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傘型会社の規制改訂~国内流通権・貿易権の付与を始めとする規制緩和~

中国ビジネスレポート 投資環境
水野 真澄

水野 真澄

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2006年7月21日

 
 
 
<投資環境>
 

 

傘型会社の規制改訂
〜国内流通権・貿易権の付与を始めとする規制緩和〜

 

 

傘型会社関連規定は、頻繁に改訂が繰り返されていますが(前回の改定は、2004年末の商務部令[2004]22号)、今回、「外資投資性公司の設立に関する補足規定(商務部令[2006]3号)」が公布され、71日より再度改定が行われる事となりました。

 

今回の改定では、従来は、「外商投資商業領域管理弁法」に基づく個別の手続が必要であった、国内流通権・貿易権を、全ての傘型会社に付与する事を認める事を始めとして、各種の規制緩和が行なわれています。

 

施行後間が無い為、現時点では、筆者自身、条文の解釈に疑問が生じる点が有りますし、業務範囲を拡大するに当たっての手続が、現段階では不透明な点もあります。

 

よって、実務運用面の再調査を行いたいと考えていますが、先ずは、関連規定(第3号令)の内容と、規制緩和のポイントを解説します。

 

A.規制改訂のポイント

1.出資に関する規制改訂(22号令第7条の改訂)

● 新規定

外国出資者は、自由兌換可能通貨、中国国内において獲得した人民元利潤、或いは株式売却、清算等の活動により獲得した人民元の合法な収入により、傘型会社に対して資本金払込を行う事ができる。

中国出資者は人民元で、傘型会社に対して出資できる。

外国出資者が、その合法的な人民元収入により、傘型会社に対して出資する場合、外貨管理部門の発行した「国内人民元利潤、その他合法的人民元収入による再投資に関する資本項目外貨業務許可書等の関連証明文書と税務証憑」を提出しなければならない。

営業許可証の発行日より2年以内の出資金額はUS$ 3千万を下回ってはならず、登録資本金の残りの部分は営業許可証の発行日より5年間以内に完納しなければならない。

● 改訂前

外国出資者は、自由兌換可能通貨、中国国内において獲得した人民元利潤、或いは株式売却、清算等の活動により獲得した人民元の合法な収入により、傘型会社に対して資本金払込を行う事ができる。

外国出資者が、その合法的な人民元収入により、傘型会社に対して出資する場合、関連証憑及び税務証憑を提出しなくてはならない。

  資本金は、営業許可証発給より2年以内に払込を完了しなくてはならない。

● 改訂のポイント

  外国出資者が、傘型会社に対して人民元出資をする場合(特定の状況に限定される)の提出書類が、若干明確になっています。

  また、資本金払込期限が、従来の2年から、「US$ 3千万は2年以内。それを超える部分は5年以内」という形に延長されています。

  20061月から施行されている会社法でも、「通常の有限責任公司は2年以内、投資性公司は5年以内」の払込が要請されていますので、両者の規定は一致しています。

 

 

2.国外企業に対するサービス提供

 

● 規定の追加

  「投資性公司が、海外企業のサービス外注業務を引受けることを許可する」という規定が追加されています。

● ポイント

   従来は、傘型会社のサービス提供は、出資者・傘下会社等に限定されていましたが、海外企業(中国外企業)に関しては、この制限無く、サービス提供を行う事が認められました。

 

 

3.国内流通及び貿易業務

● 新規定(22号令第11条の改訂)

   投資性公司が貨物の輸出入、或いは技術の輸出入に従事する場合、商務部《対外貿易経営者備案登記弁法》に従わなくてはならない。

投資性公司が行う輸出は、規定に基づき輸出税金還付を申請することができる。

投資性公司は、コミッション代理(競売を除外する)、卸売り方式で、中国内においてその輸入した商品、及び国内で購入した商品を販売することができる。

特定商品の取扱、小売、特許経営方式の販売を行う場合は、関連規定に従わなくてはならない。

● 改訂前

   投資性公司が貨物の輸出入、或いは技術の輸出入に従事する場合、商務部《対外貿易経営者備案登記弁法》に従わなくてはならない。

   投資性公司が、コミッション代理、卸売、小売、特許経営方式の活動を行う場合、「外商投資商業領域管理弁法」の規定に従い、且つ、法に基づき適正な経営範囲の変更を行わなくてはならない。

