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保税区企業に対する国内流通権と貿易権の開放について

中国ビジネスレポート 投資環境
水野 真澄

水野 真澄

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2005年8月1日

<投資環境>

保税区企業に対する国内流通権と
貿易権の開放について

(1) 保税区企業に対する国内流通権の付与

 保税区の貿易会社に対する国内流通権の付与、換言すれば、「外商投資商業領域管理弁法」の手続に基づく、卸売流通権の付与が認められるかどうかに付いては、同弁法公布時からの大きな関心事となっていました。

 本件は、保税措置と国内流通開放措置の調整が必要となることから、今まで対応が明確となっていませんでしたが、2005年7月13日に、「保税区及び物流園区貿易関連問題に関する通知(商貿字[2005]76号)」が公布され、保税区企業・物流園区企業でも、「外商投資商業領域管理弁法」に基づいて、営業許可の変更を行うことができる点が明確になりました。

 この通知の内容は、以下の通りとなっています。

  1. 保税区・物流園区の企業(以下、「保税区企業等」)は、「対外貿易法」、「対外貿易経営者登録管理弁法」、「外商投資商業領域管理弁法」及びその他の規定に基づいて、国内流通権の取得申請、及び貿易権(外貿流通経営権)の取得を行うことができる。

    また、貿易権を取得した企業は、中国内の企業・個人(貿易権を取得していない企業・個人を含む)と取引を行う事ができ、国内流通権を取得した企業は、中国内で国内販売活動を行うことができる。

  2. 貿易権・国内流通権を取得した保税区企業等が、国外と中国一般区の間で貿易取引を行う場合、「外貿流通経営者」の資格で通関手続を行い、国内企業との間で販売行為を行う。

  3. 保税区企業等が、国外と保税区・物流園区間で貿易を行う場合、特別の場合を除いて、輸出入許可証管理を実施しない。

(2) 貿易権の意義と通知の関係

 上記の通り、今回の通知は、適正な認可取得手続を経れば、保税区企業等でも国内流通権・貿易権が取得できること、つまり、商業企業として認定されることを謳っています。

 そのうち、国内流通権については特段の補足は必要ないと思いますが、貿易権については、どのような手続を行えばよいのでしょうか。貿易権の意義と、取得に関する手続は以下の通りです。

・貿易権開放の経緯

 中国は、WTO加盟時(2001年12月11日)に、3年以内に貿易権の開放を行うことを公約していますが、その集大成として、2004年7月1日より「対外貿易法」の改正を行い、貿易権の付与、具体的に言えば、「外貿流通経営者登録」を、認可制から届出制に変更しています。

 これにより、それ以前は、厳しく制限されていた外貿流通経営者登録が、現在では、所定の手続を行えば、基本的には(違法歴等がなければ)、どの企業でも認められるようになっています。

 これは、商業企業(流通権を有している企業)だけでなく、生産型企業・保税区企業の様に、流通権の場合でも同様です。

 ただし、「対外貿易経営者登録管理弁法」の規定により、国内流通権のない企業が外貿流通経営者登録を行った場合、登記上、「輸入製品の国内販売権なし」という限定が付けられます。

 これは、国内流通権を有していない企業が商品を輸入した場合、国内でこれを販売することができない、つまり、実質的に輸入ができないことを意味しています。

 輸出については、扱いが明記されていませんが、やはり、同様の状況(国内調達できないので、輸出することができない)となります。

 以上の経緯を総括すると、国内流通権を有していない企業は、外貿流通経営者登録の有無にかかわらず、貿易取引を行うことはできない、一方で、国内流通権を有している企業であれば、貿易権(外貿流通経営権)は、半ば自動的に付与されるということになります。

 今回の通知は、商務部の認可を取得すれば、保税区企業等でも国内流通権を取得できることを規定していますので、このような手続を踏んだ保税区企業等に対しては、貿易権(外貿流通経営権)も、同時に認められることとなります。

