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中国税務ここがポイント(7)外商投資企業の国産設備購入優遇税制

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2004年11月12日

<税務・会計>

中国税務ここがポイント(7)

新設商貿企業の増値税一般納税者認定の制限に関する税務通達の解説

永岡稔

今回は、最近動きのあった税務トピックスのうち、新設商貿企業の増値税一般納税者認定の制限に関する税務通達についてお知らせします。

2004年8月1日より、「新設商貿企業の増値税徴収管理の強化に関する問題についての緊急通知」(国税発明電[2004]37号)が施行されました。この通達では、新規に設立した商業貿易企業(注:ここの貿易は国内取引も指す)において、仕入税額控除のできる「増値税一般納税者」の認定要件を厳しく規定しました。

この通達の意味するところは、卸売・小売(貿易含む)・サービス業の新設外資企業は、設立後、年間売上高が180万元に満たない間は、仕入増値税額が全て原価算入されてしまい、初期に相当なコストアップを覚悟しなければならない、ということです。
(注:製造業を中心としたいわゆる生産型企業については、この新通達の適用はなく、これまで通りに増値税一般納税者の申請を行うことができます)

中国のWTO加盟の後、2002年4月から施行されている現外商投資産業指導目録においては、その附属文書中で、外国側の卸売・小売等の独資経営は2004年12月11日までに認められることとなっていました。これを受けて2004年4月16日に「外商投資商業領域管理弁法」(同年6月1日施行)が公布されました。

これまで外国資本100%の企業は製造業や限られたサービス業しか認められていなかったので、この弁法により、中国での外資の販売戦略に明るい展望が開けることとなりました。ところが、新税務通達では前述の通り、特に中小企業で売上高の少ない企業に、上述のような増値税法上の関門を設けることとなり、あたかも外資中小サービス業の実質的な展開制限となっています


(1)原則:これまでは、一般的に商業貿易企業は予測売上高に基づく増値税一般納税者資格の付与を認めていたのを取り止めたこと。

今後は、具体的には下記の通りとなります。

  1. 新規設立の商貿企業は、増値税一般納税者として認定されるまでは、増値税小規模納税者の扱いとなる。
  2. 新設企業の税務登記日以降の年間売上高が180万元に達した場合、増値税一般納税者資格認定の申請が可能。
  3. その場合、税務機関の審査を経て増値税一般納税者資格(暫定)が認定され、増値税納税指導期間に入る。
  4. 指導期間終了後に、税務機関が再審査を行い、正式な増値税一般納税者資格が認定される。

(2)商業貿易企業の一般納税者を分類し、その資格付与の手順を分類毎に定めたこと。

具体的な分類及び各分類の増値税一般納税者資格取得までの過程は下表の通りです。

企業分類 要件(全て満たすこと) 増値税一般納税者資格の申請取得
大中規模商貿企業
  1. 大中規模企業の要件有
  2. 固定の経営場所を保有
  3. 独自の仕入販売ルートを持つ
  4. 管理体制が確立している
設立後直ぐ申請→審査→取得
大中規模商貿企業及び小売業
  1. 大中規模商貿企業…登録資本金500万人民元以上及び従業員数50人以上
  2. 小売業…固定した経営地点と貨物を保有
設立後直ぐ申請→一般納税者(暫定)→その後最少6カ月間の指導期間→審査→取得
小規模商貿企業注:小規模納税者ではない 上記以外の企業 1年間に180万元以上の売上があれば申請→審査→一般納税者(暫定)→その後最少6カ月間の指導期間→再審査→取得

(3)管轄税務機関が実施する増値税一般納税者の認定作業の内容

2.において、税務機関で行われる審査の内容は下記の通りです。これを見る限りは、通常の税務登記とは異なり、会社の状況等を十分に確認することとなりますので、内部管理体制を充実しておくことが必要です。

資料確認 管轄税務機関が全ての申請資料をチェック
面接
  1. 法定代表者面談…企業の経営情報等、企業全体の了解
  2. 出資者面談…出資者と経営管理方面との関わりの了解
  3. 財務責任者面談…財務・銀行口座・納税状況の確認
  4. 業務担当者面談…仕入・販売・倉庫運輸等の担当者から業務の真実性をヒアリング

    実地面接は2名以上派遣され、管轄税務機関側が取った記録には、双方の面談参与者がサインする。

実地調査
  1. 疑問点と面接において知り得た重要部分につき、2名以上の人員により実地調査を行う。
  2. 実地調査内容…営業許可証・税務登記証・経営地の不動産所有権又は賃借証明・輸送費水道光熱費等の証憑・法定代表人と主要管理人員の身分証明書・財務担当者の資格証明書・銀行預金証明・験資報告書・売買契約書原本・公証資料・資金取引帳簿、等。
  3. 実地調査に関しては、企業の規模と内容も確認する。生産企業に対しては工場・設備等の有無、商貿零細企業に対しては固定した経営場所の有無、大中型商貿企業に対しては、登録資本金・銀行預金証明・銀行口座・従業員数、等を確認する。

