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ログイン2005年7月10日
2004年、中国の貿易総額は輸出入合計で1兆1548億ドルと、初めて1兆ドルを超え、WTO加盟を果たした2001年のそれ(5097億ドル)に比較すれば、3年間で2.3倍となったのである。世界の輸出と輸入に占めるシェアもそれぞれ2001年の4.3%と3.8%から2004年の6.5%と5.9%へと大幅に上昇した。
2001年に貿易総額で世界第6位だった中国が、2003年にドイツを抜き、世界第4位となったのに続き、2004年にはさらに日本を超え、世界第3位、アジア第1位の「貿易大国」に浮上した。中国政府は第10次5ヵ年計画期間(2001〜05年)の中で2005年に貿易総額を、6800億ドルに拡大するという目標を打ち出しているが、2003年時点ですでに同目標を超過達成し、2005年には政府目標の約2倍の規模になる見込みである。
中国は貿易規模では世界第3位の「貿易大国」に浮上したものの、「貿易強国」とはまだ程遠いと認めなければならない。商務省は中国貿易の問題点として、「四つの過度依存」、つまり数量的拡大への過度依存、加工貿易への過度依存、外資系企業への過度依存と特定市場への過度依存を挙げている。
1.数量的拡大への過度依存
中国輸出において工業製品は9割以上、うち機械電子製品だけで半分以上のシェアを占めるようになったが、機械電子製品を含む製品輸出の中身を調べると、付加価値の低い労働集約型製品は中心となっているのが現状である。これまで中国の最大の輸出商品だった繊維製品は、1995年よりその地位を機械類が取って代わったものの、絶対金額が依然として大きいため、世界繊維市場に占める比重はむしろ上昇傾向を示している。
商務省国際貿易経済協力研究院によると、中国輸出に占める繊維製品のシェアは2001年の20.1%から2003年の18%へと低下したのに対して、世界繊維輸出市場における中国製品のシェアは19.2%から24.5%へと上昇傾向を続けている。うち中国繊維製品の主要市場である米国とEUの繊維輸入に占める中国製品のシェアは、それぞれ2001年の13.8%と15.8%から2003年の17.5%と18.8%へと上昇した。
数量的拡大への過度依存は、資源の多消費や貿易摩擦の多発をはじめ、多くの問題をもたらしている。近年、中国とEU、米国との貿易摩擦がクローズアップされるようになったが、その発生源として繊維製品輸出によるところが大きい。米国政府は2005年5月に綿製ズボンなど中国製の繊維・衣料3品目について緊急輸入制限(セーフガード)を発動する方針を示したのがその好例である。
繊維製品の国際的な輸入割当制の撤廃(2005年1月)や、これまでの米国の輸入抑制などにより、2005年に入ってから中国の対米繊維輸出は一時急増した。米国側の統計によると、同年1月〜4月、一部の製品(綿製ズボン、綿製・合繊製下着、綿製ニットシャツ)の対米輸出は前年同期比数倍から10倍以上も増加したという。
中国政府は繊維製品輸出の急増を抑え、輸出相手国との摩擦を緩和するため、2005年初めから輸出関税の課税や輸出税還付率の引き下げ、自主輸出規制などの措置を取ってきているが、根本的解決策として輸出製品の高付加価値化を含む輸出商品構成の調整を図らなければならないとされている。
数量的拡大への過度依存は、中国輸出のさらなる発展にとっても障碍となりつつある。商務省によると、中国の年間靴類と服装の輸出量はそれぞれ60億足と47億枚に達し、世界市場の需要からみれば数量的拡大はすでに限度に来ている。中国は2020年までに輸出総額を2兆ドルに拡大するという目標を打ち出しているが、この目標を達成させるには従来の数量的拡張型の輸出からの脱出が求められている。
服装を含む中国の繊維製品には付加価値の低いものが多く、その輸出増大が中国にもたらした貿易利益は限られている。薄熙来・商務相によると、中国がEUに1枚シャツを輸出する場合、平均で0.3米ドルの利益しかなく、EUからA380旅客機一機を購入するには、8億枚のシャツを輸出しなければならない計算である。
2.加工貿易への過度依存
中国貿易において海外から原材料や中間財を輸入し、中国国内で加工してから再輸出という加工貿易は大きなシェアを占めているのが特徴である。中国税関によると、WTO加盟以降、中国の輸出において加工貿易は一貫して5割以上のシェアを占めている。中にはエネルギー大量消費型または汚染のあるものも多く含まれている。
加工貿易への過度依存は環境問題を含め、多くの弊害をきたしている。長江流域では9割の都市と川は深刻な汚染にさらされ、珠江デルタの多くの地域では地下水は飲用できない状態に陥っているが、その背景には加工貿易への過度依存があるとみられている。
加工貿易への過度依存で、中国の輸出品に占める自前ブランド製品の比率は非常に低い。中国商務省によると、約6000億ドルに上がる中国の輸出において、中国企業の自前ブランド品は1割しか占めていない。うち名ブランド品はより少なく、全世界で最も影響のあるブランドベスト100のうち、中国のメーカーとして「海爾」(ハイアル)しか入っていない。
これらの問題を前にして中国政府はいくつかの対策を打ち出しているが、中には今後中国の通商政策の方向を示すものとして、「社会主義市場経済体制整備の若干問題に関する決定」(中共16期3中全会、2003年10月)に示された諸方針が注目される。
