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ログイン2003年9月22日
<投資環境>
(本稿補足文献として「中国大陸と香港の経済・貿易貿関係緊密化協定及び協商議事録の主な内容」もあわせてご覧下さい)
2003年6月29日に、香港と中国本土間の自由貿易協定である、CEPA(Closer Economic Partnership Arrangement)が調印され、2004年1月1日より香港製品・香港企業は当該協定に基づく各種の便益を享受することができるようになります。
現段階では、当該協定の運用ルールが未整備であり、協定の実施に伴う影響に関しては、未知な部分が多いのが実情で、解説がしにくい状況にはありますが、現段階で明確になっている内容を基にして、「当該協定の内容」と、「協定の実施により想定される影響と問題点」を解説します。
1.協定に定められた内容
当該協定により定められた内容は、大きく分けると以下の3項目となります。
対象となる業種:経営コンサルティング、会議・展覧、広告、会計、建設・不動産、医療・歯科治療、販売・小売、物流、貨運代理、倉庫、運輸、旅行、音楽・映像、法律、銀行、証券、保険
対象となる分野
・貿易投資の促進
・通関手続きの簡素化
・商品検査検疫・食品安全・品質基準の徹底
・電子商取引の促進
・法律・法令の透明度の向上
・中小企業間の交流と支援
・漢方医学産業の発展と推進
2004年からゼロ関税が適用される273品目は、大きく分類すれば以下の通りとなります。当該措置によって、香港が享受できる関税の節税は年間HK$7〜8億(US$1億相当)に及ぶとも発表されていますが、肝心の香港製品の定義については、現段階ではまだ明確になっていません。香港側よりは、香港で付された付加価値が25%以上となることを要求していますが、この基準(要求)は、他国の自由貿易協定の基準が総じて40〜60%以上であることを考慮すると受け入れがたい、というのが中央政府の立場です。
香港製品の定義は9月末〜10月迄に取り決められることとなっており、暫くは香港・中国本土間の綱引きが行なわれるものと考えられます。
この措置は、香港で加工工程を行なった製品を、中国本土に販売している企業にとってはメリットが大きい内容ではあります。ただし、ゼロ関税の実施をきっかけに生産工程を大陸から香港に移すような動きが生じるという観測については、筆者個人は疑問をもっています。ゼロ関税が実施される製品の関税率(WTO加盟に際しての公約税率)は5〜35%であり、20%以下の税率のものが大半を占めています。中国本土と香港の人件費・家賃等の格差を考えると、生産工程を香港に移すことで、それ以上の製造コストの増加が見込まれるケースが多いものと思われるため、この措置を理由として、生産拠点を大陸から香港に移動することは少々考えにくいと思われるためです。
2004年1月からゼロ関税が適用される273品目の概要
CEPAにおいて、日系企業の関心は主にこの項目に集中しています。
サービス業種は、中国が外資の参入に対して多くの制限を加えている分野ですが、WTO加盟に際して、中国は段階的な開放を実施していくことを公約しています。
ただし、当該協定において、香港企業が中国本土において、特定のサービス業種(17分野)に参入する場合は、WTO加盟に伴う開放スケジュール以上の条件緩和を行なうことを約しています。一定の条件を満たす企業は、外国企業の100%香港現地法人であっても香港企業と認定されるため、香港経由で中国大陸に進出することにより、より早い時点での進出、より良い条件での進出が可能になると期待されているためです。
17種類の当該項目の内容は、添付資料(CEPA主要内容)を参照頂きたいのですが、日系企業にとって影響の大きいいくつかの分野について、CEPAの条件とWTO加盟に基づく開放スケジュールを比較してみます。
A.建設・関連エンジニアリングサービス
(1) CEPAによる開放
(2) WTO加盟に伴う開放スケジュールと現行の関連規定
WTO加盟に際して、建築業に関しては、外資に対して以下の通りの規制緩和を行なうことを公約している。なお、中国のWTO加盟は2001年12月11日。
