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党5中全会以降の動向(1)

中国ビジネスレポート 政治・政策
田中 修

田中 修

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2005年12月18日

<政治・政策>

党5中全会以降の動向(1)

田中修

はじめに

 党5中全会において第115ヵ年計画建議が決定されて以降、政府第115ヵ年計画要綱の策定に向けて様々な政策当局・有識者の発言が出ている。本稿では、その代表的なものを紹介することにより、今後の要綱策定の動向を占うこととしたい。

 

1.国家発展・改革委員会

(1)馬凱主任インタビュー(2005114日付け経済日報)

 馬凱主任は経済日報の取材に応じ、第115ヵ年計画の重大戦略任務5項目について、詳細な解説を行っている。

A 社会主義新農村の建設、「三農」問題の解決

 4つの新しい思想・思考が含まれているとする。

a 都市・農村の発展を統一的に企画することにより、「三農」問題を解決する

 「三農」問題の困難は、元々多いうえに不断に増加する農村人口と、有限で益々少なくなる農業生産資源との矛盾が先鋭化していることである。小康社会の全面建設段階においては、農業は農業、農村は農村について論じるのでは「三農」問題解決の突破は難しい。「三農」問題の解決には、農業・農村といったレベルを超越し、都市・農村の発展統一的に企画するという高度な視点に立ち、農業生産を国民経済全体ないし世界経済の循環の中におき、農民の収入増加を国民所得分配・再分配の中で統一的に企画・考慮しなければならない。

b 工業が農業の恩に報い、都市が農村を支援することにより、「三農」問題を解決する

 農民に対して財政が直接助成するメカニズム、農業・農村に対する投入が安定的に増加するメカニズム、農民の合法的な権益を保障するメカニズム等を着実に作り上げなければならない。

c 農村の全貌を明白に改善することにより、「三農」問題を解決する

 20数年来都市の様相は驚天動地の変化が発生したが、農村の様相の改善は大きくなく、中西部農村は更に落伍している。積極かつ穏当に都市化を推進し、農村人口を減少させるとともに、農村をしっかりと建設し、農村の道路・通信・電力網・飲用水・メタンガス・ゴミ収集処理等の方面の建設を強化しなければならない。

d 公共サービスの農村をカバーする範囲を拡大することにより、「三農」問題を解決する

 長期以来、政府は都市住民に多くの公共サービスを提供してきたが、農村住民が享受する公共サービスはかなり少なく、義務教育・公共衛生・公共文化・公共安全・社会保障等の方面では都市住民と格差が存在した。第115ヵ年計画期間には、農村義務教育・公共衛生の強化、新型農村合作医療制度の速やかな確立、貧困扶助・貧困減少の強化、条件の整った地域において最低生活保障制度の確立を積極的に探索することに重点を置かなければならない。

B 自主革新能力の増強、産業構造の高度化の推進

 産業構造の不合理は、わが国の経済成長の資源消耗が多く、環境汚染がひどく、全体の素質が高くなく、運営が不安定な重要原因である。産業構造の不合理は主として次の諸点に現れている。

a 産業面:農業の基礎が薄弱で、工業は大きいが強くなく、サービス業の発展は遅れている

b 産品構造:消耗の高い産品、加工度の粗い産品、低付加価値の産品が主たる地位を占め、OEM産品が相当の比重を占め、自主ブランド・有名ブランドが多くない

c 企業組織構造:「大も小も全て揃える」という問題が一部業種では依然際立っており、企業間・産業間における専業化・分業化が進まず、規模の経営水準が高くなく、組み合わせ・協同により生産する能力が強くない

 この産業構造の不合理の重要原因は、核心技術の欠乏と自主的な知的財産権の欠乏と世界的に名の通ったブランドの欠乏であり、この3つの欠乏が集中した結果、自主革新能力が弱いということである。

a 自主革新能力増強の必要性を十分認識しなければならない

 現在、人類社会は正にグローバル的な科学技術革命を経験している。もし我々が科学技術進歩の歩みについていけなければ、その他の国家との格差は広がり、真に世界民族の中に足場を築くことは困難となる。

