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ログイン2005年9月12日
外資商業企業の認可状況について
最近、外資商業企業設立・卸売り流通権獲得に関する報道が相次いでいます。
外商投資商業領域管理弁法(以下、商業弁法)施行後、1年以上が経過しているため、多数の外資商業企業の認可実績が上がっていますが、最近1カ月ほどで、変則的な認可がいくつか出ています。変則的な認可とは、単純な(専門商社的な)卸売り企業ではなく、「総合的な商品取扱の認可の取得」、「傘型会社(投資性公司)の経営範囲の追加」、「保税区企業の卸売り流通権の取得」など、難易度が高いと思われてきた形態の認可です。
ここでは、外資商業企業に関する現状を整理し、外資企業が卸売り流通権を取得する場合の方法と、その特徴について解説します。
1.商業企業新設に関する現状
外資商業企業の設立条件は以下の通りですが、規定には織り込まれていないものの、商務部は、行政指導として、「外資商業企業は、取扱製品を税関分類22種類の内、3分類以内に制限すること(総合商社的な商業企業は認めない)」を要請していました。
<外資商業企業の設立条件(商業弁法)>
税関分類
「生物」、「植物」、「動植物の油脂」、「調整食料品・飲料・アルコール」、「鉱物製品」、「化学工業製品」、「プラスティック・ゴム」、「革製品」、「木材・木材製品」、「パルプ・紙」、「紡織原料」、「履物・帽子」、「石・セメント」、「真珠・貴金属」、「卑金属」、「電器製品」、「輸送機」、「精密機器」、「武器弾薬」、「雑貨」、「美術品」、「特殊交易品・未分類の商品」
ただし、最近、双日が、総合商社的な商業企業の設立認可を取得しています(資本金:1百万米ドル)。これにより、今後、総合的な商品取扱が認められる外資商業企業の設立が認められる可能性が出てきており、この様な形態での設立申請が増加するものと思われます。
ちなみに、2004年7月1日の対外貿易法改定により、国内流通権を保有する企業は、貿易権の取得(外貿流通経営者登録)が認められますので、設立認可された外資商業企業に対しては、原則として、貿易権も付与されます。
2.CEPAの活用
香港と中国内地の自由貿易協定である、CEPAを活用して商業企業を活用するケースも見られます。この場合は、香港に設立された現地法人100%出資形態(日本の本社から見れば間接出資)での設立となります。
CEPAを活用した場合でも、日本から直接投資をした場合でも、設立根拠となる規定は、商業弁法になりますので、設立の条件・難易度は同様です。
よくある誤解として、「CEPAを活用した場合は、卸売り企業の最低資本金は50百万元となるのではないか」というものがあります。
確かにCEPAには、卸売り企業を設立する場合の最低資本金が、50百万元である事が規定されていますが、CEPAは、国内規定の制限緩和を目的としたものですで、国内規定がCEPAより有利であるものについては、国内規定の条件に読み替えることができます。
商業弁法の条件は、元々のCEPA条件より全般的に有利ですので、基本的にはCEPAを活用しても、日本からの直接出資を行っても、商業弁法の条件が適用されることになります。
よって、上述の通り、企業の設立条件・設立難易度は同様ということになるわけです。
なお、商務部は、最近まで「外資商業企業は、1グループに1社のみ認める」という発言をしていましたが、1(商業企業新設に関する現状)で紹介した双日は、数カ月前に、深センでCEPAを活用した合樹専門商社の設立認可を受けています。
このことからも、1グループ2社以上の商業企業設立が認められる可能性も出てきたと言ってよいと思われます。
3.傘型会社(投資性公司)の経営範囲の追加
傘型会社関連規定(商務部令第22号:2004年11月17日公布)は、傘型会社に対して、以下の卸売り流通権取得申請を認めています。
一方で、第11条に基づいて申請を行えば、これに比較すれば有利な条件となる上に、取得できる流通権・貿易権は制限が少ないという矛盾が生じています。これが、どの様に解消されるかが興味を持たれていましたが、実務的には、第11条に基づいて申請を行う場合でも、第22条の場合と同様の資本金(1億米ドル)・投資実績(30百万米ドル)の要求を行うことで、矛盾を解消する動きが見られます。
結果として、既存の傘型会社が流通権を取得する場合は、商業企業を新設する場合に比べて、極めて高額の資本金が要求されることになっています。
最近、伊藤忠の傘型会社が、この方法で卸売り流通権を取得しています。
4.保税区企業の卸売り流通権獲得
保税区法人が、卸売り流通権の取得申請を行うことが可能である点が、「保税区及び物流園区貿易関連問題に関する通知(商貿字[2005]76号:2005年7月13日公布)」に規定されました。
第一号として、外高橋保税区のダウ・ケミカルが卸売り流通権を取得しています。
認可実績はまだ1社だけですが、今後、同様の申請が相次ぐものと思われます。
ただし、保税区企業が国内流通権を認められた場合、実務上、以下の問題が生じます。
従来は、保税区企業は、区外に非営業単位である常駐代表所の開設は認められていましたが(保税区の外資企業が区外に事務所を開設することに関する通知:工商企字[2001]第363号)、分公司の開設は認められていませんでした。これを信ずれば、大きな方針転換であるということができます。
同「手引き」には、保税区企業が登記地の変更(区内⇒区外)を行う場合は、営業許可内容の修正(保税区内でしか認められ内項目の削除)を行う必要があると規定されています。
これは、筆者の私見ではありますが、今後、保税区企業が国内流通権を取得するに当たっては、登記地の区外への変更が(行政指導として)要請され、これによって、保税区の貿易会社を減少させていくと同時に、上記の問題を解消していくのではないかと思われます。
5.非商業企業の卸売り流通権獲得
非商業企業が、経営範囲の変更により、卸売り流通権の取得を申請できることが、「外商投資非商業企業が流通業務を経営範囲に加える際の問題に関する通知(商資函[2005]第9号:2005年4月2日)」に規定されています。
同規定では、非商業企業が流通権を取得する場合、商業活動から生じる収入が、全体の30%を超過すると、生産型企業としての税務優遇が享受できないことが規定されています。
ただし、上記の「手引き」では、年度の生産型経営収入が50%を超過する場合は、主管税務機関の許可を受ければ、生産型企業の税務優遇措置を享受できると記載されており、制限は緩和されたものと解釈されます。
以上
(2005年9月8日記・3.993字)
丸紅香港華南会社コンサルティング部長・広州会社管理部長
水野真澄
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