なお、、外資建設業関係では、外商投資建築企業管理規定、外商投資建設工事設計企業管理規定が共に2002年末より施行されている。
当該規定では、「外国出資比率が75%まで認められること」、「工事の請負が可能な範囲として、上記WTO議定書と同様の内容」が規定されている。
最低資本金については、資質によって分かれる(請負可能な工事の内容に基づく)ため、この規定には記載されていない。
B.貿易業・卸売業
(1) CEPAによる開放(卸売業は塩・タバコを除く)
貿易会社
・香港の投資者の、申請前3年間の年平均対大陸貿易最低金額を10 百万米ドルに引き下げる。大陸に設立する会社の最低資本金は20百万元に引き下げる。
・中西部に設立する場合は、最低貿易金額を5百万米ドル、最低資本金を10百万元に引き下げる。
卸売業
・香港の投資者の、申請前3年間の年平均最低売上高を30百万米ドルに引き下げ、申請1年前の資産を10百万米ドルに引き下げる。大陸に設立する会社の最低資本金は50百万元に引き下げる。
・中西部に設立する場合は、最低年平均売上高を20百万米ドル、最低資本金を30百万元に引き下げる。
・大陸内で委託販売と卸売を行なう香港企業には地域制限を設けない。
(2) WTO加盟に伴う開放スケジュールと現行の関連規定
貿易会社
WTO加盟に伴う公約では、外資企業に対する貿易権の開放は以下の通り行なわれることとなっている。
<外資企業に対する貿易圏の開放スケジュール>
・加盟後1年以内に外資マイナー出資の会社に対して開放
・加盟後2年以内に外資メジャー出資の会社に対して開放
・加盟後3年以内に独資企業に対して開放
なお、外資貿易会社の設立に関しては、中外合弁対外貿易公司設立に関する暫定弁法により、以下の通り規定されている。
<外国側出資者の条件>
申請前3年度の平均対中貿易額が 30百万米ドル以上であること(設立地が中西部地域である場合は、この金額を 20百万米ドルに緩和)。
<中国側出資者の条件>
・貿易権を有していること。
・申請前3年度の平均貿易額が 30百万米ドル以上であること(設立地が中西部地域である場合は、この金額を 20百万米ドルに緩和)。
<資本金額>
・50百万元
<外資比率制限>
・外国側出資者の比率は、2003年12月11日以前は49%以下に限定(外資に対する貿易権の開放に合わせて、出資比率制限が緩和されていくものと予想される)。
卸売業
また、これを受けて公布された外商投資産業指導目録(2003年4月施行)の付属文書では、販売代理・卸売り(塩・タバコは除く)業に関しての出資比率制限の緩和について、以下の通り規定している。
本来は、上記の内容を踏まえて関連規定が公布されることが予定されているが、現段階(2003年8月末)では1999年に施行された「外資商業企業試行弁法」が改定されておらず、本格的な設立認可が開始されていない状況にある。
この試行弁法に基づけば、外資卸売会社の設立条件は、以下の通りの状況にある。
<出資者資格>
・外国出資者
申請前3年間の平均年間売上高が25億米ドル以上。申請前1年の資産総額が3億米ドル以上。
・中国出資者
流通業に従事する企業であり、申請前1年の資産額が50百万元(中西部は30百万元)以上。また、商業企業の場合は申請前3年間の平均年間売上高が3億元(中西部の場合は2億元)以上であり、貿易企業の場合は3年間の平均自営輸出入額が50百万米ドル以上(内、輸出額が30百万米ドル以上)。
<最低資本金>
80百万元(中西部は60百万元)。
<出資比率制限>
外国出資49%以内(外商投資産業指導目録付属文書と齟齬が生じている)。
<設立地>
省都・自治区首府・直轄市・計画独立都市及び経済特区
C.小売業
(1) CEPAによる開放(卸売業は塩・タバコを除く)
(2) WTO加盟に伴う開放スケジュール
<出資比率制限>
・加盟後2年以内に外資メジャー出資可能
・加盟後3年以内に出資比率制限廃止
<地域制限>
・加盟前
経済特区5都市、北京、上海、天津、広州、大連、青島。尚、北京・上海では4社、その他の地域では2社が参入可能であり、北京の4社の内2社は支店の開設が可能(外資マイナー出資)
