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日系企業社員の告発状を読む(1)  はじめに

中国ビジネスレポート 労務・人材
田中 則明

田中 則明

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2006年3月31日

<労務・人材>

日系企業社員の告発状を読む(1)

田中則明

 

 前回まで、日本人も中国人ももっとお互いの「境遇」を知るように努めるべきだということを強調して来ましたが、私は更にその理解の仕方として、お互い一歩踏み込んで、自分の価値観や見方に余り引き付けずに事実を見ることが重要であると申し上げたいと思います。 

どういうことかと言いますと、日本列島に住む日本人が、西の方、大陸の方を見やって、

「この国が、こうなったら、うちはこうなる。そりゃー、大変だ。」

「この地域が、こうなってくれれば、うちにとっては好都合だ。」

「この民族が、こういう風に動いて来たら、うちにとっては、降って湧いた災難のようなものだ。」

「この国が拡大してきたら、うちらは一溜りも無い。完全に飲み込まれてしまうぞ。」

「この国がガブガブ食べてしまうから、地球上の資源は枯渇し、うちらに回って来なくなる。」

「この国は、そもそも、ずっと昔から、いつもうちらを虎視眈々と狙って来た。いよいよ、その正体が見えて来たぞ。」

「こちらが親切心から、これまで、こんなに援助をして来たのに、相手はちっとも感謝していない。それどころか、もっとよこせと言っている。全くずうずうしいよ。あきれるぜ。」

とばかり言い合っていても、対象は却って遠くかすんでしまい、その実像が見えにくくなってしまうと思うのです。

 

    勿論、人は、国は、民族は、皆自分が可愛い訳ですから、上記のような問題意識を持ったり、それを出発点とすることは、なんら不自然ではないでしょう。いや、それどころか、どこの国にしても民族にしても、自分達のことを考えるのに必死なのが現実でしょう。その意味においては、上記のような問題意識を根底に据え彼我の関係を直視して行くというのは、誰にも許された、他人にとやかく言われなくとも良い正当な権利と言えます。 

  ですが、そういった観点に立ったとしても、昨今の列島と大陸双方の日中関係論の論じられ方には、首を傾げたくなります。かなり結論先行型に陥っていないでしょうか?問題意識が先行する余りか、物事の実像に辿り付くという地道な作業をする前に、既に「つまるところ、・・・・なのだ」といった結論が大きく叫ばれてしまっていないでしょうか?そう感じるのは私だけでしょうか? 

   例えば、或る日本の雑誌は、国際問題を論じると言いながら、その半分以上を「中国は・・・・」というテーマに紙面を割いています。まるで、「国際問題の癌である中国問題さえ片付けば、あとは天下泰平なり」と言わんばかりの口調に終始しています。また、詳しく中身を読むまでも無く、その論旨は大方想像が付くといった具合に、「結論ありき」となっているのです。 

   逆も真なり。「この世界から、日本さえ消えてなくなれば、天下泰平」と言わんばかりの中国インターネットの書き込みを見れば、まさに同じような現象が東シナ海を挟んだ両地域で起きていると言わざるを得ません。 

   私は、このような謂わば、言葉と言葉の応酬、過剰な自己意識をめぐる堂々巡り、マンネリ化、手詰まり状況、を打破するためには、お互いを、お互いの「境遇」を、出来る限り自分に引き付けずに凝視するという作業を今こそ惜しんではならないと考えます。つまり、人のことはいざ知らず、日本として、日本民族として、日本人としては、本当の事を知りたいと思うなら、先ず「中国と中国人を、日本列島の彼方から見ているのではなく、大陸に足を踏み入れ、中国を内側から見ること」をしないと、状況打破は不可能だと思うのです。そうしなければ、我々は何か大事なことを見落としてしまうに違いありません。

    実は、なぜ私がこのような考え方をするに至ったかは、最近中国人が主として中国人向けに書いた書物を読んだことに起因しています。それらは、「マオ」「中国農民調査」「百年功罪」です。

 

  「マオ」と「中国農民調査」は、現代における中国人の「境遇」をこれでもかこれでもかと圧倒的なリアリズムで描き切っており、読む者を、自分が日本列島に身を置いていることを忘れさせ、いきなり中国世界の只中へと投げ入れます。中国という国にとって、ロシアという国がどれほどの存在感を持っているのか、中国農民がいかに都市からは隔絶されたところにいるのか等等、いくら中国社会や中国ビジネスに精通した者であっても、外国人には、それを、こういう形で我々の前に提示することは到底不可能です。

 

    一方、「百年功罪」(趙無眠、明鏡出版社、繁体字中国語)には、「こういう考え方をする中国人もいるのか!!!」と目を見張るような興味深いものの見方、歴史観が書かれています。その極く一端を紹介しますと、著者は、

 

 「先の日中戦争で、日本が中国統治に失敗したことによって、中国は、日本を中国の一部とするチャンスを失った。」 

 というようなことを述べています。

 

    これを、「日本は中国に飲み込まれてしまう」といった昨今の日本における問題意識と比べる時、実に味わい深いものがあります。是非、中国語の勉強も兼ねて読んでみていただきたいと思います。

 

   以上、前口上が思いの外に長くなってしまいましたが、今回は、数回にわたり、上述の「内から中国を見てみる」の一つの試みとして、『日系企業社員の告発状』を読んで見たいと思います。

 

(2005年3月記・2,148字)

心弦社代表 田中則明

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