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CEPA(中国大陸と香港の経済と貿易の緊密化協定)

中国ビジネスレポート 投資環境
水野 真澄

水野 真澄

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2003年9月22日

<投資環境>

CEPA(中国大陸と香港の経済と貿易の緊密化協定)

水野真澄

(本稿補足文献として「中国大陸と香港の経済・貿易貿関係緊密化協定及び協商議事録の主な内容」もあわせてご覧下さい)


2003年6月29日に、香港と中国本土間の自由貿易協定である、CEPA(Closer Economic Partnership Arrangement)が調印され、2004年1月1日より香港製品・香港企業は当該協定に基づく各種の便益を享受することができるようになります。

現段階では、当該協定の運用ルールが未整備であり、協定の実施に伴う影響に関しては、未知な部分が多いのが実情で、解説がしにくい状況にはありますが、現段階で明確になっている内容を基にして、「当該協定の内容」と、「協定の実施により想定される影響と問題点」を解説します。


1.協定に定められた内容

当該協定により定められた内容は、大きく分けると以下の3項目となります。

  1. 輸入関税のゼロ化
    2004年1月より、273種類の香港製品に対する輸入関税をゼロとする。また、2006年1月1日迄に、上記273品目以外の香港製品に関しても、輸入関税のゼロ化を実施する。
  2. 17種類のサービス業種に関わる規制緩和
    香港企業が、中国本土において以下のサービス分野に参入する場合は、原則的な規制緩和(WTO加盟に伴う開放)スケジュール以上の開放を行なう。

    対象となる業種:経営コンサルティング、会議・展覧、広告、会計、建設・不動産、医療・歯科治療、販売・小売、物流、貨運代理、倉庫、運輸、旅行、音楽・映像、法律、銀行、証券、保険

  3. 貿易・投資に関連する7分野に関する利便性の促進

    対象となる分野
    ・貿易投資の促進
    ・通関手続きの簡素化
    ・商品検査検疫・食品安全・品質基準の徹底
    ・電子商取引の促進
    ・法律・法令の透明度の向上
    ・中小企業間の交流と支援
    ・漢方医学産業の発展と推進

2.ゼロ関税適用に関する問題点と影響

2004年からゼロ関税が適用される273品目は、大きく分類すれば以下の通りとなります。当該措置によって、香港が享受できる関税の節税は年間HK$7〜8億(US$1億相当)に及ぶとも発表されていますが、肝心の香港製品の定義については、現段階ではまだ明確になっていません。香港側よりは、香港で付された付加価値が25%以上となることを要求していますが、この基準(要求)は、他国の自由貿易協定の基準が総じて40〜60%以上であることを考慮すると受け入れがたい、というのが中央政府の立場です。

香港製品の定義は9月末〜10月迄に取り決められることとなっており、暫くは香港・中国本土間の綱引きが行なわれるものと考えられます。

この措置は、香港で加工工程を行なった製品を、中国本土に販売している企業にとってはメリットが大きい内容ではあります。ただし、ゼロ関税の実施をきっかけに生産工程を大陸から香港に移すような動きが生じるという観測については、筆者個人は疑問をもっています。ゼロ関税が実施される製品の関税率(WTO加盟に際しての公約税率)は5〜35%であり、20%以下の税率のものが大半を占めています。中国本土と香港の人件費・家賃等の格差を考えると、生産工程を香港に移すことで、それ以上の製造コストの増加が見込まれるケースが多いものと思われるため、この措置を理由として、生産拠点を大陸から香港に移動することは少々考えにくいと思われるためです。

2004年1月からゼロ関税が適用される273品目の概要

  1. 電気・電子製品
    (製品例)モーター、発電機・部品、変圧器、電動工具、機械器具等
    (現行の関税率)5〜30%
    (WTO加盟時の公約税率)5〜30%
  2. プラスティック製品
    (製品例)ポリスティレン(一次製品)、塩化ビニール(一次製品)、プラスティックの箱、袋、ケース等
    (現行の税率)8.4〜12.7%
    (WTO加盟時の公約税率)6.5〜10%
  3. 紙製品
    (製品例)板紙、箱、印刷物等
    (現行の税率)5〜13.3%
    (WTO加盟時の公約税率)5〜7.5%
  4. 紡績・アパレル製品
    (製品例)布、織物、肌着、ジャケット、Tシャツ等
    (現行の税率)5〜21.3%
    (WTO加盟時の公約税率)5〜17.5%
  5. 化学製品
    (製品例)潤滑油、塗料、印刷液等
    (現行の税率)5.5〜21.7%
    (WTO加盟時の公約税率)5.5〜10%
  6. 薬品
    (製品例)ペニシリン、漢方薬等
    (現行の税率)3〜6%
    (WTO加盟時の公約税率)3〜6%
  7. 時計
    (製品例)腕時計、置時計、部品等
    (現行の税率)14〜23%
    (WTO加盟時の公約税率)12.5〜25%
  8. 宝飾品
    (製品例)金、銀、貴金属製品等
    (現行の税率)26.7〜35%
    (WTO加盟時の公約税率)20〜35%
  9. 化粧品
    (製品例)美容化粧品、香水等
    (現行の税率)18.3〜22.3%
    (WTO加盟時の公約税率)6.5〜15%
  10. 金属製品
    (製品例)鉄鋼、非鉄金属製品・原料等
    (現行の税率)4〜10.5%
    (WTO加盟時の公約税率)〜10.5%
  11. その他
    (製品例)光学機器・部品、カメラ部品、ファスナー、アイスクリーム、皮革製品等
    (現行の税率)5〜24.2%
    (WTO加盟時の公約税率)5〜25%

