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ログイン2026年1月23日
第3回
経営一貫性の谷
日本企業・日本人が海外の現地法人をマネジメントする際に起きる共通4課題について話しています。今回からは第一の課題「経営一貫性の谷」を深掘りします。
■ 「経営一貫性の谷」は日本だけなのか?
経営一貫性の谷は、「短任期の」「日本人駐在員が」「現地で経営を指揮する」ことによって生じます。経営方針が継承できない・ブレる、管理レベルの変動が激しいといった事態が、特にバトンを渡すタイミングで起きるためです。
たまたま2~3代続けて凄腕の駐在員が赴任してきて、前任者が培った基礎に上乗せしていける時期もありますが、一旦管理レベルや方針の断絶が起きると、一気に赤字まで突っ込んだり、内部管理が大混乱に陥ったりします。まさに「谷」に落ちるわけです。
現地経営のスタイルとして、「短任期の駐在員が現地に行って指揮を執る」という形は世界的にはそれほどポピュラーではありません。他の国や地域を見ても、主だったところでは日本ぐらいではないでしょうか。
欧米企業の場合、現地に技術や形式上のトップはいても、実務は現地人のジェネラルマネージャーや現地語が話せる人材に全部任せてしまいます。結果を出せなければ次々と入れ替えていき、誰がやっても無理ならクローズします。
韓国の会社だと、雇われ社長でもオーナーでも、長期にわたって現地に根を下ろすことが多いです。10年、20年はザラで、30年選手もいます。台湾系の場合も長く、駐在員は10年単位、オーナーなら常に自分で行ったり来たりします。言葉の問題もありませんし。
■ 日本はそれでも回る社会
日本の場合、政治にせよ経済にせよ、トップが短期間で交代してもそれで回っちゃいます。日本の首相など本当に短命で、1年も持たずに変わることもありますよね。トップがコロコロ変わっても特に混乱もせず続いていくのが日本の社会です。
海外ではそうはいきません。アメリカは共和党と民主党が入れ変われば政策が大きく揺れます。韓国の大統領は1期5年ですが、ここも前任者が引退後の余生を静かに暮らせないという事態を繰り返しています。価値観の違いから生じる深刻な分断や直後の混乱を見ていると、政権交代に慣れているところでもなかなか大変なのが分かります。
日本の社会が慣れているやり方を、それが当たり前ではない海外に持っていって適用しようとするんですから、断絶による混乱やダメージが起きるのはある意味当然と言えます。
■ 「経営一貫性の谷」の何が問題なのか
【問題①人間関係が深まらない】任期が2~3年、短いと1年ちょっとでは、現地での人間関係が深まりません。100人規模の組織だと、どの部署にどういう人がいるのかを覚えた頃にはもう帰任です。
【問題②言葉の問題が解消・緩和しない】英語圏ならともかく、そうではない国で2~3年では言葉の問題が解消・緩和しません。どんなに外国語のセンスがなくても、基礎がゼロでも、10年もいれば耳が慣れてきます。そこに至る前に帰任では、関係が深まらない要因になります。
【問題③改革完遂には短すぎる】私は組織改革には3ステップが必要だと提唱し、実際にサポートもしています。やる気のある駐在員に「組織を改革したい」と相談された時、最初に聞くのが任期です。丸々3年あればフルに取り組みますが、正直、残り2年を切っていると相当難しいです。
改革3ステップの途中でトップが変わってしまうと、同じ熱量や方針を堅持するのは困難ですし、経験がないため現地側の反撃・抵抗に遭って頓挫するリスクも高いです。改革をやり遂げるには2~3年の任期は短すぎます。
【問題④人材の育成・登用にも短すぎる】トップや上司の任期が2~3年だと、優秀な部下が見出されて昇格コースに乗ったところで、評価してくれた上司が交代するという事態が起こります。後ろ支えがあったから挑戦・成長できていたのに、その人がいなくなったために、やっかむ周りが引きずり下ろそうと攻撃してくることも。
こうなると本人が「また同じことになるとイヤだから真面目にやるのはやめておこう」と学習したり、ひどい場合には潰されたりします。組織にとってこれはかなり痛いです。
登用した側も、5年あれば抜擢した部下の適性も分かり、一段高い役割を理解して力を発揮するところまで見定めることができます。実は適性がなかった、登用が早すぎたとしても、登用した上司なら本人と話してうまく導くこともできそうですが、上げておいて帰ってしまうと、次の赴任者にとっては「適性のない管理職がいる」というだけ。組織が混乱する要因です。
【問題⑤「腰掛け」や「形だけ」の赴任者が出てくる】短任期では、「所詮2年だし」「3年経てば帰れる」と、来た当初から帰任の日を指折り数えるような人も任期を全うできてしまいます。すると腰掛け気分の人、ちゃちゃっと形だけ整えて帰ろうとする人が成果(らしいもの)をアピールだけして帰ってしまい、後任が地獄を見ることもあります。
これが5年あると、駐在員の仕事を検証し、効果や実効性を確かめることができます。やったけどうまくいかなかったら、どうやってカバーするかも問われます。
■ 組織のレベルが上げられない
短任期の外国人、特に日本人駐在員が現地で指揮を執るというやり方が招く大きな課題を一言でまとめるなら、「組織のレベルが底上げできない」ということに尽きます。
逆に言えば、5年10年単位で現地に張りついて、トップとして指揮を執っている日本人がいる組織は、基礎が積み上がっていきます。
もちろん、それぞれの個性や能力、タイプの違いもありますから、みんながみんな同じように成長していくわけではありません。それでも確実に人間関係は成熟し、言葉の問題も時間がかなり解決してくれます。
また、トップがどういう人たちを評価し、どういうことを求めているかが、時間をかけることで組織に浸透していきます。どんどんマネジメントがやりやすくなっているなというのは、側で見ていても感じます。
次回、一貫性の谷をどうやって超えていくか、考えていきます。
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