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ログイン2006年5月30日
<投資環境>
保税区企業の区外出張所・分公司と外高橋保税区の動き
1.執行意見の発表による事態の調整 以前のレポート(外商投資企業の常駐代表所開設禁止の動きと保税区企業の対応)で解説した通り、今年早々から、外商投資企業(外国企業が中国内に設立した現地法人)の中国内出張所(弁事機構)の開設、営業許可の更新が認められない状況が全国的に生じていました。 但し、開設登記が認められない理由が明確でなく、「登記手続が不要になったのか(この場合、営業許可期限が切れても合法的に存在できる)」、「出張所の開設自体が認められなくなったのか(この場合、営業許可期限が切れたら閉鎖しなくてはならない)」が判断できない為、対応が取れない状況となっていました。 この状況を調整すべく、5月10日に「外商投資投資企業関連審査登記管理法規適用における若干の問題に関する執行意見(国家工商行政管理局・商務部・税関総署・外貨管理局)、以下、執行意見」が発表されました。 「執行意見」には、本件の問題に関して、以下の通りの記載がされています。
<執行意見の該当部分> 登記機関が、外商投資企業の出張所(弁事機構)の登記を受理しない事が、大きな関心を集めている。 国家工商行政管理局の関係者は、以下の通り表明している。 わが国の法律は、出張所の開設を禁止していない。 今回の動き(出張所登記を受理しない)は、実際には、外資企業が営業活動を行わない出張所の開設を、より簡便にするものである。既存の出張所は、今後も継続できるし、営業活動を行う分公司に転換(新規開設)する事もできる。 会社登記機構は、出張所が営業活動に従事する事を防止する為に、一層、監督管理を強化しなくてはならない。
2.今後の外資企業の対応 上記執行意見の内容を要約すると、以下の通りです。 ● 中国の法律は、外商投資企業が、中国内に出張所(弁事機構)を解説することを禁止していおらず、既存の出張所は、継続する事ができる。 ● 外資企業の出張所は工商登記を必要としない。 ● 出張所は営業に従事する事が禁止されている。 会社登記機関は、出張所が営業行為を行う事に対して、管理を強化する。
結果として、外資企業の出張所は、営業許可期限が切れた状況でも、合法的に存続できますし、新規の出張所は無登記で開設する事ができます。 保税区企業の区外出張所に関しても、同様と考えてよいでしょう。 勿論、出張所は営業行為を行わない事が大前提であり、執行意見では、この管理を徹底させる事が改めて呼びかけられました。 よって、当該出張所が営業活動を希望する場合は、分公司への組織変更が必要となります。
3.保税区企業の対応 以上の通り、「外資企業の出張所は開設登記が不要である事」。 更には、「営業活動を希望する場合は、出張所を分公司に転換する事」が呼びかけられた為、通常の(保税区企業以外の)外資企業は、この方針に基づいて対応を行う事となるでしょう。 では、保税区企業はどうすればよいのでしょうか。 現在、保税区企業の大部分が貿易会社であり、保税区貿易会社の大部分は、区外に出張所(弁事機構)を有しています。 現時点で、保税区企業の区外分枝機構を認める法的根拠は有りません(区外出張所の開設を認める通知「工商企字[2001]第363号」が、現時点で失効となっている為)が、「執行意見」により、外資企業の出張所は、登記無しで開設できる事が明確になりました。 これに基づけば、営業許可の期限が切れ、工商登記の無い区外出張所でも、合法的に存続できる事となります。 但し、同執行意見は、出張所が営業活動に従事する事を改めて禁止しており、今後、管理監督を強化する方針を打ち出しています。 現在、保税区貿易会社の区外出張所が行っている活動の実態は、多くの場合、営業活動そのものですので、今後、これに対する規制強化が図られると予想されます。 2004年6月1日に、外商投資商業領域管理弁法(8号令)が施行されるまでは、外資商業企業の設立は、極めて困難であり、多くの企業が、便宜的に、保税区に貿易会社を設立し、販売活動を展開してきました。 この活動は、極めて変則的ですが、これを禁止すると、甚大な影響が生じる為、政府機関としても、(現実問題として)規制を行いにくい状況で、いわば黙認されてきた訳です。 然しながら、現時点では、外資商業企業の設立認可が進おり、(8号令に基づく)国内販売権を取得していない保税区の貿易会社の国内取引や、区外出張所を通じての営業行為を規制しても、それから生じる影響は相対的に小さくなってきています。 今回の動きは、その様な背景を踏まえたものではないかと筆者は推測しています。