3.17種類のサービス業種に対する規制緩和とその影響

CEPAにおいて、日系企業の関心は主にこの項目に集中しています。

サービス業種は、中国が外資の参入に対して多くの制限を加えている分野ですが、WTO加盟に際して、中国は段階的な開放を実施していくことを公約しています。

ただし、当該協定において、香港企業が中国本土において、特定のサービス業種(17分野)に参入する場合は、WTO加盟に伴う開放スケジュール以上の条件緩和を行なうことを約しています。一定の条件を満たす企業は、外国企業の100%香港現地法人であっても香港企業と認定されるため、香港経由で中国大陸に進出することにより、より早い時点での進出、より良い条件での進出が可能になると期待されているためです。
17種類の当該項目の内容は、添付資料(CEPA主要内容)を参照頂きたいのですが、日系企業にとって影響の大きいいくつかの分野について、CEPAの条件とWTO加盟に基づく開放スケジュールを比較してみます。

A.建設・関連エンジニアリングサービス

(1) CEPAによる開放

  • 香港企業が大陸内に建設会社を設立する場合、香港と大陸における業績を合算し、大陸内に設立する建設会社の業績とすることを認める。ただし、大陸内の香港資本建設会社の管理・技術者の人数は、大陸内の実際の人数を基準とする。
  • 香港が大陸内に投資した建設会社は、中外共同建設プロジェクトを請負う場合、中外投資比率の制限を受けない。
  • 大陸の建設会社の資格を取得した香港資本企業は全国で工事入札に参加できる。
  • 香港企業が大陸の建設会社を全額出資で買収することを認める。

(2) WTO加盟に伴う開放スケジュールと現行の関連規定
WTO加盟に際して、建築業に関しては、外資に対して以下の通りの規制緩和を行なうことを公約している。なお、中国のWTO加盟は2001年12月11日。

  • 加盟時
    合弁形態(外資メジャー可)のみ可能。
  • 3年以内
    外資100%出資会社を認め、以下の建設プロジェクトを請負うことを可能とする。
    ・外国の投資、助成金で手当された建設プロジェクト
    ・国際金融機関の融資条件で、国際入札で落札されたことにより資金手当された建設プロジェクト
    ・中国と外国の共同建設プロジェクトで、外資が50%またはそれ以上のプロジェクト。若しくは、50%以下でも中国独自で建設するには技術的な困難がある場合。
    ・中国が投資している建設プロジェクトで、中国の建設会社のみでは技術的な困難があり、且つ、地方政府の認可により中国企業と外国企業が共同で請負うプロジェクト。

なお、、外資建設業関係では、外商投資建築企業管理規定、外商投資建設工事設計企業管理規定が共に2002年末より施行されている。

当該規定では、「外国出資比率が75%まで認められること」、「工事の請負が可能な範囲として、上記WTO議定書と同様の内容」が規定されている。

最低資本金については、資質によって分かれる(請負可能な工事の内容に基づく)ため、この規定には記載されていない。

B.貿易業・卸売業

(1) CEPAによる開放(卸売業は塩・タバコを除く)

  • 香港企業が大陸内で独資の販売(卸売)会社、及び独資の貿易会社を設立することを許可する。
  • 香港の投資者が、大陸内に貿易会社と卸売企業を設立する条件を、以下の通り緩和する。

    貿易会社
    ・香港の投資者の、申請前3年間の年平均対大陸貿易最低金額を10 百万米ドルに引き下げる。大陸に設立する会社の最低資本金は20百万元に引き下げる。
    ・中西部に設立する場合は、最低貿易金額を5百万米ドル、最低資本金を10百万元に引き下げる。