(4)指導期間における増値税発票(増値税インボイス)の発行と管理

中国では、偽造増値税の発行が多いためか、指導期間における増値税発票の発行にも制限を加えています。ただし実状に鑑みて、必ずしも下記の通りにならない場合もあります。

企業分類 発票一枚当り発行可能限度額 企業への発票販売枚数
大中規模商貿企業・、小売業 現行の通り 1カ月1回、25枚が限度
小規模商貿企業 1万元 1カ月1回、25枚が限度

(5)指導期間における購入増値税発票の過不足発生時

増値税インボイスが、4.の表に規定する発行枚数では足りない場合、新たに購入申請を行うこととなりますが、下記の通り、税額の予納が必要となってきます。

不足時 前回購入時発票の総販売額の4%の増値税額を予納することにより、再度購入することができる。
余剰時
  1. 当月第1回目の発票に余剰が出た時は、次月第1回目の発行枚数は、余剰分を差引いた枚数とする。
  2. 当月最終購入分の発票に余剰が出た時は、次月第1回目の発行枚数は、税務機関が確定した販売数量から、余剰分を差引いた枚数とする。

(6)指導期間における予納税額の精算

指導期間終了後の増値税一般納税者への予納税額が納付税額を超過する場合は、超過分は還付せず次月納付税額から控除することとなります。

(7)正式な一般納税者への移行審査

指導期間が終了した後は、正式な一般納税者の移行審査を行います。その内容は下表の通りです。

  1. 納税評価結論が正常かどうか
  2. 面接及び実地調査の結果が正常かどうか
  3. 企業の申告納税状況が正常かどうか
  4. 企業が仕入・売上税額を資格に計算し、正確に増値税発票等を受払できるかどうか

上記確認事項のうち1つでも不合格である場合は、指導期間の延長もしくは一般納税者資格の取消しを行うこととなっています。

(8)正式な一般納税者の発票発行

企業分類 発票一枚当り発行可能限度額
大中規模商貿企業・、小売業 現行の通り
小規模商貿企業 原則1万元。ただし、金額の大きい貨物の取引がある場合は、公証部門で契約の公証を受け、税務機関の同意がある場合に、10万元未満の発票を発行することが可能指導期間内売上高が300万元以上の場合は、承認の上で10万元

(9)すでに増値税一般納税者資格を取得している小規模商貿企業の取扱

すでに増値税一般納税者となっている小規模商業貿易企業も、調査が行われることとなります。

  1. 増値税一般納税者資格の可否について調査を行う(特に、税務登記を行った時期が1年以内の企業を対象とする)
  2. 検査内容…財務担当者の配置・会計帳簿の設置状況・会計計算方法、偽造増値税発票の発行の有無・増値税発票の保管不全、固定した経営地点の有無等

違反発覚の場合は増値税一般納税者資格の取消しとなります。

(10)保税区の新設外資貿易・倉庫物流企業への適用

増値税法暫定条例実施細則第24条では、小規模納税者となるものは「財貨の卸売または小売に従事する納税者で、年間課税売上高が180万元以下」と定義しています。言い換えれば、増値税一般納税者となるには、年間課税売上高が180万元以上である必要があります。一方、新税務通達では「年間の実際売上高が180万元以上」に達した場合に増値税一般納税者申請が可能となる、と定義しています。

この税務通達は、保税区の外資貿易・倉庫物流型企業も対象としています。上海外高橋保税区の実務上の取扱いでは、これらの新設企業が増値税一般納税者の申請を行う場合に、増値税の課税売上とはならない、保税区から海外への輸出売上及び保税区内の保税売上も、最低売上高180万元を構成するものとして取り扱っています。

すなわち、これら企業の場合、増値税一般納税者資格を取得するために、例えば本来日本から中国以外の外国に輸出する貨物について、一旦保税区の新設外資貿易企業等を通して目的地に販売した場合、その新設外資貿易企業等で簡単に180万元の年間売上高をクリアする事となります。

私見では、増値税法暫定条例実施細則で180万元と規定しているからには、この税務通達にわざわざ「180万元」と書かれてあるその内容も、「課税売上高」と解釈するのが妥当ではないかと考えますが、実際の税務現場では、税務通達上で「実際売上高」と表現されているために、上記方法が通用する余地が生じています。

この税務通達の作成者が、保税区企業の有利性を損なわないように意図したのかどうかまでは分かりませんが、意図したものでない場合は、この外高橋保税区の資格付与の手法が禁止される可能性があると考えます。

(2004年11月記・3,888字)
上海邁伊茲諮詢有限公司
税理士 永岡稔

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