● 改訂のポイント

   従来は、傘型会社が国内流通権を取得する場合には、「外商投資商業領域管理弁法」の規定に従って、経営範囲の追加を行う事が要請されていました。この手続を行わない場合、傘型会社が認められる流通業務は、傘下会社関連、及び、海外出資者関連に限定されていました。

   今後の運用状況の確認が必要ですが、この改訂内容のみから判断すれば、全ての傘型会社は国内流通権が自動的に付与されるものと理解されます。

   また、20047月の対外貿易法改訂により、国内流通権を取得した企業であれば、特定の手続(外貿流通経営者登録)のみで、貿易権が付与される事となっていますので、全ての傘型会社は、この手続を行えば、貿易権(外貿流通経営権)を取得する事が可能となりますし、増値税の輸出還付請求権が付与される事も明確に規定されています。

 

 

4.上場企業に対する出資

● 規定の追加

  「投資性公司が、国の関連規定に基づいて、上場会社に対して戦略的出資を行うことを許可する。この場合、投資性公司は株式有限会社の外国株主と見なされる」という規定が追加されています。

● ポイント

   従来は、傘型会社が出資できるのは、「外資企業(傘型会社の出資部分を含む外国投資が、25%以上となる企業)であり、且つ、傘型会社の出資比率が10%以上を占める企業」に限定されていました。

  今回の改定により、外国企業の出資が認められた、株式会社に対しての出資が認められた事となります。

 

 

5.傘下会社に対する準備的な試験販売

● 追加された規定

   22号令第15条の条件に合致する投資性公司は、その投資した企業(傘下会社)が運営を開始するまで、或いは傘下会社が新製品の生産を開始するまでの間、製品の市場開発を行う為に、関連商品を輸入して、国内において試験的販売を行うことができる。

又、国内のその他の企業(第三者企業)に委託して生産・加工した製品、或いはその親会社の製品を国内外において販売することができる。

● ポイント

22号第15条の条件に合致する傘型会社とは、「US$ 3千万以上の資本金が払い込まれ、それが、傘下会社に対する出資に使用されている会社」を指します。

この様な会社が、省レベルの商務主管部門の許可を受ければ、傘下企業稼動前の準備的な生産輸入、委託加工生産、及び、この様な製品の販売を行う事が認められます。

以前より、傘下企業稼動前に、海外の親会社製品(関連する製品)を輸入し、試験的に国内販売する事が認められていました。今回の改定により、この様な試験販売の対象に関する制限(海外の親会社製品に限定)が外れ、一般製品(第三者製造製品を含む)に拡大された事になります。

 

 

6.試験販売、システム組み立てに関わる製品輸入の金額制限廃止

● 削除された規定

22号令第16条が削除されています。

● ポイント

  22号令では、傘型会社(地域本部認定を受けていない傘型会社)に対して、以下の様な業務を行う事を認めています。

1)傘下会社の製品を購入して、システム組み立てを行った上で、国内外で販売する事。

但し、傘下会社の製品だけでは、システム組み立ての需要を満たさない場合、国内外での部材調達を認めるが、この様にして購入する製品の価値は、全製品価値の50%を超えてはならない。

2)傘下会社の稼動前、若しくは、傘下会社の新製品生産開始前に、市場開発を目的として、傘型会社が関連する親会社製品を輸入して、国内で試験販売を行う事を許可する。

この様な活動を行う場合、毎年の輸入合計金額を、傘型会社の払込済み資本金額以内とする事を要請しているのが、今回削除された第16条です。

この規定が削除された事により、試験販売・システム組み立てを行うための関連輸入については、金額制限が撤廃された事になります。

 

  