    卸売業
    ・香港の投資者の、申請前3年間の年平均最低売上高を30百万米ドルに引き下げ、申請1年前の資産を10百万米ドルに引き下げる。大陸に設立する会社の最低資本金は50百万元に引き下げる。
    ・中西部に設立する場合は、最低年平均売上高を20百万米ドル、最低資本金を30百万元に引き下げる。
    ・大陸内で委託販売と卸売を行なう香港企業には地域制限を設けない。

(2) WTO加盟に伴う開放スケジュールと現行の関連規定

貿易会社
WTO加盟に伴う公約では、外資企業に対する貿易権の開放は以下の通り行なわれることとなっている。

<外資企業に対する貿易圏の開放スケジュール>
・加盟後1年以内に外資マイナー出資の会社に対して開放
・加盟後2年以内に外資メジャー出資の会社に対して開放
・加盟後3年以内に独資企業に対して開放

なお、外資貿易会社の設立に関しては、中外合弁対外貿易公司設立に関する暫定弁法により、以下の通り規定されている。

<外国側出資者の条件>
申請前3年度の平均対中貿易額が 30百万米ドル以上であること(設立地が中西部地域である場合は、この金額を 20百万米ドルに緩和)。

<中国側出資者の条件>
・貿易権を有していること。
・申請前3年度の平均貿易額が 30百万米ドル以上であること(設立地が中西部地域である場合は、この金額を 20百万米ドルに緩和)。

<資本金額>
・50百万元

<外資比率制限>
・外国側出資者の比率は、2003年12月11日以前は49%以下に限定(外資に対する貿易権の開放に合わせて、出資比率制限が緩和されていくものと予想される)。

卸売業

  • 加盟後1年以内に、外資少数(49%以下)の合弁を認める。取扱品は、「図書・新聞・雑誌・薬品・農
  • 農業用ビニール・化学肥料・製油・原油・塩・タバコ以外」の輸入品、及び国内品。
  • 加盟後2年以内に外資メジャー出資可能。地理的制限と数量的制限を廃止。
  • 加盟後3年以内に出資比率制限撤廃
  • 取扱商品の規制緩和スケジュール
     加盟後3年以内:図書・新聞・雑誌・薬品・農薬・農業用ビニール
     加盟後5年以内:化学肥料・製油・原油

また、これを受けて公布された外商投資産業指導目録(2003年4月施行)の付属文書では、販売代理・卸売り(塩・タバコは除く)業に関しての出資比率制限の緩和について、以下の通り規定している。

  • 2002年12月11日迄に、出資比率50%迄の外資出資を許可。ただし、書籍・新聞・雑誌・薬品・農薬・農業用フィルム・化学肥料・精製油・原油を除く。
  • 2003年12月11日迄に外資がマジョリティをとることを許可。
  • 2004年12月11日迄に独資を許可。書籍・新聞・雑誌・薬品・農薬・農業用フィルムについても取扱可能。
  • 2006年12月11日迄に、化学肥料・精製油・原油についても取扱を許可。

本来は、上記の内容を踏まえて関連規定が公布されることが予定されているが、現段階(2003年8月末)では1999年に施行された「外資商業企業試行弁法」が改定されておらず、本格的な設立認可が開始されていない状況にある。

この試行弁法に基づけば、外資卸売会社の設立条件は、以下の通りの状況にある。

<出資者資格>
・外国出資者
 申請前3年間の平均年間売上高が25億米ドル以上。申請前1年の資産総額が3億米ドル以上。
・中国出資者
 流通業に従事する企業であり、申請前1年の資産額が50百万元(中西部は30百万元)以上。また、商業企業の場合は申請前3年間の平均年間売上高が3億元(中西部の場合は2億元)以上であり、貿易企業の場合は3年間の平均自営輸出入額が50百万米ドル以上(内、輸出額が30百万米ドル以上)。

<最低資本金>
80百万元(中西部は60百万元)。

<出資比率制限>
外国出資49%以内(外商投資産業指導目録付属文書と齟齬が生じている)。

<設立地>
省都・自治区首府・直轄市・計画独立都市及び経済特区

C.小売業

(1) CEPAによる開放(卸売業は塩・タバコを除く)

  • 香港の投資者が大陸で、独資小売企業を設立することを許可する。
  • 香港の投資者が大陸で小売企業を設立する場合の条件を、以下の通り緩和する。
  • 香港の投資者の、申請前3年間の年平均最低売上高を1億米ドルに引き下げ、申請1年前の資産額を10百万米ドルに引き下げる。
  • 大陸に設立する会社の最低資本金は10百万元に引き下げる。中西部に設立する場合は、最低資本金を6百万元に引き下げる。
  • 香港企業が大陸で小売企業を設立できる地域範囲を「地級市」まで拡大、広東省では「県級市」まで拡大する。
  • 香港企業が大陸で独資により、自動車販売会社を設立することを許可する。ただし、30店舗を超えるチェーンストアはWTO加盟に伴う基準に従う。
  • 香港で永住権のある中国公民は、大陸の関連法律に基づき、外資事前審査を経ずに、広東省で個人企業を経営することを許可する。その経営範囲は小売業であり、フランチャイズは含めない。売り場面積は300平方メートルを超えないものとする。