・加盟時
鄭州・武漢を開放(同上)
・2年以内
全省都、及び重慶、寧波を開放(同上)
・3年以内:地理的制限、数量的制限を撤廃
<取扱商品>
・1年以内に本・新聞・雑誌の取扱が可能。
・2年以内に薬品・農薬・製油の取扱が可能
・5年以内に化学肥料の取扱が可能
・タバコは除外品目(制限が残る)
また、これを受けて公布された外商投資産業指導目録(2003年4月施行)の付属文書では、小売業(タバコ取扱を除く)の出資比率制限の緩和について、以下の通り規定している。
・2002年12月11日迄に50%迄の外資出資を許可
・2003年12月11日迄に外資がマジョリティをとることを許可
・2004年12月11日迄に独資を許可
なお、自動車(2006年12月11日迄に制限を撤廃)、書籍、新聞雑誌、薬品、農薬、農業用フィルム、精製油、化学肥料、穀物、植物油、砂糖、タバコ、綿花を取り扱う30店舗以上を有するチェーンストアについては、外資がマジョリティをとることを許可しない
また、フランチャイズ経営、無店舗の卸売り・小売につては、2004年12月11日迄に外国企業の出資を許可する。
本来は、上記の内容を踏まえて関連規定が公布されることが予定されているが、現段階(2003年8月末)では1999年に施行された「外資商業企業試行弁法」が改定されておらず、本格的な設立認可が開始されていない状況にある。
この試行弁法に基づけば、外資小売会社の設立条件は、以下の通りの状況にある。
<出資者資格>
・外国出資者
申請前3年間の平均年間売上高が25億米ドル以上。申請前1年の資産総額が3億米ドル以上。
・中国出資者
流通業に従事する企業であり、申請前1年の資産額が50百万元(中西部は30百万元)以上。また、商業企業の場合は申請前3年間の平均年間売上高が3億元(中西部の場合は2億元)以上であり、貿易企業の場合は3年間の平均自営輸出入額が50百万米ドル以上(内、輸出額が30百万米ドル以上)。
<最低資本金>
50百万元(中西部は30百万元)。
<出資比率制限>
3店舗を超える支店チェーン方式をとる場合(コンビニ・専業店・専売店を除く)については、原則として外国出資49%以下。3店舗以下の支店を開設する場合、及び専業店・専売店においては、外国出資65%以下。
<設立地>
省都・自治区首府・直轄市・計画独立都市及び経済特区
D.物流
(1) CEPAによる開放
物流
○香港企業が大陸で独資により、貨物輸送及び物流サービスを提供することを許可する。これには、道路一般貨物輸送、倉庫、荷役、加工、包装、配送及び関連情報処理サービスと関連コンサルティング業務、国内貨物輸送代理業務、インターネットを利用した物流管理業務を含む。
貨運代理サービス
○香港企業が大陸で、独資により貨運代理サービスを行なうことを許可する。
○香港企業が大陸で設立する貨運代理企業(国際貨物運輸代理)の最低資本金条件は、大陸企業の規定に準じる。
倉庫サービス
○香港企業が大陸で、独資により、倉庫サービスを行なうことを許可する。
○香港企業が大陸に設立する倉庫会社の最低資本金条件は、大陸企業の規定に準じる。
道路輸送サービス
○香港企業が大陸で、独資により、道路貨物輸送会社を設立することを許可する。
○香港企業が香港と大陸各省の間の貨物輸送直行便業務を行なうことを許可する。
○香港企業が中西部で独資の旅客輸送会社を設立し、道路旅客輸送業務を行なうことを許可する。
海運サービス
○香港企業が大陸で、独資により会社を設立し、国際船舶管理、国際海運貨物倉庫、国際海運コンテナセンター、船舶を保有しない輸送請負業務を行なうことを許可する。
○香港海運会社が大陸で、独資の船務事務会社を設立することを許可し、所有または経営する船舶に貨物請負、書類発行、運送費決済、サービス契約などの日常業務を提供することを許可する。
○香港海運会社が幹線航路の定期貨物船を利用し、大陸の港湾で自由に自社所有またはレンタルの空コンテナを分配することを許可する。ただし税関での手続を行なわなくてはならない。
(2) WTO加盟に伴う開放スケジュールと現行の関連規定
外資貨運送代理
WTO加盟に際して、貨運代理業に関しては、外資に対して以下の通りの規制緩和を行なうことを公約している。
