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巨大空港建設に向けて~上海浦東国際空港の全貌~

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2006年3月28日

<上海経済>

巨大空港の建設に向けて
〜浦東国際空港の全貌〜

藤田 康介

 海外から上海にやってくる人の窓口となっている浦東国際空港。年間のべ2357.51万人が利用し、1562便の飛行機が離発着する空港だが、開設して6年余り、大きな事故もなく運営が続けられている。上海の経済発展に伴い、浦東国際空港を離発着する便は増える一方で、明らかに手狭になっており、ダイヤへの影響も出始めているぐらいだ。


■中国の3つの中核空港の一つとして 

 中国民航総局では、2020年までに中国に3つの国際的に中核となる空港の建設を目指している。この3つの空港とは、北京・上海・広州のことで、国際的にもトランジットが可能な規模の空港を作り上げたいと意気込んでいる。日本でも、関西国際空港が作られた当時、「ハブ空港」という言葉がマスコミにもよく登場したが、中国でも国際的にもハブとしての機能を果たす空港を持ちたいというわけだ。「ハブ」という言葉は時代遅れの気もするが、中国ならではの事情があることも検討されている。 

 浦東国際空港の周りには、アジア各国の巨大空港がひしめき合っている。シンガポールやタイ、韓国、そして日本と多くの飛行機は中国を出発してもそれらの空港を経由して目的地に飛ぶ場合が多い。たとえば、上海からアメリカへ飛ぶノースウエスト便も、現在の状況では、成田に一旦おりてから目的地に向かっている。データーによれば、現在浦東国際空港を乗り換え用の空港として利用している人は、全体の5%に過ぎず、目標とする3040%からすればほど遠い。さらに、最近では日本の中部国際空港のように上海周辺で最新式の国際空港がどんどんと整備され、上海浦東国際空港でも黙ってみているわけにはいけないという焦りもある。 

 そのためには空港施設の整備が欠かせない。ただでさえ混雑で人も飛行機もごった返している状態では、とてもトランジットに使えるような空港とはいえず、そこで2008年共用を目標に、第2ターミナルをはじめとする浦東国際空港の第2期工事が急ピッチで進められている。 

2008年は北京オリンピックが開催される年であり、さらに2010年には上海万博も開催される。最近では、浦東国際空港から杭州へ抜けるリニア線の建設も決まった。長江デルタ地区だけでなく、中国全国における浦東国際空港の重要性も年々増してきているのは明らかだ。


■浦東国際空港第2期工事の全貌 

 浦東国際空港ターミナルの北側を見ると、すでに大きなターミナルの建設が始まっている。これが、浦東国際空港の第2ターミナル(T2)だ。このほか、第2期工事では、3本目の滑走路と、西区の貨物物流ターミナル、さらにそれに伴う施設を建設する。

 第2ターミナルの建築物のモチーフは、カモメが飛び立つような姿。実は、これにもエピソードがあり、第1期ではカモメが今にも飛び出そうとする様子をモチーフとし、第2期では飛びだったカモメの姿をモチーフにしているといわれている。

すでに2003年には浦東国際空港第2期建設のプロジェクト計画がはじめられていて、世界20カ国の設計から入札がおこなわれた。その結果、現代集団華東設計院が落札した。中国国内では、初めての国内の設計会社による大型空港としても注目される。外観の予想図を見る限り、現在ある1期ターミナルとほぼ似ているが、第2期では天井にさらにウエーブがかかり、より曲線美が強調されたものとなっている。 

浦東国際空港の第1期工事、第2期工事の比較

 

1期工事

2期工事

設計目標

2005

2015

計画利用者数

のべ2000万人/年

のべ6000万人/年

貨物取扱い量

75万トン/年

420万トン/年

離発着数

12.6万便/年

49万便/年

敷地面積

32平方キロメートル

45万平方キロメートル

滑走路本数

1本(4Eクラス)

2本(4Fクラス、A380型機対応)