7.傘型会社に対する人民元出資

傘型会社に対する人民元出資に関して、以下の通りの規定が追加されています。

これは、傘型会社に対する人民元出資を行う場合の手続の簡素化を規定したものです。

● 追加された規定

    外国出資者が、「中国内において獲得した人民元利潤、株式売却・清算等により獲得した、合法的な人民元収入(以下、合法的人民元収入)」により、投資性会社に出資・増資を行った場合、投資性公司は該当部分の資本金の全部、或いは一部を、国内において投資、設立する企業に使用することができる。

投資性公司が上記の資本金により設立した企業は、「外商投資企業審査認可機関の批准文書」、「外貨管理部門が発行する、外国投資者が合法的人民元収入により投資性公司に出資・増資する事に関する資本項目外貨業務許可文書」、「投資性公司が発行する、傘下会社に対する人民元出資が、上記の登録資本金である旨の書面による説明」等の文書によって、所在地の外貨管理部門に外商投資企業の外貨登記、及び資本調査の質問と証明に関わる手続を申請することができ、投資性公司が人民元で国内投資を行う資本項目外貨業務許可文書を再度提出する必要はない。

   中外合弁の投資性公司は、その中国側投資者からの人民元出資による、登録資本金が国内にある企業を設立する場合、外資企業の外貨登記、株式転換外貨入金の外資外貨登記、資本調査の質問と証明と外資外貨登記等の外貨管理に関わる手続きを行う必要はなく、一般国内企業の関連規定に従って通常の験資手続きを行う事ができる。

 

 

8.地域本部認定企業の活動範囲

● 新規定(22号令第22条の改訂)

  同条(二)第1項の内容を、「本規定の第10条、第11条と第15条に規定される業務」と改訂する。

● 改訂前

  「本規定の第10条、第15条に規定される業務」

● 改訂のポイント

   地域本部と認定された傘型会社は、当然の事ながら、通常の傘型会社が行う活動は全て行う事ができます。

この様な、通常の傘型会社が行う事ができる業務の内容として、第10条(全ての傘型会社が認められる業務)、第15条(US$ 3千万以上の資本金を払い込み、且つ、適正な投資に使用済みの傘型会社)が例示されていましたが、それに、第11条(国内流通行為、貿易行為)が加えられました。

これは、従来は、傘型会社が国内流通権の取得を行う場合は、別途、「外商投資商業領域管理弁法」の内容に基づく認可取得が必要でしたが、今回の改定により、この規制が外れた(全ての傘型会社に流通権が付与された)為、第11条が加えられたものと解釈されます。

 

  因みに、傘型会社が、地域本部認定される為の条件は以下の通りです。

   (1) 払込資本金が1億米ドル以上。

若しくは、払込資本金が5千万米ドル以上であり、申請前1年の投資先会社の資産総額が30億人民元以上、且つ、純利益の合計額が1億元以上である事(連結決算適用後の計数を使用)。

(2) 傘型企業の規定に基づいて資本金を使用している事(払込資本金の内、3千万米ドル以上を傘下会社に対する出資その他に使用している事)。

(3)研究開発センターを設立済である事。

 

 

9.リース業務

● 追加された規定

   地区本部認定を受けた投資性公司は、オペレーティングリースとファイナンスリース業務に従事することができる。

● ポイント

   以前は、傘型会社は、「傘下企業の為に設備を提供するオペレーティングリース」業務に従事する事、若しくは、それを経営範囲としたオペレーティング会社を設立する事が認められていました。また、地域本部認定を受けた傘型会社は、ファイナンスリース会社に出資する事が認められていました。

   今回の規定により、地域本部認定された傘型会社は、リース先が限定されない(第三者企業に対してもサービス提供可能な)リース行為を行う事が認められた事になります。

   これは、外資リース企業関連規定(外商投資リース業管理弁法:商務部令[2005]5号)が2005年に公布され、外資オペレーティングリース会社・外資ファイナンスリース会社双方の認可機関が商務部である事が定められた事を踏まえての規制緩和と考えられます。

 

 