(2) WTO加盟に伴う開放スケジュール

<出資比率制限>
・加盟後2年以内に外資メジャー出資可能
・加盟後3年以内に出資比率制限廃止

<地域制限>
・加盟前
 経済特区5都市、北京、上海、天津、広州、大連、青島。尚、北京・上海では4社、その他の地域では2社が参入可能であり、北京の4社の内2社は支店の開設が可能(外資マイナー出資)
・加盟時
 鄭州・武漢を開放(同上)
・2年以内
 全省都、及び重慶、寧波を開放(同上)
・3年以内:地理的制限、数量的制限を撤廃

<取扱商品>
・1年以内に本・新聞・雑誌の取扱が可能。
・2年以内に薬品・農薬・製油の取扱が可能
・5年以内に化学肥料の取扱が可能
・タバコは除外品目(制限が残る)

また、これを受けて公布された外商投資産業指導目録(2003年4月施行)の付属文書では、小売業(タバコ取扱を除く)の出資比率制限の緩和について、以下の通り規定している。

・2002年12月11日迄に50%迄の外資出資を許可
・2003年12月11日迄に外資がマジョリティをとることを許可
・2004年12月11日迄に独資を許可

なお、自動車(2006年12月11日迄に制限を撤廃)、書籍、新聞雑誌、薬品、農薬、農業用フィルム、精製油、化学肥料、穀物、植物油、砂糖、タバコ、綿花を取り扱う30店舗以上を有するチェーンストアについては、外資がマジョリティをとることを許可しない

また、フランチャイズ経営、無店舗の卸売り・小売につては、2004年12月11日迄に外国企業の出資を許可する。

本来は、上記の内容を踏まえて関連規定が公布されることが予定されているが、現段階(2003年8月末)では1999年に施行された「外資商業企業試行弁法」が改定されておらず、本格的な設立認可が開始されていない状況にある。

この試行弁法に基づけば、外資小売会社の設立条件は、以下の通りの状況にある。

<出資者資格>
・外国出資者
申請前3年間の平均年間売上高が25億米ドル以上。申請前1年の資産総額が3億米ドル以上。
・中国出資者
流通業に従事する企業であり、申請前1年の資産額が50百万元(中西部は30百万元)以上。また、商業企業の場合は申請前3年間の平均年間売上高が3億元(中西部の場合は2億元)以上であり、貿易企業の場合は3年間の平均自営輸出入額が50百万米ドル以上(内、輸出額が30百万米ドル以上)。

<最低資本金>
50百万元(中西部は30百万元)。

<出資比率制限>
3店舗を超える支店チェーン方式をとる場合(コンビニ・専業店・専売店を除く)については、原則として外国出資49%以下。3店舗以下の支店を開設する場合、及び専業店・専売店においては、外国出資65%以下。

<設立地>
省都・自治区首府・直轄市・計画独立都市及び経済特区

D.物流

(1) CEPAによる開放

物流
○香港企業が大陸で独資により、貨物輸送及び物流サービスを提供することを許可する。これには、道路一般貨物輸送、倉庫、荷役、加工、包装、配送及び関連情報処理サービスと関連コンサルティング業務、国内貨物輸送代理業務、インターネットを利用した物流管理業務を含む。

貨運代理サービス
○香港企業が大陸で、独資により貨運代理サービスを行なうことを許可する。
○香港企業が大陸で設立する貨運代理企業(国際貨物運輸代理)の最低資本金条件は、大陸企業の規定に準じる。

倉庫サービス
○香港企業が大陸で、独資により、倉庫サービスを行なうことを許可する。
○香港企業が大陸に設立する倉庫会社の最低資本金条件は、大陸企業の規定に準じる。

道路輸送サービス
○香港企業が大陸で、独資により、道路貨物輸送会社を設立することを許可する。
○香港企業が香港と大陸各省の間の貨物輸送直行便業務を行なうことを許可する。
○香港企業が中西部で独資の旅客輸送会社を設立し、道路旅客輸送業務を行なうことを許可する。

