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ログイン2003年9月19日
<各業界事情> 蝶理、希少金属部門を分社化 ―安定供給を至上命題に中国ビジネス拡大― (アジア・マーケット・レビュー 2003年9月1日号掲載記事) 蝶理は今年3月、レアメタル・レアアース部門を分離し、新会杜「蝶理アドバンストマテリアル」を設立した。レアメタル資源が偏在する中国、ロシア、中央アジアに特化した専門商杜として事業拡大をはかる。レアメタル・レアアース分野では著名人でもある中村繁夫杜長に展望を聞いた。(聞き手:内田俊二) 2005年度に売上高100億円が目標 ―まず新会社の狙い、概要などを教えて下さい 「商社を巡るビジネス背景は激変している。成長領域は新規拡大しながらも(市場の変化)、今までの業態では対応不可能になっている(環境の変化)。グローバル化と異業種間競争は激化し(競争の変化)、企業収益はユニークな開発や非価格競争が決め手になっている(価値の変化)。つまり、顧客二一ズは専門化すると同時に多様化し、さらなるスピードアップと個性化が求められている。この4つの変化に対応するには、戦略的な分社化による迅速経営が必要だと判断した」 「具体的な経営方針(事業コンセプト)は3つある。まず地域と取り扱い製品を限定し、中国、ロシア、中央アジアに特化したチタン、レアメタル、新素材事業の“No.1専門商社”をめざす。また、これまでと違い原材料の取り扱いだけでなく、加工や製品化により付加価値を高め、高収益事業の展開をはかる。新素材などアドバンストマテリアルについてぱ、資源から委託加工、回収までのソリューションビジネスを実行する考えだ。親会社の蝶理から事業部門が分離独立する形式だが、全く新しい会社をつくる決意で臨んでいる」 「母体となった蝶理機械・資源・物資本部マテリアル部の従来の売上高は約180億円程度。しかし、ロシア産石油などを除き、蝶理アドバンストマテリアルが引き継いだ事業は、2002年度約60億円程度になる。これを2005年度に100億円まで引き上げる。チタン、マグネシウム分野は新会社の屋台骨で、いわば“安定維持領域”だ。これを除いたレアメタルとレアアースは“強化拡大領域”、さらに新規ビジネスなどを“開発領域”として育成する。2005年度にチタン、マグネシウム分野で売上高47億6,000万円、営業利益1億9,000万円、レアメタル、レアアース分野で売上高27億9,000万円、同1億8,000万円、新規開発分野では24憶5,000万円、2億円を目標に掲げた」 中国ビジネス拡大を狙う ―中国での事業展開は? 「蝶理は、中国産レアメタル資源の輸入ではトップ商社としての実績がある。取り扱い品目は、タングステン、モリブデン、チタン、マグネシウム、レアアース、アンチモン、タンタル、ニオブ、バリウム、ストロンチウムなど。中国は世界でも有数のレアメタル資源大国で、タングステン生産は世界の80%、レアアースは同85%、アンチモンは同60%を占める。マンガン、インジウム、バリウム、ビスマスも生産量は世界第1位で、モリブデン、リチウム、バナジウム、ベリリウム、ストロンチウムは同2位を誇る。安定維持領域であるチタンでは、カザフスタン産スポンジの安定供給が柱になるが、投融資を通じて溶解能力の不足解消を中国に求める。チタンスポンジからインゴット、展伸材の輸出取引分野に進出する考えで、中国での拠点つくりを急ぐ。マグネシウムも中国、ロシアとの補償貿易などの仕掛けを工夫する考えだ。強化拡大領域となるレアメタル、レアアースについては、江西省の九江有色金属冶錬廠と日本向け高純度酸化タンタルの光学レンズ用途向けに総販売代理権を取得した。九江とは、蝶理時代から10年以上の付き合いがあるが、2002年10月に99.99%の高純度酸化タンタル生産設傭を導入、対日供給を始める。この分野では、酸化タンタルのほか酸化ニオブ、レアアースなど光学向け供給を増やす方針で、2003年は酸化タンタルを年間25トン、酸化ニオブを同40トン販売する。デジタルカメラを初めとする光学レンズ向け酸化タンタルは年間約60トンの需要があり、早期に市場シェア50%確保をめざす」
「中国との関係で新しい展開が期待できるのは、今後、拡充していく開発領域の分野である。原材料およぴ加工品など中国からの輸入販売だけでなく、今後はチタン展伸材、スーパーアロイ、光ファイバーなど、日本で加工した高度応用製晶の中国輸出ビジネスが伸ぴるとみている。当然ながら中国での委託ビジネスも拡充する。各種原料の委託加工・貿易拠点を増やす方針で、九江はその第一弾となる。また、中国のレアアース開発で実績がある有色金属研究院(北京市)とレアアース合弁企業設立を検討しており、とくに磁性材料や蛍光体などの事業化を考えている。レアアースやレアメタルの事業化だけでなく有色研究院、チタン合金研究所である西北有色金属研究院と日本の研究機関との橋渡し、さらにいわゆる中国シフトに対応した技術移転支援など、技術開発・移転ビジネスを展開する可能性もある。中国では蝶理の駐在員事務所を間借りするかたちで北京市、上海市、広東省広州市に社員を派遣している。現在、売上高に占める中国比率は45%程度だが、レアメタル、レアアースを中心に伸ぴ率は高く、2005年時点では50%に達しているかもしれない」 安定供給の仕掛けが大切 ―中国ビジネスは拡大の一途をたどりそうですね 「レアメタル・レアアースは“産業のビタミン”とも言われ、IT分野や先端技術分野には必須材料だが、国内は皆無に等しく、中国、ロシア、中央アジアに依存せざる得ない。なかでも中国は半導体を含む電子部品メーカーの現地進出が続いている国で、最終消費地としてもますます重要になるだろう。ただ、中国にとってレアアース、レアメタル資源は、単に外貨獲得の手段ではなくなりつつあるようだ。資源乱開発が新たな環境問題を引き起こしつつある。また、秩序のない輸出のため国際価格崩壊を招き、輸出許可制度の見直しも必要となっている。新型肺炎(SARS)被害により、供給支障が置き、国際市況に影響を与えた品目もある。レアメタル、レアアースでは原料の安定供給が至上命題となる。中国で産出する希少資源の安定供給に向けた仕掛けつくりが大切だと改めて感じている」 【中村繁夫(なかむら・しげお)】1970年静岡大学農学部卒業。1974年蝶理 ユーザー登録がお済みの方ユーザー登録がお済みでない方有料記事閲覧および中国重要規定データベースのご利用は、ユーザー登録後にお手続きいただけます。 最近のレポート
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