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ログイン2006年4月17日
チャイナ・インフォメーション21
昨年から10回にわたり「恥をかかないための中国ビジネス講座」と銘打って、中国ビジネスで「はずす」ことのできない重要かつ基本的な事項について体系的に整理し連載してきた。今回はシリーズ最終回として、最近目に触れる機会のあった中国進出のウルトラC戦術の事例をいくつかご紹介して、本講座を終了ということにしたい。
いずれのケースも企業のプライバシー保護のため、社名を伏せ、業種、あるいは進出場所等を実際とは変えてある。
1.中国から日本へ再投資する
ある建設資材メーカーA社は、江蘇省に1億円の資本金で、建築用内装材の製造工場を設立した。中国の木材、石材あるいは樹脂成型メーカーから調達した資材を工場で加工して建築内装材を製造し、日本や米国向けに輸出せんとする計画である。
A社は資材調達のために、戦略的に現地の資材商社と合弁形態で工場を設立した。ここまでは珍しくない話であるが、A社はさらに、合弁会社の海外現地法人を設立させたのである。その海外進出先とは日本であり、業種は商社、場所はA社の本社内であった。資本金は8千万円である。
一見、奇妙に見える戦術であるが、その狙いは幾つかある。
ひとつは、出資金1億円の8割を日本に合法的にバックさせたことである。法人格は別会社としても、同じ企業グループ内で、中国に払い込んだ資本金の大半を日本に逆流させることに成功した。中国国内で再投資する場合は、いろいろな制限があるが、海外投資については特に明文化された規制がまだ存在しない。合弁パートナーの力を借りて、海外再投資に成功したのである。
もうひとつは、中国合弁会社の製品、あるいは中国内で購買した他社製品を商社経由せずに、みずからのルートで日本に直輸入することができるようになった点である。これは合弁会社の外貨バランス問題を解決するだけでなく、新しい商流を作り出すことで、大幅なコストダウンとなった。中国合弁会社の現地法人がA社内にできたことで、人的交流、情報交流がスムースに進んでいる。さらに、日本の入国管理法では外国人労働者を呼ぶことには多くの条件をクリアーしなければならないが、「日本での企業経営」、「中国子会社の社員」というステイタスであれば、比較的容易に日本での就労ビザを取得することもできるのである。
2.日本で合弁して中国に進出する
これはA社の逆パターンの話である。B社では、中国商社と合弁でまず日本に現地法人を設立し、その合弁会社をさらに中国進出させた。その第一の狙いは、販路の相互利用にある。
中国パートナーから見れば、日本への進出は、当社製品を日本に売り込むチャンスである。中国商社が日本市場で単独に販路を構築することは至難のわざであるが、日本企業との日本合弁会社があれば、中国から直輸入してB社の日本販売ルートに乗せることができる。同時にB社も日本合弁会社を通じて日本ブランド製品あるいは材料、半製品を中国に輸出して、中国内でパートナーの中国販売ルートに乗せることも可能になるのである。
これは単独で中国に商業有限公司を設立して独自で販路開拓するよりも、はるかに実効性のある中国市場開拓戦略ではないかと思われる。
3.中国企業(人)の日本資産を担保にとる
B社戦略の重要なポイントはもうひとつ別のところにもあった。
それは、中国で販売活動を展開するにあたって、この方法によれば、日本国内に確実な担保保証を取得できることである。中国国内では担保法により、国有企業や公的組織は外国向けの担保保証の差し入れが原則として禁止されている。民間企業で担保保証契約が締結できたとしても、その場所が中国であれば、たとえ勝訴できたとしても強制執行には困難が伴うことが予想される。
要は中国バートナーが日本に投資した資金、資産をB社は日本国内で、日本法のもとに担保設定したのである。これはB社が日本合弁会社と結ぶ輸出販売、代理店契約に伴う担保、保証というかたちになるが、これはあくまでどちらも日本法人であり、日本法の下に、日本国内資産に対して設定される、ごく普通の担保保証契約である。
日本で担保をとる方法は、必ずしも会社資産でなければならない必要はない。たとえば、中国人個人が日本の不動産を購入し、日本人がその資産管理を請け負いながら、そこに商取引の担保(抵当権)を設定する方法も可能である。あるいは中国人個人が日本の銀行に開設した非居住者預金を担保として差し入れさせる方法(預金担保)も可能である。中国国内では個人資産を保有することが難しくても、日本であれば資産保有は自由になる。中国人・企業にとってもメリットのある方法と思われる。
4.駐在員事務所に中国人個人商社を抱え込む
これも中国国内販売の裏技ウルトラCのひとつである。日本の乙仲業者では、通関士資格を持つ個人を雇用して、会社として通関業務を営む例が一般的である。同様の方法として薬局と薬剤師、建設会社と一級建築士、不動産会社と不動産鑑定士などがある。これと同じ発想でC社では、上海駐在員事務所に貿易権と通関士を持つ中国人個人を雇用し、彼個人の資格をもって事務所内で彼個人のライセンスで通関と貿易業務を営んでいる。もちろんこれは事務所名ではなく、彼個人名での営業である。
現在、外商投資企業が中国内の一般地域で完全な外国貿易権、国内卸売権、小売権を取得するためには商業有限公司設立の認可を取得しなければならない。しかし、このように中国人の個人貿易商を事務所内に取り込むことで、実質的な外国貿易と販売活動ができてしまうのである。
もちろん、この方法は一種の名義借り商売であり、大きな経営リスクが伴う。しかし、上に説明したような何らかの確実な担保、保証が設定できれば、現実的に可能な方法になるのである。駐在員事務所でなくとも、通常のメーカー工場でも同様の対処は可能である。
5.生産型企業ライセンスで国内販売する
拙著「中国ビジネスの超成功戦術252」(明日香出版)等でもご紹介した手法であるが、まず許認可のとりやすい生産性企業(製造業)として法人設立認可を取得する。その一方で、設備投資は借り工場として、生産規模は最低規模と身軽にし、事実上は現地ベンダーの下請企業にOEM外注生産(いわゆる承包)する方式である。支給材料は無償とし、加工賃を支払って完成製品を引き取る方式であれば、製造業種の「自社製品」として売上計上し、増値税発票を使用することも認められる。なかにはOEM承包工場に自社の看板掲示を認めている企業すらある。
「自社製品」であれば、中国内での販売も自由である。このやり方で、工場内に大きな販売営業部門を置き、事実上、中国市場における顧客化委託、開発、受注打ち合わせ、販売活動に主力を置く「メーカー」も存在する。
(2006年4月記・2,726字)
チャイナ・インフォメーション21
代表 筧武雄
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