海運サービス
○香港企業が大陸で、独資により会社を設立し、国際船舶管理、国際海運貨物倉庫、国際海運コンテナセンター、船舶を保有しない輸送請負業務を行なうことを許可する。
○香港海運会社が大陸で、独資の船務事務会社を設立することを許可し、所有または経営する船舶に貨物請負、書類発行、運送費決済、サービス契約などの日常業務を提供することを許可する。
○香港海運会社が幹線航路の定期貨物船を利用し、大陸の港湾で自由に自社所有またはレンタルの空コンテナを分配することを許可する。ただし税関での手続を行なわなくてはならない。

(2) WTO加盟に伴う開放スケジュールと現行の関連規定

外資貨運送代理
WTO加盟に際して、貨運代理業に関しては、外資に対して以下の通りの規制緩和を行なうことを公約している。

  • WTO加盟時点の状況
    3年以上の実績があれば、合弁会社の設立が可能(外資出資50%以下)。
  • 1年以内に外資メジャー出資を許可(開設1年で支店の設置が可能に)。
  • 4年以内に100%外資の設立を許可。

また、これを受けて公布された外商投資産業指導目録(2003年4月施行)の付属文書では、出資比率制限の緩和について、以下の通り規定している。

  • 指導目録施行時
    外資出資50%以下(宅配便サービスは49%以下)
  • 2002年12月11日迄に外資メジャー出資を許可
  • 2005年12月11日迄に独資を許可

以上の内容を踏まえて、2002年12月に「外商投資国際貨物運輸代理企業管理弁法」が公布され、以下の通りが規定されている。

  • 外資貨運代理会社の設立
    合資・合作・独資の形態で外資貨運代理公司を設立できる。
    ただし、独資形態については当面設立を認めず(上記、付属文書に明記されたスケジュールに合せるものと推測される)、合資・合作形態の場合は、中方出資を25%以上とする必要がある。
  • 最低資本金
    1百万米ドル(ただし、支店を開設する場合は、拠点一つごとに12万米ドルの増資が必要)。
  • その他の事項
    a. 外国側出資者の内、少なくとも1社は国際貨運代理業務を経営して3年以上の企業であり、この条件に合致する企業が外資側の筆頭株主になること。
    b.同一の外国出資者は、中国内に設立した国際貨運代理企業の経営が2年未満の場合、次の国際貨運代理企業を設立してはならない。
    c.正式開業一年以上、且つ資本金が全額払い込まれた段階で、当該国際貨運代理企業は国内支店を開設できる。

外資物流会社
WTO加盟に際して、物流業に関しては、外資に対して以下の通りの規制緩和を行なうことを公約している

  • 国際海運
    外資出資49%以下の合弁会社設立可能(董事長、総経理は中方が派遣する必要あり)。
  • 鉄道貨物運輸
     加盟時 :外資49%以下の合弁設立可能。
     3年以内:外国メジャー出資可能。
     6年以内:100%外資可能。
  • 陸上(道路)貨物輸送
     加盟時 :外資49%以下の合弁設立可能。
      1年以内:外国メジャー出資可能。
     3年以内:100%外資可能。
  • 倉庫業
     加盟時 :外資49%以下の合弁設立可能。
     1年以内:外国メジャー出資可能。
     3年以内:100%外資可能。

また、これを受けて公布された外商投資産業指導目録(2003年4月施行)の付属文書では、出資比率制限の緩和について、以下の通り規定している。

  • 定期、不定期の国際海上運輸業務
    外資出資49%以下
  • 国際コンテナ連結輸送
     施行時:外資出資50%以下
     2002年12月11日迄に外国メジャー出資を許可
     2005年12月11日迄に独資を許可
  • 陸上貨物運輸会社
     2002年12月11日迄に外国メジャー出資を許可
     2004年12月11日迄に独資を許可
  • 出入国自動車運輸会社
     2002年12月11日迄に外国メジャー出資を許可
     2004年12月11日迄に独資を許可
  • 水上運輸会社
     外国出資49%以下
  • 鉄道貨物運輸会社
     施行時:外資出資49%以下
     2004年12月11日迄に外国メジャー出資を許可
     2007年12月11日迄に独資を許可

なお、物流業に関する規定は、以下の様なものが公布されている。

◎外商投資物流企業試点設立業務展開の関連問題に関する通知
<サービス内容>
国際流通物流業務・サードパーティロジスティック(貨物の輸送、倉庫保管、積み降ろし、加工、包装、配送、情報処理その他の業務)の全て若しくは一部。
<最低資本金>
5百万米ドル以上
<出資制限>
外国出資者の出資比率は50%以下
<地域制限>
4つの直轄市(北京、天津、上海、重慶)、及び3つの省(浙江省、江蘇省、広東省)、及び深セン経済特区。