b 自主革新能力増強の緊迫性を十分認識しなければならない

 現在、わが国の比較優位と国際競争力は相当程度労働力・資源・環境の低価格に依存しており、主として資源を消耗し、環境を汚染するという代償を払って薄利を得、低付加価値の産品の「世界の工場」となっている。今後、資源不足による淡水・土地価格の上昇、環境保護による環境コストの上昇、労働者の合法権益保護による労働コストの上昇、発展途上国の工業発展、ロシア・東欧の経済回復、石油その他鉱産資源国際価格の上昇が予想され、これらはわが国の競争優位を弱化させ、経済の平穏で速い成長の難度を増加させることになる。

c 自主革新能力増強の含蓄を全面的に把握しなければならない

 自主革新とは、技術導入を放棄することではなく、消化吸収・再革新を強化することである。自主革新は、単純な技術革新ではなく、産業革新・産品革新・ブランド革新を包括するものである。自主革新は、全ての領域で原始的な革新をすることではなく、優位性を発揮し、一部の領域で原始的な革新、集積的な革新、導入・消化・吸収の基礎の上に立った再革新、先進技術を用いた伝統産業の改造、産業・産品のライフサイクルの再革新を実現することである。自主革新は、行うべきことと行うべきでないことの区別を堅持し、重点を際立たせ、重点的に乗り越えていかなければならない。自主革新は、科学技術発展の戦略的出発点・科学技術領域の重点任務であるのみならず、産業構造調整・成長方式転換の中心的な部分であり、経済建設の重要任務である。

d 自主革新に有利となる良好な環境を早急に作り上げなければならない

 科学技術体制の改革を深化させ、企業を主体とし、市場に導かれ、産学研が相結合した技術革新の新体系を早急に確立し、自主革新の基本的な体制枠組みを形成しなければならない。自主革新を支援する財政・税制、金融、政府購入政策、ベンチャー投資の発展、自主革新を奨励するメカニズムの整備が必要である。知的財産権の保護体系を整備し、保護を強化し、自主革新に有利な社会風潮を作り上げなければならない。

 

C 地域の機能を明確に定め、地域の調和のとれた発展を促進する

 各地域は、資源環境の受容能力・発展の潜在力に基づき、優先開発・重点開発・開発制限・開発禁止という異なる要求に基づいて、異なる地域の機能を明確に定め、かつ相応の政策・評価指標を制定しなければならない。

a 人間本位により発展を図るという理念を十分に体現したものである

 地域の調和ある発展を促進し、地域格差を縮小することは、単に地域間の経済総量の格差を縮小するものではなく、最終的な目的は異なる地域に居住する人民が全て教育機会・雇用機会・発展参加の機会をもち、均等化された公共サービスを享受し、概ね相当な生活水準を享受することである。調和ある発展の実質は「人」にあり、地域のGDPにあるのではない。経済発展・人口移転・財政移転支出等の多様なルートを通じて、異なる地域間の平均収入・公共サービス・生活水準の格差を徐々に縮小していかなければならない。

b 行政区域を突破し発展を図るという理念を十分に体現したものである。

 行政区域を単位とした経済発展の推進、政策・評価基準の制定は、行政区域の積極性を促し、地域における政策を操作するのを容易にするが、発展条件の異なる地域の盲目的な競争を容易にもたらし、地域発展の評価の客観性を失わせることになる。したがって、例えば優先開発・重点開発地域に対しては経済成長を評価し、開発制限・開発禁止地域に対しては主として生態環境保護の業績を評価すべきである。

c 自然法則を尊重して発展を図るという理念を十分に体現したものである

 わが国の相当部分の国土の生態環境は十分脆弱であり、大規模に工業化・都市化を推進するのに適さない。これらの地域では1人平均1000ドルに達しただけでも生態環境は既に重い負担に耐えられなくなっており、もしこれまでの発展モデルで1人平均3000ドルに達すれば、生態環境の受容能力をはるかに上回り大破壊をもたらすことは必然である。したがって、地域の調和ある発展の促進は、わずかの国土も全て工業化・都市化を実現することではない。全国960万平方キロの国土において、ある場所は開発し、ある場所は保護し、経済立地と人口分布を自然に適合させることにより、はじめて根本からわが国の生態環境悪化の趨勢を反転させることができる。

 

