.5
●還付不能額=200x(17%−13%)−100x(17%−13%)=8−4=4
●納税式
国内販売税額(0)−{仕入税額(8.5)−還付不能額(4)}
↑ ↑ ↑
国内販売なし 国内調達なし 上記算式
=0−(8.5−4)=−4.5
●結果
以上の結果、マイナスになるので、4.5の還付請求が可能。
ただし、既に8.5仕入時に納付しているので、税負担は4ということになる。
3) 上記の計算の解説
●国内品を使うと使わないで、何故負担額が変わるか。
⇒ 進料加工の場合は、中国で付いた付加価値に対して増値税がかかる。
製品価格を200・原料価格を150とすると、差額の50に対して増値税負担(還付の欠け目:17−13%=4%)が生じる事になる。
つまり、50x4%=2が増値税負担となる。
一方、進料加工の算式の免税輸入原材料に該当しなければ、製品価格に対して増値税負担(還付の欠け目)がかかる。
つまり、200x4%=8が増値税負担となる。
つまり、徴税率17%・還付税率13%の場合、最大の税負担は製品価格に還付の掛け目(4%)を乗じた額となる。これは、全ての原材料に国内品を使う場合、若しくは、輸入原材料を使用するが、進料加工の手続によらない場合である。
一方、全て原料輸入が免税輸入の適用対象外となった場合は、付加価値x4%という事になるが、これは、進料加工を適用するという前提で、原料を100%輸入した場合が該当する。
●国内品を使った場合は、どういう影響があるか。
⇒ その部分は進料加工の免税原材料の計算式から外れる。よって、国内原材料部分は、増値税負担が増える
<注意>
●進料加工の増値税課税は、地域によって対応が異なり、以上のケース・スタディが該当しない地域もあります。この理由・経緯については、弊著「中国ビジネス・投資Q&A 2003年改訂版(キョーハンブックス)」Q44をご参照ください。
●商品名の翻訳にあたっては、「中国関税率表(エヌ・エヌ・エー)」を参考にしています。
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