10.その他

その他の内容として、以下の規制改訂が謳われています。

● 地域本部認定を受けた傘型会社が、委託加工業務を行う事を許可する(加工された製品は、国内外で販売できる)。

    財務・資金管理センターの機能を行使する地域本部認定傘型会社は、外貨管理局の許可を経て、国内傘下企業の外貨資金の集中管理を行うことができる。

この場合、国内銀行にオフショア口座を開設し、国外関連会社の外貨資金と国内関連会社の外貨管理局の許可を経た国外貸金に使用される外貨資金に対する集中管理を行うことができる。オフショア口座と国内その他の口座間の資金往来は、国際取引として管理する。

 

 

B.傘型会社に認められる業務

今回の規定改正の結果、傘型会社に認められる業務内容は、傘型会社の状況(資本金払込実績、地域本部認定の有無等)によって、以下の通り分類できます。

 

1.傘型会社全てに認められる活動

     外資企業の設立が認められる分野に対する投資。

     中国内の上場企業に対する投資。

     国内流通、国際貿易(傘下企業に限定されず、外部企業に対しても可)。

     外国企業に対するサービス提供(外部企業に対しても可)。

     傘下会社の為の自家用設備・事務設備・生産に必要な原材料の購入(輸入・国内調達)、傘下会社が生産した製品の販売(輸出・国内販売)の代理、アフターサービスの提供。

     傘下企業間の外貨バランス調整。

     傘下会社に対する技術支援、従業員教育、人事管理サービスなど。

     傘下会社に対する借り入れ保証の提供。

     中国内での研究センターの設立。

     投資者、傘下会社に対するコンサルティングサービスの提供。

     傘型会社の親会社、及び関連会社のサービス業務の引き受け

     傘下会社に対する財務支援(中国銀行業監督管理委員会の許可が必要)。

     外資株式会社を設立する際に、発起人となる事。

 

2.3千万米ドル以上の資本金を払い込み、且つ、既にこれを傘下会社に対する投資に使用済である傘型会社に認められる活動。

  ● 一般の傘型会社の活動範囲(上記1)。

     傘下会社が生産した製品の買い取り販売。

     傘下会社の為の運輸、倉庫保管などの物流サービスの提供。

     傘下会社が生産するシステムの購入・販売。更に、傘下会社の生産する製品では、システム構成需要を満たさない場合、システム構成の為の関連製品を、購入(輸入・国内調達)する事が出来る。

尚、購入する関連製品の価値は、全体の価値の50%以内とする必要がある。

     傘下会社の製品の国内取次ぎ販売店、代理店、傘型会社や親会社が技術移転協議を行っている国内企業に対する技術訓練の提供。

     傘下企業の操業前、若しくは、新製品開発前に、関連製品を試験的に輸入して国内販売する事。

● 傘下会社が使用する自己使用設備・事務整備を、オペレーティングリースする事。

若しくは関連法規に基づいて、オペレーティングリース会社を設立する事。

● 輸入した製品に関する、アフターサービスの提供。

     国外で請負工事を行う資格をもつ中国企業が行う国外請負工事に参画する事。

     親会社製品を輸入して国内販売する事(小売は含まない)。

 

3.多国籍企業の地域本部に認定された傘型会社

     上記1、2の活動範囲。

     国外の親会社・兄弟会社の製品を輸入し、国内販売する事(小売は含まない)。

     傘下企業、及び多国籍企業の製品のアフターサービスと、それに必要な部品・原材料を輸入する事。

     国内外企業よりサービス業務の委託を引き受ける事。

     物流配送サービスに従事する事。

     所定の認可を取得した上で、財務公司を設立し、傘下会社に対して財務サービスを提供する事。

     所定の認可を取得した上で、国外の工事を請け負う事、国外に出資する事、ファイナンスリース会社を設立する事。

     中国内の外部企業に生産委託を行い、それを中国内外で販売する事。

     ファイナンスリース、オペレーティングリースを行う事(外部企業に対するリースも可)。

     外貨管理局の許可を受けた上での関連企業間外貨集中管理。

 

(2006年7月掲載・6,402字)

                             M&C Shanghai Ltd.    
                             M&C South China Ltd.   代表取締役社長
 水野真澄

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