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会社法の改定が外資企業に与える影響について

中国ビジネスレポート 投資環境
水野 真澄

水野 真澄

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2005年11月15日

<投資環境>

会社法の改定が外資企業に与える影響について

 2005年10月27日の全国人民代表大会常務委員会の決議により、会社法(首席令・第42号)が改正されることとなりました。施行は2006年1月1日になります。

 今回の改正の内容は、「株主の権利と義務の明確化」、「有限会社・株式会社の最低資本金の引き下げ」、「出資者数の変更(一人有限会社の設立を可能に)」、「監査役の権限の強化」など、多岐に渡っています。

 ここでは、今回の改正が外資企業に与える影響を解説するとともに、主要な改定のポイントを簡単に紹介します。


A.外資企業に対する影響が考慮される変更点

(1)外資企業関連規定との関係

 改定前の会社法(以下、旧会社法)の第18条には、「外商投資企業には、本法を適用するが、中外合資・中外合作・独資企業に関する法律が別途定められている時は、その規定を適用する」と規定されていましたが、今回の改定で、それが削除されています。

 外資企業の設立・運営・解散等に当たっては、以前より、会社法と、これらの外資企業関連規定の双方を考慮する必要があり、その状況は、今後も変化ないと思われます。

 ただし、当該規定の削除により、従来以上に会社法を意識する必要が生じることは確かであり、外資関連規定より、会社法の制限が厳しい場合においては、会社法の条件に従う必要が出てくるものと考えられます。

 例えば、資本金の払込期限、払込方法に付いては、今回の改定により、従来の外資企業規定よりも厳しい条件が定められていますので(後述)、今後、どのような運用が行われるか(新会社法の内容が強制されていくか)、状況を見守る必要があります。

(2)最低資本金

今回の改定により、最低資本金が、以下の通り変更となっています。
⇒ 有限会社(第26条)、一人有限会社(第59条)、株式会社(第81条)

有限会社
  (新)通常の有限会社:3万元
     一人有限会社 : 10万元
     株式会社   :500万元
  (旧)生産型有限会社: 50万元
     卸売有限会社 : 50万元
     小売有限会社 : 30万元
     技術開発、コンサルティング有限会社:10万元
     株式会社   :1千万元
     上場株式会社 :5千万元 
 
 もちろん、外資企業の場合は、「総投資と資本金の比率に関する規定」があり、総投資の金額に応じて、その70%〜1/3以上を資本金として定めることが要請されていますし、業種によっては、個別の最低資本金額が定められています。

 これらの中で、最大の金額を資本金額として設定することが要請されている為、以前から、会社法の最低資本金額で、会社が設立されることは、ほとんどありませんでした。

 よって、今回の最低資本金額の引き下げに関しては、外資企業にはほとんど影響を与えないものと判断されます。

(3)資本金の払込方法と払込期限

1. 払込方法

 今回の改定により、現金出資額を登録資本金の30%以上とすることが要請されています。⇒ 有限会社(第27条)、株式会社(第83条)

 これは、外資企業関連法規には規定されていない内容で、動産・不動産等であれば、全額現物出資により出資を行うことも可能でした。

 今後、この現金出資規定が、外資企業設立に際しても適用されるものと考えられ、出資方法の検討に当たって注意を要します。

 なお、旧会社法では、無形資産(工業所有権・非特許技術など)による出資は、登録資本金の20%以内とすることが規定されていましたが、今回の改定により、これが削除されています。

 ただし、独資企業法実施細則には、依然としてこの規定が残っているため、独資企業の場合は、従来通り、無形資産の出資比率制限が残るものと推測されます。

2. 払込期限

 新会社法では、第一回目の出資額を登録資本金の20%以上(かつ、最低資本金以上)とし、会社設立日より2年以内に払込完了することを要請しています(持株会社の場合は、5年以内)。
⇒ 有限会社(第26条)、株式会社(第81条)

 外資企業関連規定に基づく、資本金の払込期限は、現在のところ以下の通りであり、新会社法の規定の方が厳しい内容となっています。

 そのため、今後、外資企業を設立する際には、会社法に基づく払込期限設定が要請される可能性が高いと考えられます。

<外資企業関連規定に基づく資本金払込期限>

  •  独資企業の場合
    分割出資を行う場合は、営業許可証発行の日から3年以内に全額払込みを完了。
    第一回の出資は、資本金額の15%以上、かつ、営業許可証発行から90日以内。

  •  合資企業の場合
    a.一括払込を行う場合は、営業許可証交付の日から6カ月以内に払込を完了。
    b.分割払込を行う場合は、以下の期限内に払込を完了させる。
    また、第一回目の払込は出資額の15%以上、かつ、営業許可証発行から3カ月以内。
    1)登録資本金がUS$ 50万以下の場合は、(営業許可証発行から)1年以内。
    2)US$ 50万超〜100万以下の場合は1年半以内。
    3)US$ 100万超〜300万以下の場合は2年以内。
    4)US$ 300万超〜1千万以下の場合は3年以内。
    5)US$ 1千万超の場合は個別審査。

