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ログイン2012年1月30日
人民銀行の周小川行長のインタビュー記事【3,874字】
はじめに
本稿では、人民銀行の周小川行長の発言を紹介する(新華網北京電2012年1月8日)。
1.過去5年間、わが国の金融マクロ・コントロールはどのような進歩を得たか
(キーワード:国際金融危機、政策の事前調整・微調整)
2007年の金融工作会議は、金融改革・発展・開放面でいくつか重大な内容を設定したが、その後国際金融危機に遭遇することとなった。今回の危機爆発の速度は皆の予想を超えるもので、わが国への衝撃が顕著に大きかった。以後我々は主要な精力を危機の衝撃への対応に注ぎ、適度に緩和した金融政策を採用し、自信を奮い立たせ、内需を拡大し、わが国の経済は穏やかな反転上昇を率先して実現した。
中国経済の好転の勢いが徐々に強固となるにつれて、インフレ期待・物価上昇圧力がある程度増大した。我々はタイムリーに金融政策の方向・テンポ・程度を調整し、金融政策を穏健に回帰させた。マクロ・プルーデンス管理を強化し、流動性の総バルブをしっかり把握して、マネー条件を徐々に常態に誘導・回帰させ、物価の速すぎる上昇の勢いに有効に歯止めをかけ、経済の平穏で比較的速い発展の維持・経済構造の調整・インフレ期待の管理の関係を適切にうまく処理した。
2010年10月以降、外需の弱化・国内経済の成長鈍化に対して、適時程度に事前調整・微調整を進め、小型・零細企業及び建設中の国家重点プロジェクトへの金融支援を増やすよう金融機関を誘導した。経済は平穏で比較的速い発展を維持し、政策による刺激から自主的な成長へと秩序立って転換している。
ここ5年間、金融マクロ・コントロール手段の体系は更に豊富になり、景気変動抑制的な(カウンターシクリカルな)金融マクロ・プルーデンス管理制度の枠組みが初歩的に確立した。コントロール・メカニズムの建設・転換は重大な進展を得、コントロールの科学性・有効性・展望性は更に高まり、「成長の安定、インフレの抑制、貿易黒字の減少、内需の拡大、構造の調整」という目標実現を力強く促進した。
2.2012年のマネー・コントロールの新たな意義は何か
(キーワード:経済情勢、穏健、政策の道具箱)
(1)内外経済情勢
総じて見ると、2012年の世界経済が直面する困難・不確定性は比較的多く、これについては①注意して観察しなければならず、②政策の準備を強化してしっかり対応しなければならない。
国際的に見ると、欧州ソブリン危機の変転、米国経済の回復の不確定性、新興市場経済国の成長の減速等の問題が存在し、もしこれらの要因が一気に加われば、外部環境は余り良くない。更に重要なことは、国際経済が目まぐるしく変化しており、発展態勢が現在はっきり見えていない。このため、このような情況にもいくらかの対応を準備しなければならない。
国内経済を見ると、国際経済情勢の影響を受けて、輸出の伸びがある程度鈍化し、経済成長の下振れ圧力が増大している。同時に、物価上昇に影響を与える要因は依然かなり多く、とりわけ土地・労働力・環境保護コスト要因は長期に存在する。今年はまた地方政府の定期交替期にあたり、各地方の都市化・工業化推進への情熱は高く、インフレについてはなお油断できない。これらの問題は相互に交錯し積み重なっており、このことによりマクロ・コントロールは更に多くの選択の「ジレンマ」に直面している。
(2)「穏健な」金融政策は、2010年末に提起された「穏健」の概念と異なるのか
「穏健」という言葉のカバー範囲は比較的大きい。中央経済工作会議は、マクロ政策は柔軟性・的確性を有し、同時に科学性・展望性・有効性を強化しなければならない、と特に強調している。我々は内外情勢の進展を密接に観察し、適時適度な調整を進める。外部環境が比較的悪いことを考慮し、同時に物価の上昇が速すぎることに対しても手を緩めてはならず、インフレ期待を合理的に管理する必要がある。このほか、構造調整方面の任務も比較的困難が大きい。マクロ政策はこれらの問題に対してバランスを勘案する必要がある。
穏健な金融政策をしっかり実施し、「穏」の中に「進」を求めることを実現するには、金融政策の道具箱を豊富にし、整備する必要がある。箱の中には数量型のコントロール手段がなければならないし、価格型のコントロール手段もなければならない。伝統的コントロール手段がなければならないし、いくらかのマクロプルーデンス政策手段も開発しなければならない。全力を挙げて道具箱の品揃えを完備し、必要なときには探し出せるようにし、随時適合した手段を用いることができるようにしなければならない。
3.金融リスクを確実に防止する
(キーワード:資本流動、不動産市場コントロール、地方融資プラットホーム)
