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ログイン2025年7月18日
■ 人は本当に足りないのか
中小企業が強い組織を作るには、会社のコアに共感できる人だけを集めなければならないという話をしてきました。
日本は人口減で採用が難しくなっています。中国では設立第一世代が定年に差し掛かっています。急いで「1×10=10」以上の力を出せる組織に組み替えないと、会社が回らなくなります。
ただ、いま採用難を嘆いている多くの日本企業で、本当に「人数が足りていない」ところは実は少ないと私は踏んでいます。
現場スタッフに支えられている業界はともかく、一定規模以上の会社で「人が足りない」のは、そこら中に無駄を溜め込んできたことも大きいんじゃないかと。
必要以上に細分化した手続き、経路依存の仕事、参加者の大多数が発言しない会議などが無数にある。過去に人が増えた際、本質から外れた仕事が大量に生まれ、現在もそれを維持するために無駄に人を雇っているように見えます。仕事場を見せてもらうと、直感的に「こんなにいらなくない?」と思うことも多いです。
正直なところ、いまの日本の50代以降、特に大企業で出世が止まった人たちの多くは、自分でも「この仕事でこの給料はもらいすぎだな」と薄々思っているはずです。挑戦しがいのある仕事は回ってこなくなったし、住宅ローンの返済も終わったし、子供も巣立ったし、そろそろ転機かな……と感じてはいるものの、諸々のしがらみで動けない。
極端な例だと信じたいですが、元気なうちに早期退職したいと直属の上司に相談したら、「お前が辞めるとそのポストがなくなるから、後進のために辞めるな」と言われた、なんて話も聞きました。
「1×10=10」の逆で、5の仕事を10に分けて人を維持しようという発想です。ダメな官僚組織の末路みたいですよね。中国でも、課が一つしかないのに、課長の下に部下ゼロの係長が8人もいるようなケースがあります。どちらも既得権益を守ろうとした結果です。中間管理職がポジションと処遇で縄張りを作っている。これは経営層がなんとかしないといけません。ここに手を入れないでいると、会社はどんどん沈んでいきます。
乱暴な議論を承知で言えば、こういう無駄な仕事・ポストを廃止すれば、人手不足もかなり解消するんじゃないでしょうか。もちろん、本当に人手が足りずに立ち行かなくなっている業界もありますし、社会としてはなかなか難しいと思うものの、経営者なら思い切って改革してみる価値はあります。多分、「そもそも、そんな人数はいらなかった」となる会社も出てくるはず。
あらかじめ余剰人材がいない状態を作っておけば、新しい仕掛けを試したいと思った時に、そのために最適な人材を採れるようになります。中国の華為(Huawei)みたいに、「4人分の給料で3人雇って5人分の仕事してもらう」という発想に自然となっていく。本人も納得感があり、会社も顧客も満足し、利益体質でもある。いま世界で強い会社がやっていることです。
■ 量のリストラと質のリストラ
では、どのようにスリム化していけばいいでしょうか。これまで5人分の仕事を10人でやって、10人分の給料を出していたとしましょう。いま利益が出ていないなら、「本当に10人分の仕事があるのか」から考えます。10人分の仕事はないとなったら、人数を絞っていかなきゃいけないはずです。
それをためらうのは、絞った後の働きが変わらない前提だから。10人で5人分の仕事しているところを7人にすると、0.5×7=3.5。5人分の仕事には1.5人分足りず、回らなくなってしまいます。人を減らすなら、同時に生産性も上げなくてはいけません。
リストラには二種類あります。量のリストラと質のリストラです。
ダイエットに例えると、量のリストラはとにかく体重を減らすこと。贅肉も減るけれど筋肉も脂肪も落としちゃう。結果、やりすぎて摂食障害になったり、筋力が落ちて体力がなくなったり、骨がスカスカになったりしてしまいます。
何のためにダイエットをするのかを考えたら、健康になるため。筋力は維持あるいは増やしながら脂肪だけ落としていかなければいけないし、急に落としすぎるのも身体に負担がかかりすぎます。
数字だけの減量が危険なように、組織も数合わせ優先で人を減らすと、企業体力が落ちます。10人で5人分の仕事をしていた人たちを5人に減らしても、残った5人が急に5人分の仕事をこなせるようにはなりません。そこで人手不足だ、採用再開だと、訳のわからないことになってしまいます。
そんな事態を避けるには、量のリストラをする前に、質のリストラを考えるべきです。会社の方針に沿って仕事をするマインドと能力のある人たちで組織を固め、それが難しい人、最初からその気がない人たちには降りてもらう。質のリストラを成功させれば、生産性は上がります。
くれぐれも逆はダメです。先に量のリストラ(特に希望退職募集)をすると、優秀な人たちが去り、他に行きどころがない人が残る。そこで質のリストラをしようとしても、量のリストラをする前より難しくなっています。
現在の中国の事業環境はシビアです。過去の延長線上のやり方では利益が出ない。現状を変える気がない人たちにもう舵取りは無理です。
瞬間的なリスクでも冒したくない人たちが上層部を占めている会社では、現状維持どころか生存もできないと思います。日本はどんどんシュリンクしていくし、中国に近いエリアも厳しいので、焼畑方式でインドやアフリカへと向かっていくでしょう。
中国市場で本当に生き残る気なら、「そのためにはどうすればいいか」を逆算で考えて、痛みのある改革に踏み切らないとダメなところまで来ています。(了)
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