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海南島全島保税化

中国ビジネスレポート 投資環境
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水野 真澄

有料

2025年12月22日

2025年12月18日に、海南島全島保税化(中国語の発表では封関)の発表が出されていますが、その概要について解説します。

1.海南自由貿易港
「海南自由貿易港建設総体方案」は、2020年6月1日に公布されていますが、そこには、以下の様な政策が織り込まれています。

(1)税制
1)企業所得税

海南島で実質的な経営を行う奨励分類企業に対しては、15%の企業所得税率を適用(標準税率は25%)。

2)個人所得税
高級人材・緊急必要人材に付いては、最高税率15%の個人所得税率を適用(標準税率は、45%を最高とした超過累進課税)。

(2)全島保税化
全島を税関特別区域(保税区域)にした上での関税ゼロ化が、総体方案には織り込まれています。総体方案には、2025年までに貿易・投資の自由化と利便化を進め、自由貿易港体系の初期的な建設を行い、2035年までに一層の発展を実現すると規定されていますので、それに基づき、今回の全島保税化の発表が行われたものです。

(3)離島免税政策
離島免税政策自体は、2011年に開始されたものです。中国本土からの国内旅行者が、島内の特定商店で物品を購入した場合、離島時に、免税措置(実際には税金還付措置)が認められる政策です。海南自由貿易港始動に伴い、一人当たりの免税額が、年間3万元から10万元に引き上げられました。

2.全島保税化後の管理
2025年12月18日に、全島保税化が実現したわけですが、その税関管理概要は以下の通りです。

(1)港湾
海南島内で、第一線港(海外との交通に使用する港)が8か所。第二線港(中国内の交通に使用する港)が10カ所設置されます。

(2)関税免除品目
全島保税化とは言っても、全ての輸入関税が廃止される訳ではなく、免税リストに記載された品目が対象となります。ただ、対象品目は、全島保税化以前は全品目の21%相当でしたが、現在では74%(約6,600品目)が該当しています。

また、海南自由貿易港で保税購入した物品を、中国内島外で不当に売却することを禁止するため、「海南自由貿易港密輸禁止条例(海南省人民代表大会常務委員会公告2025年第76号)」が公布されています(施行は2025年12月18日)。

因みに、上記の離島免税政策を利用して購入した物品は自己使用に限定され、これを島外で転売した場合は、密輸禁止条例に基づき処罰される可能性があります。

(3)海南島製造品の中国内島外売却
海南自由貿易港で保税輸入された貨物を中国本土(島外)に移送する場合、その段階で輸入段階課税が実施されます。

但し、海南自由貿易港の奨励分類企業が輸入原材料を使用して加工した貨物に付いて、30%以上の付加価値が付いている場合、中国本土(島外)企業が購入する際の輸入関税が免除されます(増値税・消費税は、税法に基づき徴収)。

根拠規則は「海南自由貿易港加工増値関税免除貨物税徴収暫定弁法(税関総署公告2025年第158号)」であり、増値税免税の規準となる加工後30%以上の増値の計算は、以下の通りとなります。また、海南自由貿易港内の加工貿易企業が複数関与する場合、増値計算上、その付加価値を累積することができます。

● 30%以上増値の計算式
【(貨物国内販売価格-シグマ輸入原材料価格-シグマ国内仕入れ原材料価格)/(シグマ輸入原材料価格+シグマ国内仕入れ原材料価格)〕】×100%≧30%

尚、全島保税化にあたり、海口税関は、「封関以前は、保税輸入品のみで30%以上の付加価値を付ける必要があったが、封関後は保税輸入品と国内品の双方で付加価値を計算できるようになった」と発表しています。

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