D 循環経済を発展させ、資源節約型社会を建設する

 わが国の資源は相対的に不足しており、人々の基本的な生存をつなぎとめる水・耕地の1人平均占有量が低く、多くの鉱産資源の1人平均占有量は世界平均の半分に満たない。しかも資源の時間的・空間的・地位的分布は不均衡である。循環経済は、資源の循環利用を核心とするものであり、「減量化・再利用・資源化」を原則とし、「低消耗・低排出・高効率」を基本的特徴とするものであって、持続可能な発展理念による経済成長モデルに符合しており、「大量生産・大量消費・大量廃棄」という伝統成長モデルを根本的に変革するものである。

 循環経済の重点は、次のものを包括する。

a 資源採掘:資源の総合開発・回収利用の向上

b 資源消耗:資源の利用効率の向上

c 廃棄物生産:資源の総合利用の展開

d 再生資源:各種の廃棄資源の回収・循環利用

e 社会消費:グリーン消費の提唱

 科学的な循環経済の評価指標体系を研究・確立しなければならず、循環経済を促進する法規体系を健全化しなければならない。投資政策を調整し、循環経済の発展のために資金支援を強化しなければならない。さらに価格改革を深化させ、循環経済の発展を促進する価格・料金徴収政策、財政・税制政策を実行しなければならない。

E 人間本位を堅持し、調和のとれた社会を建設する

a 社会公平を一層重視しなければならない

 社会公平は、社会の調和の礎石である。現在の都市・農村格差、地域格差、所得分配格差が長期にわたり緩和されなければ、積極性を損なうばかりではなく、社会の安定団結に影響を及ぼす可能性がある。教育発展、就業拡大、社会保障整備、所得分配調節、公平を促進するメカニズムの確立等の方面で、党中央建議は明確な要求を提出している。

b 公共サービスを一層際立たせなければならない

 公共サービスは政府の重要な職責である。健全かつ公平に公共サービスを分配することは、社会公平を維持し、社会の調和を促進する重要な内容となる。わが国の経済・社会発展のアンバランスは、政府が提供する公共サービスが人民大衆の需要を満足させがたいというところに際立って現れており、特に農村・中西部地域の公共サービスが不足している。各クラス政府は公共サービスの機能を強化し、農村に対する公共サービスを強化し、都市・農村間の公共サービス制度を改革し、就業促進の公共サービス機能を強化しなければらなない。

 調和のとれた社会の建設の主要任務は以下のとおり。

a あらゆる手段を尽くして雇用を拡大する

b 社会保障体系の整備を加速する

c 所得分配を合理的に調節する

2.労働・社会保障部

 労働・社会保障部の田成平部長は、新華社及び人民日報のインタビューに次のように答えている(20051113日新華社北京電、同1114日付け人民日報)。

A 失業率目標

 今後5年、都市において4500万人を職に就かせ、登録失業率を5%以内とする。

B 労働需給

 今後3年、わが国の就職・再就職情勢は依然比較的厳しい。都市では、毎年職を手配しなければならない人数は2400万前後である。しかし、労働力需要方面では、毎年10001100万人が就職できるだけであり、13001400万人が職にあぶれてしまう。国有企業の一時帰休者はまだ200万余りおり、集団企業の一時帰休者が400万、国有企業が実施した政策的破産により再配置が必要な労働者が360万、主たる業から従たる業を分離する改革により再配置が必要な労働者が300万いる。このほか、高等教育機関卒業生の就職、農村余剰労働力の移転就職の任務も極めて重い。

C 人材育成の重点施策

 第115ヵ年計画末に、全国で技能を持つ労働者を1億人超とし、その中で技師・高級技師を550万人とする。

a 技能を持つ人材の育成

 重点は、高級技術工・技師の育成である。わが国の企業競争力を高めるには、新技術を把握し、革新精神を有する高技能人材を育成しなければならない。

b 都市・農村が必要とする就業人員の職業技能の訓練

 農村余剰労働力が移転就職するための訓練、都市の各種労働者の職業技能訓練、再就職訓練、創業訓練、労働者の創業・活動・職業転換能力の向上。

c 就業者の技術訓練・継続学習

 技術進歩は日進月歩であり、就業者は不断に新知識と技能水準の向上を必要としている。

(続く)

(2005年12月8日記・5,061字)
財務省財務総合政策研究所客員研究員 田中修

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