(4) 最低出資者の変更

 旧会社法では、有限会社の出資者は、2以上50以下と規定されていましたが、今回の改定により、一人の出資者による有限会社の設立が認められました。
⇒ 第24条、第58〜64条

 新会社法では、一人有限会社の条件として、以下が定められています。

  • 最低資本金10万元(第59条)

  • 出資者は、出資額を一括して納付する必要有り(第59条)
  • 自然人1人は、一人有限会社を1社しか設立できない(第59条)
  • 設立された一人有限会社は、再投資により一人有限公司を設立する事は認められない(第59条)
  • 一人有限会社の出資者は、会社の財産と自己の財産が独立していると証明できない場合、会社の債務に対して連帯責任を負わなくてはならない(第64条)
 ちなみに、外資企業の場合は、以前から例外的に、一人の出資者による有限会社の設立が認められており、これが、独資企業でした。

 独資企業の設立運用は、今後も「独資企業法、及び同法実施細則」に基づくため、今回の改正は、直接的な影響はないものと判断されます。

 外資企業に関連して、この改定が影響を与えるとすると、外資企業が国内再投資により、子会社を設立する場合と考えられます。

 つまり、「外商投資企業の国内投資に関する暫定規定(対外貿易経済合作部・国家工商行政管理局令2000年第6号)により、外資企業は国内再投資により子会社を設立することが認められていますが、再投資は、原則として(中西部に対する出資を除き)内国出資と扱われるため、旧会社法の規定により、2者以上の出資者が必要でした。

 今回の改定により、外資企業一社の出資による、国内子会社設立が認められることになります。

 なお、今回の改定の影響ではありませんが、外資企業1社の再投資により設立した子会社は、内資企業として扱われます(中西部に対する再投資の場合は外資企業として扱われる)。

(5)再投資の制限

 旧会社法では、会社が再投資を行う場合は、合計投資額を、会社の資産の50%に制限することが規定されていましたが、この規定が削除されています。

 外資企業に関して言えば、前述の「外商投資企業の国内投資に関する暫定規定」により、外資企業の国内再投資は、純資産の50%以内とすることが規定されています。

 当該規定に変更がない以上、外資企業の国内投資に関しては、従来通り、純資産の50%が、累計投資額の制限になるものと考えられます。

(6)有限会社の持分譲渡

 今回の改定により、少数出資者保護の観点より、持分譲渡に関する規定が追加されています。
⇒ 第72〜76条

 有限会社の出資者間で、全部、もしくは一部の出資持分を譲渡できること。

 さらには、出資者以外に持分譲渡を行う場合に、過半数の同意が必要であることは従来の通りですが、少数株主保護の観点より、以下の状況の一つに該当する場合、出資者総会決議に反対する出資者は、合理的な価格で出資持分を購入することを、会社に要請できると定められています。

  • 会社が連続5年間配当を行わず、かつ、その5年間、会社が連続して黒字の場合であり、会社法に規定する利益配当の条件に合致する場合。

  • 会社の主要財産の合併、分割、譲渡を行う場合。

  • 会社が経営期間を満了、若しくは、定款に定める解散事由を満たしたにもかかわらず、定款の変更により、会社の存続が決定した場合。

B.その他の主要変更点

 今回の改正における、その他の主要点は、以下の通りの内容です。

  1. 株主・董事・高級管理者等による、職権乱用の禁止。
    ⇒ 第20〜22条

  2. 有限会社の出資者の権利保護
    有限会社の出資者が、董事会議事録・監査役会議事録、会計報告を調査し、コピーする権限を有することを明記。さらに、会計帳簿の検査を会社に要求できることを規定。
    ⇒ 第34〜35条

  3. 有限会社の監査役の権限強化
    監査役の権限強化と、監査役会の定期的な開催義務の設定。
    ⇒ 第52〜57条

  4. 株式会社設立に関する発起人の人数変更
    5人以上(旧)より、2人以上200人以下に。
    ⇒ 第79条

  5. 株式会社の株式開催開催要求
    監査役、単独・合計で10%以上の株式を持つ株主による、株主総会開催要求。
    その他、株主総会開催要求に関する詳細規定。
    ⇒ 第102〜103条

  6. 株式会社の監査役の権限強化
    監査役の権限強化と、監査役会の定期的な開催義務の設定。
      ⇒ 第108〜120条

  7. 上場株式会社
    旧会社法では、上場株式会社の条件・上場手続が詳細に記載されていましたが、新会社法では、簡略化されています。

  8. 株式会社の発起人、董事・監査役・高級管理職の株式譲渡
    株式の譲渡に関する制限、報告義務が変更されています。
    ⇒ 第142条

  9. 株式会社の自己株式購入
    従来は、有償減資、自社株式を有する会社との合併の場合のみ自社株の購入が認められていましたが、今回、社員に対する褒章、および、株主総会で決議した会社の合併・分割等に反対する株主からの買い取り要求がある場合が加えられました。
    ⇒ 第143条
 その他、違法行為があった場合の罰金額(第199〜208条)、会社清算の場合の公告義務(第186条)、その他の事項に関しても、細かい日数・条件の変更が行われています。

以上

(2005年11月13日記・4.267字)
丸紅香港華南会社コンサルティング部長・広州会社管理部長
水野真澄

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