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これだけは知っておきたい! 中国リスクマネジマント(2)

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2005年11月11日

<投資環境>

これだけは知っておきたい! 中国リスクマネジマント(2)

 前回は中国リスクマネジメントに関する概括を述べてきましたが、以降の連載では、実際の中国リスクを進出前と進出後に分けて述べていきたいと思います。

1.中国のマクロ・リスクについて

 前回、日本と中国の対外貿易の変遷を概観し、中国には「外資にとり相反する政策が同時進行で起こる」、「政経不分離」、「外資にとり冷熱という一定のサイクルを持つ」という特徴があると述べました。

 この特徴は「中国が共産党オールマイティーの国であり、日常は市場原理原則に法り行動をしているが、ひとたび共産党にとり問題が発生すれば、躊躇せずに強権を発動する」という国柄に根ざしていると言えます。このことを念頭に中国では企業活動を進める必要がありますが、その他のマクロ的なリスクも見てみましょう。

(1) 地域経済格差

 2003年上海の一人当たりGDPは46,718元に対し、西域の貴州省の一人当たりGDPは3,601元と格差は13倍もあります。中国では、年平均所得1,200元の層を貧困と定義されていますが、その数ざっと1億3,000万人から1億8,000万人と言われ、そのほとんどが農村部に偏在している状況です。この格差から来る不公平感や最近では公害問題から、農村を中心にデモが起こっており、2004年では、年間5万8千件(対前年15%増加)、参加者300万人のデモが発生したと言われています。

(2)食糧問題

 中国の現在の人口は約13億人と世界の人口の約2割を占めていますが、総農地面積は世界の15分の1しかありません。政府も農地の一時的工場への転地禁止等の政策をとっていますが、充分とは言えない状況です。現在でも年間500億トンから700億トンと消費量の約7%の食料を輸入している中国ですが、今後さらに、人口増加、所得の増加に伴う食生活の変化などで、中国に深刻な食糧問題をもたらす事が心配されています。

(3)工業用水・電気不足問題

 中国では、ここ数年黄河が干上がる現象が続いています。これは、流域の農業、商工業の発展で、河川が農業用水・工業用水に使われ、暖房のために流域の木を切ったために保水能力がなくなった結果といわれています。水は製造業にとって、不可欠な資源であり、今後の重要な検討課題となりそうです。また、電力不足も常態化したために、計画停電などが各工業団地で行われており、進出企業の生産計画への支障が出るなどの事態が発生しています。

(4) 幹部の腐敗問題

 政府高官は、退職1年前になると権限のあるうちに必ず、贈収賄を働くのが常識であるといわれています。ある地方政府では、贈収賄を働かなかった幹部のために退職金上乗せの制度を新設するなど、事態はさらに深刻になっているようです。政府幹部のみならず、国有企業の幹部の汚職も進んでいるといわれており、リストラによる失業者の怒りが、その様な幹部に向かい、最近では、四川省、広東省、河南省、などで、数万の規模の暴動が発生しており、日系企業への飛び火が懸念されます。

 他にもエネルギー・水不足と資源ナショナリズム、元のさらなる切上げ、台湾問題、などマクロリスクは他にもありますが、代表的なものは以上のようなものでしょう。

2.ビジネス文化の違いから来るリスクについて

 日本と中国のビジネス文化の違いは、両国の文化の違いが大きく反映ています。この文化の違いを明確に認識したうえで、経営の事業戦術を考えることが重要です。根本的な違いを知ることなく、中国での経営が順調に行くと考えるのは、大変危険といえます。以下、リスクを的確に掴むための文化面でのポイントをご紹介します。

(1) 「同文同種」の誤解

 日本人は中国人にたいして「同文同種」と思う傾向があるようです。似た顔である、漢字を使う、文化的影響が大きいなどのことが、その原因であるようです。しかし、中国人は日本人というよりも「欧米系」に近い思考パターンを持っているようです。従って、まずは、全く異なる文化を持った民族であるという認識が必要となります。

(2) 中国人気質の背景

 戦後60年間平和に暮らしてきた日本と動乱の時代を暮らしてきた中国との違いを認識することは、中国人気質の背景を知る上で重要です。特に、戦後だけ見ても、中国では、大躍進、文化大革命、チベット独立運動など様々な社会的動乱を経験しています。この結果、中国人は「自己防衛第一主義」「金だけが頼りになる」「血縁だけが頼りになる」ということを、自己防衛のための生きる知恵として、しっかりと身に着けています。従って、日本人の中に、中国人は、債権を払わない、自己主張が激しい、利己主義であるということをいう方もいますが、ある意味では仕方ないこととして、感情ではなく理解をする努力をし、理性的に対処方法を考える必要があります。