出張所の営業行為を禁止する動きが強化されれば、以下の対応を行う事を余儀なくされます。 ● 現存の保税区貿易会社を閉鎖して、一般区の商業企業を設立する。 若しくは、 ● 現存の保税区貿易会社が国内流通権を取得した上で、区外分公司を開設する(但し、現時点では、これを認める規定が公布されておらず、対応の可否が明確ではない)。
勿論、この様な動きが一斉に生じれば、保税区の税収減につながり、保税区の存続自体に深刻な状況が生じます。 よって、それなりに慎重な対応が行われるとは思われますが、何れにしても、中長期的に見れば、保税区企業の活動を、あるべき論に修正する動きが生じる事は十分予想されます。 今回の動きは、将来的な規制(保税区企業の区外出張所を活用した営業活動の一斉規制)の予告の意味合いを持つのではないかと筆者は考えています。 今の内に、上記の2つの選択肢を検討、実行に移す必要があると言えるでしょう。
4.その高橋保税区の動き 執行意見の公布を踏まえて、上海外高橋保税区で、「外高橋保税区企業の工商管理における若干の問題に関する通知(上海市外高橋保税区管理委員会経貿処・浦東新区工商局外高橋保税区分局)」が、5月15日に公布されました。 これは、あくまでも地方通達であり、全国的に適用されるものではありませんが、過去の歴史を見ると、外高橋保税区の動きが、他地域に影響を及ぼす事例が多く、その意味でも、当該通知の施行状況は注目に値します。
通知の内容は、以下の通りです。 ● 4月14日の上海市工商局の発表に基づき、浦東新区の工商局の登記管理権限が拡大されている。この一環として、外国企業の在中常駐代表所、研究開発センター、及び、商務部・市外資委が審査した非制限類外資企業の登記権限は、浦東新区工商局に移管された。 外高橋保税区に登記する外資企業の登記手続は、権限に基づき、外高橋保税区工商分局が行う。 ● 外資企業の登記手続に関する根拠法は、「会社法」と「会社登記条例」であり、保税区企業が区外に本社(保税区企業)の経営範囲下の連絡業務を行う為に開設する出張所(弁事機構)には、今後、登記手続を行わない。 ● 既に、登記手続を行っている出張所に関しては、出張所の登記証(注冊証)期限満了後は、期限の延長は行わない。 (保税区)企業は、外高橋保税区工商分局に於いて、登記抹消手続を行わなくてはならない。それと共に、企業の類型に応じた経営内容の分公司を開設する事ができる。 即ち、保税区の貿易、流通企業は、8号令に基く国内流通権取得後、区外に、国内流通権を有する分公司を開設する事ができる。 保税区内で、生産、貨運代理、研究開発、コンサルティング等を行う企業は、区外に関連する(同様の)業務を行う分公司を開設する事ができる。 ● 「執行意見」の中にある、「外商投資企業の分公司は、会社の経営範囲内の、連絡・コンサルティング業務等に従事する事ができる」という規定に基づき、保税区内の設立され、国内流通権を取得していない保税区の貿易、流通企業に関しては、「本社(保税区企業)の経営範囲内の、連絡コンサルティング業務に従事する分公司を開設する事ができる。 今回の通知は、「保税区企業でも区外に分公司を開設できる事」、「8号令に基づき国内流通権を取得した保税区企業は、貿易・販売活動に従事する分公司を区外に開設できる事」が規定されています。 この通知を見て疑問に思う点は、以下の通りです。 (1) 国家規定に無い点(保税区企業が区外分公司を開設できると明記している点)がコミットされているが、その有効性は確かなのか。 (2) 当該通知は、外高橋保税区管理委員会と、浦東新区工商行政管理局外高橋保税区分局によって公布されているが、それ以外の所管地域の工商行政管理局が、本当に保税区企業の分公司登記を受け付けるのか。 (3) 生産型企業・倉庫企業等、実際の営業拠点を外高橋保税区に置いている企業を除けば、区外に分公司を開設すれば、(実質的な営業拠点は区外である為)納税も大部分が区外で行う事となる。この調整はどの様に行うのか。 本店所在地での合算課税が原則となるとしても、それを、区外分公司所管の税務局が認めるのか。 結局、現時点では上記の点が不透明である為、当該規定の有効性が確信できる状況には有りませんが、本当にこの通知の通りに話が進むのであれば、保税区企業にとっては朗報と言えます。 多くの保税区企業の区外出張所が、営業許可が切れかかっている(若しくは、既に切れている)状況であり、ステイタス確保の為にも、区外での何らかの登記が望まれる状況です。 その様な外高橋保税区企業にとっては、当該通知に基づいて分公司登記を取るのが、(少なくとも短期的には)最も有効な手段となるでしょう。 本件に付いては、今後の進捗状況を確認の上、改めて解説を行いたいと思います。
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