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ログイン2005年7月25日
(1)中国での契約署名
中国で契約するのに、「印鑑の持参や印鑑証明の提出は必要ないか?」とよく聞かれることがある。中国での対外契約は本人が面前で自署するだけでよく、日本の印鑑、印鑑証明書は中国では意味をなさない。中国側にとって捺印は署名と同様に法律上の意思を証明する重要な意味を持つが、外国人、外国企業は署名だけでよく、捺印は有害ではないがなくてもよい。
1. 署名
「本人自署」と言っても、米国と同様、中国にも署名を証明する政府機関も証明書も存在しない(注)。巨額の契約調印などで必要であれば、公証人や弁護士を契約調印に立ち合わせ、正式に本人確認したうえで本人意思確認しもらい、彼らにも契約立ち会いの署名をしてもらうことで本人自署を証明することができる。
(注)以前は存在しなかったが、最近では工商局に董事長の書名鑑を登録する制度がある。ただし印鑑証明書は発行されない。
日本人のなかには、日本の習慣と同じように、合意ののちに日本側が署名捺印した契約書を中国側に手渡し、後日、調印日などに正式署名捺印したものを出してもらう人もいるが、これは危険な行為である。
印鑑はあっても、署名は必ず本人自署でなければ、契約は法的に成立しない。実際に問題を起こして退社した社員に損害賠償を求める裁判をおこしたところ、本人は肝心の労働契約書に署名した記憶がないと言い張り、しらべてみると、たしかに契約書の署名は本人の筆跡と明らかに異なっていたという事例もある。
このように、持ち帰った契約書類を、「リスク回避」のために意図的に他人に署名させて提出するケースもあるのである。契約署名と現金取引は必ず「本人の目の前」で、「その場かぎり」で完成させることを鉄則としなければならない。ちなみに、契約を日本で調印することができれば、日本側にとっては安全で、条件的にも有利な契約を結ぶことのできる可能性が高くなる。
2. 印鑑
中国で印鑑刻印業は「特殊行業」のひとつである。開業するためには通常の工商局登記だけでは不可能で、公安局の特殊行業許可証が必要となる。印刷業なども同様で、要は印鑑の偽造や変造を防ぐために、公安局の管理下におかれ、直接業務指導を受けるのである。
中国で会社を設立すると、最初に会社(総経理)印、銀行印、税関印を作成しなければならないが、ほとんどの場合、刻印業者を指定される。その理由と意味はここにある。建前上、中国の印鑑はすべて公安局の管理下で作成されるため、偽造印は存在しないことになっているのである。したがって印鑑登録や印鑑証明書制度も存在せず、かわりに印鑑は必ず公安の指定する刻印業者で作成しなければならないことになっている。
ところが、日本人や日本企業は日本で作った印鑑を持参するため、そもそも中国公安局の管理下にないところで作成された印鑑では、その真実性がまったく当てにならない。たとえ印鑑証明書を持参したところで、中国には存在しない制度だけに理解を得ることすら難しい。
このようなシステムは労働許可証や居留証を取得する際に要求される健康診断証明書とも似ている。たとえ日本の一流病院で作成してもらった健康診断書でも、中国では受け入れてもらうことが難しく、原データを要求されて検疫局所轄の病院で再確認を義務付けられたり、もう一度身体検査を受けさせられたりする。これは長期休暇や一人っ子政策などの関係で、健康証明書の偽造も多いという現実を反映している。
3. 許認可
中国契約法(1994.7)の第3章「契約の効力」の冒頭第44条では「法律および行政法規において許可、登記等の手続きを経なければならないと規定されている場合は、その規定にしたがう」と定められている。
すなわち、当事者の署名だけでは、契約の効力は発生しないのである。かならず、行政法規に定められた政府の許認可や登記などの行政手続きを済ませることが契約発効の条件と定められている。その多くは事前許可が必要とされており、金額や内容によって行政当局の許認可権限も異なっており、十分複雑である。
日本とは異なり、当事者間の合意があったとしても、それだけでは法的な契約成立とは認められず、紙に記録してお互いに自由意思をもって合意署名し、正本を交換しなければ契約は合法的に成立したとは認められない。たとえば、双方合意にもとづく合弁契約でも、合弁関連法令や登記管理条例など関連法規の定める条件に合致し、かつ法定の手続きに沿って所轄政府の設立許可を得て、工商登記も済ませなければ、その合弁・合作は法的に無効ということになる。
(次回へ続く)
(2005年7月記・1,900字)
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