(1)金融システムの潜在リスク
実体経済方面においては、もし外部経済があまり好ましくなく貿易需要に影響を与えるならば、中国経済と外部経済の連係が緊密になっているため、このような不確定性は国内に伝播し、わが国の輸出入貿易と対外対内投資に直接影響を与えることになろう。
金融市場方面においては、資金の流動性の過度な緩和・過度な逼迫、とりわけ資本の大幅な撤収等の変化が出現する可能性がある。現在、一部のアジア国家からの欧州資金撤収は比較的顕著になっており、このような変化はわが国の金融市場においてもある程度体現されている。
(2)資本流出のリスク
最近の情況からすると、欧州ソブリン危機の影響が国内の外為市場に及んでおり、資本流動の方向の変化に影響を与えているが、これは正常な現象というべきである。
和学の為替レート形成メカニズムの改革の主要目標は、国際収支のバランスを促進することであり、これにより人民元レートを合理的な均衡水準におくことである。その時々の資本はただ1つの方向に流動するわけではなく、流入もすれば流出もする。現在、一定程度資本が流出しているが、我々の国際収支バランスの目標方向とは決して矛盾していない。
(3)不動産コントロール
不動産コントロールについては密接に観察すべきである。総体として見れば、わが国の住宅を担保とした貸付額は大きいとはいえず、銀行貸出資産における比率は相対的にかなり低い。不動産融資リスクは全体としては比較的平穏な状態にあり、外国のある地方のように乱高下の現象は出現していない。
しかし、我々が見て取るべきは、多くの企業とりわけ小型・零細企業の銀行借入は、不動産を担保にしており、住宅価格が下落するにつれてその担保価値が縮小し、これが企業の一部借入に影響を及ぼすことになることである。この影響について我々は十分推し量るべきであり、銀行と監督管理部門もこの分野について厳密なフォロー・測定試算を進めなければならない。
(4)融資プラットホーム
地方政府の融資プラットホームは、総体として言えばなおコントロール可能な状態にある。現在中央はこの問題を高度に重視しており、まず整理・規範化しなければならない。それと同時に、銀行システムはここ数年の改革開放を経て、この方面におけるリスク管理能力もかなり大きく上昇している。
当然、一部は十分規範的でなく、整理・規範化のプロセスにある。しかし、中国政府の債務の対GDP比は総体として国際上、比較的低い水準にあり、我々は地方財政の債務問題をコンロトール・消化する能力を有する。
4.将来、金融改革はどこに新たな観点を見出すのか
(キーワード:金利市場化、預金保険制度、為替レートの変動幅)
(1)金利市場化
わが国は金利市場化を常に推進しており、考え方の面で大きな障害はないが、具体的な操作に当たっては主として順序・手配及び内外経済情勢を考慮しなければならない。順序からすれば、まず改革を通じて金融機関の財務へのハードな制約を実現することである。こうすれば、市場主体の競争行為は比較的正されることになり、価格の開放はそれほど大きな問題ではなくなる。大型商業銀行の株式制改革と上場が成功するにつれて、金融機関のソフトな制約と不公平な競争の問題は徐々に解決をみており、金利市場化改革を更に推進する条件が整っている。
内外情勢を比較する角度から見れば、今回の金融危機以後、国際的に一部の先進国はゼロ金利となっており、金利差が大変大きい情況下で金利市場化を推進すれば、いくつかの特殊な問題が出現し、資本流動に対し大きい圧力を生み出すことになる。この条件からすれば、現在金利の市場化を推進するタイミングとしてはなお余り良くない。
(2)預金保険制度
2007年の全国金融工作会議において、国家は預金保険制度を推進しなければならないと決定し、会議後実施方案が既に出来上がっている。しかし、ちょうど世界金融危機の爆発にぶつかり、主要な精力は危機への対応に注がれ、その分この制度建設はある程度先送りされた。
現在見ると、これまでの準備活動は大体において有効であり、適当な時機を探し、タイミングを選んで打ち出す必要がある。
(3)為替レートの変動区間
わが国は現在、人民元レートの変動幅をプラスマイナス0.5%の区間内としている。将来、資本流入・流出が比較的バランスするにつれて、為替レートの変動幅を拡大する条件が比較的成熟し、為替レートの変動区間を更に拡大できるようになる。これは市場の需給関係と市場参加者がオファーする取引により決定されるものである。変動幅の拡大は、決して為替レートの平均水準がある一方向に向かうという顕著な傾向が出現することを意味するものではない。
(1月20日記3,874字)
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