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ログイン2026年1月14日
はじめに
労働紛争において、「労働者が業務に不適任である」ことを理由とする労働契約解除に係る紛争は非常に高い割合を占めており、かつ使用者側の敗訴率も高いという実情があります。その核心的な原因は、多くの使用者が『中華人民共和国労働契約法』第40条第2項の「第40条 次の各号に掲げるいずれかに該当する場合、使用者は30日前までに書面で労働者本人に通知し、又は1か月分の賃金を追加で支払った上で、労働契約を解除することができる。(2)労働者が業務に不適任であり、研修又は配置転換を経てもなお業務に不適任である場合」という規定を「低効率な従業員を排除するための便利な手段」と誤認している点にあります。しかし、使用者はこの条文が課している厳格な手順上の要件(すなわち「不適任 → 研修/配置転換 → なおも不適任 → 解雇」)及び使用者側の立証責任を見落としがちです。本稿は、法律の規定及び典型的な判例を踏まえ、「業務不適任」の認定基準及びコンプライアンスに沿った対応方針を整理し、使用者に対する実務上の指針を提供することを目的としています。
1、業務不適任を理由とした解雇における4つの段階
『労働契約法』第40条第2項の規定に基づき、使用者は以下の手順を全て履行しなければならず、いずれか一つでも欠ける、又は瑕疵がある場合、解雇は違法と認定される可能性があります。
1.1 第一段階:「1回目に不適任と認められた」ことの立証
使用者は、客観性・合理性・定量性・追跡可能性を備えた評価基準を設定し、かつ当該基準を従業員に通知・送達して、従業員が評価基準を認識していることを確実に保証する必要があります。また、評価手順に厳格に従って評価を実施し、従業員の業務能力又は業績が当該職位の要求に達していないことを示す客観的な資料を提出しなければいけません。従業員に業務不適任の状況がある場合には、その事実を従業員に対して通知・送達する必要があります。
1.2 第二段階:「研修又は配置転換」手順の履行
研修:単なる形式的な「励ましの面談」又は「通常のOJT」ではなく、業務不適任の問題に対応した、能力向上を目的とする専門的な研修でなければいけません。
配置転換:「合理性」における要件を満たす必要があります。つまり、新たな職位は従業員の現時点での能力に適合していなければいけません。また、賃金の調整については制度上の根拠が必要であり、悪意ある配置転換を行ってはいけません。
備考:研修又は配置転換を実施する場合、いずれについても使用者は十分な証拠を保管しておく必要があります。
1.3 第三段階:「合理的な観察期間」の設定
研修又は配置転換後、従業員が新たな業務における要件又は新たな職位に適応するための合理的な期間を与えることが望ましいと考えられます。研修・配置転換後すぐに解雇した場合、又はごく短期間(数日程度)しか適応期間を与えなかった場合、裁判所から「合理的な観察期間を与えていない」と判断され、当該処理手順が第40条第2項の趣旨に反すると認定される可能性が高くなります。
1.4 第四段階:解雇手順の適法性確保
上記の3段階を経た上で、使用者は30日前までに書面で通知するか、又は1か月分の賃金(解雇予告手当)を支払い、併せて法に基づき経済補償金(N)を支払わなければいけません。
2、司法実務の観点からの注意喚起:裁判所に否定された「よくある対応」
典型的な判例を踏まえ、使用者は以下の高リスク行為に特に注意する必要があります。
2.1 評価基準が存在しない、又は通知されていないケース
(2024)粤0305民初2077号事件では、使用者が「年度業績評価基準の合理性・適法性」を立証できず、また、評価目標について従業員の署名確認もなかったため、「業務不適任」の認定には根拠がないと判断されました。
2.2 研修が形式的で、法的要件を満たしていないケース
(2019)粤0306民初10947号事件において、裁判所は、第40条第2項にいう研修とは、労働者の職業技能を向上させる職業訓練を指すと判断しました。また、(2020)粤0304民初54605号事件では、単に業務上の要求をもって研修とすることは、同条にいう研修の概念に該当しないと判断されました。
2.3 合理ではない配置転換を行ったケース
従業員の能力と明らかに釣り合わない職位への配置転換(例:管理職を受付に配置)、又は制度上の根拠のない大幅な減給は、「2回目の業務不適任を意図的に作り出す悪意ある行為」と判断される可能性があります。
2.4 観察期間が省略されたケース
研修又は配置転換後、直ちに解雇した場合、裁判所は多くの場合「手順が適法でなく、解雇は違法である」と推定します。
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2026年1月14日