(3) 商業企業認可を取得した保税区企業等が可能な取引

 今回の通知では、保税区企業が貿易取引を行う場合、以下の様な対応を行うこととなっています。

1.外国と保税区間の取引に関与する場合

<取引図>

       │          │
 外国企業  │⇔ 保税区企業等  │
       │          │
 (外国)     (保税区)    (中国一般区)

 

  •  取引内容

    このような場合は、輸出入許可管理は実施されず、保税区企業等は、従来通りの方法で貨物の輸出入を行うことになります。

2.外国と中国一般区の取引に関与する場合

<取引図>

       │          
 外国企業  │ ⇔ 保税区企業等  ⇔ 中国内企業
       │
 (外国)     (中国一般区)  

  •  取引内容

    これは、貨物が保税区を経由しない貿易取引を意味しています。

    この場合、「商業企業認可を受けた保税区企業等」は、貿易権を行使し、一般区の港で貨物を輸出入することができます。

    また、関連する商品の売買を、中国内の企業(貿易権の有無を問わない)との間で行うことも可能です。

3.外国・保税区・中国一般区の取引に関与する場合

<取引図>

       │         │
 外国企業  │⇔ 保税区企業等 │ ⇔ 中国内企業
       │         │
 (外国)     (保税区)   (中国一般区)   

  •  取引内容

    これは、外国貨物を保税区でいったん引き取り、これを中国一般区で販売する行為(もしくは、その逆)を意味します。

    「商業企業認可を受けた保税区企業等」であれば、商品を、保税区から中国一般区に搬入する際(もしくは、その逆)に、輸出入通関の当事者となることができます。

    もちろん、中国内の企業(貿易権の有無を問わない)との間の売買も行うことも可能です。

4.中国一般区の取引に関与する場合

<取引図>

       │       │
  中国内企業  ⇔ 保税区企業等  ⇔ 中国内企業

  (中国一般区)            (中国一般区)

  •  取引内容

    「商業企業認可を取得した保税区企業等」は、純粋な国内流通に参画することができます。

    今までも、この様な取引は、(規定上はグレーな点がありながらも)実務的には広く行われていますが、商業企業認可を受ければ、これを合法的に行えるということです。

(4) 実務上の疑問点

 以上の通り、商業企業の認可を取得した保税区企業等は、保税区取引(外国と保税区間の取引)、貿易取引(外国・保税区と、中国一般区の通関を伴う取引)、中国一般取引を行うことができることになります。

 保税区企業は、当然のことながら保税区に登記された企業であり、本来、その位置付けは、(少なくとも貨物取引=物流上は)外国に準じた地域の企業であるはずです。

 もちろん、実務運用上は、保税区外の一般区にオフィスを構える場合が多いのですが、その場合でも、「保税区の外資企業が区外に事務所を開設することに関する通知(工商企字[2001]第363号)」に基づき、事務所の位置付けを、常駐代表処(直接的な営業活動を行わない連絡事務所)とすることで理論的整合性を取っています。

 今回の通知により、商業企業認可を取得した貿易企業は、保税区取引・貿易取引・国内取引が可能となり、取引内容によって、純国内企業(通関の内側にいる企業)と準外国企業(通関の外側にいる企業)の両面を持つことになります。

 よって、このような取引が何の問題もなく認められるのであれば、もしくは、認可取得の難易度が、一般区の商業企業と同様であれば、一般区に商業企業を新設するより、保税区等に商業企業を作る、もしくは、保税区等の貿易会社の営業範囲を変更した方が有利ということになります。

 現段階では、この様な状況を、額面通りに受け止めてよいかどうか、筆者としては若干の疑問があり、認可の取得にそれなりの困難が伴うのではないか、もしくは、増値税の輸出還付等に制限が生じるのではないか、という点を危惧しています。

 もちろん、上記はあくまでも筆者の私見であり、通知が公布された現状では、十分な判断に足る情報がありません。よって、今後の状況変化を確認した上で、詳細な解説を行いたいと思います。

以上

(2005年7月31日記・3.528字)
丸紅香港華南会社コンサルティング部長・広州会社管理部長
水野真澄

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