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日中社会保障協定の実質合意の影響について

中国ビジネスレポート 労務・人材
Mizuno Consultancy Holdings Ltd.

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2018年2月19日

日中両政府による8回の交渉を経て、2017年10月、両国間の社会保障協定が実質合意に至りました。これにより、今後協定が正式に締結されれば、それぞれの国の企業等から相手国に一時的に派遣される駐在員等の社会保険料の負担が軽減されることになります。

1.外国人の社会保険納付義務

2011年10月15日に施行された、「中国国内で就業する外国人の社会保険加入に係る暫定弁法(人力資源・社会保障部令2011年第16号)※以下、16号暫定弁法」により、中国国内で就業する外国人は、出向社員・現地採用社員を問わず、原則として社会保険の納付が義務付けられました。
ドイツや韓国など中国との社会保障協定が締結されている場合はこの限りではありませんが、日本については同協定が未締結のため、社会保険料を日本と中国で二重に支払うという弊害が生じています。
なお、現時点で日本と協定を有する国は、ドイツ・イギリス・韓国・アメリカ・ベルギー・フランス・カナダ・オーストラリア・オランダ・チェコ・スペイン・アイルランド・ブラジル・スイス・ハンガリー・インド・ルクセンブルクがありますが、協定ごとに免除される制度が異るので注意が必要です。

16号暫定弁法では、「外国人就業証」、「外国人専家証」、「外国常駐記者証」などの就業証明と外国人居留許可証、或いは「外国人永久居留証」を取得している非中国籍人員が中国国内で就業する場合、「基本養老保険、基本医療保険、労災保険、失業保険、生育保険」に加入する必要があると規定されています(第2条、3条)。
このような加入対象となる外国人を採用した雇用単位は、就業許可手続から30日以内に社会保険登録を行わなければなりません。また、国外雇用者が派遣し、国内単位で就業する外国人についても同様に、国内就業単位が社会保険登録を行わなければなりません(第4条)。
尚、地域によって16号暫定弁法の運用状況は異なっており、北京市や広州市などの地域では社会保険料の納付が強制されているものの、上海市などでは社会保険付保の要否を雇用契約で定めることが認められており、現時点では外国人の社会保険付保は強制ではありません。

2.日中社会保障協定の実質合意の内容

2011年10月、日中両政府間にて社会保障協定の締結について協議が始まり、2017年10月の第8回政府間交渉にて実質合意に至りました。
中国商務部のウェブサイトの記載によると、その内容は、任期が5年未満の駐在人員については派遣先での社会保険料の納付は不要で、本国の社会保険制度のみ適用して納付すればよく、任期が5年を超える場合は原則派遣先の社保制度にしたがって保険料を納付するというものです。

日本年金機構の社会保障協定に関する解説によると、一時派遣とは、原則として「派遣期間が5年以内と見込まれること」とされています。この「5年」という期間は日を単位として計算し(日独協定では暦のうえでの月を単位とする)、例えば、2005年10月15日に派遣された人の場合、2010年10月14日で5年が経過したことになります。
恐らく日中社保協定についてもこのルールで計算することになる可能性が大きいと推測されますが、詳細については2018年内といわれる正式な協定締結を待つ必要があります。
また、中国は複数の国と既に協定を結んでいますが、例えばドイツとの協定では中国の法定養老保険と失業保険の加入義務免除が定められていますが、韓国との協定では養老保険のみが規定されています。このように各協定の内容は異なるため、日本との協定では養老保険の他に何が免除対象となるのか、現時点では不明です。

3.待ち望まれる協定の正式な締結と発効

中国社会保険法の第16条では、養老保険の受給資格として15年の納付実績が規定されています。仮にこの年数未満で帰国した場合、本人による書面申請に基づき、社会保険管理機構は当該個人口座の残高を一括して本人に支払うことができると規定されているものの(16号暫定弁法第5条)、会社が納めた保険料は還付されませんし、またこれらの実務手続が地域によってはスムーズに行われるかも懸念されます。
更に、医療保険は病院が指定されていることや、出向社員の場合は失業保険の付保を受ける機会が少ないといった状況もあり、保険そのものを十分に活用できないと考えられます。
このように、外国人が社会保険制度に加入しなければならないといった状況は、企業、従業員に大きな負担を強いていますので、今回合意に至った日中社会保障協定の正式な締結が待ち望まれます。

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