また、これを受けて公布された外商投資産業指導目録(2003年4月施行)の付属文書では、出資比率制限の緩和について、以下の通り規定している。
以上の内容を踏まえて、2002年12月に「外商投資国際貨物運輸代理企業管理弁法」が公布され、以下の通りが規定されている。
外資物流会社
WTO加盟に際して、物流業に関しては、外資に対して以下の通りの規制緩和を行なうことを公約している
また、これを受けて公布された外商投資産業指導目録(2003年4月施行)の付属文書では、出資比率制限の緩和について、以下の通り規定している。
なお、物流業に関する規定は、以下の様なものが公布されている。
◎外商投資物流企業試点設立業務展開の関連問題に関する通知
<サービス内容>
国際流通物流業務・サードパーティロジスティック(貨物の輸送、倉庫保管、積み降ろし、加工、包装、配送、情報処理その他の業務)の全て若しくは一部。
<最低資本金>
5百万米ドル以上
<出資制限>
外国出資者の出資比率は50%以下
<地域制限>
4つの直轄市(北京、天津、上海、重慶)、及び3つの省(浙江省、江蘇省、広東省)、及び深セン経済特区。
◎ 外商投資道路運輸業管理規定、道路運輸投資分野の更なる開放に関する通知
<サービス内容>
道路旅客輸送、道路貨物輸送、道路貨物運搬積み降ろし、道路貨物倉庫保管、道路輸送に関する補助的サービス、車両整備
<出資制限>
外国出資者の出資比率は75%以下
E.銀行業
(1) CEPAによる開放
(2 )WTO加盟に伴う開放スケジュールと現行の関連規定
WTO加盟に際して、外資銀行については、以下の通りの規制緩和が行なわれることが合意されている。
なお、外資銀行に関しては、外資金融機関管理条例、及び外資金融機関管理条例実施細則が2002年より施行されているが、概要は以下の通りである。
<最低資本金>
独資銀行、合資銀行の場合は3億元
外国銀行の支店の場合は、本店が1億人民元以上の資金を無償で割り当てること
<外国出資者の資格>
F.保険業
(1) CEPAによる開放
(2) WTO加盟に伴う開放スケジュールと現行の関連規定
WTO加盟に際して、保険業については、以下の通りの規制緩和が行なわれることが合意されている。
生命保険
損害保険
再保険
また、これを受けて公布された外商投資産業指導目録(2003年4月施行)の付属文書では、出資比率制限の緩和について、以下の通り規定している。
生命保険会社
損害保険会社
なお、外資保険公司管理条例、再保険公司設立規定が2002年より施行されており、ここでは以下の通り規定されている。
生命・損害保険
再保険
G.広告業
(1) CEPAによる開放
香港企業が大陸内で独資の広告企業を設立することを許可する。
(2) WTO加盟に伴う開放スケジュールと現行の関連規定
外資広告会社に関する現行の規定、及びWTO加盟を踏まえての規制緩和は以下の通りとなっている。
なお、最低資本金は、30万米ドルとなっている。
H.旅行(観光)業
(1) CEPAによる開放
(2) WTO加盟に伴う開放スケジュールと現行の関連規定
WTO加盟に際して、旅行代理店については、以下の通りの規制緩和が行なわれることが合意されている。
以上の内容を踏まえて、2003年6月に「外資がメジャーを取る旅行会社・外商独資旅行会社設立の暫定規定」が出され、以下の通り規制緩和が行なわれた。
<資本金>
400万元以上
<地 域>
国務院の許可を得た国家旅遊休暇区、北京、上海、広州、深セン、西安
<外国出社者の条件>
上記3を見てもわかるように、香港企業が大陸で17種類のサービス産業に参入する場合には、他国企業と比較して、タイムスケジュールの面においても、取組むことができる業務範囲の面からみても、少なからぬ恩恵を享受できることとなります。
では、香港企業の定義はどうなっているのでしょうか。同協定では、香港企業の定義を以下の通り定めています。
<香港企業の定義>
a.香港特別行政区「会社条例」、またはその他の関連条例に基づいて法人登記されていること
b.企業が香港特別行政区で実質的な商業経営に従事すること。その判断基準としては、
