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筧先生の恥をかかないための中国ビジネス講座 (9)中国からの資金・利益回収の方法

中国ビジネスレポート 投資環境
筧 武雄

筧 武雄

無料

2006年3月29日

<投資環境>

恥をかかないための中国ビジネス講座

(9)中国からの資金・利益回収の方法

筧武雄

 どんなビジネスでもビジネスである限りは、利益が出なければ敢えて実施する理由はない。しかし、利益というものは、金銭だけでなく、様々なかたちでもたらされる。中国ビジネスにはどのような利益回収が期待されるだろうか。 

1.中国への生産・調達シフトにより、コストダウンを実現する 

 国全体のGDPを比較すると日本は中国の2倍あり、総人口を比較すれば日本は中国の10分の1である。これを単純計算すれば、日本人一人あたりの平均所得水準は中国の20倍という計算になる。さらに中国の公式統計を見ると、在職者平均賃金ベースで最高の上海(18千元強)は全国平均の2倍であり、河南省など下位グループは全国平均の約半分である。この比率から単純計算すれば、中国沿海都市部の平均所得は「日本の10分の1」、全国平均で「20分の1」、内陸部地方都市に暮らす人たちの平均所得は日本の「40分の1」という単純計算になる。極めて単純かつ乱暴な計算だが、これだけでも、中国の各地域でどの程度の労務費コストダウンが可能か、容易に想定し得る。また、現地操業する日本人の生活実感とも一致するのでしないだろうか。

 たとえば、日本に暮らす中国人たちに、人民元の100元札は日本円の幾らに相当するか、と質問すると、上海などの都会人は5千円札に相当、地方出身者は1万円札に匹敵するという回答をよく聞く。公定レートと生活実感には大きな差がある。

しかも中国内陸部は慢性的な失業者で満ち溢れており、彼らが都市部に流入しており、単純労働を中心として実質賃金コストはそう簡単に上がらない。都市部でも最近では大学生が急増しており、就職難が話題になっている。10年ごとの公式な全国人口センサスでも、年間1千万人の人口増加があり、毎年それだけ労働市場に新規労働者が投入され続けていると見てよいだろう。()これがすなわち、俗に言う「中国の脅威」、「中国発の世界デフレ」の原因であり、正体である。同時に、それだけの人口を維持し、新規労働者の増加を食わせていくために、毎年2桁の経済成長が必要と言われる由縁である。

中国の低廉で豊富な労働力だけでなく、中国で現地調達した材料、部品を使用して現地の技術水準で部品、あるいは製品として合格品質のものが製造でき、安定調達ができるならば、中国に生産をシフトすることで大幅な生産コストダウンが可能となり、ひいては国際市場で強い価格競争力を獲得することができる。すなわち、中国工場製品を日本本社、あるいは輸出先国にある直営の販売子会社で引き取り、海外市場販売することで外貨建ての利益を回収する。これが典型的な中国事業の利益回収方法である。

もちろん大陸内のコストには大きな地域差、職業差、職位差、個人差があり、このような議論は乱暴である。大都市の郊外にも低廉な労働力が存在する一方で、内陸部都市にも、比較的小さい割合ながら北京や上海並みの高額所得水準の人たちもいる。たとえば、物流が悪く、所得水準も高くないと思われるような内陸部の、たとえば四川省で日本の大手スーパーの経営が成功している理由も、省人口1億人の0.5%でも50万人の富裕層が存在しているからである。現代中国の現状では、到るところ「分母」が巨大なだけに、それだけで立派なマーケットにもなりうるのである。80年代の北京や上海が開拓者利益をもたらしたように、現代の地方都市にも、まだそのような余地が残されている。いずれは時間の経過とともに早晩多くの内外企業が殺到して、90年代以降の北京、上海のように激烈な過当競争、過剰供給となってしまうだろうが、内陸部地方都市には、しまだにそのような一時的開拓者利益を狙える戦略の余地もある。

()最近では、華南地方ではコストダウンのために賃金水準が引き下げられているうえに、出稼農民労働者に対する賃金遅延、不払いなど労働環境の劣悪化が社会問題化しており、物価の上昇もあって、出稼ぎ労働者が台湾企業の移動とともに華東地域などに移動したため、局地的に労働力不足が発生している地域もある(いわゆる「民工荒」) 

2.中国への機械設備、部品、材料、技術売却により利益回収する 

 親会社から中国子会社に機械設備、部品、材料、技術を売却して、その売却利益で回収する方法である。中国政府の定める奨励業種、ハイテク業種、100%輸出業種等に該当する場合は、自家用設備輸入関税、増値税の免税優遇政策を受けることもできる。

中国に進出している外資系企業は、さらなるコストダウンと人民元資金の活用のため設備調達、部材調達の現地化を旺盛に進めている。もはや、そこに系列は存在しないため、中国市場で新規顧客を獲得する新しいビジネスチャンスに期待することもできる。

ポイントは移転価格税制の指摘であり、タックスホリデー終了後の突然の欠損、二期以上の連続赤字計上、社内経理からの税務局密告などに注意が必要である。 

3.現地からロイヤルティ、マネジメントフィー等の手数料で受け取る

 中国子会社に対するライセンス生産契約、技術指導契約、商標使用許諾契約、マネジメント契約などのロイヤルティ契約にもとづく契約手数料を受け取る利益回収法である。中国にはまだ独占禁止法が無く、韓国のようなロイヤルティ水準に対する法律ガイドラインは存在しないが、極端に高いロイヤルティ水準は、契約の審査届出の段階で管理当局から修正勧告が出されることもある。

