こんにちわ、ゲストさん

ログイン

日本企業がどの国でも直面する組織の共通四課題②共通四課題のおさらい

中国ビジネスレポート 組織・経営
アバター画像

小島 庄司

無料

2025年12月25日

第2回
「組織の共通四課題」のおさらい

組織の共通四課題について話しています。古くから私の話に付き合ってきた皆さんには「古典」の部類に入るテーマかもしれません。が、現在もこれは日系企業に根深く残る課題です。まずは四つを俯瞰してみましょう。

■ 課題①「経営一貫性の谷」

現地拠点の経営を一代目、二代目と駐在員が引き継いでいく過程で、どこかでバトンがうまく渡らないタイミングがあります。過去最高業績からわずか2年で赤字まで一気に墜落したり、高い規律を保っていたのが管理レベルの低下で不正や内部告発の巣窟と化したりすることから、「谷」と表現しています。

これは「短任期で異文化圏から来た駐在員が現地マネジメントの指揮をとる」という仕組みが招く宿命的な課題です。功罪ありますが、私は日本企業がこの仕組みを放棄して現地化する必要はないと思っています。その方が管理難度やリスクが上がるからです。ただ、代償としての「谷」は宿命的に発生します。

駐在員を10年単位で派遣する会社はなかなかありません。長くて5年、多くは3~4年。異文化圏に行って、言葉も違う中で、初めて接する組織を3年でどこまで把握できるか。相当高いハードルです。

駐在員が常にそのハードルを越えられる人ばかりとは限りません。能力が高い人であっても、海外で力を発揮できるタイプとそうでないタイプがいます。スロースターターもいれば、最初から速やかに適応できる人もいる。短任期の駐在員という仕事には向き・不向きがどうしてもあります。交代を重ねるうちに必ずどこかで直面する「谷」に落ちるリスク、それが経営一貫性の谷です。

■ 課題② 意思疎通の壁

言語の壁なら、英語話者でも英語圏以外に行けばぶち当たります。そうすると「意思疎通の壁」は別に日本企業に限ったことではないんじゃないのと思うかもしれませんが、日本人・日本の会社に特徴的なことがあります。

それは、日本で育ってきた日本人に異文化交流の経験が薄いことです。日本の子供たちは、みんなが当たり前に日本語を話す中で育ちます。異なる宗教・食事・祝日に気を使う必要もなく、バカにするとシャレにならない領域があると気づくような出来事もほぼありません(最近は都市部や特定の地方を中心に外国ルーツの人たちが増え、少しずつ変わってきてはいますが)。

人種のるつぼと言われるアメリカはもちろん、中国でも公式に認められているだけで56の民族が暮らしています。中国の標準語である北京語も使うけれど、普段は異なる言葉を話し、食事や宗教も違う。そのために微妙な対立もあります。ヨーロッパも同様ですね。

そういう環境で育つと、小さいうちからイヤでも意思疎通が難しい場面に遭遇し、切り抜ける方法を体得することになります。言語や宗教、文化的背景の違う人たちと、どうやって仲良くなるか、どうやって折り合いをつけるか、数をこなすうちに慣れることができる。外国に行っても、異文化の混ざり具合が違うだけなので、原則は通用します。

ところが、日本人はそもそもそういう経験が薄い。異文化環境でマネジメント・業務を展開するとなると、かなりのハンディを負うことになります。子供時代の異文化経験が薄いのは日本人だけではありませんけど、グローバルにビジネスを展開するような国・企業の中では日本が突出して少ないんじゃないでしょうか。意思疎通の壁をどうやって越えていくか、特に言語の問題ではない部分が課題です。

■ 課題③ 誤った現地化の闇

調達や製造ではなく、経営(=意思決定)の現地化です。人事権、お金にまつわる権限を誰に委ねていくか。これには先ほど出た「経営一貫性の谷」、つまり駐在員の入れ替わりが深く関係します。コミュニケーションの問題や駐在員コストの増大もあり、餅は餅屋、現地に任せた方がいいという声は本社からも現地拠点からも上がるでしょう。

歴史的に、イギリスやフランスなどは経営の現地化に慣れています。現地化の段取り、現地化しても本国のデメリットがメリットを上回らないやり方を熟知しています。

これが日本は下手です。経営・統治の現地化は日本企業にはあまり向いてない(それが悪いことだとも思いません)。無理して押し通すと、日本側に伝えられる情報が少なくなり、声の大きい現地の人たちが実権を握って、業務・意思決定がブラックボックス化します。これが「誤った現地化の闇」です。

■ 課題④ 組織老化の錆

新陳代謝を前提に人事制度を設計している国の現地法人と、長く働くことでメリットが生まれるような雇用慣行がある日本とでは、組織老化の深刻度が違います。

日系企業は海外でも長期雇用を良しとする傾向があります。企業規模が拡大または維持できていて、ほとんどが定年まで働く前提で雇用サイクルが回っていればいいですが、そうではない場合、組織図はあっという間に崩れます。ピラミッド型の組織が維持できなくなると、新陳代謝が滞って活力が失われます。

日本の会社は人事制度や登用・任免でも長期雇用をベースにしているので、この問題は特に色濃く出やすいようです。

■ 共通課題なら 応用余地も大きい

ここまで四つの共通課題の大枠を紹介しました。進出先がどこであっても、何も手を打たなければ必ずぶつかる課題です。次回から一つずつ解説していきます。

濃淡やタイミングの差はあれど、必ず起きるという前提で、どうやってそれを回避・克服していくか、会社の経験を積み上げることが大切です。共通課題は応用余地も大きく、国ごとに違うマネジメントをしなくても、解決の仕方をお互いに応用できるはず。海外経営をできる限りシンプルに、自社に合って現地にもフィットする、そんなマネジメントの仕方を確立していってもらえたらと思います。

ユーザー登録がお済みの方

Username or E-mail:
パスワード:
パスワードを忘れた方はコチラ

ユーザー登録がお済みでない方

有料記事閲覧および中国重要規定データベースのご利用は、ユーザー登録後にお手続きいただけます。
詳細は下の「ユーザー登録のご案内」をクリックして下さい。

ユーザー登録のご案内

最近のレポート

ページトップへ