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日本企業がどの国でも直面する組織の共通四課題①問題は日本に

中国ビジネスレポート 組織・経営
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小島 庄司

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2025年11月21日

第1回
問題は中国でなく日本だった

国が違えば、言葉も宗教観も常識も違います。海外経験者が他国の成功体験や常識を引っさげて赴任しても、そのままで通用することはまずありません。ただ、どこへ進出しても日本企業が必ず直面する共通の課題は存在します。

■ 特殊なのは日本

私は常々、「うちは特別だから」という発想をできるだけ避けるようにしています。特別だと言ってしまうと、「特別だから仕方ない」という言い訳が生まれ、他から学ぶという姿勢が鈍って勘違いも生まれる。なるべく「この業界だけ特別なんてことはない」「どの会社もそれぞれ特別」と言うようにしているのですが、それでも日本という国はかなり独特な文化圏らしいです。

有名な『文明の衝突』で、著者のハンチントンは文明を大きく八つに分類しています。西洋、中華、正教、イスラム、ラテンアメリカ、アフリカ、ヒンドゥーと区分した後で、一か国だけ単独で位置づけられた国があります。それが日本です。どうやら学者から見ても特殊な文化を持っているようですね。

私自身も経験がある中国・ASEANの赴任者や、それ以外の北米・中南米・欧州・西アジアなどの駐在経験者と滞在国の話をしていても、結局「特殊なのは日本の方だ」というところに落ち着くことが多いです。国外での経験が長い人ほど「ですよね」と意気投合します。

そんな特殊な国だからなのか、日本人・日本の企業が海外に出ていくと、どこに行っても同じような課題に行き当たります。日本企業に言わせると「海外は問題が多い」となるのですが、どちらかといえば、日本人・日本企業にとっての当たり前が他国とは違うために問題が起こる、と考えた方がいいと思います。

■ 中国からASEANへ行って気づいたこと

私がこれに気がついたのはおおよそ10数年前。中国に進出していた日本企業がASEANにシフトする流れが顕著になり、実際に移った会社から話を聞いていた頃です。

私は2004年から2013年まで、仕事拠点も生活拠点もすべて中国側に置き、年に2、3回、数日ほど日本に来る以外は中国にどっぷりと浸かっていました。

日本企業でチャイナプラスワンの動きが本格的になってきたのが2012年頃。中国以外にインド・ASEANなどもカバーしていく時代に入ったと感じ、私も積極的に足を運びました。タイには2か月に一度は滞在して案件に取り組み、それからフィリピン、インドネシア、ミャンマー、カンボジア、ベトナムの日本企業を訪ね歩きました。

そこで話を聞いていると、同じ課題がゾロゾロ出てくるんです。私は中国が初の海外駐在で、「中国は大変だ」と思っていたんですが、東南アジアの駐在員も同じことに悩んでいました。

例えば……、
・不正は放っておくと起きる。
・自分で考えない社員があまりにも多い。
・育成してもようやく戦力になったところで辞める。
・将来は幹部として頑張ってほしい社員ほど引き抜かれる。

それからシビアな昇給要求。確かに頑張ってくれているけど、やたら足元を見て賃上げを要求するのはどうなのとか、ちょっと成果が出たらすぐに還元を要求されてウンザリとか。

まだまだあります。優秀なのに部下を育てず、マネジメントができない管理者。びっくりするほど低い労働生産性。10人集まっても10人分はおろか8~9人分の仕事にも及ばず、4人分程度しかアウトプットがない。日本なら1人で回せる業務に中国では1.5~2人は必要(これはASEANの人に「中国はまだ優秀だよ、こっちは少なくとも5人いないとできない」と言われました)。

これまで「中国だから起きている課題」だと思っていたことの多くが、実は「日本企業だから起きている課題」だった。中国は本当に大変だ、スケールも大きいし、パワフルだし、信じられないことが起きると思っていたのに、世界ではほとんどの国がそっち側であり、聞けば聞くほど日本が特殊なんだと思い知ることになりました。

こういう視点で、日本企業が海外進出すると必ず遭遇する組織の課題を私なりにまとめたのが、「共通四課題」です(組織以外の課題を加えるともう一つ)。今回は前説で、次回から解説していきます。

「中国は難しい」「タイはまだマシ」「フィリピンは多少やりやすいかな」といった程度の差や、どのタイミングで課題が顕在化するか、出てきた時にどのくらい大きな障害になるかなどの違いはあるものの、課題自体はどのエリアに行っても遭遇します。裏を返せば、問題の回避方法や解決方法を身に付けると、どの国に行っても応用可能。言語や宗教が違いますからそのまま使えることはないまでも、読んでおいて損はないと思いますよ。

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