◎ 外商投資道路運輸業管理規定、道路運輸投資分野の更なる開放に関する通知
<サービス内容>
道路旅客輸送、道路貨物輸送、道路貨物運搬積み降ろし、道路貨物倉庫保管、道路輸送に関する補助的サービス、車両整備
<出資制限>
外国出資者の出資比率は75%以下

E.銀行業

(1) CEPAによる開放

  • 大陸に支店を開設する、若しくは大陸で法人を設立する香港の銀行、及び財務会社に関して、総資産規模の条件を60億米ドル以上に引き下げる。銀行は支店または法人機構を選んで設立することができる。財務会社は法人機構のみ設立できる。
  • 香港の銀行が大陸内に中外合弁銀行または中外合弁財務会社を設立する場合、または香港の財務会社が大陸内に中外合弁財務会社を設立する場合、事前に代表機構を有していることを要しない。
  • 香港の銀行の大陸支店による人民元業務経営申請の資格条件を緩和する。
    a.陸での最低営業年数を、3年から2年に緩和する。
    b.収益性の審査を行なうとき、大陸支店の個別審査を複数の支店の全体審査に変える。

(2 )WTO加盟に伴う開放スケジュールと現行の関連規定
WTO加盟に際して、外資銀行については、以下の通りの規制緩和が行なわれることが合意されている。

  • WTO加盟時の状況
    外貨業務 :外資系企業に対するサービスに限定。
    人民元業務:外資系企業に対するサービスに限定。地域も上海、深センに限定。
  • 外貨業務の開放スケジュール
    加盟時に顧客制限、地理的制限を撤廃。
  • 人民元業務
    <顧客制限>
    加盟時 :外資系企業に限定
    2年以内:中国資本企業を含める
    5年以内:中国人個人を含む全て
    <地理的制限>
    加盟時 :上海、深セン、天津、大連(天津、大連を追加)
    1年以内:広州、珠海、青島、南京、武漢を追加
    2年以内:済南、福州、成都、重慶を追加
    3年以内:昆明、北京、廈門を追加
    4年以内:汕頭、寧波、シン陽、西安を追加
    5年以内:地域制限を撤廃
    <その他>
    ある地域で人民元業務を認められた外国金融機関は、「人民元か開放されている他地域の顧客にサービスを提供することが出来る。
  • 外資銀行を設立する資格のある外国出資者
    a. 外国銀行の支店を設置する資格
     申請前年の資産が200億ドル以上
    b.合弁銀行・合弁金融機関の設立
     申請前年度の資産が100億ドル以上
    c.外国金融機関が人民元業務に従事できる資格
     中国で3年以上ビジネスを行ない、申請前の2年に利益を上げている。

なお、外資銀行に関しては、外資金融機関管理条例、及び外資金融機関管理条例実施細則が2002年より施行されているが、概要は以下の通りである。

<最低資本金>
 独資銀行、合資銀行の場合は3億元
 外国銀行の支店の場合は、本店が1億人民元以上の資金を無償で割り当てること

<外国出資者の資格>

  • 独資銀行の場合
    申請人が金融機関であること、申請人が国内で代表機構を設立して2年以上であること、申請人の前年度末の総資産が100億米ドル以上であること、その他。
  • 外国銀行の支店の場合
    申請人が中国内に代表機構を設立して2年以上であること、申請の前年度末の総資産が200億米ドル以上であり、自己資本比率が8%以上であること、その他
  • 合資銀行の場合
    申請人が金融機関であること、申請人が国内で代表機構を設立していること、申請人の前年度末の総資産が100億米ドル以上であること、その他。
  • 人民元業務
    人民元業務の取扱を行なうためには、以下の条件を備える必要がある。
    申請提出前に中国国内で開業して3年以上であること、申請提出前に2年連続で利益をあげていること、開放スケジュールに合致していること、その他

F.保険業

(1) CEPAによる開放

  • 香港に居住する中国公民は、保険数理士資格を取得すれば、当局の認可を得ずに大陸で業務を行なうことができる。
  • 香港の保険会社が合併、または戦略的吸収合併によって結成した集団は、所定の申請条件によって、大陸の保険市場に進出することができる(グループ総資産が50億米ドル以上、且つ傘下に経営歴史が30年以上、若しくは大陸に常駐代表所を設立後2年以上の香港の保険会社が1社はあること)。
  • 大陸の保険従業者資格を取得した香港居住者が大陸で業務を行なうことを認める。
  • 香港の保険会社が大陸の保険会社へ出資する場合の最高出資比率を、現行の10%から15%に引き上げる。