駐機数

104

205

ターミナルビル面積

28万平方メートル

48万平方メートル

ウイング部分長さ

1374メートル

1404メートル

搭乗口数

28箇所

42箇所

貨物エリア

22.2万平方メートル

55万平方メートル

 

 2008年に第2期ターミナルが完成すると、浦東国際空港では現在の利用客の2倍にあたる年間のべ4000万人が利用するものと計画されている。1日の利用客にすれば10万人を越えるわけで、その規模がいかに大きいか分かる。ちなみに、現在の日本の成田空港の利用客で年間約3000万人なので、人口比率からすれば、浦東国際空港の利用客がもっと増えることは想像に難くない。

 国内線乗り換えに関しても、利便性が図られている。これは、今まで国内線到着と出発はそれぞれ別の階で行われていたのを、同じ階に集約し、乗り換えによる階段の乗り降りを極力減らした設計になっている。

 浦東国際空港の最終完成案は、さらに第3ターミナルも建設し、滑走路5本に衛星ターミナルを建設するというもの。衛星ターミナルとは、3つの中心となる空港ターミナルに付帯したターミナルで、空港内を走る列車が乗客をターミナルに運ぶ仕組み。第2期工事では、これら交通アクセスのための準備設備が建設されている。 

 浦東国際空港の整備が進むにつれて、中国の民航各社も続々と浦東国際空港に自社の基地を設置する動きを見せている。上海で主力となっている東方航空をはじめ、上海航空、南方航空、中国国際航空なども上海における基地の拡大を表明している。中国民航総局も上海の空港整備に対して、200億元の建設資金のうち、数億元の投資を計画している。


    環境にやさしい空港 

最終的には滑走路5本となる計画の浦東国際空港。そのためには、騒音問題などもクリアできなければならない。さらに用地の確保の問題もあり、5本目の滑走路はさらに東に伸ばされて、海上に建設されることになる。現在ある第2滑走路部分も、海上を埋め立てられた。

また、新しいターミナルに関しては、トイレや緑化用の植物の水に、雨水を使ったシステムが研究されている。また、浦東国際空港の周りには、長さ32キロにわたって河の流れがあり、これらの水を再利用可能な程度の水質にまで浄化し、トイレなどの水に使うことも検討されている。


    浦東国際空港に設置される5つのセンター

 20062月に入って、上海机場集団では今後大きな発展が見込まれる浦東国際空港に、航空交通関連の5つのセンターを設置する方針を明らかにした。巨大化する航空管制システムを有効に管理するために、香港や韓国仁川空港などの経験を研究した成果として導入されることになる。この5つのセンターとは、空港運行管理センター、空港ターミナル管理センター、交通管理センター、市政施設管理センター、公安指揮センターを指し、浦東国際空港の日々の管理に欠かせない業務を行うことになる。


    交通アクセスの充実

 

   現在の浦東国際空港の問題点の一つとして挙げられるのが、交通アクセスの不便さだ。それを解消するために、リニア線と地下鉄2号線延長線が第1期ターミナルと第2期ターミナルの間に建築された交通センターに乗り入れる。階上部が出発ロビー、階下部が到着ロビーという構造は同じ。現在、リニアを利用するにも一旦エレベーターに乗らなければいけないが、将来はゆるい傾斜のエスカレーターで結ばれ、まず交通センターロビーにでる。その後、ロビーからそれぞれ地下駐車場、地下鉄、リニア、リムジンバス、タクシーへとアプローチされる。地下鉄2号線は中山公園〜虹橋空港までの延長線が、2006年度中に完成することが明らかにされており、浦東国際空港までつながれば、虹橋空港〜浦東国際空港のアクセスが改善される。さらに、浦東南部地区の住宅開発など付加価値は非常に大きい。リニアに関しても、竜陽路駅からさらに万博エリア、杭州へと延長されることが決まったことも記憶に新しい。 

 地下鉄以外にも、現在建設が行われている浦東鉄道が空港へアプローチする計画も出ている。これが実現すれば、空港をでてすぐに、上海近郊の都市へ鉄道でアクセスできる。浦東鉄道に関しては、洋山港開発プロジェクトに合わせて、2005年に一部が整備完了している。