b.の最後の項目(従業員数)については、内容が今ひとつ不明瞭ですが、香港における報道では、「当該法人における現地社員の割合が50%以上であり、現地社員の定義は香港のPermanentID保有者(国籍は問わない)」であることを意味すると発表されています。
これが正しいとすると、日本企業の香港現地法人でも、香港法人の基準を満たす企業は相当数あり、当該協定に従って、大陸に有利な条件で進出することができる可能性があります。ただし、筆者が懸念しているのは、香港企業の定義を満たしても、実質的に外国企業と認められる場合(香港現地法人からの間接出資)においては、大陸で設立認可を取得することが困難なのではないかという点です。
つまり、大陸においては、外資企業の設立は、関連機関の設立批准を受けて初めて設立が可能になるわけであり、設立条件通りの申請を行なえば、自動的に許可が取得できるわけではありません。従って、CEPAの条件に基づいて会社の設立申請を行なっても、実際に設立許可が取れない事態が少なからず想定されますし、この様な場合においては、設立が許可されない理由がよほど適正に開示されない限り、香港企業(含む在香港の外資企業)も不信感を募らせる結果になるでしょう。従って、CEPAを絵に描いた餅にしないためにも、運用状況を十二分に開示する努力が大陸側では必要となりますし、香港特別行政区政府側でも、CEPAの運用状況を管理・監督する機関を設置し、企業のクレームを処理する(大陸側との橋渡しをする)様な努力が不可欠といえます。
現段階ではCEPAの大枠・精神が取り決められたに過ぎず、詳細については今後の協議を待つ必要があります。そのため、同協定の影響についてはまだ明確なコメントができる状況ではありませんが、間違いなくいえることは、香港経由での大陸進出が見直される期待があることです。もともと中国の外資誘致は広東省から始まった経緯があり(1980年頃より)、中国進出の窓口として香港は重要な機能を果たしてきました。ただし、外貨管理の自由性・軽課税というメリットは未だにあるものの、最近では香港のコストの高さ(大陸に比較して)が敬遠されたり、地域的にグレーター上海地域が注目を集めたりしたことによって、大陸進出にあたっての香港の位置付けが低下してきたことは否めない事実です。
CEPAの実施により、香港経由で大陸進出を行なうことによって、(規制緩和が待たれている)大陸のサービス産業に、より優位な条件で参入が可能になるのであれば、これが香港の新しいファンクションとなり、香港経由の間接出資が改めて見直されることになると考えられます。
更に、筆者自身が注目しているのは、当該協定の締結に絡んで、香港での「オフショア人民元センター」の開設が検討されていることです。
中国は多方面で規制緩和が進められていますが、外貨管理については未だに厳しい制限・管理が行なわれており、これが外国出資者・中国の外資企業の運用上、もっとも頭の痛い問題の一つになっています。
香港にオフショア人民元センターが開設されれば、香港の外貨管理(外貨管理が原則として自由)と組み合わせることによって、大陸で活動をおこなう外資企業の外貨管理・送金に関連する状況が大きく改善すると期待されるためです。ただし、オフショア人民元センターについては、まだ詳細が決められていないこと、香港でのオフショア人民元センターの開設が人民元の安定に悪影響を及ぼすという意見があること、更には、競争に遅れをとることを懸念する上海等からの反対があるという噂もあり、実際にはどのような政策が採用されるかは不明です。
ただし、人民元オフショアセンターの開設は、香港のプレゼンスのみならず、大陸で活動を行なう外資企業に大きな影響を与える内容であり、今後の進展を注目する必要があります。
以上解説した通り、本件(CEPAの内容)は、まだ二転三転が予想される状況ですが、期待されている通りの運用(協定の実務面での厳守)が行なわれるのであれば、外国企業の投資・ビジネス形態に重要な影響を与える内容です。当該協定が、純香港企業のみならず、外国企業にとっても意義あるものとなることが期待されます。
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