(2) WTO加盟に伴う開放スケジュールと現行の関連規定
WTO加盟に際して、保険業については、以下の通りの規制緩和が行なわれることが合意されている。

生命保険

  • 加盟時
    合弁形態のみ(外資出資比率は50%以下)。
    地域は上海、広州、大連、深セン、仏山に限定。
    個人向け生命保険を可能とする。
  • 2年以内
    北京、成都、重慶、福州、蘇州、廈門、寧波、シン陽、武漢、天津を開放。
  • 3年以内
    個人向け年金保険、団体保険を開放。
    地域制限を撤廃。
  • 5年以内
    独資可能

損害保険

  • 加盟時
    支店或いは外資出資は51%以下。
    地域は上海、広州、大連、深セン、仏山に限定。
    取扱は外国人、外資企業向けのみ。
  • 2年以内
    北京、成都、重慶、福州、蘇州、廈門、寧波、シン陽、武漢、天津を開放。
    独資可能。顧客制限および取扱の種類の制限を撤廃(中国の顧客向けを可能に)。
  • 3年以内
    地理的制限を撤廃。

再保険

  • 加盟時に外国保険会社は、支店、合弁、独資形態で再保険サービスを提供することが可能。

また、これを受けて公布された外商投資産業指導目録(2003年4月施行)の付属文書では、出資比率制限の緩和について、以下の通り規定している。

生命保険会社

  • 外資出資50%以下

損害保険会社

  • 現時点では、外資出資51%以下
  • 2003年12月11日迄に独資を許可

なお、外資保険公司管理条例、再保険公司設立規定が2002年より施行されており、ここでは以下の通り規定されている。

生命・損害保険

  • 最低資本金
    合弁・独資共に2億元。
    支店の場合は、本社が2億元以上の資金を無償で割り当てる。
  • 外国出資者の資格
    保険業務の経営が30年以上であること、中国内に代表機構を設立して2年以上であること、
    設立申請の前年度末総資産が50億米ドル以上であること、その他

再保険

  • 最低資本金
    生命再保険、損害再保険会社は2億人民元以上。
    総合再保険会社は、3億元以上。

G.広告業

(1) CEPAによる開放
 香港企業が大陸内で独資の広告企業を設立することを許可する。

(2) WTO加盟に伴う開放スケジュールと現行の関連規定
 外資広告会社に関する現行の規定、及びWTO加盟を踏まえての規制緩和は以下の通りとなっている。

  • WTO加盟時点は外資出資49%以下に限定。
  • 2003年12月11日迄に外資がマジョリティをとることを許可
  • 2005年12月11日迄に独資を許可

なお、最低資本金は、30万米ドルとなっている。

H.旅行(観光)業

(1) CEPAによる開放

  • 香港企業が大陸に独資のホテル、マンション、レストランを建設・改装・経営することを許可。
  • 香港の旅行会社が大陸に合弁の旅行会社設立する場合、地域制限を設けない。

(2) WTO加盟に伴う開放スケジュールと現行の関連規定

WTO加盟に際して、旅行代理店については、以下の通りの規制緩和が行なわれることが合意されている。

  • WTO加盟時点の状況
    中国政府指定のリゾート及び、北京、上海、広州、西安で、外資マイナー合弁可能。
  • 3年以内
    外資メジャー可能。
  • 6年以内
    出資比率制限の撤廃(独資可能)。
    a. 合弁の最低資本金は400万元。
    b. 支店の設置は不可。
    c. 1社に付き合弁会社1社の設立が可能。

以上の内容を踏まえて、2003年6月に「外資がメジャーを取る旅行会社・外商独資旅行会社設立の暫定規定」が出され、以下の通り規制緩和が行なわれた。

<資本金>
 400万元以上

<地 域>
 国務院の許可を得た国家旅遊休暇区、北京、上海、広州、深セン、西安

<外国出社者の条件>

  • 旅行業に従事する会社であり、本国の旅行業協会の会員であること。
  • 外資メジャー出資旅行会社を設立する場合は、年間旅行経営総額が40百万米ドル以上の外国出資者であること。
  • 独資旅行会社を設立する場合は、年間旅行経営総額が5億米ドル以上の外国出資者であること。

4.サービス業種に関連する優遇措置を享受するための香港企業の定義と問題点

上記3を見てもわかるように、香港企業が大陸で17種類のサービス産業に参入する場合には、他国企業と比較して、タイムスケジュールの面においても、取組むことができる業務範囲の面からみても、少なからぬ恩恵を享受できることとなります。

