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ログイン2018年1月16日
現在、「中華人民共和国輸出管制法※」の作成が進められています。現時点では、草案段階であるため、施行の影響を予測する事は困難ですが、内容によっては、日系企業にも大きな影響を与える可能性があります。
ここでは、2017年6月に中国商務部条約法律司が公開した草案に基づいて、同法の内容を解説します。
※中華人民共和国輸出管制法とは、両用物質、軍用品、核、及びその他国家安全に関連する貨物、技術等の輸出を管理する、「生物両用品及び関連設備と技術の輸出官制条例」、「軍用品輸出管理条例」、「核両用品及び関連技術輸出官制条例」、「両用物質と技術輸出入許可証管理弁法」といった複数の法令を整理し、一つにまとめた法律となります。
1.適用範囲
輸出管制法は、国家が両用物質、軍用品、核、及びその他国家安全に関連する貨物、技術、役務など(以下、管理項目)に対して行う輸出管理に適用されます。
ここでいう輸出管理とは、中国国内から国外への管理項目の移転や、中国公民、法人及びその他の組織が外国の公民、法人及びその他の組織に対し行う管理項目の提供に対して、国が禁止または制限の措置を採ることを指します。
各管理項目の定義は以下の通り規定されています。
両用物質とは、民用であると同時に軍用または軍事力を向上させるものであり、特に大量破壊兵器の設計、開発、生産または使用に用いられる貨物、技術及び役務などを指します。
軍用品とは、軍事目的である装備、専用生産設備及びその他の物資、技術と関連役務を指します。
核とは、関連する核材料、核設備と原子炉用非核材料及び関連の技術と役務を指します。
このように、モノだけでなく、技術や役務も対象となります。
2.輸出管制法(草案)の懸念点
輸出官制法の立法趣旨は、国家の利益を守り、核兵器不拡散条約などの国際条約の義務を履行するための輸出官制の強化とされていますが、その規制対象となり得る製品や技術の範囲が広いため、同法施行による影響は多くの企業に及ぶものと指摘されています。
また草案のなかには、下記の見なし輸出規制や再輸出規制といった、場合によっては既存の取引スキームに大きな影響を与え得る条項もあり、これらが一体どのように運用されるのか懸念されています。
(1)見なし輸出規制
草案の第3条では、「本法でいう輸出管理とは、中国国内より国外への管理項目の移転と、中華人民共和国公民、法人及びその他の組織が外国公民、法人及びその他の組織へ管理項目を提供する行為に対して、国家が禁止或いは制限の措置を採ることを指す」と規定されています。
この内容は、中国国内の外国人や外国法人(外資企業など)への管理項目の提供についても規制対象になると読み取ることができ、国を跨ぐ取引に限らず、例えば社内における従業員間(中国人スタッフから外国人スタッフへ)や外資企業などへの管理項目の提供についても規制の対象とされる可能性があります。
なお、この第3条に限らず、他の条項の解釈についても、輸出管制法やその細則の公布を待って判断する必要があります。
(2)再輸出規制
草案の第64条には、「管理項目または中華人民共和国の管理項目を含む価値が一定の比率に達した外国製品を、国外からその他の国家(地区)へ輸出する場合、本法を適用する。この価値の比率と管理方法については、国務院または中央軍事委員会により別途規定する」と規定されており、これは再輸出に対する規制となります。
具体的には、外国にて中国から管理項目を輸入し、これを再輸出する場合も中国政府の許可が必要となります。また、中国の管理項目の含有価値が一定の比率に達した製品を、中国以外の国から輸出する場合も同様に中国政府の許可が必要となります。
この再輸出規制により、これまで必要なかった規制対象品の含有率の計算や、輸出許可手続きなどが生じる可能性がありますので、これに適合した商品を扱う企業にとって、負担が生じる懸念があります。
(3)エンドユーザー、最終用途に対するリスク評価
中国政府により、輸出業者が申告するエンドユーザー、最終用途に対しリスク評価が行われること、その方法として、状況によっては人員を現地に派遣して実地検査することが規定されています。
実地検査を法律で定めるのは、そもそも主権の域外適用にあたるという指摘もあり、最終的にどのような内容で公布・運用されるのか見守る必要があります。
この様に、草案の内容には、これまでの通常の投資や取引に対する阻害要因と解釈し得る内容が含まれているため、日本の主要経済団体からも、内容の再検討や時間的に余裕を持った規制導入などの意見が提出されています。
但し、現時点では、あくまでも草案の段階で、正式公布がどの様な内容になるか、また実務運用がどの様に行われるかについては不透明な状況ですので、引き続き確認の上、情報配信を致します。
以上
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