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ログイン2005年11月8日
2001年のWTO加盟、昨年の商業領域管理弁法の施行に象徴されるように、中国市場の門戸が外資に対して開かれつつある。困難と言われた保税区内の独資販売会社に対する輸出入権、卸売販売権も徐々に認可が出始めている。
今後、日系企業が中国市場での販売活動を展開していくのに際して、より重視すべき課題として中国市場における製造(PL)責任と消費者権益保護制度があげられるだろう。最近では流行語にもなりつつある「リコール制度」もようやく法制化されたばかりであり、中国消費者の高い意識と強い理性、消費者権益に敏感なマスコミ、97%もの高い問題解決率を誇る中国消費者協会の存在など、もし中国市場を軽く見る態度をとれば、外資系企業といえども中国市場から放逐されてしまうことを疑念の余地がない。
今回は、その中国現行法に定められている基本ルールについて、罰則規定を中心にサーベイしてみよう。
1.中国のPL責任罰則規定
「中華人民共和国製品品質法」(2000年9月1日改正)第49条では、「人体の健康及び身体、財産の安全の国家規格、業界規格に適合しない製品を生産、販売したときには、生産、販売の中止を命じ、違法に生産、販売された製品を没収し、違法に生産、販売された製品(既売却及び未売却の製品を含む、以下同じ)の価額と同額以上、3倍以下の罰金を併科する。違法な所得があるときには、違法所得の没収を併科する。情状が重いときには、営業許可証を取り消し、犯罪を構成するときには、法によって刑事責任を追及する」と厳しく定められている。
また、同様の罰則規定が、不良品だけでなく、混ぜ物などの詐欺行為(第50条、同様の処分で、50%以上3倍以下の罰金)、国が明文で淘汰を命じ販売を中止している製品を製造販売する行為(第51条、同額以下の罰金)、品質保証期限切れの商品(第52条、同2倍以下の罰金)、商品原産地、工場の名称、住所、認証マーク等の品質マーク等の盗用・虚偽表示(第53条、同同額以下の罰金)が定められている。
ただし、販売者について、販売が禁止された製品を販売した場合において、その製品が販売禁止製品であることを知らなかったことを証明する十分な証拠があり、かつその仕入先を正しく説明したときは、軽く処罰しまたは処罰を軽減することができるものとされている(第55条)。
さらに、製造・販売者ではなくても、法で生産、販売が禁止された製品であることを知り、または知り得ながら、その輸送、保管、貯蔵などに便宜を図り、または本物に見せかけた製品のために生産技術を提供したときには、すべての輸送、保管、貯蔵または生産技術提供による収入を没収し、違法な収入の50%以上3倍以下の罰金が併科され、犯罪を構成するときには法によって刑事責任が追及されるものとされている(第61条)。
なお、これら罰金等の計算には、違法に生産、販売された製品の表示価格で計算する。表示価格がないときには、同種製品の市場価格で計算するものとされている(第72条)。
以上が製品品質法に定められた基本的な罰則規定であるが、これとは別に消費者権益保護法にもとづき、ユーザーに対する民事賠償の責任が生じることになる。
2.消費者権益保護法の基本規定
「消費者権益保護法」(1993年10月31目第8期全国人民代表大会常務委員会第4回会議にて採択、同日国家主席令第11号にて公布、1994年1月1目施行)第28条では「各級政府の工商行政部門およびその他の関係する行政部門は法律、法規の定めにより、各自の職責の範囲内で、措置をとり、消費者の適法な権利を保護しなければならない。関係する行政部門は事業者の取引行為、商品およびサービスの品質問題に対する消費者および社会団体の意見を聴取し、速やかに調査、処理しなければならない」と定められており、工商行政管理局、商品品質監督検査検疫局など関連行政機関が消費者権益保護の管理部門となっている。続く第29条にもとづき、「関係する国の機関は法律、法規の定めにより、事業者が商品およびサービスを提供する過程で、消費者の適法な権利を侵害する違法な犯罪行為を処罰しなければならない」とその管理責任が義務付けられている。
