こんにちわ、ゲストさん

ログイン

今年も上海の企業に課された節電政策

中国ビジネスレポート マクロ経済
旧ビジネス解説記事

旧ビジネス解説記事

無料

2006年7月20日

 
 
 
 
<マクロ経済>

今年も上海の企業に課された節電政策

 

藤田 康介

 今年も上海では梅雨があけ、真夏の太陽が照りつけ、気温も35℃を超えるような日々が続いている。人々の生活レベルの向上に伴い、一世帯につきエアコンが2台、3台と使用されているところが少なくない。さらに、学校が夏休みに入り、子供たちが自宅にいることが多く、電力に対する負担はさらに増加する傾向にある。

これまでの上海の電力消費量のうち、半分はエアコンによるもので、その負荷は800万キロワットに及ぶ。ここからも分かるように、2006年夏も電力事情の逼迫が予想されている。2006630日から電気代の値上も行われた。

そこで、上海市では住民に供給する電力を優先しつつ、市内の企業に対してさまざまな節電政策を発表している。

 

1.猛暑による上海の電力事情の逼迫

 

 最高気温が37℃を超えた719日、上海市では1日のうちで2回電力負荷の記録を更新した。1回目は朝1045分で、このときの負荷は1840万キロワットで、74日に記録した歴史的記録とされた1834万キロワットを軽々と超えてしまった。

 ところが、気温はさらに上昇し、3時間後には1880.8万キロワットを記録、1日のうちで2回、負荷の最高値を更新してしまった。電力関係者では、エアコンの一斉使用にともなう電力負荷の急増と分析している。

 電力会社がマスコミ各社に発表した消費電力の分析で、上海市ではピークが午後2時ごろにやってくるのに対して、江蘇省などでは午後6時ごろがピークとなるようで、市民の生活パターンの違いが分かる。電力会社はさらに、今年の夏の最高電力負荷は2000万キロワットに達すると見ており、今年は余裕が見られた上海の電力事情も、ピンチを迎えつつあるようだ。

 

2.上海の節電政策の三大原則

 

 2006624日より、2006年度の上海市の節電政策が行われている。この節電政策の3つの大きな柱が、夏場の基本的な節電政策となる「基礎預案」、高温時に採られる「高温預案」、そして緊急時に採られる「応急預案」となっている。その内容は、以下のようになっている。

 

(1)  基礎預案…最高気温が35℃以下の場合、一部企業・工場の休業日を調節する。(6月15日〜9月23日) 一般的にピークを避けるのが目的であるので、「錯峰」と呼ばれている。

(2)  高温預案…最高気温が35℃を超えた場合、一部企業はローテーションを組んで休業となる。(7月10日〜8月27日)さらに「両高一低」と呼ばれる業種の企業は、7月1日から8月31日の期間に限って、月曜日から金曜日までの朝8時から22時まで電気の使用を停止する。この「両高一低」とい呼ばれる業種には、汚染度が高い上にエネルギー消費が著しく、工業生産性が低い工場で、例えば化学工業や染物工業などの業種が含まれている。

(3)  応急預案…緊急時に行われる処置

 

 そのほかにも、気温が38℃異常になった場合、政府や党に関係する機関、ホテルなどではエアコンの設定温度は26℃を下回ってはならないこととし、さらに、気温が35℃を超えた場合、上海市の重点プロジェクト以外の工事現場では、工事が中止されることになっている。

 

 これら原則に従って、上海市の電力を供給している電力会社では、「両高一低」と呼ばれる業種の該当企業に「告知書」を渡して、約束に従うようにサインをさせている。ただ、市民の生活に直接関係するような食品の冷蔵施設をもつ企業などは、節電のために電気が使えなくなる休みの期間を7日間から5日間に短縮するなどの便宜的な処置がとられている。

 それでも、気温が異常に高くなった場合、電力の不足が予想されるため、市内9000余りの企業に対しても、電力供給の制限をするなどの緊急処置が採られる可能性がある。すでに、上海の電力部門では一部工業企業と協議書を交わしている。

 

 もちろん、上海市では市外からの電気の購入量を増やしている。今年は、去年と比較すると100万キロワット増加の600万キロワットの電力を上海市外から購入することになっており、上海市市内の1260万キロワットの発電力とあわせると、電力環境は改善されている。それでも、電力消費量の上昇は続いており、今年の最高負荷は去年より10.2%増の2050万キロワットに達すると見られている。相変わらず逼迫した電力事情には変わりない。

 

3.電気代の値上げも実施

 

中国国家発展改革委員会では、2006630日より、中国全国規模で電気代の値上を行っている。全国平均での電力の値上幅は1キロワットあたり2.5分となった。上海市では、上海市の状況を鑑みながら、平均の値上幅は1キロワットあたり2.2分となるが、住民が使う電力の場合は、1キロワットあたり0.7分程度の上昇となる。(注:1分は1元の100分の一)

そのため、標準的な家庭の場合、1ヶ月の電気代の支出は10元程度の上昇となるとされており、その上げ幅は小さかったが、企業にとってはかなり大きな値上幅となった。

上海市発展改革委員会によれば、7月から9月までの夏季における非居住者向けの電気代の値上幅は、1キロワットあたり2.6分、夏季以外の場合でも1キロワットあたり1.9分の値上となっている。

 

上海市の夏季電気料金表(単位:元/KWh)

分類

ピーク時(6時〜22時)

夜間(22時〜翌朝6時)

 

400V以下

1V

3.5V

400V以下

1V

3.5V

工業用

0.937

0.917

0.897

0.455

0.435

0.415

非工業

0.984

0.964

0.944

0.455

0.435

0.415

農業用

0.629

 

 

0.339

 

 

住民用

0.617

 

 

0.307

 

 

上海市発展開発委員会の資料による

 

今回の電気代値上の大きな原因の一つに、石炭の値上がり・鉄道輸送コストの上昇、電力設備の整備などが要因として挙げられている。すでに石炭は今年に入って5%値上している。

ただ、同時に中国国家開発委員会は、小中学校の電気代を抑えるために、住民用の電気料金を採用するなどの処置を講じているようだ。(以上)


(06年7月記・2,434字)
上海エクスプローラー
中国ビジネス解説編集委員

ユーザー登録がお済みの方

Username or E-mail:
パスワード:
パスワードを忘れた方はコチラ

ユーザー登録がお済みでない方

有料記事閲覧および中国重要規定データベースのご利用は、ユーザー登録後にお手続きいただけます。
詳細は下の「ユーザー登録のご案内」をクリックして下さい。

ユーザー登録のご案内

最近のレポート

ページトップへ