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これだけは知っておきたい! 中国リスクマネジマント(11)

中国ビジネスレポート 投資環境
旧ビジネス解説記事

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2006年9月30日

今回は「市場としての中国」と捉えた場合の販売管理上の注意点を、保証や担保の取り方また相手側の倒産時の注意事項などを中心に見てみたいと思います。 

                           

.保証の取り方 

中国販売活動のリスクマネジメントとして、販売相手先から保証の取得をする事がありますが、中国における保証の取り方について先ず、見てみたいと思います。

                    

1 担保法では

1995年10月に施行された中国の「担保法」では、「保証」「抵押」「質押」「定金」「留置」の5種類の担保権が認められており、それぞれ日本の「保証」「抵当権」「質権」「手付け」「留置権」に相当します。

ただし、実行面では有効性は薄いために、外資企業では「保証」をとる場合が多いようです。

  保証の意味は日本とほぼ同様、取引先が自己の債務である販売代金を支払わないとき、債務者に代わって、利息、違約金、損害賠償その他の必要な費用も含めて支払いの責任を負担させることをいいます。

 

2 保証のとり方

(1)  誰を保証人にするか

地方政府を含む国家機関、公益を目的とする学校等の団体、授権されていない企業法人の分支機構、企業の部門(営業部、管理部など)は保証人になれません。従って、保証人に国家機関を提示され、役所のお墨付きを貰ったなどということの錯覚が無いよう注意が必要です。一般的には、親会社や取引銀行を保証人にする事が多いようです。

 

(2)  保証の取得

保証の取得には、保証人との間での契約書面である保証契約書か、保証人からの保証状が必要です。尚、売買契約書の中に、保証条項を設け、保証人の保証範囲を明記させ、保証人に署名捺印させる方式も可能です。

 

(3)  保証の種類

保証には、「通常保証」と「連帯保証」の2種類があります。「通常保証」の場合には、債務者に支払い能力が無いことを法的に確定する必要があります。これに対して、「連帯保証」の場合には、債務者の支払い能力の有無に拘らず保証人が支払う義務を負います。従いまして、企業としては、「連帯保証」である方が有利です。

 

4 日本との違いから来る注意事項

中国で保証を取る場合、日本との違いを認識する必要あります。以下、その注意事項を述べたいと思います。

 

(1)  外資企業への許可制度

外資企業が中国企業から保証をとる場合、事前に保証人所在地の外国為替管理局に申請してその許可を取る必要があります

 

(国内企業対外担保管理弁法)

その許可を取得後、更に外国為替管理局での登記(外債登記)が必要になります。この登記が最終的に無いと、その保証契約自体が無効となりますので、注意が必要です。

 

(2)  保証期間

    保証契約書に保証期間が定められている場合、その期間に準じます。

    保証期間が定められていない場合、支払期限日から6ケ月が保証期間となりますので、期間の定めが重要になります。

 

(3)  保証債務の消滅

債権者が、上記の保証期間内に以下の措置を取らなかった場合、保証人は保証責任が免除されますので注意が必要です。

 

「通常保証」の場合

債務者である会社を被告として訴えるか、仲裁を申し立てること

 

「連帯保証」の場合

保証人に対して、保証の引受請求、または訴訟・仲裁提起をすること

 

(4)  保証の範囲

債権の回収を確実なものにする為、保証の取得以外に、債務者の財産に抵当権を設定する事が日本では多くあります。日本では、その場合でも、保証人に全額請求できますが、中国の場合には、保証人の責任は抵当権の設定でカバーされない部分のみに限定されますので債権回収の計算時には注意が必要となります。

 

.抵当権設定について

 

中国での売掛債権確保のために、販売先に抵当権を設定する場合があります。抵当権の設定ができる対象や、実行方法に日本と違いがありますので、注意が必要となります。以下、抵当権について見てみたいと思います。

 

1 抵当権とは

中国における抵当権も日本同様の解釈がされており、販売先が販売代金を支払わない場合、債務者であるA社または抵当権設定者が保有する抵当物件を換金し、優先的に債務弁済を受ける方式の担保を言います。

 

2 抵当権の目的物(設定対象)

抵当権は、抵当権設定者が所有権(土地の場合には使用権:払下土地使用権に限る)を有している財産に設定する事ができます。不動産および一定の動産(機械設備、車両運搬具等)が対象となります。

設定できない対象には、自然資源、集団所有制の土地の使用権、公共福祉施設(学校、病院など)、農業水利施設のような社会公共利益に関するものなどがあります。

 

3 抵当権設定の方法

(1)  抵当権の目的物の所有権・処分権の確認

抵当権を設定する目的物を抵当に供する権限をその債務者が持っているかどうかの確認が最初のステップとなります。「土地使用書」や「建物所有権証」などの証明書を債務者から提出してもらい、その権利関係を確認をする事が重要です。尚、中国の場合には土地上に建物がある場合には、土地建物ともに一体として処理され、別々の抵当権設定は出来ません。

 

(2)  抵当物件の評価

抵当権を取得する場合には、国有資産管理局が認定した資産評価機関の評価を取る必要があります。

 