(3) 重要な人間関係

 中国では「人間関係」が重視されることはよく言われていることです。ただし、中国で言う「人間関係」には2つの人間関係が存在します。一つは「外人-わいれん」もう一つは「自家人‐ずーじゃーれん」です。「外人」は「赤の他人」を意味し、対人関係において、徹底的に個人主義の対象になります。一方、「自家人」は「身内」を意味して、「私のものも貴方のもの」という緊密さを示す対象になります。これは、中国人、外人を問いません。従って、「人間関係」といってもどちらの人間関係を言っているのかを認識する必要があります。ごちゃ混ぜにすると相手に誤解を与え大変なことになります。また、「自家人」となった場合には、相当の便益を与え、与えられる関係になることを充分認識しておく必要があります。

(4) 面子重視

 1934年に魯迅が「中国人の面子が理解できれば辮髪の元を押えたことに等しい」とのべたことがあります。辮髪の元を押えるということは、面子が分かれば中国人を自由自在にコントロールできるという事を表しています。ただし、日本人の場合、面子の意味を、お客さんの顔を立てる、上司の顔を立てるというように「相手の顔を立てる」という意味に使うのに対して、中国人の面子は「自分の顔を立てる」という意味で使うことが多いようです。交渉時に「俺の面子がないじゃないかどうしてくれるんだ」という具合に中国人から諭されると、日本人は「相手の顔を立てる」ために妥協することが多いのは、この面子の理解の違いから来るようです。

3.ビジネス文化の違いから来る
        交渉上のリスク・マネジメント

 日本と中国のビジネス文化の違いは、交渉に対する姿勢にも大きな影響を与えます。従って、ビジネス文化の違いを分かった上で、交渉に臨むことは、交渉をスムースに進める上で大変重要なリスク・マネジメントになります。

(1)交渉スタイル

 日本人は交渉において、非常に友好的な雰囲気を望む傾向があるようです。この結果、交渉の相手側参加者もあたかも友人のようになって欲しいと一方的に思いがちです。これに対して、中国人は「参加者は敵対者である」というスタンスで交渉に臨むことが多いようです。

(2)交渉の目的

 日本人は交渉の目的を最終合意にあると考え勝ちです。一方で中国人にとって、妥協は自己否定につながるため、交渉の目的は明確に勝利においています。「だます人は頭の良い人、だまされる人は頭の悪い人」という、孫子の兵法である「戦わずして勝つ」という戦略に最も忠実な態度で交渉に臨みます。

(3)交渉相手への信頼

 日本人は、自分が交渉相手を信頼し態度に表せば、相手も信頼してくれるものと、勝手にたかをくくることが多いようです。しかし、中国人の場合には交渉の相手を疑うことから交渉に臨むのが常のようです。日本人が陥りやすい暗黙の信頼という甘えた態度は決して相手に現さないのが中国人の常のようです。

(4)合意の最低線の出し方

 日本人は妥協とお互いの譲歩を好む傾向があります。そのためか、交渉の最中に合意に至る最低線を明かすことがあります。一方、中国人は、この様なことは決して行いません。最低線は絶対に明かさず、わざと相手に誤解を与えてまで妥協させようとすることもあります。勝利が目的ですので、手段はさほど気にしないということかも知れません。

(5)最終合意形成の仕方

 日本人は交渉の目的が最終合意にあると思いがちです。その為か、自分の意見を最終的に引っ込めがちです。一方、中国人は最終合意をしたいなどということはおくびにも出しません。自分の意思を貫徹し、勝利する事が交渉の目的にあるわけですから、勝利する線でしか最終合意を考えないのが通常です。

 これらの違いを表にまとめたのが以下となります。この様なスタンスの違いを分かった上で、常に冷静に交渉に臨むことが、中国人との交渉では非常に重要になります。

日本人
中国人
交渉者との関係
友人
敵対者
交渉目的は
合意
勝利・だます
相手への信頼は
信頼
疑う
最低線は
明かす
秘密・誤解1を誘導
合意案は
相手にも良い案
相手には譲らず、自分の案を通す
最終合意
したい
したい?

以上

(2005年11月記・3,067字)
コンサルビューション・代表
高原 彦二郎

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