この決定は「引き続き加工貿易を発展させ、多国籍企業に技術レベルがより高く、付加価値がより大きい加工・製造段階と研究開発機関をわが国に持ち込ませ、加工貿易のタイプ転換とグレードアップを誘導する」こと、「国内企業が開放拡大の有利なチャンスを十分に生かし、市場開拓・技術革新と自主ブランドの育成の能力を強めることを奨励する」こと、「輸出品の品質、等級と付加価値を高め、ハイテク・新技術製品の輸出を拡大し、サービス貿易を発展させ、輸出競争力を全面的に高める」ことなどの課題を提起している。
3.外資系企業への過度依存と特定市場への過度依存
中国貿易は主に外資企業に支えられ、特定の市場に大きく依存しているところにも問題がある。中国税関によると、2004年中国の輸出の57%、輸入の58%は外資系企業による。機械製品輸出、中でもハイテク製品輸出において、外資系企業による部分のシェアはより高く、それぞれ7割と8割に達している(表1)。
中国の輸出は米国、EUと日本という三つの市場に集中している。2004年、これらの市場への輸出額(香港経由の輸出を含む)は合計4000億ドルと、中国輸出総額の約7割を占めている(表2)。2001年の実績と比べると、同依存度はほとんど変わらず、米国市場への依存度がむしろ高まった。アジア通貨危機以降、中国政府は輸出市場の多角化を強調するようになったが、現状では改善の兆しはまだ見えていない。
中国貿易、特に輸出の急拡大に対して、中国国内ではこれを評価する声が多い一方、貿易依存度(貿易額/GDP)の急上昇に警戒感を持つ意見も少なくない。実際、1980年代以来、中国の貿易、特に輸出がほぼ一貫してGDPの実質成長率より高い伸び率を示したため、中国の貿易依存度も急速に上昇し、改革・開放政策を実行する直前の1978年に一桁だったそれが1980年代後半に20%台、1990年代後半には40%台へと飛び上がった。
WTO加盟を果たした21世紀に入ってから、中国の貿易依存度はさらに上昇し、2004年には1978年のそれの7倍以上にあたる70%(うち輸出依存度は36%、輸入依存度は34%)にも達した。
1980年に中国の貿易依存度は韓国・台湾2カ国・地域平均の7分の1、ASEAN4カ国(タイ・マレーシア・インドネシア・フィリピン)平均の5分の1強にとどまっていたが、2004年には中国の貿易依存度はすでに1980年代のASEAN4カ国の水準を超えている。GDP(国内総生産)規模で「世界6強」に属する他の国々(米国、日本、ドイツ、イギリス、フランス)と比べて、中国の貿易依存度は目立って高い。
貿易依存度が高いことは、経済成長にとって、貿易、特に輸出の果たす役割が大きいことを意味すると同時に、中国経済は海外市場の動向に左右されやすいという問題も指摘されている。そのため、中国国内には経済の安定的発展を図る意味でこれ以上に貿易依存度を高めるのは望ましくないとの意見も出されている。近年、中国政府が内需拡大を強調している背景にも、貿易依存度の急上昇に対する不安があるとみられる。
表1 外資系企業の貿易額の推移(単位:億ドル)
輸出入額合計
|
輸出額
|
輸入額
|
|
1980
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0.4(0.1) | 0.1(0.1) | 0.3(0.1) |
1985
|
23.6(3.4) | 3.0(1.1) | 20.6(4.9) |
1990
|
201.2(17.4) | 78.1(12.6) | 123.0(23.1) |
1995
|
1,098.2(39.1) | 468.8(31.5) | 629.4(47.7) |
2000
|
2,367.1(49.9) | 1,194.4(47.9) | 1,172.7(52.1) |
2001
|
2,591.0(50.8) | 1,332.4(50.1) | 1,258.6(51.7) |
2002
|
3,302.3 (53.1) | 1,699.4 (52.2) | 1,602.9(54.3) |
2003
|
4,722.5(55.5) | 2,403.4(54.8) | 2,319.1(56.2) |
2004
|
6,631.8(57.4) | 3,386.1(57.1) | 3,245.7(57.8) |
注:カッコは中国貿易に占める外資系企業によるもののシェア(%)
資料:中国税関統計により算出。
表2 2004年中国の主要貿易相手国・地域(単位:%)
国・地域 | 輸出入総額 | 中国の輸出 | 中国の輸入 |
1.EU | 15.4(14.7) | 18.1(16.5) | 12.5(12.9) |
2.米国 | 14.7(14.8) | 21.1(21.1) | 8.0(8.2) |
3.日本 | 14.5(15.7) | 12.4(13.6) | 16.8(18.0) |
4.香港 | 9.8(10.3) | 17.0(17.4) | 2.1(2.7) |
5.ASEAN | 9.2(9.2) | 7.2(7.1) | 11.2(11.5) |
6.韓国 | 7.8(7.4) | 4.7(4.6) | 11.1(10.4) |
7.台湾 | 6.8(6.9) | 2.3(2.1) | 11.5(12.0) |
8.ロシア | 1.8(1.9) | 1.5(1.4) | 2.2(2.4) |
9.オーストラリア | 1.8(1.6) | 1.5(1.4) | 2.1(1.8) |
10.カナダ | 1.3(1.2) | 1.4(1.3) | 1.3(1.1) |
注:カッコは2003年の数字。2004年はEU25(2003年はEU15)。
資料:中国税関統計。
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