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ログイン2004年11月14日
大学受験に失敗した学生の不合格体験談ばかりを拾い集めても決して希望大学に合格することができないように、失敗談ばかりを拾い集めても、教訓となることはあっても決して成功に直接結びつくものにはならない。しかし、その反面で、多くのセミナーや雑誌等で依頼が多く、関心の高いテーマがその「失敗談」なのである。
おそらく多くの企業経営者が、自分が今考えていること、行動していることに失敗の要因がないかどうかを確かめておきたいという不安の心理を持っていることから来るものと思われるが、もし自分に心当たりがある場合は、できるだけ早く、勇気をもって路線変更を再考されることをお勧めするものである。
(2)管理の不在
ある日中合弁会社の日本人総経理の話である。
総経理は優秀な中国人幹部技術者の採用に成功したが、採用の翌月、彼が有給休暇を申し出てきた。総経理は軽い気持ちで許可した。すると翌月、また有給休暇を申し出てきた。そのときは業務繁忙期でちょうど大きな仕事の注文を受けたばかりだったが、大切な彼の機嫌を損ねたらまずいと思い、休暇を認めた。
するとその翌月、また同様の休暇申請をあげてきた。今度は少し話を聞くと、家庭の事情でやむを得ないという。仕方なく許可した。しかし三カ月連続して幹部技術者が有給一週間休暇をとったため、現場は混乱した。受注していた大きな仕事に、彼の不在のため納期遅延が発生して、少なくない損害まで発生しそうになった。
ところが、彼はその翌月にもまた同じ有給休暇を申請してきたのである。
総経理は彼を応接室に呼び出した。彼の毎月定例の有給休暇のお陰で職場は混乱し、損害まで発生しかかっているので、今回の休暇申請は許可できないと明確に申し渡した。すると彼は「私の採用時の条件として、自由に有給休暇を貰えると約束しているのだから、自分は来月も休暇を申請する合法的権利を持っている」と言って一歩も譲らなかった。それを聞いた総経理は頭に来て「毎月自分勝手に休んで会社に損害を与え、反省もしないお前は業務怠慢の処罰処分だ!」と怒鳴りつけた。
すかさず彼は冷静にこう答えた。「私は会社の規則には何も違反していない。きちんと正式に三回有給休暇申請をしてあなたはそれを認めた。私が会社を休んだことで納期が少し遅れ、そのために会社に損害が発生したとしても、その損害発生責任は私ではなく、休暇を認めたあなたに責任がある。ここへきて、なぜルールを守っている社員を総経理が一方的に処罰すると言うのか、私にはまったく理解できない。私を処罰するなら、その理由を文書にして私に渡してほしい」。
この言葉を聞いて日本人総経理は灰皿を机に叩きつけ、そのまま部屋を立ち去った。彼のほうは少し赤面していたが平静そのもので、別に悪気もなく平然と自分の席に戻って仕事を続けた。
このエピソードでは、会社に損害を発生させた直接の原因は幹部技術者の毎月の休暇取得にある。しかし、彼の言うとおり、その責任は彼ではなく、休暇を認めた日本人総経理にある。つまり、日本式曖昧さ、慣行で何気なく休暇を許していた日本人総経理の「管理の不在、甘さ」が原因なのである。自分のやるべき経営管理の不在(悪く言えばサボリ)を棚に上げて、深刻な問題が現実となった時にはじめて慌てて権限を振りかざし、感情的に「お前は解雇だ!」と怒鳴りつけたところで、何も解決しない。中国側から冷静に反論されて日本人が恥をかくだけである。
欧米人から「Life Commitment(人生の委託)」と揶揄される終身雇用制に慣れ親しんだ日本人総経理から見れば、彼の行動は「忠誠心がない」「愛社精神がない」としか見えないかもしれない。しかし、中国労働法には自分の人生を会社に託してしまう日本のような終身雇用制度は存在せず、すべて契約雇用制度である。これは従業員個人の精神的な問題ではなく、社会制度の相違に基本原因があり、それを見ず、適切な対処もしない日本人の経営姿勢にこそ原因があるのである。
(次回へ続く)
(2004年11月記・2,443字)
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