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撤退(5)

中国ビジネスレポート 投資環境
筧 武雄

筧 武雄

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2004年9月9日

<投資環境>

撤退(5)

筧武雄

1.減資

2001年の三資法改正により外商投資企業の減資は従来の「絶対禁止」から「原則禁止」へと緩和され、申請すれば認められるケースも出てきました。最近の地元新聞を見ると、台湾・韓国系企業の減資広告が紙面を飾っています。台湾系のあいだで減資が盛んな状況に関連して、ある台湾人弁護士が面白いことを言っていました。

1)  外資企業法実施細則では第30条に「資本金の払込は会社設立後3年以内の分割後払い」と定められているが、続く第31条には「外国人投資者が正当な理由により、出資の延期を要求する場合は、審査批准機関の許可を得て、工商行政管理機関に届け出なければならない」という規定もあり、これにもとづいて申請すれば、払込期限を誘致した副主任の任期期間中ならば、5年以内まで延長が可能。

2)  5年後の期日到来時に、再度資金不足を訴え出れば減資も可能で、FS申告書の最低計画規模、各債務者に影響を及ぼさない範囲であれば資本金を減資できる。最近、新聞紙上に外商投資企業減資広告が目立つのはこの理由である。

不動産バブルを背景とした過去最高の外資導入実績、建設途上で放置されている建物の群れ、継続する中国の高度成長数字の舞台裏には、「減資のカラクリ」が存在するようです。

不動産投資する台湾業者の側から言えば、数百万米ドルの見せかけだけ大きな投資総額(資本金の二倍)の会社を設立して、3か月以内に資本金の15%だけを払い込み、その資金で土地使用権代金を支払って、適当に開発する格好だけをして5年のあいだ土地を維持し、その間に他に転売して利益をあげたら、減資するなり、清算するなりして、結局、資本金は払い込まずに済むことになります。

もしこんなことがまかり通るなら、固定資産投資目的のプロジェクトの実態は、なんと表面統計数値の7.5%程度(投資総額の半分の15%)ということになってしまうのですが……。

さらに、台湾弁護士の言葉によると、なんでも減資が認められるわけではなく、以下の場合、減資は許可されないといいます。

1)  法令で定められている最低資本金額(特殊行業など)、あるいは最低資本金比率を下回るレベルまでの減資
2)  当該プロジェクトに投融資などのトラブルが発生しており、すでに司法仲裁手続きに入っている場合
3)  企業定款にある生産、経営の最低ライン、最低投資規模の維持を不可能にするレベルの減資

ただし、法律上は(不)可能でも現実に実現(不)可能かどうかは別問題、というのが中国の常識であり、鵜呑みは要注意です。減資が認められるようになって、まだ5年を経過しておらず、この台湾弁護士の話も、まだ実績はないと疑われます。「減資できるから見せ掛けだけの大型投資でも大丈夫」と売り急ぐ不動産屋の頭には現在の損得しかなく、数年先のことは何も考えていない(悪質な場合はまったく無責任)と心得ておいたほうが間違いないでしょう。

2.経営期限の到来

(1)期限清算か延長かの判断

中外合弁経営企業法第13条では、「合弁各方が合弁期間延長に合意したときには、経営期間満了6カ月前までに審査認可機関に延長申請を出すものとする。審査認可機関は申請を受け取った日から1カ月以内に認可又は不認可を決定する」と定められています。

したがって、半年前までに経営期間延長の合意が得られない場合や期限までに申請を失念してしまった場合などは、経営期限到来とともに合弁会社は法律にしたがって解散し、財産を清算しなければなりません。合弁法実施細則第91条には「合弁企業が解散を宣告する場合は、清算を行わなければならない。合弁企業は、外商投資企業の清算弁法の規定に基づき清算委員会を設立し、清算委員会が清算に関する事柄に責任を負わなければならない」と明確に定められています。

独資企業の場合も、外資企業法実施細則第73条に「外資企業が経営期限満了にともない終了する場合、終了日から15日以内に対外的に公告するとともに債権者に通知し、終了公告通知日から15日以内に清算手続き原則、清算委員会の人選を審査批准機関に提出し許可を受けた後、清算する」と定められています。

(2)政府への土地の返却

経営期限が到来した際、使用してきた土地の使用権も会社解散、事業終了に伴い消滅することになります。

土地基本法である「国有地使用権払い下げおよび譲渡に関する暫定規定」(1990年5月公布・施行)第40条によれば、「土地使用期間が満了したときは、土地使用権および地上建築物その他の定着物の所有権は国が無償で取得する。土地使用者は土地使用権証を返納し、かつ規定にしたがって抹消登記手続きをとらなければならない」と定められています。

同時に同法第41条で土地使用者は土地使用期間延長を申請することができるとも定められていますが、その場合は「あらためて土地使用契約を締結し、払い下げ代金を支払い、かつ登記手続きをとりなおす」こととされています。土地の再使用については、事前の政府許可取得が前提であるため、新規開発事業などのために再使用許可が得られない場合に、会社は継続しても場所を移転せざるを得なくなる事態もありえます。

払い下げ国有地でない農村集団所有地の工業転用地(無償割当地)に、中国法上未登記、無権利のまま「占拠不正使用」している場合は、期限前であっても常に無償収容のリスクにさらされています。

(3)従業員の解雇

中国の労働法、外商投資企業労働管理規定には経営期限到来に伴う従業員の解雇に関する明確な規定はありませんが、労働法第23条に定められる「労働契約の終了」が該当するのではないかと推測されます。その場合、労働法上では従業員に対する経済的補償の支払は義務付けられていません。

この点について、地方都市条例レベルの労働管理規定のなかには会社の解散、経営期限到来が明記されている例があります。「使用者が破産、解散、または経営権が取り消された場合、労働契約は終了する」(上海市労働契約条例第37条3項)、「企業が法にもとづき終了したとき、企業は労働契約を解除することができる」(青島市外国投資企業労働管理規定第23条7項)など。これらの場合は法定の退職金支給が義務付けられています。

このように、中国の労働法令にも整合性はありませんが、自分の立地する都市条例ベースのものだけは詳細に調査しておく必要があるでしょう。「解雇」か「終了」か、経済補償の規定はあるか、といった実務上のトラブルを避けるために、あらかじめ労働契約上に労働契約「終了」の要件のひとつとして、会社の経営期限到来を挙げ、契約時に合意しておく必要があります。

10年以上継続勤務し、無期限の労働契約を結んでいる従業員の場合についても、当然に無期限とはなり得ないわけで、個別の契約上に経営期限を明記して本人の承諾署名を受けておく必要があるでしょう。

(2004年8月記・2,807字)
チャイナ・インフォメーション21
代表 筧武雄

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