(3)  国為替管理局の認可取得

被担保債権が外貨建ての場合、抵当権設定の前に外国為替管理局の認可を受ける必要があります。事前に取得しておかないと、抵当権が無効となります。

 

(4)  抵当権設定契約書の締結

法定の記載事項を満たした抵当権設定契約を書面で締結する必要があります。また、この契約書は中国語で作成する必要があります。

 

(5)  抵当権の登記

抵当権設定契約書を関係当局(抵当物件の種類で管轄が異なる)へ登記をして、はじめて契約の発効となります。

登記をしないと、効力が発生しない、第三者へ対抗ができないことになります。尚、日本同様、同一抵当物件に対して複数の抵当権が設定されている場合には、先に登記したものが優先されます。

 

4 抵当権の実行方法

実際に販売先の債務不履行が発生した場合、先ずは、抵当権者との間で抵当権の実行方法を協議する必要があります。協議の結果、まとまらない場合に人民法院に提訴し、抵当権の強制実行を求めることができます。処分方法としては、競売、市場での売却などとなります。

 

5 抵当権の実行の実効性

競売にかける場合には、競売会社に委託する事が多いのですが、競売物件の買手が限られている場合が多いのが問題となります。その競売対象物件を利用して、役所から営業許可を取得できる買い手のみに売り先が限定されてしまうのがその実情です。

また、外資企業が中国国内取引で外貨決済をする事は、現状違法なために、人民元を競売会社に外貨交換をしてもらうなどの手続きが必要です。その場合、前述した外国為替管理局の認可取得を取っていないと国外送金の許可もおりないなどの問題が発生しますので、注意が必要です。

 

.取引先の倒産時の対応は?

 

「中国の取引先が倒産する可能性がある」との情報が入った場合、どのようなアクションをとるべきかに販売行動マニュアルを準備しておく必要がありますが、その準備のための基礎知識として、中国の倒産法制を見ておきたいと思います。中国にも不完全ながら倒産法制が存在しています。債権者として所定の手続きを行えば、債権比率に応じて配当を受ける事ができますので、手順を理解しておくことが重要です。

 

1 倒産法制の状況は

日本の会社更生法、民事再生法に相当する再建型の倒産法制は現在準備されている状況ですが、倒産法制(破産法)は一応整備されており、その概要は以下となります。

 

(1)  手続きの流れ

債務超過などで、債務の返済は出来ない場合、債務者又は債権者が人民法院に破産申し立てを行い、受理された時点から破産手続きが始まります。

 

<手続きの流れ> 破産申し立て→受理→破産公告→債権者による債権の申告→債権者会議→破産宣告→精算組織の設置→破産財産及び破産債権の確定→債権者への配当案の作成及び債権者会議での可決→配当案に人民法院による裁定作業→配当実施→破産手続きの終了     (2)  債権者による破産申し立て 倒産する可能性があると噂された時点で、他の債権者との結託、優先返済などが起きる可能性があります。 その様な場合には、債権者から債務者の破産申し立てを行うことが可能です。その破産申し立てが受理され、破産宣告がなされた場合、配当減資の不当な減少を防止する効果が期待されます。 この倒産申請に基づき、倒産手続きが始まると、進行中の全ての民事執行プロセスが中止する事になり、それまでの保全措置も失効する事になります。このプロセスを経て、債務者の全ての負債は倒産手続きは処理されることになります。また、裁判所が倒産申請を受け付ける6ヶ月前から倒産宣告までの間、倒産人に以下の行為があった場合には、無効となります。 ・    財産の隠匿、無償譲渡、密かに分配した場合 ・    通常よりも低い価格での転売した場合 ・    本来無担保であった債務に担保設定した場合 ・    弁済期が到着していない債務を弁済した場合 ・    自分の持っている債権を放棄した場合   債権者による破産申し立てをちらつかすことで、債務者が破産を回避するために和解の形で弁済に応じる可能性も出てくることが多いようですので有効な手段といえましょう。   (3)  代位権の行使 また、債務者が弁済期が到来した債権行使を怠り、債権者の利益を損ねた場合、債権者は裁判所に弁済期が到来した債務者の債権行使を申し立てることもできます。人民裁判所の審理により、代位権の成立が認められた場合には、次の債務者に債権者に対し弁済義務を履行する事になります。但し、その場合には以下のようなことが条件になります。 ・    債務者が弁済期が到来した債権をもつこと ・    債務者がその債権の行使を怠ったことにより、債権者に損失をもたらしたこと ・    代位権の行使は裁判所を経由しなければならず、債権者は直接行使をすることは出来ない などです。   (4)  取消権の行使 ま た、債務者が弁済期が到来した債権を放棄したり、財産を無償譲渡したりすることで、債権者の利益を損ねた場合、債権者は人民裁判所に債務者の行為の取消を請求する事が出来ます。  (5)  債権者への配当 以上、様々な法的手段を述べてきましたが、破産手続き後の債権者への配当という観点では、従業員の賃金債権、租税債権が優先されるために、一般債権者への配当は多くは期待できないのが実体です。  従いまして、備えあれば憂い無しの言葉通り、先ずは地道な信用調査からの取引開始が中国国内販売では重要といえます。   http://www.conbut.co.jp 

(2006年10月記・4,317字)
コンサルビューション・代表

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