この方法だと、現地法人は税引前の経費として計上することになる。日本に送金する際に10%の源泉税徴収があるが、日本国内で外国税額所得控除を受けることができる。なお、以前は技術ロイヤルティに対する営業税は非課税であったが、1998年の国家税務総局通達により19981月から一律5%課税されることとなった。この営業税は源泉税と異なり、日本国内で外国税額控除の対象とはならない。 

4.利益配当金あるいは貸付金利息として受け取る 

 投資利益回収のもっともオーソドックスかつ確実な方法である。中国法により源泉税は非課税とされている。日中租税条約では中国からの利益送金受け取りには「みなし税額控除(Tax Sparing)」が適用されるケースもあるので、その場合は、さらに利益プラス効果がある。

また、中国では、外国からの進出企業には親子間貸付が一般的に認められており、それに伴う金利収益も利益回収のひとつの手段と言える。ただし、外国通貨の公表市場金利相場から乖離した高すぎる貸付金利水準の設定は、移転価格税制に抵触するリスクがある。 

5.技術開発、設計、製図、技能教育、人材調達などの人材開発を行う

 日本では獲得が困難な優秀な若い頭脳であっても、中国であれば比較的容易に獲得することができる。教育や育成に時間とコストはかかるが、これもひとつの利益回収法と呼ぶことができるだろう。

中国に法人を設立することで可能となる人材の獲得、育成、確保はひとつの事業目的ともなり得るものである。 

6.中国マーケットへの販売利益もしくは調達利益を得る 

 日本に比較して平均物価水準も平均所得水準も低い中国マーケット販売で、世界の強豪企業、あるいは強いコスト競争力を持った地元企業と同じ土俵で競争して大きな利益を得ることは容易ではない。やるならば、事前によく戦略を練っておく必要がある。たとえば現地調達を100%として「現地価格競争力+ブランドネーム」で市場シェアを掌握する(代表例は食品・調味料類、酒類、飲料類等)あるいは富裕層にターゲットを絞り、単価の高い、高品質、高付加価値商品を販売する(代表格にはブランド衣類、薬、化粧品、家電、自動車など)等のマーケットセグメンテーション戦略対応が必要である。 

7.中国株「長期投資」は2010年以降の話 

 SARS騒動以来の数年間、中国の平均株価は長期低落傾向にある。特に上海市場では反日デモが展開した昨年5月に未曾有の大暴落を迎えた。その中国株を回復させる起爆剤として、「北京五輪景気」、「上海万博景気」が振り撒かれ、その甲斐あってか、2006年に入って幾分、上海、シンセンとも平均株価は戻しているようである。

 株価を上げようとする政府の最大の意図は、過去から抱える巨額の「負の遺産」である国有株を、可能な限り外国個人投資家を含む民間に放出することにある。つまり、国有経済の抱える莫大な累積含み損を、北京五輪や上海万博開催などのイベントに向けた株価上昇ブームを作り出して広範に分散して売りさばき、「清算」することである。

かたや、多くの日本人はじめ海外のプロ投資家は中国株を、客観的かつ冷静に、昼間の値動きに賭けるデイトレーディング、つまり「その日かぎりの賭博場」としか見ていない。このようなプロ投資家たちにとっては「オリンピック()景気」のような長期変動は関係なく、一日の暴落あるいは暴騰のような激しい値動きにこそ意味がある。

中国株投資を単なるデイトレーディングの「その日限りの賭博場」としてではなく、また国有株放出やインサイダー株のババを引かされることなく、長期的な経済成長投資機会としてみることができるかどうかは、五輪と万博が終わった2010年以降の話である。

●豆知識●

「合作形態」における投資金先行回収は利益回収ではない 

 中国の「合作形態」は、合作契約にもとづいて利益配当とは別に投資金の先行回収が認められているが、実は赤字決算のあいだの先行回収は法的にも禁じられている。

会計上、この「先行回収」資金は、資本の部勘定にある「既償還出資」勘定科目からマイナス残高で払い出される処理が定められている。すなわち、投下資本回収の実施と同時に資本金から仮払い(いわば、清算金の前借)をしているのである。これは税引き後利益を董事会決議にもとづいて出資者に配当する配当利益とは根本的に異なり、董事会決議不要で、合作契約にもとづく税引前の処理である。費用処理にもならず、言い換えれば、いわば「資本の減価償却」のようなものである。

これが、もしも経営期限到来時(あるいは事業中止清算時)に合作会社が債務超過になっていた場合、会計理論上では、すでに受け取った先行回収資金は合作企業に返戻しなければならなくなるケースも考えられる。なぜなら、退職金や弁護士報酬などの各種清算費用、税金は清算財産から支出し、清算配当も出資比率に応じて分配しなければならないからである。そのさい、資本のマイナス残高を埋め戻さなければならなくなる(つまり配当金の返戻)可能性もある。

万が一の場合に、このような羽目に陥らないためには、あらかじめ合作契約のなかで、合法的に一旦受け取った先行回収資金はいかなる場合も返戻しない旨、明確に取り決めておく必要があるだろう。

 

(2006年3月記・3,698字)
チャイナ・インフォメーション21
代表 筧武雄
新刊「中国ビジネス<超>成功戦術252」(明日香出版)好評発売中!

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