同法第40条では、事業者が商品又はサービスを提供する際に「製品品質法」にもとづいて民事上の責任を負わなければならないケースが、以下のとおり、具体的に列挙されている。
さらに、事業者が商品またはサービスを提供し、消費者またはその他の損害を受けたものが死亡したときは、葬祭費、死亡賠償金および死者が生前扶養していたものが必要とする生活費などの費用を支払わなければならず、犯罪を構成するときは、法により刑事上の責任が追及される(第42条)。
特に注意すべき点として、消費者権益の概念が消費者の人格の尊厳にまで及ぶと規定されていることで、同法第43条には「事業者がこの法律の第25条の規定に違反し、消費者の人格の尊厳を侵害し又は消費者の人身の自由を侵害したときは、侵害を停止し、名誉を回復し、影響を除去し、謝罪し、かつ損害を賠償しなければならない」と定められている。
たとえば2005年4月以降、全国の都市部に見られた反日デモで、歴史認識問題と同時に日本製品ボイコットも叫ばれていた点にも留意すべきと考えられる。
また、中国のマスコミ等で頻繁に報道されている「三包」責任については、同法第44条 に、「事業者が商品またはサービスを提供し、消費者の財産に損害をもたらしたときは、消費者の要求に従い、修理、再製作、交換、引取り、商品の数量補充、商品代金およびサービス費用の返却、または損害賠償などの方式で、民事上の責任を負わなければならない。消費者が事業者と別段の約定があるときは、約定に従い履行する」とあり、第45条にも「国の規定、または事業者と消費者との約定により事業者が修理、交換、引取り責任>を負う商品については、事業者は修理、交換、引取りの責任を負わなければならない。修理保証期間内に、2回修理しても正常に使用できないときは、事業者は交換、または引取りの責任を負わなければならない。修理、交換、引取りの責任を負う大型商品に対し、消費者が事業者に修理、交換、引取りを要求するときは、事業者は輸送などの適正な費用を負姐しなければならない」と明文で定められている。
最近話題となっている外資系メーカー製の携帯電話機のオートシャットオフ機能の欠陥に対するクレーム問題も、ここに定められた「三包」アフターサービス責任規定にもとづくものである。
さらに、事業者が商品、またはサービスを提供する場合において詐欺行為があったと認められた場合は、消費者の要求に従い、購入した価格、またはサービスを受けた費用の倍額に増額して損害賠償しなければならないと定められている(第49条)。
3.中国消費者協会とは?
中国消費者協会は、消費者権益保護法第31〜33条の規定にもとづき、1984年に設立された工商行政管理局所管の消費者保護団体である。中国にはそのほか、同様の団体として品質技術監督局所菅の中国品質万里行促進会が1994年に設立されている。
消費者協会(あるいはその他の消費者組織)の設立目的は、消費者権益保護法など関連法律にもとづき、市場の商品やサービスに対して、社会監督を行い、消費者の合法的権益を保護することにある(31条)。
その機能は以下のとおり、消費者権益保護法32条、33条と同協会定款に定められている。
(参考)上海市消費者協会規定
4.リコール制度
中国には、現在のところ「缺陥汽車産品召回管理規定」(「欠陥自動車製品リコール管理規定」全7章46条、2004年3月公布、10月施行)以外に、法律で明文規定されたリコールに関する法律規定は存在しない。ただし、「中華人民共和国消費者権益保護法」は、メーカーに対して損害発生の防止措置をとることを強制的に義務付けている。
現状では、企業ブランド信用を維持、向上させる効果も兼ねて、メーカー企業による自主リコールが主であり、政府による指示リコールは「罰則、制裁措置」に近い存在とみなされているようだ。
(次回へ続く)
(2005年10月記・5,582字)
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