では、香港企業の定義はどうなっているのでしょうか。同協定では、香港企業の定義を以下の通り定めています。

<香港企業の定義>
a.香港特別行政区「会社条例」、またはその他の関連条例に基づいて法人登記されていること

b.企業が香港特別行政区で実質的な商業経営に従事すること。その判断基準としては、

  • 大陸で行なうことを予定している業務の性質が、香港での業務と一致すること。更に、香港での実質的経営範囲を超えないこと。
  • 実質的な運営期間に、企業が香港で事業所得税を納付していること。
  • 香港で法人登記していること、並びに実際経営期間が3年間以上(3年間も含む)であること。ただし、建設・関連エンジニアリング、銀行、保険業については、実際経営期間が5年間以上(5年間も含む)あることを要する。
  • 香港で実質的な経営をしている業務場所を所有若しくは賃借しており、その業務場所の規模が、業務の範囲と規模に相応すること。
  • 香港で雇用した従業者総数の割合が50%以上(50%も含む)でなければいけない。

b.の最後の項目(従業員数)については、内容が今ひとつ不明瞭ですが、香港における報道では、「当該法人における現地社員の割合が50%以上であり、現地社員の定義は香港のPermanentID保有者(国籍は問わない)」であることを意味すると発表されています。

これが正しいとすると、日本企業の香港現地法人でも、香港法人の基準を満たす企業は相当数あり、当該協定に従って、大陸に有利な条件で進出することができる可能性があります。ただし、筆者が懸念しているのは、香港企業の定義を満たしても、実質的に外国企業と認められる場合(香港現地法人からの間接出資)においては、大陸で設立認可を取得することが困難なのではないかという点です。

つまり、大陸においては、外資企業の設立は、関連機関の設立批准を受けて初めて設立が可能になるわけであり、設立条件通りの申請を行なえば、自動的に許可が取得できるわけではありません。従って、CEPAの条件に基づいて会社の設立申請を行なっても、実際に設立許可が取れない事態が少なからず想定されますし、この様な場合においては、設立が許可されない理由がよほど適正に開示されない限り、香港企業(含む在香港の外資企業)も不信感を募らせる結果になるでしょう。従って、CEPAを絵に描いた餅にしないためにも、運用状況を十二分に開示する努力が大陸側では必要となりますし、香港特別行政区政府側でも、CEPAの運用状況を管理・監督する機関を設置し、企業のクレームを処理する(大陸側との橋渡しをする)様な努力が不可欠といえます。

5.CEPAにより想定される影響

現段階ではCEPAの大枠・精神が取り決められたに過ぎず、詳細については今後の協議を待つ必要があります。そのため、同協定の影響についてはまだ明確なコメントができる状況ではありませんが、間違いなくいえることは、香港経由での大陸進出が見直される期待があることです。もともと中国の外資誘致は広東省から始まった経緯があり(1980年頃より)、中国進出の窓口として香港は重要な機能を果たしてきました。ただし、外貨管理の自由性・軽課税というメリットは未だにあるものの、最近では香港のコストの高さ(大陸に比較して)が敬遠されたり、地域的にグレーター上海地域が注目を集めたりしたことによって、大陸進出にあたっての香港の位置付けが低下してきたことは否めない事実です。

CEPAの実施により、香港経由で大陸進出を行なうことによって、(規制緩和が待たれている)大陸のサービス産業に、より優位な条件で参入が可能になるのであれば、これが香港の新しいファンクションとなり、香港経由の間接出資が改めて見直されることになると考えられます。

更に、筆者自身が注目しているのは、当該協定の締結に絡んで、香港での「オフショア人民元センター」の開設が検討されていることです。

中国は多方面で規制緩和が進められていますが、外貨管理については未だに厳しい制限・管理が行なわれており、これが外国出資者・中国の外資企業の運用上、もっとも頭の痛い問題の一つになっています。
香港にオフショア人民元センターが開設されれば、香港の外貨管理(外貨管理が原則として自由)と組み合わせることによって、大陸で活動をおこなう外資企業の外貨管理・送金に関連する状況が大きく改善すると期待されるためです。ただし、オフショア人民元センターについては、まだ詳細が決められていないこと、香港でのオフショア人民元センターの開設が人民元の安定に悪影響を及ぼすという意見があること、更には、競争に遅れをとることを懸念する上海等からの反対があるという噂もあり、実際にはどのような政策が採用されるかは不明です。

ただし、人民元オフショアセンターの開設は、香港のプレゼンスのみならず、大陸で活動を行なう外資企業に大きな影響を与える内容であり、今後の進展を注目する必要があります。

以上解説した通り、本件(CEPAの内容)は、まだ二転三転が予想される状況ですが、期待されている通りの運用(協定の実務面での厳守)が行なわれるのであれば、外国企業の投資・ビジネス形態に重要な影響を与える内容です。当該協定が、純香港企業のみならず、外国企業にとっても意義あるものとなることが期待されます。

(03年9月1日記・14,589字)
丸紅香港華南会社コンサルティング課長・広州会社管理部長
水野真澄

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