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ログイン2002年12月1日
平湖と聞いて、「ああ、あそこですね」と答えられる日本人は、かなり中国の地理に明るい人か、あるいは、偶々そこに知り合いがいる人に限られるに違いないなどと言いたくなるほど、この地名は、日本人にはなじみが薄い。かくのたまう筆者も、中国がちょうど国慶節休暇に入ろうとする折に、初めてこの地を訪れたばかりであり、偉そうなことを言う資格はない。出掛ける前に、上海に駐在する友人に電話し、「平湖の帰途、上海に寄るんだけど…」と告げたら、「平湖?どこ、それ?」と来た。上海駐在の人間達にもこの地名はピンと来ないらしい。
後で知ったことだが、中国人の間でも、それ程知られていないようだ。現地でお会いした進出済み企業の責任者の話によれば、その企業のトップが、在日の中国大使館の人達との会見時にこの地名に触れたところ、誰もご存じなかったとのこと。筆者は、最近、日本に来て研修と研修旅行を行っていく中国人ビジネスマンのお相手をする機会が増えているが、彼らに聞いても、上海地区の人間以外の人間は、ほとんど知らない。
そういえば、最近日本で出版された中国進出マップなどにも、ここはほとんど紹介されていない。
実は、だからこそ、「平湖」行きのお誘いがかかった時、筆者は、躊躇なく「行きましょう」と答えたのである。自分の目で見たことがない土地に関しては、決して人にいい加減なことを言うな、また、人の話を安易に信ずるなを身上として来ただけに、今のうちに、是非自分の目でとくと見ておきたかったのだ。
上海浦東新国際空港から約1時間20分、道路はかなり整備されており、我々を乗せた車は、極めて順調に目的地へと向かって行った。上海を中心とする華東地区を「龍頭全体」に見立てれば、昆山・蘇州・無錫・常州・鎮江・南京は、さしずめ龍の「鼻筋」にあたり、その位置関係からすれば、金山・嘉興・杭州は、龍の「あぎと」にあたると言って大過はないであろうが、最近「鼻筋」の方が脚光を浴びることが多く、「あぎと」の方は、いささか日陰の身的存在に成り下がってしまっているようだ。そして、平湖の場合は、その龍の「あぎと」の中に更に深く埋もれてしまっていた感が強い。
平湖は、折りしも、年一度の、しかも中国で他に類を見ないという「西瓜祭」の真っ只中にあった。平湖は、「西瓜の郷」の別称を持つ。我々は、光栄にも、一年中で町全体が最も華やかな雰囲気に包まれる日にその町に降り立ったのだ。平湖は、水が多い町である。街中を運河が縦横に走っており、市民は、水を身近に感じながら、のんびりと生きているといったそんな雰囲気が漂っていた。西瓜といえば、ほとんどの日本人は、海南島を思い浮かべ、平湖を思い浮かべる人はいまい。さぞかし庶民の口には到底入らないような特殊な西瓜を産出しているのかと思いきや、土地の人の話では、西瓜生産に特にこだわりを見せたわけでもなく、目立った品種改良もしていないので、西瓜に関しては、名前負けしているのが実情だそうだ。
地図によれば、平湖は、十万トン級の船が停泊できる「乍浦」に近く、アマゾンと並んで有名な「大逆流」の「塩官」からもそう遠くはない。そういえば、昔、上海からバスを仕立ててこの大逆流を見に行ったことがあるが、平湖は、素通りしてしまっている。平湖は、上海と杭州を結ぶ幹線道路からも外れているのだから、無理もない。
しかし、町をぶらぶらし、「上島コーヒーショップ」で68元のブルーマウンテンを飲んだ後、筆者が目の当たりにしたのは、大動脈である幹線道路や鉄道網の沿線に絨毯爆撃、いや、「大逆流」さながらに広がって行く大きなうねりであった。この昔は静かな町は大きな変化の只中にあった。その最たるものが、日本電産が自社の世界最大の生産基地にすべく着々と準備をすすめている、「日本電産工業園」であった。まだ、草ぼうぼうの工場予定地に高々と「日本電産工業園」の名前が掲げられている。と言っても、この一角には既に日本電産系の工場がいくつも稼動を始めており、これら工場群で働く人間の数は、極く近い将来、300名を越えるであろうとのことだ。そして、そう遠くない将来、その十倍にも膨れ上がる計画が着々と進行しているのだ。
その後、よく聞いてみると、なんとかの地における日本電産の投資規模は、浙江省最大規模だと言うではないか。
ここまで来て、筆者にはいくつも疑問が湧いて来るのを禁じ得なかった。
―なぜ、こんな大きな投資をしながら、世間、特に日本国内の注目を浴びなかったのか?
―大連に既に工場を稼動させているメーカーが、中国華東地区、華南地区への事業拡大を図る際に、なぜ、龍の「鼻筋」ではなく、「あぎと」、それも、「あぎとに埋もれた骨」とも言うべき平湖を選んだのであろうか?
地図をもう一度広げてじっくりと見る。
なる程、そうか、そうだったのか?
平湖は、上海との交通は便利、蘇州方面との交通も便利、それにそう遠くない将来、寧波方面に世界最大級の橋もかかる…、それに、まだ余り知られていない。これが「投資熱土(ホットスポット)」でなくて、どこが「投資熱土」だと言うのか?まさに、「投資」と「投資熱土」を知り尽くした人間にして始めてなせる技なのだ。5年―10年先を完全に読み切っている。
一人の「投資」のプロ、「企業経営」のプロ、「中国」のプロの顔を合わせ持つ企業経営者の顔が浮かぶ。
ともあれ、かくして平湖は、かなり近い将来、華東の「龍のあぎと」としてデビューを果たし、多くの日本企業を引き付け、恐らく年明けには、多くの日本企業の平湖詣でが始まるに違いない。
しかし、それは、かの日本企業経営者にとっては、織り込み済みの展開であるに違いない。
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