    最近の動向 

現在、浦東国際空港の第3滑走路の建設が全面的に行われている。第3滑走路の長さは3800メートル。計画では、20069月までに基礎工事を終え、10月には路面の舗装と、照明設備の設置が行われる。もちろん、第3滑走路は、次世代超大型旅客機A380が離発着できる現段階での最高基準を満たしている。

一方で、ターミナルに関しては、長さ1404メートルのターミナルビルの骨組みは20066月に完成し、長さ414メートルあるターミナル中心部の骨組みは20069月に完成する予定だ。いずれもほぼ順調に工事が進んでいるようで、骨組みも見えてきた。


    長江デルタ地区における空港の主導権争い 

浦東国際空港の拡張と、虹橋空港の整備は、必然的に長江デルタ地区の空港に大きな影響をもたらす。とくに、大きな影響が見られるのが杭州の蕭山国際空港と南京の禄口空港だ。そのため、各空港では近隣の地区への働きかけが盛んだ。そのターゲットとなっているのが蘇州だ。長江デルタ地区のIT企業が集まっている蘇州は、貨物の輸送も含めて、大きなマーケットに成長しているほか、年間100万人の海外旅行客が訪れる観光地としても不動の地位を築いている。しかし、蘇州市政府は今後5年間、蘇州に空港を建設しないことを表明しており、蘇州周辺の市では利用客の獲得に動き出している。

その代表選手が杭州だ。蘇州から上海浦東国際空港まで2時間半かかるが、杭州の蕭山国際空港なら2時間足らずでアクセスでき、この利便性を強調している。その証拠に、2004年に蕭山国際空港から蘇州を結ぶリムジンバスも運行された。

南京も負けじと、20056月にはシンガポール航空や香港のドラゴンエア、韓国のアシアナ航空など5社と手を結び、マーケットの開拓に力を入れる。今後、浦東国際空港の発展を機に、大きく成長したい長江デルタ地区の思惑が交錯する。 


    最後に

上海市は、中国における4つの中心プロジェクト推進に力を入れている。この4つの中心とは「国際経済・金融・貿易・航運の中心」のことで、その中でも2005年にはすでに海洋運輸の中心として洋山港を開港させている。そしてアジアの空港での主導権を握ることを目標としている。国内線中心の虹橋国際空港も合わせると、2015年にはあわせて1億人の利用客と、年間700万トンの貨物取扱量を見込んでいる。上海の経済が、このまま順調に進むことが必須だが、現在の勢いで行くと、達成も不可能ではなさそうだ。浦東国際空港は、上海市の重点プロジェクトだけに、今後の動きを注視していきたい。


浦東国際空港建設のためのタイムスケジュール

1. 準備段階(2005年〜2007年) まずは、上海市の航空需要に相当する空港設備の充実を図る。各地区へのネットワークを充実させ、旅客だけでなく貨物における国際的地位を高める。虹橋空港と浦東国際空港あわせて年間のべ4900万人、貨物取扱量250万トンを目指す。

2.  上海がハブ空港としての機能を果たす段階(2008年〜2010年) 期間中、北京オリンピック、上海万博など、国際的イベントが目白押しだが、この時期にまず上海がアジアで最大の貨物センターとなることを目指す。浦東国際空港の拡張工事はほぼ完了するほか、虹橋総合交通枢軸構想と虹橋空港拡張プロジェクトも完成し、2つの空港でのべ8400万人、貨物取扱量410万トンを目指す。

3.  ハブ空港としての地位を確立する段階(2011年〜2015年) 2段階目で確立された上海の地位をさらに成熟したものとし、旅客・貨物ともにアジアでトップクラスの空港を目指す。年間輸送量はのべ1億人を想定し、そのうち虹橋空港が3000万人、浦東空港が7000万人、貨物取扱量700万トン以上が目標。


(06年3月記・4,561字)
上海エクスプローラー
中国ビジネス解説編集委員

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