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地震とまったく無縁ではない上海市

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2006年7月30日

記事概要

確かに上海市では地震の発生は、日本の東京や大阪と比べるとはるかに少ない。しかし、まったく地震の恐れがないかといえば、決してそうではなく、やはり日ごろからの準備が大切だ。上海に住む我々も、上海市政府の政策に注意しながら、いざという時には機敏に動けるように対策をしておく必要がありそうだ。【2,261字】

地震に対する対策も忘れずに

1976年7月28日、河北省唐山を強烈な地震が襲った。死者24万人、負傷者16万人の大惨事となったM7.8の唐山地震。時代が時代だっただけに、我々日本人にとっては馴染みが薄いかもしれない。今年は地震が発生して丸30年目となる。中国各地では、死者を偲んで、盛大な追悼式なども行われた。

中国各地では、国土が広い分、どこかで地震が発生している。たとえば、上海市で生活していると、日本ほど地震に遭うことはないが、それでも地震は発生している。最近では、1996年に上海で揺れを感じる地震が観測されたことは記憶にあたらしい。では、実際に上海の地震の状況はどうなのであろうか?唐山地震30周年を記念して、上海でも地震に対するさまざまな報道が行われた。

■上海市は中程度の活動を示すプレートの上に
上海市が位置する長江下流エリアは、まったく地震がないわけではない。古くは上海市の行政区域内で、1624年にM4.75程度の地震が発生している。上海市一帯は、長江下流から黄海にかけてのプレート上にあるために、やはり地震は発生しているのである。

さらに、上海近郊まで範囲を広げ、半径300キロ圏内まで広げてみれば、これまでにM5以上の地震が、記録の上で残っているだけでも46回、M6以上の地震も16回発生している。このうち、最も強かったのが1846年8月4日に発生したM7の地震といわれている。

また、上海市に影響を及ぼした地震についてみてみると、1970年以降、14回体に感ずる地震が発生している。最近では、1984年に南黄海エリアでM6.2規模の地震が発生しているし、1990年には常熟と太倉の境界付近でM5.1規模の地震が発生していて、いずれも上海に揺れなどの影響を及ぼした。1996年の地震では、震源地は長江沖合いででM6.1だった。上海に大きな被害はなかったものの、めったにない地震だけに、パニック状態になった市民も少なくなかった。

そのため、上海市の重要な建築物の建築に対して、地震の影響を考えた設計が行われている。有名なのは、地震による安全性を考えて、浦東国際空港が元々の建設予定地よりも南に4キロ移動された話もある。そのほか、上海市南匯沖合いに最近作られた洋山港、黄浦江をくぐる延安トンネルなど各種トンネルも、地震に対する検討が行われているそうだ。

海に近い上海だけに、津波に対しても警戒が必要ともいえる。確かに、上海近海の大陸棚は広く、多くの波はそこで解消されてしまうが、中国全国ではこれまでに26回の津波の記録が残っている。とくに台湾など島の沿岸エリアでは要注意なのは変わらない。

■まだまだ地震に対する意識が低い上海市民
上海市地震局によれば、上海市の地震の建築基準ですら満たしていない建築物があわせて1000万平方メートルあるという。人口1700万人の大都会上海にとって、地震の与えるダメージの大きさが、心配される。上海市地震局地震予報研究所の劉文竜所長は、上海市の地震に対する脆弱性に懸念を示している。さらに、上海でも農村部では農民が自分で建築物を設計して建てており、そこには耐震基準すら存在しない。

最近では、2005年11月26日に江西省九江、瑞昌エリアでM5.7クラスの地震が発生し、10万人が避難生活を余儀なくされ8000以上の負傷者が発生した。このように、M5以上クラスの地震の80%以上は農村エリアで発生しており、地震局ではこれから地震に対しても建物が全壊することがないように、調査を進めて行きたいとしている。

■地震避難所の建設を進める上海
この唐山地震30年の記念となる2006年に、上海市はさまざまな地震対策の政策を発表している。まず、第十一五カ年計画期間中に、上海市では緊急の避難場所の建設をすすめ、2007年完成を目標に大連路緑地に上海で始めての地震災害避難場所の整備を行う。この避難場所は、一般の避難場所のように24時間だけの対応が出来るのではなく、5日間にわたって避難生活が行える設備を持ち、また独立した電力や上水道の供給システムを持つという。そのほか、災害避難モデル地区として指定された閔行区七宝では、避難場所のネットワークをつくり、15分以内に村の住民が避難場所に歩いて向えるように配置されている。これら施設は、地震以外にも台風のときに危険なプレハブ住宅にすむ建設作業員が非難するために使われる。

■上海の地震観測地点を強化
上海市地震局では、今後地震観測の強化を行うとしている。その中で、現在でも国際的水準をもつ地震観測台を市内各地に持っているものの、有人の観測台を浦東新区張江と崇明島に新たに2箇所設置し、これで有人の地震観測台は市内に4箇所となる。また、無人の地震観測地点は現在増設を進めており、近い将来には44箇所となり、全部で48箇所の体制で地震の観測が行われる。

さらに、上海市では万が一の地震災害に備えて、上海市地震災害緊急援助隊の設立を進めており、2006年末には成立する予定だ。これは、上海では2010年に万博が開かれるが、未然に災害に対しての対応をしておくだけでなく、万博が必要とする防災体制を確保する。

確かに上海市では地震の発生は、日本の東京や大阪と比べるとはるかに少ない。しかし、まったく地震の恐れがないかといえば、決してそうではなく、やはり日ごろからの準備が大切だ。上海に住む我々も、上海市政府の政策に注意しながら、いざという時には機敏に動けるように対策をしておく必要がありそうだ。(以上)

(06年7月記・2,261字)

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